IS・VVVーインフィニット・ヴァルヴレイヴー   作:蒼京 龍騎

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クッソ難産だった……いつもの倍ぐらい時間かかった……


第三話 感ジル温モリ

IS・VVV

インフィニット・ヴァルヴレイヴ

 

本編第三話 感ジル温モリ

 

 

百秋side

「……クソッ!!!あのゴミ……いつの間にあんな強くなってんだよ……!!!

千冬姉に言われたから仕方なく仲良くしてやろうと思ったのによ……!!!」

誰も居ない部屋の中で、俺は叫ぶ。

────織斑一夏。我が家の汚点であるクズに、俺は負けた。

千冬姉に言われたから仕方なく謝ってやったのに……あのクズは俺を睨み、勝負に勝てりゃ許す、とふざけたことを吐かしやがった。

こんなクズには余裕で勝てるだろ、と思った俺は勝負を受けたが……負けた。

腸が煮えくり返る。ムカついて仕方がない。

数年消えてたクセに、いきなりポっと出てきて俺の邪魔をするクズに。

……数年前、クズは第二回モンド・グロッソの時に謎の組織に攫われた。

その時は、我が家の汚点が消えると歓喜していた俺だったが……クズは監禁されていた場所から離れた砂浜で発見され、しぶとく生きていた。

そんなクズは病院へ運ばれ、入院することになったが……ある日、千冬姉が俺にクズのお見舞いに行けと言われた。

面倒だったが、千冬姉の言うことは聞かないと。そう思いながら病院に行き、病室に着いた俺は、起きていたクズに毎度やっている悪戯をしようとしたが……返り討ちに遭い、クズは病院から抜け出して行方を眩ませた。

そして今……出来損ないのはずだったクズはISを動かし、この学園に来ている。

「ふざけんな……!!!!俺だけ男のハーレムライフを満喫しようと思ってたのに……!!!」

床を叩いて、俺は叫ぶ。

絶対殺してやる。

千冬姉のためにも、あの出来損ないを……殺す!!!!

 

 

一夏side

────猛烈に気分が悪い。

クソ兄とクソモップを倒し、本当なら気分爽快なはずなのに……胸の中で何かが燻っているようで、胸を抑えたくなるほど息苦しい。

そんな感覚に襲われながら、俺は自分の部屋に向かう。

今はアリーナから離れた所、校舎の玄関に着いたところだ。

そこで靴を履き替えて、外に出る。

既に夕日が沈みかけており、辺りは夕焼け色より少し暗くなっている。

門限は七時までと聞いていたが、この様子だと七時まで時間はないだろうと思った俺は駆け足気味に寮まで向かう。

その甲斐あってか、俺が寮に着いた瞬間に門限を知らせる音楽が鳴り響いた。

寮には他クラスの奴らも居るはずなので、見られて愚痴や暴言を吐かれないようにひっそりと自分の部屋に向かう。

誰にも見られず、無事自分の部屋に着き扉の横にあるカードリーダーに渡されたカードをかざそうとしたところで、手が止まる。

「……やべぇ緊張する」

────この扉の先には、セシリアが居る。

そのことを思い出した瞬間、心臓が大きく跳ねカードをかざす手が止まった。

俺の手が止まり、緊張している理由は自分にも容易に想像できた。

……昼休みのことで、セシリアと会うのが恥ずかしいのだ。

なんとも情けない話だが、考えてみて欲しい。

俺はまだ思春期真っ只中の男子。そもそも女子と同室になるだけで緊張するというのに、その女子がただの女子ではなく、とんでもない美少女。その上俺はその少女と知り合いな上に一度抱きついている。

