IS・VVVーインフィニット・ヴァルヴレイヴー 作:蒼京 龍騎
IS・VVV
インフィニット・ヴァルヴレイヴ
プロローグ第三話 抗エル力
束side
「……嘘、でしょ?」
衛生をハッキングし、目の前の画面に映る『黒と赤のIS』を見た私、ISを開発した天才にして天災の篠ノ之束は呟く。
あの機体は……まだ私がISを作り出して間もない頃に、日本の洞窟で偶然見つけた『船』の遺跡を掘っている時に見つけた巨大ロボット、『ヴァルヴレイヴ』のパーツと動力機関である『オリジナルレイブ』と『ミラーレイブ』を拝借して私が作った機体。
その『ヴァルヴレイヴ』とは、高さが22メートルもある巨大な人型の機械。
詳細は調べられなかったけど、それがその船には『六機』あった。
その時の私は、気がトチ狂ってたのかは知らないけどその機体のうち五機を盗み出して、そのパーツのほとんどをサイズを縮めたりしてISに転用しようとした。
……でも、内包されているシステムの正体を知って、それがあまりにも非人道的すぎたから深海へ投棄したはず。
それが、目の前の少年……私の友達の織斑千冬の弟の織斑一夏、いっくんの手に渡っていた。
しかも……一番持って欲しくなかった『オリジナルレイブ』を搭載した機体を持っていて、それを起動までさせていた。
────それは、いっくんがヴァルヴレイヴと『契約』している証拠だった。
その契約とは……ヴァルヴレイヴのパイロットになれる代わりに『人間をやめさせる』もの。
具体的には、異常なまでの再生能力に肉体の異常発達、死亡時に自己蘇生したりと、完全に人からかけ離れた力を得られる。
「……いっくん、君は……やっぱり復讐に走るんだね」
衛生から聞こえたいっくんの言葉が、私の頭の中で何回も再生される。
『許さねぇ……クソ姉貴も……愚兄もクソモップも……こんな世界にしやがったクソ兎も……殺してやる……』
それは、いっくんが寝言で言っていた言葉だ。
だからこそ、確信している。
寝言に出てくるほど、私とあの三人を強く恨んでいる。
「…………」
止めないと。
そう思った私は、まだ他にも投棄したヴァルヴレイヴが無事に残っているかを確認するため捜索を開始した。
────それらが、誰かの手に渡る前に拾うために。
……いっくんの、知り合いの手に渡る前に。
────既に、手遅れだったことに気付かないで。
一夏side
「……ッ!!!」
目が覚める。
視界には、木製の天井。
腹が減って気絶して、起きた時に見た天井。
「……俺は……」
気絶する前に、何をしていたかよく覚えていない。
確か……簪とその姉にクソ姉が白騎士ってのを話してから……いきなり湧いてきた怒りを発散させるために空で刀をぶん回して……そのまま気絶して……
「……だるい」
嫌な記憶が蘇ったせいか、さっきから気分が悪い。
「あら、起きたの?もうちょっと寝てても別に良かったのに」
「……あんたか。何の用だ?」
横から聞こえてくる声の主、簪の姉に肩を回しながら言葉を返す。
「……自己紹介がまだだったわね。私は更識楯無。この家、更識家の当主をやっているわ。
それで、私がここにきた用件は……あなたに」
「IS学園に入ってほしい、だろ?
