アカメが斬るに転生した   作:ユウタロス

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現在、この作品に登場させるオリジナル帝具を募集しています。詳しくは活動報告にて。

今回はきりの良い所で切ったので、少し短めです。

と言う訳で、第3話です


第3話 とっても美味しいですよ?

「おはようございます」

『おはようございますッ!!』

「違う。ハキハキしろとは言ったが、叫べとは言っていない。それと、お辞儀の角度は45度だ。頭を下げれば良いと言うものでは無いからな」

 

 帝都、チョウリの屋敷。その内の広めの一室にソウと3人の少女達がいた。少女達は黒のワンピースに純白のエプロンを着用、頭には白いカチューシャを着けており、ソウと共に発声練習をしていた。

 

 黒いワンピース、白いエプロンとカチューシャ。ここまで言えば誰にでも分かるであろう。古代ローマの時代から存在し、19世紀後半から20世紀初頭のイギリスにおいて最盛期を迎えた至高の職業―――メイドである。

 

 加えて言うならば、ワンピースは襟付き長袖のロングスカートで、襟は白。エプロンの帯は背中で交差していないリボン結びで、結び目は綺麗な四角形。片方の紐を少し長目にとって、左右にずらすことなくリボンの長さを整えている。

 ペチコートを履いている為、スカートの裾からは少しだけフリルが見えている。外からは分からないが、ドロワーズと黒いオーバーニーソックスでしっかりと素肌を隠しており、履物は黒の編み上げブーツ。

 

 古式奥ゆかしい、ヴィクトリアンメイドである。

 

 これは屋敷における女性使用人の制服であり、『ミニスカノースリーブホルターネックメイド服』を制服にしようとしたチョウリ並びに護衛隊員達と、『清楚で慎ましいメイド服の方が素晴らしい』と主張したソウ及び女性使用人達が数時間に及ぶ激論を交わし、危うくリアルファイトに発展しそうになった末に決定した物である。

 

 鬼軍曹のようにビシビシと少女達を扱いていくソウ。ようやく休憩に入った頃には、少女達はヘロヘロになっていた。ソウが部屋から出ていくと、授業を受けていた少女達は、はぁ…と肩の力を抜いて椅子にもたれ掛かる。

 

「あうぅ〜、難しいね〜…」

 

「45度ってなんだよ…細か過ぎるだろ…」

 

 頭から湯気を出しながらセミロングヘアとショートヘアの少女がぼやくと、おかっぱ頭の少女がそれを窘める。

 

「エア、ファル。これらの作法は上流階級の間ではごく一般的なものです。言わば常識ですよ?」

 

「う〜…そうだけどさぁ…ルナは頭いいから覚えるの簡単だろうけどさぁ…」

 

「私達、そんなに頭良くないもん……」

 

 セミロングとショートの少女――エアとファルがそう言ってむくれる。おかっぱの少女――ルナはそれを見て溜息をつくと、おもむろに口を開く。

 

「と言うか、助け出してもらった挙句に、衣食住にお勉強とお仕事まで面倒見て頂いてるんですよ? 何が何でも、モノにしない訳にはいかないでしょう。ソウ様にご迷惑をお掛けするつもりですか?」

 

「「はうっ…!」」

 

 ルナの正論に、エアとファルは揃って苦い顔をする。タダでさえ世話になりっぱなしなのに、更に迷惑をかけて平気でいられる程2人の神経は図太く無いのである……もっとも、雇っているのはチョウリなので、失敗した際の迷惑はソウではなくチョウリにかかるのだが。

 

「…はぁ。しょうがない、気合い入れて覚えるか!」

 

「うん! ソウ様のお役に立てる様に頑張ろう!」

 

 2人はやる気を復活させ、ソウが一晩で作った、前世のありとあらゆるメイドの技能を抜粋・濃縮した“ぼくのかんがえたさいきょうメイド製造機”、『メイド道〜コレで貴女も立派なヴィクトリアンメイド〜』を片手に特訓を再開する。

 

 それから少し経った頃、エプロンを着けたソウが扉を開ける。

 

「昼食が出来たぞ。手洗って来い」

 

『えっ!?』

 

 それを聞いた瞬間、3人の脳裏には数日前に盗賊の砦でソウが振る舞ったシチューの味が浮かぶ。

 

「? なんだ、どうした?」

 

「え、えっと、ご主人様が作ってくれたんですか?」

 

 驚いた表情を浮かべる三人に、どうしたのか尋ねるソウ。そんなソウにおずおずと尋ねるのはエア。

 

