IS・VVVーインフィニット・ヴァルヴレイヴー   作:蒼京 龍騎

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プロローグ
第一話 革命ノ刃


IS・VVV

インフィニット・ヴァルヴレイヴ

 

プロローグ第一話 革命ノ刃

 

 

一夏side

「────さっさと殺してくれないか?殺るなら早くしてくれ、その方が助かる」

腕と足を椅子に縛られた俺、現在小学六年生の織斑一夏(おりむらいちか)は呟く。

今日、俺はいつものように路地裏で寝ていたところを謎の男どもに誘拐された。

そしてどことも知らない場所まで連れてこられ、椅子に縛りつけられ銃を複数人から突きつけられている。

クソモップとクソ兄に竹刀で叩かれ、骨折して膿んだ腕と足が圧迫されて少し痛みが走る。

まぁ、こいつらが俺を攫ってやりたいことなんて一つだろ。

────糞姉、織斑千冬(おりむらちふゆ)の妨害だ。

今、俺の糞姉はモンド・グロッソという大きな大会に出ている有名人だ。

大方、弟である俺を攫えば糞姉が俺を助けに来るとでも思っているんだろうが、大きな間違いだ。

あいつは俺の事を『都合のいい道具』としか思ってないからな。兄である百秋(ゆあき)ばっか大切にしてたし。助けに来るわけないだろ。

「お前にはまだ利用価値があるからな……まだ生かす」

男の一人がドスの効いた声で言う。

阿呆だこいつら。俺に利用価値が有ると思い込んでやがる。

「ボス!!!大変です!!織斑千冬が大会に出ています!!!」

「なんだと!?」

ほら、噂をすればなんとやら。

やっぱ糞姉は俺を切り捨てた。まぁ知ってたしあいつにそこまで情を持ってるわけじゃないから別に悲しくないが。

「……前言撤回だ。お前の利用価値が消えた。死んでもらおう」

男らが俺に銃を向け始める。

────ああ、やっとこの世界からおサラバできるのか。

俺は向けられている銃を見ながら心の内で呟く。

『骨が折れたからどうした!!!いいから立て出来損ない!!!』

『弱いな。お前がいると俺の存在曇るからとっとと死ね』

『ああ、帰ってきたのか。なら早く飯を作れ。お前にはそれぐらいしか出来ないからな』

『うわ、また学校に出来損ないが来たぜ』

『生きてるだけで千冬様の顔に泥を塗ってるからとっとと死んで欲しいわ』

『だよな。さっさと死ねばいいのに』

…そうだ。死ねば……クソ姉と、愚兄と比べられる事は無い。出来損ないと、不当な暴力を受ける事も無い。膿んだ傷口と怪我を、誤魔化す必要もない。

最後に、千冬と愚兄をブチ殺してやりたかったが、もうどうでもいい。

────死ねば、大切な友達だった(りん)と、妹……マドカにも会える。

糞姉が起こした『白騎士事件』で死んだ、あの子たちに。

──俺を、俺として好きになってくれた子らに。

ゆっくりと、男らが引き金を引き始める。

 

────嗚呼、でも最後に。

────死のうとした俺を救ってくれた、セシリアに会って、礼を言いたいな。

一年ぐらい前に、第一回目のモンド・グロッソに行った時に出逢った、あの子に。

『織斑一夏さんですか。一夏さんとお呼びしてもよろしくて?』

『まぁ!!一夏さんの料理、とても美味しいですわ!!是非わたくしの専属シェフになってくださいまし!!』

『一夏さんは自分を低く見すぎですわ。貴方には人に劣らない良い部分が沢山ありますわ。もっと胸を張ってくださいまし』

────嗚呼。セシリア。叶うなら、今すぐにでも逢いたいな。

 

パァンパァンパァン!!!!!

銃声が鳴る。

腹と、頭が急に熱くなるのと同時に、俺の意識は途切れた。

 

 

誘拐犯side

「……よし、ここまで運びゃあバレんだろ。さっさと海に帰してやろうぜ」

「だな。そうした方がこの餓鬼も喜ぶだろ。海は全ての母だから、優しく受け止めてくれるさ」

「……?おい、今なんか海赤く光らなかったか?」

「おいおい馬鹿言え、ここらにホタルイカは居ねぇぞ?赤く光るホタルイカなんてのも聞いた事ねぇし、見間違いじゃねぇか?」

「そんじゃポイーっと。……ボチャン。これで良し」

「そんじゃとっとと帰ろうぜー」

「だなー」

 

 

 

???side

『……あたらしいますたー、きた。わたし、ぴの、けいやく、じっこう』

 

────契約内容。

ヴァルヴレイヴ一号機【火人】より新規パイロットとなる織斑一夏へ。

 

ニンゲンヤメマスカ?