恥ずかしさと緊張が高まっても、仕方ないだろう。

「……あら、一夏さん?」

「ウェッ!?」

扉の向こうからセシリアの声が聞こえ、思わず変な声を出してしまう。

どうやらセシリアは今、俺の目の前にある扉のすぐ向こうに居るらしい。

心臓の鼓動が、更にうるさくなる。

「どうしましたの?入るためのカードキーは持って……おりますわね。何故部屋に入ってこないんですの?」

「い、いやちょっと……アハハ……」

どう言い訳をすればいいか分からず、乾いた笑いだけが出た。

「……さては、昼のことが恥ずかしくて入れなかった、と言ったところでしょうか?」

「ブフォッ!?」

俺の考えていたことを言われ、驚きのあまり吹き出してしまう。

「ちちち違ぇよ!?ここで合ってんのか念入りに確認してただけだ!!!決して!!!昼のことが恥ずかしくて部屋の前で悶々としてた訳では……ア゙!!!!」

大慌てで言い訳を言う俺だが……慌てていたせいで自分から部屋に入れない理由を喋ってしまった。死ぬっきゃないな。うん死のう。

「……ふふっ。そうならそうと言ってくださったら良かったのに」

扉の向こうから、俺の様子が面白かったのか小さな笑い声が聞こえると。

────ガチャッ。

重厚感を感じさせる、ギイィィという音を立てながら目の前の扉が開く。

「────」

そこには。

下着に白いシャツ一枚という、男なら誰しも見るのを憧れそうな格好で────!?

「セセッセセセシリアァ!?」

「?どうかしましたの?」

「なんて格好してんだお前!?寒くねぇのか!?」

心の中で「恥ずかしくねぇのか!?」と付け足しつつそう聞くと、セシリアは眠そうに腕を上に伸ばして大きく欠伸をする。

「……わたくし、寝る時は基本この格好で寝ますの」

「寝巻きにしちゃ色々不味くねぇか!?とっ、とにかく服をもうちょい来てくれ!!!!

こっちが恥ずかしいわ!!!!」

さっきからずっと、シャツからチラチラと下着が透けて見える。

俺は熱くなっている顔を手で覆い、なるべくセシリアのことを見ないようにする。

これ以上見たら、色んな意味でマズイ。特に俺の股間のマイサnゴホッゲホッ!!!!

「嫌ですわ。わたくしこの格好でないと眠れませんので」

恥ずかしさで顔を覆っている俺をおちょくるように、ニヤニヤと笑いながら言ってくるセシリア。

俺は心の中で「チクショウメーッ!!!!!!」と叫びつつ。

「じゃあそのままで良い……とりあえず今日からよろしく……」

セシリアの説得を諦めひたすら耐えることにした。

「ええ。よろしくお願いいたしますわ、一夏さん」

そう挨拶を交わし、部屋に入る。

部屋の中には既に、楯無が用意しただろう俺用の家具やらを詰めたダンボールが山積みにされていた。

そのダンボールの山に気を取られたが、見渡すとそもそも部屋自体が豪華だった。

高級そうな白の布地のベッド、高級そうな冷蔵庫、高級そうなテレビ、高級そうなエトセトラエトセトラ……

「……ん?」

不意に、香ばしい匂いが鼻腔をくすぐってきた。

嗅いだ瞬間に、腹がぐぎゅぅぅぅと鳴り空腹を訴える。

「あら、お腹が空きましたの?一夏さん」

「……恥ずかしながら」

「なら、丁度良いタイミングですわね。わたくし、部屋で料理を作っていましたの。一夏さんも良ければ食べます?」

「食う!!!!」

セシリアの提案に、俺は嬉しさで笑顔を浮かべ食い気味に答える。

するとセシリアは……まるで無邪気な子供を見た時に出るような、小さな笑みを浮かべる。

「分かりましたわ。今から取ってきますので、椅子に座って待っていてくださいまし」

「分かった!!!」

機嫌が良くなった俺は大きめの声で返事をし、木製テーブルの近くにあった椅子に座る。

だが、その際俺はセシリアから放たれた呟きを聞き逃さなかった。

「……ふふっ。一夏さん、まるで子供ですわね」

……正直俺もそう思ってます……飯で喜ぶって本当に子供じゃねぇか……

セシリアの呟きに、チクリと心が痛んだが何も言い返せないので「恥ずかしい……恥ずかしい……」とボソボソ言いながら俯くことしか出来なかった。

しばらく待つと、セシリアが部屋の奥から大きめの皿を持って現れた。

その皿の上には……一口大に切られた野菜が転がっている、美味そうなカレーが乗っていた。

「カレー……美味そう……」

見ているだけで、口の中に唾液が溢れる。

ゴクリ、と溜まった唾を飲み込むとカレーがテーブルの上に置かれる。

スパイシーな匂いが、俺の食欲を駆り立てる。

「美味そうだな……いただきま……あ、悪いセシリア、スプーンってどこにある?」

早速食べようとした俺だったが、スプーンが無いことに気付きセシリアに聞く。

セシリアは顔に笑みを浮かべると、どこからともなくスプーンを取り出す。

……ここまではいい。そう、ここまでは。

セシリアはそのままスプーンでカレーを掬い、それを俺の口へ近づけて────

「一夏さん、あーん♪」

と、楽しげに言ってきた。

……あーん?それってあれだよな?親が赤ん坊に飯食わす時にするあれだよな?