「作り置きだがな。それと、ご主人は俺じゃなくてオッサンだぞ。まあ、飯は嫌なら無理に食べる必要は…」

 

「とんでもございません! 喜んで頂きます!」

 

 ソウの言葉を食い気味に否定するファル。

 

「分かった。洗面所は2つ隣の部屋だ、サッサと洗って来い」

 

 食堂に向かったソウを見送りながら、3人は一瞬で1箇所に集合して話し合いを始める。

 

「聞きましたか? 私の聞き違いじゃありませんよね?」

 

「うん、確かに言ってた! 作り置きだけど『手料理』って!」

 

「やっば、アタシちょーテンション上がってきたんだけど!」

 

 この3人が暮らしていたのは、宿屋と道具屋しか無いような貧しい村。帝都では普通にあるような物でも全く食べたことが無い、なんて物は大量にある。ソウが作ったシチューもそうだ。 

 

 故に3人は、一体どんな料理が出るのかと期待に胸を膨らませていた。無論、大好きなソウの手料理ならば残すつもりは微塵も無いが。

 

 3人は埃をたてない様にパタパタと洗面所に向かい、丁寧に手を洗ってから食堂に向かうのだった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 昼食を食べながらソウは思っていた。何故だろう、料理の味が全くしない…と。

 

「……」

「……」

「……」

「……」

 

 カチャカチャとスプーンが皿を擦る以外、一切の物音はせず。皆、ひたすらに無言でカレーを食べていた。

 

「……その、なんだ。美味しく無いなら、無理に食べなくてもいいぞ…?」

 

 耐え切れなくなったソウが控え目に言うと、ニッコリと笑ったスピアがソウに顔を向ける。

 

「いえいえ、とっても美味しいですよ? …まあ、ソウさんと2人っきりだったらもっと美味しく食べられたんですけど、ね?」

 

 スピアは『ね?』の辺りでエア、ファル、ルナの3人を見る。その表情はとても可愛らしかったが、眼だけは笑っていなかった。

 

 花のような笑顔とは裏腹な、底なし沼のような眼にソウとエア、ファルは全身に鳥肌が立つが、ルナは真正面から同じような笑みで睨み返す。

 

「スピア様。このお料理はソウ様が私達のために(・・・・・・)作って下さったモノですので、スピア様が無理をしてお食べになる必要はありませんよ?」

 

「……へぇ?」

 

 ジロリと睨み合ったかと思うと、互いの額と額を突き合わせ、一歩も引く事無く至近距離で睨み合う2人。互いの目と目の距離はおよそ2センチ、近過ぎて逆に見えないのではなかろうか。

 

「あ、俺宮殿で修行して来るから」

 

 スピアとルナのメンチの切り合いに耐えられなくなったソウはカレーを掻き込んで早口に言い捨てると、脇目も振らずに駆け出した。無論、食器を自分で流しに運んでからだが。

 

 背後からファルの絶望と怨鎖の叫び声が聞こえてくるが、決して振り返らずに走り続ける。

 

 充てがわれている自室に戻り、40秒で装備と財布を回収すると、そのまま窓から飛び降りる。

 

「うおっ、隊長!?」

「ちょ、何してんですか!?」

 

 巡回中だった護衛隊員達の驚愕の声にも耳を貸さず、全力で屋敷の庭を駆け抜ける。その途中、食堂の窓から涙目で『行ってらっしゃいませ』と呟いているエアを目撃し、罪悪感に押し潰されそうになる。

 

「……すまない…ッ!」

 

 “帰りにお土産を買ってくるから…”免罪符の様にその言葉を呟きながら、ソウは一目散に宮殿へと疾走するのであった。

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 尊い犠牲(エアとファル)によって危険区域(屋敷)から脱出したソウ。チョウリがソウの為にと用意しておいた練兵場の使用許可証を衛兵に見せ、ツカツカと宮殿内の通路を歩いていた。

 

「―――貴様、ココで何をしている」

 

 不意に、背後から声をかけられる。

 

 振り向いたソウの前にいたのは、仮面を付けた青髪の女。重心が非常に安定しており、その立ち振る舞いに一切の隙は見受けられない。敵意こそ感じられないが、本能がこの仮面の女は危険だと警鐘を鳴らしている。

 

「…俺は練兵場で鍛錬をしようと……ッ!?」

 

 警戒しながらも答えようとした瞬間に仮面の女が肉薄、ソウに強烈な前蹴りを放つ。しかし、ソウは不意打ち気味に放たれた蹴りをいなして回避。反転して、お返しとばかりに女の顔面に鋭い後ろ蹴りを叩き込んだ。

 

「ほう!」

 