……嫌だな。学園にはクソ姉もいるし、最近知ったがクソ兄もIS使えることが分かったから、あいつも来るんだろ?そんな地獄に自分から足を突っ込みたくはねぇよ」
簪の姉改め楯無の提案を予測した俺はその提案に拒否を示す。
もし俺がクソ姉とクソ兄に次会う時は……『殺す時』と決めていたこともあるからだ。
「……行けば、合法的に、なんの罪にも問われずに『復讐』できるとしたら?」
「……ッ!?」
楯無の言葉に、思わず立ち上がる。
復讐しても、罪に問われない。見逃される。
「……詳しく聞かせろ」
自然と、言葉が出ていた。
「いいわ。聞いたら、否が応でも入りたくなると思うし」
笑顔を浮かべた楯無が、扇子を広げて口元を隠す。
……扇子には、「食らいついた」と書いてあった。
「────マジか。法を無視できるってどんだけ偉い立場なんだと思ってたら、まさかの暗部だったとは……」
「そうよ、驚いた?」
楯無から話を聞き終えた俺は、目の前で楯無が「びっくり仰天」と書かれた扇子を広げているのを見ながら、脳内で一度楯無が言っていたことを整理することにした。
・更識は日本の暗部として働いている家。
・暗部故、日本に恩を売っているため融通が効く。
・そんな更識家の当主である楯無はIS学園の生徒会長で、学園に対して色々できる。
・それを使って、IS学園に俺を特例で入学させることができる。
・クラスについても、クソ姉とクソ兄、クソモップが居ないクラスに入れることができる。
・クソ三人衆に絡まれた際は、自己防衛のために暴力手段をとっても良い。
・そこで強さを証明出来れば、クソ三人衆に対しての復讐になる。
……一言で言えば、かなり理想的だった。
あのクソ三人衆と別にしてくれるのはありがたいし……こっちから絡みに行く気は毛頭ないが、万が一あっちから絡みに来た時はぶっ飛ばしても文句ナシと来た。
────最高かよ。
「……どうかしら。入ってくれる気にはなった?」
「入ってやろうじゃねぇか、IS学園。あいつらに復讐できるなら、なんだってやってやる。
────鈴とマドカの仇を討てるなら、な……」
手を握りしめて、呟く。
(──やっと、仇が打てるぜ。鈴、マドカ)
「……なら、その前にちょっとテストを受けてみない?」
「……テスト?」
「そうよ。あなたがどれぐらいISを使えるかの、ね」
怪しい笑みを浮かべながら、楯無が俺を手招く。
俺は大人しく楯無に着いていき、しばらくすると。
大きな白い門をくぐった瞬間、真っ白でだだっ広い空間が、俺の目の前に広がった。
「ここであなたのISを改めて見せてちょうだい。あと少し性能テストも兼ねてね」
「……わかった」
俺は楯無の言葉に従って、自分の胸に手を当てる。
そして、その機体の名前を呟く。
「……来い。【火人】」
瞬間、俺の胸から赤い光が溢れ出し、その光が全身に纏わりついて形をなしてゆく。
十秒も経たないうちに、俺の体に赤と黒のカラーリングのISが纏わさった。
「……やっぱり独特ね。そのIS、どこで手に入れたのかしら?」
「俺だってどこで手に入れたか分かんねぇんだよ……これ初めて使ったの俺を攫おうとしてきた奴らをぶっ倒した時で割と最近だし」
言葉を返すと、楯無が幻想的なIS、『霧纏の淑女』を展開し手に持つ大型の槍
「……本気でかかって来なさい。じゃないと私に傷一つ与えられないわよ?」
余裕たっぷりといったような笑顔を浮かべる楯無。
俺はその顔に少しイラッと来て、左腰に付いている刀<ジー・エッジ>を二本、両手でそれぞれを引き抜き、左腕に大型のクローシールド<ストライク・ブレイス>を装着する。
「上等だ。俺だって伊達に最強の不良名乗ってるわけじゃねぇ。
────やってやらぁ!!!!」
叫びながら、足裏から光を放出して浮かび上がる。
楯無を見下ろせるぐらいまで浮かんだ俺は、そこから楯無へ向けて加速する。
(……おかしい。なんでアッチは攻撃してこない?)
そこでふと疑問に思った。
何故か、攻撃してこない。
……もしやだが、無挙動で攻撃出来る武器があるのか?
そう考えていると、接近している俺に向けて楯無がニヤリと笑う。
(……ッ!!!当たりか!!!!)
