IS・VVVーインフィニット・ヴァルヴレイヴー 作:蒼京 龍騎
筆が乗ったのでいつもより長いです。
第一話 再会、流レル涙
IS・VVV
インフィニット・ヴァルヴレイヴ
本編第一話 再会、流レル涙
一夏side
「……遂に来ちまったな、ここに」
目の前にそびえる、普通の校舎と比べ何倍も大きい校舎を見上げて、俺は呟く。
──今日は、IS学園の入学式。
今日から俺は……IS学園一年四組の学生になる。
緊張と高揚感が同時に襲ってきて、うるさく感じるほど心臓が鳴る。
ふと、先に行っている簪が教室で待っていることを思い出して、俺は早めに玄関まで向かい、手早く靴を履き替え────ようとしたのだが。
「……マジかよ」
自分の靴箱から酷い悪臭が漂ってくる。
しかも、靴箱には『出来損ない』『学校来るな』『面汚し』『死ね』などの罵詈雑言がマジックペンのようなもので書かれていた。
嫌な予感を感じながら、試しに靴箱を開けると……悪臭の原因だと思われる魚の皮やら腐った果物の皮などが入れられていた。
「……クソが!!!!!」
その光景は、俺に過去のことを思い出させイライラを加速させる。
自分の靴箱を、形が変わるほどの勢いで殴ってから、外靴を鞄の中にしまい上履きを履いて教室へと向かう。
その際、クソ姉とクソ兄が居る一年一組を通過したのだが、その際。
「あ、今面汚しが通過した」
「うわー、汚いわー。ゴミの匂いがここからでも漂ってくるわー」
「千冬様の汚点が堂々と学校を歩かないで欲しいね」
と言いながら、豚のように笑う女子共が見えたので、俺は「顔は覚えた。機会があれば俺直々にぶっ潰すか」と怒りを込めながら呟いて教室を通過する。
その後、二組と三組の方も通過したのだが、同じような事を言われたので段々と心配になってきた。
……四組でもこんな対応されるのでは?
そうなったら、入学早々で悪いが暴力沙汰を引き起こしそうだ。
心配になりながらも、遂に四組に入るための扉の前に来てしまった。
「──まずは私から自己紹介するわね。私はこのクラスの担任になったスコール・ミューゼルよ。分からないことがあったらいつでも言いなさい。分かるまで教えてあげるわ」
教室の中から、スコール先生の声が聞こえてくる。
それに返事を返すように、教室の中にいる生徒らから「よろしくお願いします!!」という声が聞こえた。
「今日はみんなも知っての通り、急遽IS学園に入ることになった男子……織斑一夏くんが来るわ。ちょうど今、教室の前に待機待機しているから、さっそく入ってきてもらおうかしら」
────マジかよ。
心の準備をしようとした瞬間にこれである。神はラスベガスで遊んでいるらしい。
「織斑くん、入ってきてちょうだい」
スコール先生の指示に従い、恐る恐る扉を開けて教室に────
「────え」
入ろうとしたのだが、奥の方の、簪の席の近くに……見覚えのある少女が見えて、体の動きが止まる。
特徴的なロールがかかった金の髪。貴族のような美しさと清楚さを感じさせる雰囲気。
──俺は、この少女に助けられた。
少女の方も俺を見ていて、同じように体の動きが止まっていた。
まるで、信じられないものでも見ているかのように。
「……セシ、リア?」
「……一夏、さん?」
俺と少女の、微かな声が教室に響く。
見つめあったまま、しばらく動けずにいるとスコール先生が大きく咳き込んで場の雰囲気を戻そうとする。
「ごほん。……織斑くん。オルコットさん。知り合いと会えて嬉しいのは分かるけど、喜ぶのは後にしてちょうだい。今はとりあえず、自己紹介」
「……はい!!!」
少女と出逢えた嬉しさからか、先程までの心配はどこかへ消え去り、気分が高揚し、高ぶる。
スコール先生に大きく返事を返してから、教壇の前に立ち大きめの声で自己紹介をする。
「織斑一夏だ。好きなものは主に喧嘩で、嫌いなのは姉、兄と俺を比べるやつ、女尊男卑に染まっている奴だ。あと俺は更識重工の企業専属パイロットをしている。今後、仲良くしてくれると助かる」