 

YES␣␣␣␣␣␣␣NO

 

『……いえす、おさせる』

 

YES。

パイロットの承認を確認。

パイロットへのルーン注入を開始……完了。

契約を完了。操作権限を織斑一夏に譲渡。

────ヴァルヴレイヴ一号機【火人】、起動。

 

『……けいやく、できた。きず、なおす。ほね、なおす。からだ、つよくする』

『……できた。まぎうすにした。め、さまさせてあげる』

『……いきて。あたらしい、ますたー。せかい、おもうより、きれい』

 

 

一夏side

「……んあ?」

真っ白な光が目に入り、目が覚める。

俺の目には、まず真っ白な天井が目に入った。

ここは……病院か。

────生きてるのか、俺。

──あのまま死ねれば、良かったのにな。

ぼんやりとする思考の中、俺はゆっくりとベッドから起き上がる。

「……?あれ、体治ってら」

そこで、気づく。

ボロボロだった体が綺麗に治っており、それのおかげか体が異常なほど軽い。

それこそ、空だって飛べそうなくらいに。

「……病院さまさまだな」

そう呟き、俺はベッドから降りて日が差している窓へ向かう。

「……綺麗だ」

今まで特に感じたことがなかったのだが、今は日がとても綺麗に見える。

辛い人生を全て忘れさせてくれるような美しさに、魅入ってしまう。

「セシリア、元気にしてるかね」

口から、ポロリと言葉が漏れる。

あの少女に逢いたい。

あの、彼女の髪に似ている、照り輝く太陽を見て彼女のことを思い出す。

恐らく、俺の初恋の少女のことを。

「おーい、起きてるか出来損ない……って起きてるじゃねぇか。生命力ゴキブリ並だな、すんげ」

後ろから、憎たらしい声が聞こえてくる。

返事を返すのも億劫だ。無視しよ。

俺は後ろに居るであろう俺の愚兄、百秋の言葉を無視し太陽を眺める。

「……チッ、無視してんじゃねぇよカスが!!!!」

愚兄が俺の肩を掴み、俺に向かって拳を振りかぶってくる。

俺は抵抗するのも面倒だったので、そのまま棒立ちで拳が迫ってくるのを見ている。

愚兄の拳が後頭部に当たり、少しばかりの衝撃が頭に走る。

……だが、痛みは走らない。

「いっっっっってぇ!?」

代わりに、愚兄が拳を手で抑えて痛そうに悶えている。

自爆乙、と言いたくなったが言ったら面倒なことになりそうなので我慢する。

「自爆乙、クソ兄貴」

……あ。やっべポロッと言っちゃった。

「────アァ!?んだとテメェ!!!」

愚兄が、今度は右足を上げて蹴りを俺の腹に食らわそうとする。

俺は変わらず無抵抗を貫き、腹に蹴りを食らう。

先程と同じく衝撃が走るだけで、痛みは走らない。

「──────っっっっ!?」

また、愚兄が顔を歪めて悶えている。

なんか……弱いなコイツ。

我慢してんのが馬鹿馬鹿しく思えてきた。

「自爆ばっかで恥ずかしくないのかよ。自称エリートの内面クソ野郎」

試しに、今まで言おうにも言えなかった言葉で煽ってみる。

愚兄は俺の言葉に相当腹を立てたようで、俺を何度も殴りつけてきたが俺は痛みを感じず向こうだけが痛そうに腕を抑えていた。

「……今までやられっぱだったし、抵抗してみるか」

俺は今までさんざんやられた仕返しと言わんばかりに、拳に力を込める。

そのまま愚兄を殴ろうとしたが、愚兄が間一髪のところで避けて、拳が病室の壁に当たる。

ドガァ!!!