────ゑ?

「……あの、セシリア?俺一人で食えるんだが?」

セシリアの行動に困惑した俺は戸惑いながら言うが、そんな俺の態度が気に食わなかったのかセシリアが目を細めて何かを訴えてくる。

「……あーん」

先程よりトーンが低めの声で、再度口を開くよう催促してくる。

「……あ、あーん」

そんなセシリアから発せられる謎の圧力に負けた俺は、大人しく口を開く。

セシリアは満足げに笑みを浮かべると、カレーが乗ったスプーンを開いている俺の口の中に入れる。

口を閉じると、ゆっくりとスプーンが引き抜かれる。

口の中に入ったカレーを、咀嚼する。

「────うめぇ」

辛くなく、ほのかに甘いルー。食べ応えのある大きめの芋や人参などの野菜。ふっくらとした米。

……何故か、懐かしさを感じる。

これがお袋の味ってやつか……いやいや何言ってんだ俺。セシリアは俺の母さんじゃねぇしそんな歳じゃねぇだろ馬鹿か。

「……満足して貰えたようで、嬉しいですわ」

俺の感想に満足したのか、セシリアが気分良さげな声色で喜び、再びスプーンにカレーを掬い俺の口に近づける。

再び口を開き、口の中に入ったスプーンの上に乗ったカレーを食べる。

謎の懐かしさや、この年であーんしてもらっていること、俺に対して優しい笑みを浮かべるセシリアに対する小っ恥ずかしさなどが影響したせいか、気付けば皿の上には微かなカレールーしかなかった。

「……ご、ごめんなセシリア。カレー食わせてもらって」

食べさせてもらったことに対する恥ずかしさと申し訳なさが、遂に限界まで達した俺はセシリアにそう言いながら頭を下げる。ついでに猛烈に顔が熱い。

「いえいえ。わたくしがしたかったことですので、一夏さんは気にしなくてもよろしいのですわ」

そんな俺の頭を撫でながら、セシリアは優しい笑みを浮かべる。

────心地いい。

セシリアの、細くて滑らかで……暖かい手が俺の頭を撫でる度、燻っていた心が少しづつ晴れてゆく。

それと同時に……もっと撫でて欲しいと思ってしまう。

まるで、この感覚は────

「さて、一夏さんがカレーを食べ終わったことですし、わたくしは皿の片付けをしますわ。いきなりの入学で疲れていると思うので、一夏さんは休んでくださいまし」

セシリアが俺の頭から手を離し、皿を持って席から立ち上がって台所に向かおうと足を動かす。

 

────ズキン。

 

「……っ、あ」

セシリアが手を離した瞬間。胸に痛みが走り、息苦しさが戻ってくる。

しかも、さっきよりかなり苦しい。

痛みと息苦しさが、同時に襲ってくる。

胸を強く抑えても、苦しさが紛れない。

 

────あの温もりから、離れたくない。

 