楯無から、言うように指示された部分を含めた自己紹介が終わると、教室から拍手と、紹介に対する返事が聞こえてくる。
そのどれもが、『仲良くしようね』といったもので、俺は心の底から安堵する。
……このクラスでは、上手くやっていけそうだ。
「それじゃあ席は……あら、ちょうどオルコットさんの隣の席が空いているわね。そこに座ってちょうだい」
「え!?マ……はい!!!」
思わず「え!?マジ!?」と言いそうになったがどうにか押さえ込み、大きめの声で返事を返し、自分の席まで向かう。
席に着くと、早速隣に居る俺の恩人、セシリア・オルコットが俺に小さな紙を差し出してくる。
『休み時間ではあまり話せませんので、昼休みにたくさん話しましょう?』
紙にはそう書いてあり、俺はセシリアに向けて親指を立て、オーケーと小声で言う。
セシリアは俺に向かって大きく笑顔を浮かべた後、スコール先生の話を聞くため黒板に顔を向ける。
俺もスコール先生の話を聞くため顔を黒板の方に向けるのだが……笑顔を向けられた俺の心臓は大きく鳴りっぱなしで、正直集中できる気がしない。
────セシリア……美人に成長しすぎだろおい、笑顔眩しすぎるわ……
先程セシリアが見せた笑顔が頭から離れず、口元が自然と緩み心臓の音が更に大きくなる。
胸を抑え、頭をブンブンと振って、これから始まる授業に向けての心構えをきっちりとする。
「それじゃあ、今日はここでSHRを終えてさっそく授業に入るわ。まず今日最初の授業は……IS基礎理論の授業よ。全員教科書の2ページ目を────」
さて、授業一日目だ。真面目に頑張ろう。
「────ふぅ。どうにか着いていけそうだ」
事前に勉強していたこともあり、授業には問題なくついていけそうだ。
まぁ、ついていけなかったら先生か簪に聞くだけだけどな。
隣を見ると、セシリアはスコール先生の言っていた重要そうな部分をメモ帳のような小さな紙に書いている。
俺もセシリアと同じように、先生の言っていたことを纏めようとメモ帳を取り出すと。
ガララ、と教室の扉が音を立てて開いた。
先生早めに来たのか、ありがたい。と思い顔を上げると。
「……嘘だろ?」
入ってきたのは、スコール先生ではなく。
──俺の忌み嫌う人物の一人である、篠ノ乃箒……クソモップが教室に入ってきていた。
何の用だよ……さっさと帰ってくれねぇかな……
そう思いながら、奴の姿を見たくなかったので素早く視線をメモ帳に向け、先生の言葉を思い出しながらメモを始める。
「おい、ちょっといいか」
俺のすぐ前の方から、クソモップの声が聞こえるが無視してメモを取り続ける。
「おい一夏!!!聞いているのか!?」
俺の名前出してきたけど無視無視。こんなクソモップ無視安定。
……と、考えていた時期が、俺にもありました。
ビュオン!!!と、かなり大きめの風切り音が聞こえたので、本能的に腕を上にあげて防御の構えを取る。
すると、腕に衝撃が走った直後に、バキィ!!と何かが折れる音がした。
「……あ、昔お前が俺をいたぶる時に使ってた木刀じゃねぇか。懐かしいなオイ」
顔を上げてクソモップを見ると、顔が青ざめており、手に木刀を持っているがその先が折れて無くなっている。
その先は俺の机の上に落ちており、乾いた血の跡と膿がこびりついたような黄色い汚れがあり、数年前にクソ兄と共に俺をいたぶった時に使っていたもので、俺が防御した際折れたのだと理解した。
それを見ると、クソモップに対して自然と怒りが込み上げてくる。
「勉強の邪魔すんじゃねーよ。とっとと自分の教室に帰れ」
怒気を込めた声で、クソモップを脅す。
「私の声に反応しないお前が悪いのに、なんだその態度は!!!」
えー……ちょっと待て。なんかこいつ本格的に終わってきてねぇか?
自分は一切悪くない、といった、以前よりもありえないほど悪化しているクソモップの態度に、呆れてため息が出る。
「……それでも、教室で木刀振るかフツー。あとお前に反応しねぇのはお前と話したくないから。ってな訳で帰れ」
「なんだと!?話したくないとはどういうことだ!?」
────は?こいつまさか……自分でやったこと覚えてない?