「…………?」

「……ひっ!?」

外れた拳は病室の壁にめり込み、大きなクレーターを作り出していた。

────明らかに、人の範疇を超えた力を出せていた。

だが、俺は特に驚きはせずに。

ニヤリと、邪悪な笑みを浮かべ俺は笑う。

────ああ、そうか。俺は確かに死んだんだ。あの時銃に撃たれて。

────でも、そのおかげで弱い俺が死んで、強い俺に生まれ変わった。

────抵抗できる。今の俺なら、この世界に。

確信じみた考えが、頭に浮かぶ。

そして、俺は腰を抜かして足を震わせている愚兄を見下し、言う。

「俺は、今からお前らに……『織斑』って『運命』に抗って、『革命』を起こす。

────覚悟しとけよ、『織斑』。俺が、テメェらを……暴いてやる」

そう言い残し、俺は病院から抜け出した。

 

 

────数年後。気付けば俺は十五才……普通の人なら中学三年生になっている年齢になっていた。

そして……世界中の不良から一目置かれる存在へとなっていた。

あの日以降、弱い俺を捨てた俺はとにかく鬱憤を晴らすために、剣道と学校をサボって地元や近い街の不良やヤクザ共に喧嘩を売りまくっていた。

その喧嘩に、全戦全勝、勝ちに勝ちまくり、気付けば世界中から『辻風の黒銀』(つじかぜのくろぎん)というあだ名で呼ばれるようになった。

そのあだ名の由来は……辻風の方は知らんが黒銀の方は恐らく、俺が常に胸に黒みがかった銀の十字架のネックレスを付けているからだ。

これは、ある日いつものように喧嘩に明け暮れた後の帰り道で、道端に捨てられていたものを拾って綺麗にしたものだ。

なぜ拾ったかは分からない。多分磨けば綺麗になると思ったから拾ったのだろう。

「……も、もう許してくれ……喧嘩を売った俺が悪かった」

「……俺がお前を殺さない内にどこかへ行け。

────これは警告だ。俺をあまり怒らせるな」

「ひ、ヒィィィィィ!!!!!」

今日も、喧嘩をふっかけてきた奴がいたので返り討ちにしてやり、いつもの決めゼリフを吐く。

向こうはどこから手に入れたのかはわからん刀を使ってきたが、拳で真っ向から殴ってへし折ってやった。それだけで戦意喪失したらしく、俺の目の前に十万円を置いてから犬のように尻を俺に向けてどこかへ去ってゆく。

最近知ったことなんだが、少し前から喧嘩した相手が去り際に必ず十万円を置いていくようになった。これはどうやら俺のグループの下っ端が『辻風の黒銀に負けた場合必ず十万円を置いていけ。じゃないと辻風の黒銀に殺されるぞ』と変な噂をたてやがったかららしい。

まぁ、これのおかげでクソみたいな家に帰らないで銭湯にも入れる満足な空き家生活を送れているから正直助かっているのだが。

────嗚呼、愉悦。

自身が無敵であることに、喜びを感じる。

武器に対しても、拳で勝てる。

戦いが、闘争が楽しい。

今の俺は……無敵だ。

たとえ敵が……この世界最強の武器であるISであっても。

ピロン。

「……あ?」

スマホからメールの着信音が鳴る。

……俺の友人である五反田弾(ごたんだだん)と、同じく友人である御手洗数馬(みたらいかずま)からの飲み会の誘いだった。既に二人は飲み会をする場所に居るらしい。

────毎回俺が世話になっている、五反田食堂に、だ。

「行くっきゃねぇよな。あそこのメシクッソ美味いし」

俺は笑みを浮かべながら、メールに短く『辻風の如き速度で向かう』とだけ返して、人としてあるまじき脚力で五階建てのビルの屋上へ飛び乗って、ビルからビルの上を飛んで渡ってゆく。