俺は急いで逆へ進行方向を変えるため足裏を楯無がいる方に向けて加速をかける。
────だが、それがマズかった。
「いきなりで悪いんだけど……この部屋、湿度が高いと思わない?」
「がっ……!?」
なんの前触れも無しに、背に衝撃が走る。
そのせいで体勢を崩してしまい、想定していた向きと別の向き……地面へ加速してしまい頭から突っ込む。
そのまま地面を滑り、部屋の壁に当たったところでようやく加速が止まった。
「……っ、なんだよ今の……!?」
頭を振りながら顔をあげると、部屋に変化が訪れていることに気づいた。
……水が、空中に浮いていた。
冗談でも、比喩でもなく、本当に水が空中に浮いていた。
「これが私の『霧纏の淑女』の力。機体に内蔵してあるナノマシン入りの水を散布して、そのナノマシンに任意のタイミングでエネルギーを送って熱に変え、水を蒸発させることで水蒸気爆発を起こすって武器よ。まぁ、こんな感じの狭い空間でしか役に立たないけどね」
「……ノーモーションでダメージを与えられる武器か。
────クソ厄介だな。特に『こいつ』に関しちゃ……」
言いながら、俺は視界に表示されている『HEAT CAPACITY』と書かれた右のパネルを睨む。
既に数値が5/100を示しているそのパネルは、この【火人】の実質的な稼働可能時間。
この数値は、【火人】が何らかの動作をした場合や、攻撃を受けたりした場合に上昇して、最大値である100に到達すると問答無用でISが強制停止するという厄介な機能。
さっきの楯無の一撃で、一気に数値が5も上がってしまった。
つまり……あと19発喰らえば敗北が確定する。
正直向こうがさっきの技を多く使えないことに期待したいんだが……おそらく無駄な期待だ。
まだ向こうは余裕たっぷり。つまりまだ手はある上にさっきのも多く使えるということだ。
(────駄目だ。勝てねぇなこれ)
どう足掻いても、勝てる気がしない。
接近して格闘戦をしようにも、その間にさっきの攻撃を連続でされたら楯無の攻撃を一発でも喰らえば停止するレベルで数値が上昇する。
遠距離から攻撃しようにも、向こうを一撃で倒せる武装を使わなければ勝てる気がしない。
だが、俺が今持つ遠距離最大火力の<ヴルトガ>でも一発で削り着るのは無理な話だ。オマケに<ヴルトガ>は数値の上昇率が他の武器より圧倒的に高い。だから乱用もしたくない。
……万策尽きた。
────なら、できるだけ抗ってやる。
俺は楯無に勝つことを諦めかけていた心に喝を入れ、左手の<ジー・エッジ>を鞘に戻して右腰からハンドガン型の射撃武装<ボルク・アーム>を取り出す。
右手を体より後ろまで運び<ジー・エッジ>の刃先と左手の<ボルク・アーム>の銃口をそれぞれ楯無へ向けて静かに構える。
「……珍しいわね。銃と剣の合わせ技なんて」
「……ヤケクソだからあまり期待すんな」
「即席でよくやろうと思えるわね……まぁ、期待させてもらうわ」
俺は楯無へ向けて、<ボルク・アーム>を放ちながら接近する。
赤い光の弾丸が楯無へ向けて飛んでいくが、楯無はその弾丸を槍の穂先で弾き飛ばしていく。
「……これは予想通り、だがこれで意識は逸らせているはず。このうちに……」
チラリ、と『HEAT CAPACITY』のパネルに目を向ける。
……既に数値が10/100を示していた。
「チッ、やっぱ射撃武装の上昇率えげつねぇな」
そう文句を漏らしながら、<ボルク・アーム>の引き金を引き続け楯無へ接近してゆく。
「……今っ!!!!」
楯無に二十メートルほど接近した所で、俺は<ジー・エッジ>を鞘に戻して同じく腰から小型の鎌である<フォルド・シックル>を一本取り出し、楯無へ向けて投擲する。
孤を描きながら、<フォルド・シックル>が楯無へ向かってゆく。
「……それで私にダメージを与えられると思ってるのなら間違いよ!!!」
楯無は<ボルク・アーム>の弾丸を弾きながら、<フォルド・シックル>を先程見せた爆発で叩き落とす。
だが、これで<ヴルトガ>を使う隙が出来た。
俺は急いで<ボルク・アーム>の上部に<ジー・エッジ>二本と下部に一本残しておいた<フォルド・シックル>を、ストック部分に<ストライク・ブレイス>を取り付け、<ボルク・アーム>高出力射撃銃剣形態……<ヴルトガ>を起動する。
「喰らいやがれ!!!!」
<ヴルトガ>の銃口を楯無へ向けて、引き金を引く。
<ボルク・アーム>時より大きく眩く輝く赤の弾丸が、楯無へ向けて直進する。
「そんなものッ!!!」
楯無は、先程までと同じように<ヴルトガ>の弾丸を弾こうとする。
────が。
バチィ!!!!と大きな音がなり、楯無の手から槍が弾かれる。
「ッ!?さっきと威力が違う!?」
驚愕している楯無を見て、隙ありと感じた俺は楯無へ向けて加速する。
現在の数値は40/100。<ヴルトガ>の数値上昇率がえげつないことを改めて実感する。
<ヴルトガ>の上部に付いている<ジー・エッジ>の刃先を、楯無へ向けて突き出す。
「これで、終わりだ!!!」
<ジー・エッジ>の刃先が楯無のISの脚部に突き刺さる。
そのまま、俺は<ヴルトガ>の引き金を引く。
<ヴルトガ>の弾丸が、赤い閃光と共に楯無のSEを五割ほど持っていく。
……勝った!!!