プチン、と俺の中で何かが切れ、気付けば俺はクソモップの首元を右手で掴み上げ、左手に【火人】を展開し<ハンド・レイ>の照準をクソモップに向けて構えていた。
「……テメェ、自分でやった事を覚えてねぇクセにノコノコ現れるとは……いい度胸だなァ!?ア゙ア゙!?」
<ハンド・レイ>の照射部分を、クソモップの顔面に押し付ける。
かなり強めの力で押し付けていたらしく、クソモップが痛みに苦しむように顔を歪める。
「一夏さん!!駄目です!!!」
簪からの叫び声が聞こえたが、俺は気にせず手の甲に力を込めて<ハンド・レイ>をクソモップに照射しようとする。
……だが。
「駄目ですわよ。一夏さん」
その声と共に、細い腕が俺の左腕に触れる。
「……セシリア」
見ると、隣に座っていたセシリアがいつの間にか立ち上がっており、とても穏やかな顔で<ハンド・レイ>を照射しようとしている俺の左腕を、その腕で優しく触れてくる。
「以前一夏さんからその女の悪行は聞いて、わたくしも心底その女を殺してやりたいところですが、今殺すのは駄目ですわ。やりたいことが、できなくなりますわよ」
「……っ」
セシリアの一声で、我に返る。
そうだ。今ここでこいつを殺せば、俺はムショ行き。ISを没収されて二度と復讐が出来なくなる。
────敵討ちが、出来なくなる。
冷静になった俺は、クソモップを投げ捨てるようにして手を離し、ISを解除する。
「……すまねぇ。セシリア、簪」
申し訳なくなり、二人に向かって頭を下げる。
「気にしないでくださいまし。わたくしも激情に駆られて動いてしまうことは、よくありますので。それよりも──」
「一夏さんは悪くないです。悪いのは──」
二人は俺に向かってはにかんだ直後、床に倒れているクソモップをギロリと睨む。
「────いつまでそこに居ますの?学習の邪魔なのでとっとと教室へと戻ってくれませんこと?」
「────おい、そこのモップ。勉強の邪魔だし、クラスの皆からしたら存在が邪魔。とっとと帰って」
冷や汗が浮かんでくるほどの殺気が二人から発せられ、流石に帰ってくれるだろうと思っていたら、その予想通りクソモップは負け惜しみのように二人を睨み返すと足早に教室から去っていった。
それと入れ替わるように、スコール先生が出ていったクソモップに疑問の表情を浮かべながら教室に入ってくる。
「……?何があったのかしら……まぁいいわ。あの子問題児だし、気にするだけ時間の無駄ね。
──さて、休憩は終わりよ。二時間目の授業を始めるわ。全員着席」
スコール先生の合図と共に、二時間目の授業が始まる。
「それじゃあ二時間目は……っと、そういえば決めなきゃいけないことがあったわね。
来週あるクラス代表戦に向けて、このクラスの代表を決めたいんだけど立候補したい人は居るかしら?居なかったら他薦でもいいわ」
思い出したように、スコール先生が手をポンと叩いて言う。
スコール先生が言っているクラス代表戦とは、学年毎にクラスの代表……学級長が出場し一対一でISを使い戦うというものだ。
このクラス代表戦は、そのクラスの力量を測ると同時に生徒らのやる気を出させるという目的の元開催される。
────やる気のほうは、優勝したクラスには半年間学食のデザート食べ放題権を進呈する、という女子なら誰もが食いつくであろうものであるが。俺はデザートなんて心底どうでもいいけどな。
「はい、わたくしが立候補いたしますわ」
ゆっくりと手を上げたセシリアが、堂々と言う。
自信ありげで、自身の実力を一切疑っていないその様は、まさに貴族だった。
「分かったわ。とりあえずオルコットさんが立候補したけど、他には居ないかしら」
セシリアならクラス代表に相応しい、と思った俺は、他薦をする気も立候補する気も無いので黙秘を貫くことにする。
────が。
「すみません、先程の言葉に不足がありました。
────わたくしは自薦すると共に、織斑一夏さんを推薦しますわ」
「……へ?」
セシリアが再び手を上げると、俺のことを推薦してきたのだ。
「……ってオイ!?なんで俺が!?お前の方が良いだろ絶対!!!!学級長に相応しいのはセシリアだろ!!!!」
思わず席から立ち上がり、叫んでしまう。
なぜ俺を推薦したのか分からない。俺より、セシリアの方が絶対相応しいのに。
「先程聞いた話では、一夏さんは更識重工に所属していると聞きました。あそこのパイロットは熟練揃い。そこに居るということは、必然的に一夏さんは熟練者ということだと考えまして、推薦致しましたわ」