五分ほどで五反田食堂に着き、古い木製の扉をゆっくりと開く。

「来たぞ、弾、数馬」

言うと、奥の方に座っていた弾と数馬が突然立ち上がって敬礼をしてくる。

「「お疲れ様です!!!辻風さん!!!」」

────はぁ、まぁた始まったよ。こいつらの『俺をあだ名で呼ぶ症候群』。

「……だからそれやめろって言ってるだろ。それあだ名だから。俺一夏」

呆れてそう返すと、二人は敬礼を解いていつものように砕けた態度に変わる。

「おいおい、冗談に決まってるだろ?一夏」

「そうだぞ、ってかかっこいいあだ名を付けられた一夏が悪い。思わず言いたくなるからな」

「かーずーまー?」

「すまない、正直悪かったから殺気を向けるのやめてくれ、軽くちびりそう」

いつものように、楽しく感じられる会話が続く。

「……あー悪いがそこの三人、ここはパーティー会場じゃねぇ。話をするだけなら帰ってくれ」

おっと、俺としたことが忘れていた。ここを経営してる弾の親父、五反田厳(ごたんだげん)さんは飯関連のことに厳しいんだよな……

「悪いおやっさん……そんじゃいつもの頼む!!!」

「俺もいつもので頼むぜ!!親父!!」

「俺もいつもので!!!」

三人バラバラに叫ぶと、厳さんが微かに笑っていたのが見えた。

「あいよ」

調理場から、ガチャガチャという小気味よい音が聞こえてくる。

「そういや一夏、お前今度は刀に素手で勝ったってマジ?」

「おうよ、正面から殴ってへし折ってやった」

「……なんか一夏が人間辞めていってる感じがするな……刀素手でへし折るとか普通なら信じられないけど、前の『アレ』見せられたらな……」

「ああ、あの金属バット持ってきた奴か。意外と簡単に曲げられたぞ。柔らかい鉄だったのかもな」

「……鉄に柔らかいもクソもあるかっつーの……」

「聞こえてんぞ、弾」

「すみませんでした!!!!」

「いや俺怒ってねーぞ……」

そんな会話を続けていると、俺らが座っている席に足音が近づいてくる。

「あ、一夏さん。今日も喧嘩に明け暮れてたんですか?」

声がした方を見ると、そこには弾の妹である五反田蘭(ごたんだらん)が呆れたような顔をしながら可愛らしいエプロン姿で立っていた。

「おう、最近よく喧嘩売られるからな……最近知ったけど、どうやら俺の名前この街以外でも広まってるらしいし、俺と同じような輩が俺のところに集まってくるんだろ」

「……怪我とかしたことないんですか?」

「無い。むしろ喧嘩で怪我負ったことが無い。ヤクザにカチコミに行った時も銃弾は見て回避したが、不意打ちでナイフぶっ刺された時は軽く痣できたな。まぁ数分で消えたが」

あの時はガチでビビった。気配を消して死角からナイフで刺しに来やがったからなアイツ……まぁ怪我ないから特に殺したりしてねぇけど、あの後アイツのせいで逃げんの遅れて警察を撒くのにかなり手間取った。次会ったら半殺しにしてやるぞあの野郎……

「……そうですか」

どこか悲しそうに、蘭が俯く。

普通ならツッコミが入りそうだが、俺の異常なほどに強い体については、この場にいる全員は既に知っているので特にツッコミは入らない。

「蘭、ちょっとそこ避けてくれ。飯作れたからそこの馬鹿三人衆に渡さねぇと」

「「「誰が馬鹿だ!!!(だよ!!!)」」」

三人一斉に叫ぶ 。その反応が面白かったのか厳さんが笑いながら湯気がたっている味噌ラーメンを俺らの前に置いていく。

────うーん、相変わらずいい匂いだ。食欲がそそられる。

俺はテーブルにあった割り箸を取り出して分割し、両手を合わせて「いただきます」と言ってから麺を啜っていく。

……ビャァウマイィ!!!!!(脳死)やっぱ厳さんの飯はサイコーだな!!!!

油っこすぎない、しょっぱすぎない、麺が硬すぎないの俺の中での三拍子が見事揃ってやがる!!!!

麺を啜る手が止まんねぇ!!!

気付けば、いつものように味噌ラーメンを平らげていた。

「あー美味かった……そんじゃ俺は家に帰るか。夜中にも喧嘩して眠いから寝る。じゃあまた明日な。弾、数馬、蘭ちゃん。あとおやっさん、ラーメンご馳走様」

俺はそう言い残して今の俺の自宅である空き家へと向かう。

本来は空き家に住むのは法律的にアウトなのだが、街の端にあるのでなかなかバレずに済んでいる。

長く家に帰っていないせいか、クソ姉やクソ兄からのメールや電話が煩いが全て無視している。

「ただいま……あーねみぃ」

俺は家に入るとすぐさまベッドまで向かい、柔らかい毛布に突っ込むように倒れる。

「……それにしても」

うつ伏せから仰向けに体勢を変えて、右手を天井に向けて伸ばす。

「どこで手に入れたんだろうな、『コレ』」

俺は手を開いたり閉じたりして、いつの間にか俺が持っていた『ありえない物』について思考を巡らせる。

 

それは、世界を一変させた現代最強の兵器。

それは、女性にしか扱うことができない。

それは、そう易々と手に入るものでは無い。

 

────インフィニット・ストラトス。通称IS。

元々宇宙開発用のパワードスーツだったものが、兵器へ一転し今も世界を動かしている。

そんな兵器を、俺は知らない内に持っている(・・・・・)上に使える(・・・)