無意識のうちに、俺の右手は立ったセシリアの服の端をつまんで、その足を止めさせていた。

「……?一夏さん?」

振り返り、セシリアが不思議そうな顔をしながら俺を見る。

「……ほしい」

「?すみませんが、もう少しはっきりと」

「……もっと撫でて、欲しい」

口から、ポロリと言葉が出た。

これが、ただの我儘だということは分かっている。

セシリアが皿を片付けてくれるのに、それを邪魔するのは自分でもどうかと思う。

だが、今はそんなことすら些細なことに感じられるほど、猛烈にセシリアに頭を撫でて欲しかった。

……安心できて、落ち着けるから。

まるで……母親に撫でられているような感じだったから。

そんなセシリアに、俺を落ち着かせて欲しい。痛みを和らげて欲しい。

「……ええ。よろしくてよ」

聞いてもらえるかどうかさえ怪しかった我儘を、セシリアは笑顔で受け止めてくれた。

セシリアはベッドへ向かい、自身のベッドへ座ると俺を手招きで呼ぶ。

招かれた俺はセシリアの元まで歩く。

目の前まで来ると、セシリアが隣に座れと言うようにポンポンとベッドを叩く。

俺はセシリアの隣に座る。

すると突然セシリアが、華奢な腕で俺を抱き寄せて少し強めの力で俺に抱き着きながら頭に手を置き、ゆっくりと撫で始める。

「……よしよし」

俺の耳元で、あやすように囁かれる。

────ああ、心地いい。

全身が、セシリアの……人の温もりに包まれる。

さっきまでの苦痛が、嘘のように消えてゆく。

苦痛の代わりに、絶対的な安心感と幸福感が俺を満たしてゆく。

これはまるで、本当に、母の腕に抱かれているようで……

「……っ」

そんな安心感のせいか、瞼が重くなってきた。

意識が朦朧とし、まともな思考ができない。

俺はそんな眠気に身を任せ、瞼を閉じて眠りにつく。

 

「……おやすみなさい、一夏さん」

 

 

 

セシリアside

「……一夏さん」

IS学園。その寮の一部屋でイギリス国家代表候補生であるわたくしは、隣で眠る少年、織斑一夏の頬を優しく撫でながら呟く。

わたくしの目に映る一夏さんの寝顔は真顔ですが、何かに満足したように見えます。

先程、わたくしは「撫でて欲しい」と苦しげに胸を抑えて息も絶え絶えになっていた一夏さんから言われ、心配になり一夏さんを抱きしめながら撫でて落ち着かせていました。

その甲斐あって、一夏さんは落ち着いたようでぐっすりと眠っている。

 

……一夏さんは、人の温もりや愛情に飢えている。

 

それが、今日わたくしが一夏さんに対して感じたこと。

少し前まで一夏さんは、十年前まで街ぐるみの虐待を受けていていた。

その理由は、優秀な姉や兄と比べ、一夏さんは出来損ないだったからという理不尽な理由だった。

「出来損ない」

「織斑の面汚し」

「要らない存在」

そんな罵倒を受けた一夏さんは、家族や周囲に認められようと必死に……いや、それ以上の努力をしていたのは、最初に一夏さんと出会った時に聞いていたのですが……

わたくしがIS学園に入学することを決め、一夏さんも入学することが分かった時に自身の伝手……わたくしの専属メイドであるチェルシーに頼り、改めて一夏さんの過去を調べたことがある。

 

────結果は、わたくしの予想を遥かに上回った。

 

実の兄からの虐待。姉からの育児放棄。道場での暴力。織斑家でただ一人、一夏に優しかった妹と、一夏に優しかった親友の死。

……正気を保てているのが、奇跡だと思えるほど悲惨を極めていた。

知った当時、わたくしの腹の底からは一夏さんを取り巻く理不尽な環境に対しての怒りが湧き上がり、歯を砕く勢いで食いしばった。

「……これが、人間のやる事ですか……!!!!!」

わたくしは、両親が事故で亡くなるまで溺愛されて育った。故に、愛されるというのがどれだけ嬉しいことかを理解していた。

一夏さんの場合、両親が居らず一夏を大切に思っていたのは妹と親友数人のみだった。

それ故一夏さんは、本来親から与えられるはずの愛情を与えられず、十分に愛されず生きてきた。

────そんな彼を、わたくしが母親代わりになって甘やかそうと……愛そうと決めたのです。

一夏さんが傷付けばそれを慰め、一夏さんの面倒を見、一夏さんに無償の愛を与える。

それが、わたくしがやるべき事だと思います。

 

 

 

 

 

 

────世界に殺された少年に、わたくしが出来る唯一の、手助け。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セシリアとのクラス代表決定戦当日。

一夏はセシリアと戦うために、アリーナへと出る。

そこで、セシリアが展開したISは……

次回、インフィニット・ヴァルヴレイヴ、第四話。

『遭遇スル五』

少女と少年は、同じ力を以て戦う。




『セシリアママ』ってタグ追加しようかなと思ってる今日この頃
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