「いやそれでも、だ!!!性格的にはお前の方が良いだろ!!!俺なんかが代表やってみろ!?すぐさま不良クラスって異名が付くぞ!?セシリアならお淑やかだしクラスのイメージも良くなるだろ!!!」
セシリアの言葉にはぐうの音も出なかった(実際に俺は専用機持ちの更識重工のパイロット全員にギリギリ勝っている)が、どうにか言葉を探して抵抗する。
「いえ、それは違いますわ。クラス代表戦はクラスの実力を測定するもの。それなら一夏さんもクラスを代表して出場するには相応しいかと」
「待て、考え直せ!!!あ、そうだクラス代表って事は仕事もあるって事だよな!?俺サボる自信あるぞ!!!」
「一夏さんに限ってそれは有り得ませんわ」
「言い切ったな!?言い切りやがったなコンチクショウ!!!!」
もう自分でも何をどう言っているのかさえ分からなくなるほど反論した頃、そんな状況を見かねたスコール先生がため息をつきながら口を開く。
「はいはい、二人とも喧嘩はそこまでよ。このままじゃいつまでたっても終わらなさそうだし、ここは……ISを使った勝負で決めるのはどうかしら?」
スコール先生の言葉に、俺とセシリアの眉がぴくりと動く。
────いいじゃねぇか。勝負で物事を決めんのは、正直好きだ。
「……いいじゃないか。なぁ?セシリア、勝負で決めようぜ。どっちがクラス代表に相応しいかを、な」
笑みを浮かべながら言うと、セシリアも同じく顔に笑みを浮かべる。
「ええ。そうした方が、お互いに実力が知れて良いですわ。
────言っておきますけど、クラス代表をやりたくないからといってわざと手を抜いたりしたら、クラス代表を押し付けますわよ」
セシリアが、脅すように声を低くして言ってきたので、俺は苦笑する。
「んな事するわけねぇだろ、これは真剣勝負だ。それぐらい弁えてるっつーの」
「決まったわね。それじゃあ真剣勝負ってことだから、対策ができないよう試合は早めに……明日の一、二時間目を使って行うわ。異論は……ないわね。それじゃあ授業を再開するわ」
スコール先生が話を纏め、パンパンと二回手を叩き授業を再開する。
俺も席に座り、閉じていた教科書を開いて授業の準備を済ませるとセシリアの方をちらりと見て、誰にも聞こえない声で呟く。
────俺、絶対負けねぇからな、セシリア。
午前の授業が終わり、昼休み。
授業が終わるとすぐにセシリアに手招きされ、俺はセシリアの後ろに着いて歩くと、無人の屋上まで連れてこられる。
「……あー、その、なんだ。今更だが、久しぶりだな、セシリア」
俺に背を向け、無言で立っているセシリアに声をかける。
連れてこられたところまではいいものの、着いてからセシリアは微動だにしないのだ。
その理由が分からず、とりあえず声をかけてみたがピクリとも動かない。
ただ、屋上に吹く風がセシリアの髪と服を揺らしている。
……どうすりゃいいんだ、この状況……
そう考えていると、セシリアがゆっくりと俺の方に振り返り……いきなり抱きついてきた。
「……は!?おま、セセセッセ、セシリア!?」
いきなり抱きつかれたので、動揺しまくってしまう。
少し前にも言ったが、セシリアは俺から見てかなり美人の部類に入る。
そんな女性にいきなり抱きつかれれば、当然こうなるわけで……
あっやべぇめっちゃいい匂い……落ち着く……
「……心配、しましたわ……っ」
「────っ」
セシリアが、泣いているのか鼻声で言い、俺の背に回している腕の力を強める。
────心配。
その言葉が、酷く俺の心に刺さり、じんわりと暖かくする。
「失踪したと聞いた時は……っ、下衆共に……殺されたのかと……っ」
まるで、俺の体温を味わうように……俺が生きていることを確かめるように、ぎゅうううっと抱きしめてくる。
セシリアの鼓動が、俺の胸から感じられる。
……誰かに抱きしめられたのは、いつぶりだろうか。
確か……白騎士事件の前の日に、マドカに「お兄ちゃーん!!!」って言われながら抱きつかれた時以来か。
久しぶりに感じる人の温もりに、思わず泣きそうになってしまう。
────いや。どうやら俺は既に泣いているらしい。
……視界が滲んでいる。鼻水も出ている。
「……心配かけてごめんなっ……セシリアぁ……っ」
感極まって、俺もセシリアに抱きつく。