このことは、もちろん誰にも言ってないし言えない。

もし誰かに知られれば、俺の今後の人生はモルモットになることが確定するからな。

正直言って、これでムカつくクソ姉とクソ兄をブチ殺したいんだが、助けてもらって生きている自分の人生を棒に振らないで復讐したい。

「────とりま寝よ。考えててもしゃあない。明日にも喧嘩の約束あるしな」

俺は明日にもある喧嘩の予定を思い出し、今日はもう寝ることにした。

ゆっくりと瞼を閉じると、すぐに俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

楯無side

「────よし、寝たわね。各員拘束具の用意は……バッチリね。それじゃあ、これより『織斑一夏確保作戦』を実行するわよ」

「「「了解」」」

辺りが真っ暗になった夜。ある空き家の前の茂みに私、更識楯無(さらしきたてなし)は部下を引き連れて潜伏していた。

今日は、この空き家に住む少年の確保が目的。

確保する理由は……どうやらこの空き家に住み着いている少年自身が、この世界に存在する、女性にしか扱えない兵器であるISを動かしたというのだ。しかも、どのデータベースにも登録されておらず、コア情報も一切ない未知の機体を。

情報提供者から聞いた話によると、この家に住む少年は……かのブリュンヒルデの二人いる弟のうち下の方である『織斑一夏』だという。

しかし、分からない。なぜ姉と兄が居るのに別居しているのか。どうして小学生の頃から喧嘩に明け暮れているのか。

暗部が集めた莫大な情報でも、そこだけは掴めなかったらしく私はずっと悩んでいる。

いや……今はそんなことを考えている場合じゃない。目の前のことに集中しないと。

静かに茂みから立ち上がり、ゆっくりと空き家の玄関まで向かって扉を静かに開ける。

そのまま目標が居る部屋まで進んだところで、異変が起きた。

「────ッ!?」

先程まで居たはずの織斑一夏が、消えていたのだ。

「どこへ行ったの!?監視!!聞こえる!?」

外に居る監視役の部下からは連絡が来ておらず、まだ中にいるかどうかを確認するためレシーバーで監視役に呼びかける。

『はいはーい、監視役の織斑一夏でーす。テメェら俺に何の用だ』

だが、返ってきたのは予想外の人物からの応答だった。

私が家に入ってから経過した時間……十秒。

その間に、特殊な訓練を受けた部下を倒せるはずがない。

「ッ!?監視は!?」

焦った私はそう聞く。

『あー安心しろ、後遺症が残らねぇように優しく気絶させてある。流石に相手がプロだって分かったからちょっとばかしISを使ったけどな』

────ISを使った。やっぱり。

「やっぱり……あなたはISが使えるの!?」

『……さてはテメェら、IS学園の奴だろ。俺がIS使えるのを知ってるってことは。なら残念だな、悪いが俺は今の人生を変える気は無い。とっとと帰れ。今なら殺さずにお家に帰してやる』

私は彼の言葉に思わず身を竦ませてしまう。

それだけ、彼の言葉は回線越しでも殺意が強く感じられたからだ。

「……悪いけど、私も命令を受けてるの。そう易々と帰るわけにはいかないわ」

どうにか心を落ち着かせて、私はそう返す。

それと同時に、扇子を構えて私は私専用のISである『霧纏の淑女』(ミステリアス・レイディ)を身に纏う。

いつ、どこから彼が襲いかかってきても対応出来るように。

『……久しぶりに嫌な言葉聞いたな。気分悪くなったから俺逃げる』

────へ?今なんて言ったの?逃げる?

「……まさか!!!!」

私は急いで彼を止めるため、空き家の壁を突き破り、外に出た瞬間に。

 

空を駆ける『それ』を目にする。

 

それは、全身が角張った黒と白の装甲に覆われている。

それは、頭と背に付けている緑のフレームを、闇夜の中で光らせている。

それは、今ではほぼ見られなくなった全身装甲(フルスキン)

その胸には、白の八咫烏が描かれており、それ自体の見た目も相まって、思わず呟いてしまう。

 

「────八咫烏(ヤタガラス)

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

IS学園。そこからと思われる謎の刺客から逃げ切った一夏。

逃げた先は見知らぬ土地で、そこで一夏は謎の少女に尾行されていたことに気づく。

その少女は一体……

次回、インフィニット・ヴァルヴレイヴ、プロローグ第二話。

『赤ノ軌跡』

その力で、世界に抗え。

 

 

 

 

 

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