そう確信した俺は、<ヴルトガ>の引き金をもう一度引……こうとした。
ドォン!!!!
「ぐあっ!?」
全身に連続して衝撃が走り、攻撃が中断される。
それと同時に、【火人】から大きなフシュゥゥゥという排気音が鳴り、機体の各所が赤くなり動かせなくなる。
……100/100。稼働限界だ。
「……勝負あり、かしら」
楯無が、苦笑を浮かべながら俺に手を差し出してくる。
「……ああ、俺の負けだ」
俺はISを解除してから楯無の手を取り起き上がる。
「それにしても……凄いわね。私にここまでダメージを与えられたのはあなたが初めてよ?
しかもISに乗った日数が一ヶ月以内の状態でね」
楯無がやけに眩しい笑顔を浮かべながら、俺の顔を見る。
「……褒められた気がしねぇ……」
「純粋に褒めてるのよ?」
言いながら、楯無が俺の頭を撫でてくる。
「ちょっ!?おまっ、何しやがる!?」
いきなり頭を撫でられたことに驚き慌ててしまい、俺は思わずその手を払ってしまう。
「なによー、せっかく学園最強が撫でてあげようとしたのにー」
楯無が気分を悪くしたのかムスッと頬を膨らませる。
その様子に、思わず心臓がドキリと跳ねた気がした。
「わ、悪かった……それで、テストの結果はどうだ?」
「文句なしの100点……いえ、百点満点中二百点よ。満足以上の結果だったわ」
「……マジか」
俺負けたのに、そこまでのハイスコアを付けるのか……
と疑問に思っていると、楯無が壁を眺めながら何かを考えるように顎に手を当てているのは見えた。
「……一夏くん……本当にISを使った期間一ヶ月前未満?それにしては動きが良すぎたわ。武装も適材適所で、効率よく運用していたようだし……まるで数年ずっと使い続けていたみたいな……」
「おーい、楯無さーん」
「な、なに!?」
「この後どうするんだ?俺は何をすればいい?」
自分も世界に入り込んでしまっていた楯無を呼び戻し、俺はこの後すべきことを聞く。
「……そうね……とりあえずこれ全部覚えて。そうじゃないと後々大変な目に逢うわよ?」
楯無が、俺にやけに分厚い本を寄越してくる。
その本の表紙には、IS学園入学前参考書と書かれていたのだが……厚すぎる。漢字辞典よりも下手をすれば厚い。
これを全部って……俺を殺す気か?
「ああ、分からないことがあったら簪ちゃんに聞くと良いわ。あの子教えるの上手いし」
「……なんか……すまねぇな色々と」
ここまで協力してくれると、流石に申し訳なくなってくる。
「気にしなくていいわ」
楯無はそう言うと、真っ白な空間から立ち去る。
それを見送った俺も、「……頑張るか」と呟いてその部屋を後にする。
簪side
「す、凄い……お姉ちゃんにあそこまでダメージを与えた人見たことない……!!!!」
私は、先程ひっそりと見ていた戦闘を思い返して興奮していた。
私の姉は、IS学園の生徒の中で最強の存在だ。
私には手の届かないぐらい、高い場所にいる。
そんな姉に、近い場所に居る彼……織斑一夏を見て私は興奮していた。
自分の憧れが、最強の姉に食らいつける程に強いという事実に、歓喜していた。
それと同時に、私の心の中では黒い感情が浮かび上がっていた。
……一夏さんと同じ『力』が欲しい。
今日の朝見たあの文字と座標。あれは恐らくだけど……一夏さんが持つ『ヴァルヴレイヴ』の同系統機を私が使えることを示していて、その機体がある場所を表していたんだと思う。
当然、私はその場所へ行きたいけど……国家代表候補生だから易々とISを展開する訳にはいかない。
姉に頼もうにも、絶対に拒否される。
私のことを大切に思ってくれている姉は、危険なことはさせてくれない。
なら……!!!
「……急がなきゃ」
私は頭の中に浮かんだ人の元へ、駆け足で向かっていった。
次回予告
楯無との試合で敗北した一夏。そんな彼の元に楯無の妹である簪が訪れ勉強を教える代わりにある場所へ連れて行って欲しいと頼まれる。
一夏は簪の願いを聞いて、その座標へ『ヴァルヴレイヴ』を纏い向かう。
そこで、一夏と簪が見たものは……
次回、インフィニット・ヴァルヴレイヴ、プロローグ第四話。
『ソノ名ハ革命機』
その時、少女は革命する。