セシリアの温もりを味わうように、力一杯抱きしめる。
「本当ですわ……っ、わたくしがっ、どれほど心配したと……っ」
「ごめんなっ……ごめんなぁっ……」
お互いに、お互いの温もりを感じる。
そのまましばらく抱き合っていたのだが、急に我に返って恥ずかしくなり、俺の方から手を離すとセシリアは名残惜しそうな顔をした後に手と体を離す。
「……本当に久しぶりだな。一回目のモンド・グロッソから会えてねぇし」
「ええ。本当に久しぶりですわ、一夏さん」
赤くなった目を擦り、セシリアが微笑む。
「……それで、今まで一体どこに居ましたの?わたくしの方でも探りを入れたのですが、一切見つからなかったのですが……」
え、まじ?セシリア探り入れてくれてたのか……空き家で隠れてたのが災いしたなこりゃ。
「えーと……実はかくかくしかじか……ってわけだ」
俺は今までの経緯を説明すると、セシリアは驚いたように口を開いて固まる。
「わたくしの知らぬ間にそんなことが……一夏さんが不良のリーダー『辻風の黒銀』……
────ふふっ」
セシリアが、先程説明した俺の異名がおかしいといった様子で小さく笑う。
「んだよ、俺が不良のリーダーなのがそんなにおかしいかよ……まぁあの頃めっちゃ荒れてて不良だったのは否定できねぇけどよ」
「いえ、一夏さんが変われて良かったと思いまして。でも……変わった先が不良というのが予想外すぎて……ふふっ」
「笑うなぁ!!!!頼むから笑わないでくれぇ!!!!これは成り行きなんだぁ!!!!」
セシリアの笑いに対して、悲痛な叫び声を上げる俺。
その声とは裏腹に、俺の心は楽しさで満たされてゆく。
──ああ。セシリアとの会話が楽しい。
──セシリアと一緒に居れるのが嬉しい。
──セシリアと……生きて会えているのが嬉しい。
────ああ。今の俺は、とても幸せだ。
箒side
「なんだ!?あの女は!?」
IS学園、屋上への入口。
そこで、屋上で抱き合っている二人の少年少女をひっそり覗いて睨むポニーテールの少女がいた。
少女の名は篠ノ乃箒。世界を今の状態に陥れた張本人、篠ノ乃束の妹である。
「一夏……私がいながら、なぜあんな阿婆擦れと……何故だ」
そんな少女が睨む先には、世界で二人目に発見されたISの男性パイロットであり、箒の幼馴染である織斑一夏と、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットが抱き合っている。
ここだけの話だが、篠ノ乃箒は織斑一夏に好意を現在進行形で寄せている。
小学生の頃、剣道で無類の強さを見せていた箒は、クラスから男女と呼ばれ虐められていたのだが、そんな箒を助けたのが一夏なのだ。
それ故に、箒は一夏に惚れ、距離を縮めた。
箒が通っている道場にも兄弟揃って通っているということで、その道場で一夏の兄である百秋と共に一夏を強くしようと鍛えた。
強くなってもらいたいという一心で、一夏に厳しく接したが一夏は真面目に取り組んでいても一向に強くならなかった。
それ故に、箒は更に厳しい訓練をしようとした矢先、政府の『要人保護プログラム』によって地元を離れることになったのだ。
それで、一夏がIS学園に来ると聞いた時は、離れ離れになってから久しぶりに再会できると、箒は内心嬉しさで満たされていたが……今日、その考えは打ち砕かれた。
箒が一夏のいる教室まで足を運び、声をかけても無反応を貫いた上仕方無しと振り下ろした木刀を受け止めた後に……「お前と喋りたくない」と言ったのだ。
「……さては、あの阿婆擦れが一夏を……!!!!」
そこで、箒の頭に一つの考えが浮かぶ。
── 一夏がおかしくなったのは、あの阿婆擦れのせいだ。
そうでなければ、一夏があの女と親しくしているはずがない。と。
「一夏……私があの阿婆擦れから助けてやる……!!!!」
大きな勘違いをしたまま、箒は屋上から去る。
だが、この時の箒は知らない。
一夏が箒を助けたのは、好きだったから、気になっていた等の恋愛的な理由によるものでは無い。
ましてや、正義の心に従って助けた訳でも無い。
……一夏が箒を助けたのは、単なる
セシリアと再会を果たした一夏。
授業が終わり、放課後になると知らない女達からアリーナに呼びつけられる。
着いて行った先では、一夏の最も憎む存在が……
次回、インフィニット・ヴァルヴレイヴ、本編第二話。
『怒リ、外レル制限』
その時、少年は炎の如く燃え盛る。