 仮面の女が感心した声をあげながら頭を右に反らした為に、後ろ蹴りは仮面を掠めるだけに終わったが、掠めた衝撃で仮面が弾き飛ばされた。仮面が消えた事によって顕になった相手の顔を見たソウが驚愕する。なぜなら、仮面の下から現れたのは釣り上がった鋭い目、筋の通っている高い鼻、雪の様に白い肌―――“帝国最強”の一人、エスデス将軍だったのだから。

 

「エスデス将軍!?」

 

「おや、バレてしまったか。まあ、いい。遠慮せずに掛かってこい」

 

 驚愕しているソウを気にする事無くエスデスはアッパーカットを放つが、ソウは身体を右足を軸に旋回して裏拳で迎撃する。するとエスデスはソウの拳をアッパーを放ったのとは逆の手で掴み取ると、その勢いを利用して壁に叩きつけようとする。

 

 ソウは壁にぶつかる寸前に強引に身体を捻り、エスデスの腕を振り払う。ミシリと肩が嫌な音をあげるが、後で治せばいいと割り切り、壁を蹴り付けてエスデスから距離を取る。

 

「ふむ、中々だな。即座に片手を捨てられる判断力も悪くない…」

 

「なんのつもりだ……ッ!」

 

 一人で勝手に納得しているエスデスに気付かれないように、ソウは少しずつ『聖母の微笑』で腕を治癒していく。

 

「なに、ただの興味本位さ。さて、もう一丁いくとするか。私に一撃入れてみろ!!」

 

「ぬぅ…ッ!」

 

 再び構えたエスデスに、後手に回っていては負けると判断して自分から突っ込むソウ。

 

 顔面狙いのストレートは頭を逸らして躱される。踏み込んでの頂肘は一歩下がられ届かない。ハイキックは身体を落として躱し、その勢いを利用した本命のミドルキックはサマーソルトで回避。

 

「くっ…」

 

「片腕にしては中々だな…どれ、次は私の番だ」

 

 言うやいなや、凄まじい速度のバレットパンチが雨霰の様に飛んで来る。エスデスの猛烈なラッシュを紙一重で反らし、受け流しながら、隙を見ては無拍子で貫手を放つが、エスデスは無拍子で放たれた貫手を平然と見てから(・・・・)かわしていく。

 

 無拍子はその名の通り完全に予備動作無しで放つ技であり、普通は見てからでは躱せない、防げない、一撃必殺技。だと言うのに、エスデスはそれを視認してから回避しているのである。容赦の無いラッシュも相まって、ソウの額には滝のように嫌な汗が浮かび続けている。

 

「っとぉ…ッ!?」

 

 腕の動きに気を取られていたソウにエスデスがしゃがみ込んで足払いをかけるが、ギリギリで気付いたソウは後方宙返りでこれを回避。それを見たエスデスは上機嫌になってソウを見据える。

 

「ハハッ、これも躱すか! 良いセンスじゃないか!」

 

 手数で攻めていてはジリ貧になると悟ったソウは、最大威力の一撃を喰らわせる為にバックステップでエスデスから距離を取ると、右腕を肩の高さまで上げ、水平に引き絞り目を閉じる。

 

「む、何かする気か」

 

 エスデスからの言葉に耳を貸さず、深呼吸をして脈拍を落ち着かせていく。心拍数が通常域まで低下した瞬間、カッと眼を見開き―――

 

「何をしているかッ!!」

 

 練兵場から、大気を震わせる一喝。現れたのは尋常では無いプレッシャーを放つ鎧姿の漢。突然現れた漢に、エスデスが舌打ちと共にキツい剣幕で睨み付ける。

 

「チッ、無粋な真似をしてくれるじゃないか、ブドー」

 

 常人であれば、それだけで身体が凍りつきそうな冷たい瞳。しかし鎧の漢―――ブドー大将軍はエスデスの言葉をフン、と鼻で笑うと、堂々たる態度で言い放つ。

 

「エスデス将軍、ココは陛下のおわす居城であって、貴様の闘技場では無い。それほどまでに闘いたいのならば、帝都の外で賊狩りでもしてきたらどうだ?」

 

 そのまま睨み合う両者であったが、やがてエスデスの方から溜め息をつき、ブドーから視線を外すと、すっかり蚊帳の外になっていたソウの方に顔を向けた。

 

「やれやれ、興が削がれてしまった。今日はここまでにするとしよう……お前、名前は?」

 

「……ソウ」

 

「ソウだな。ふむ、覚えたぞ。お前はかなり筋がいい、精進を怠るなよ」

 

 それだけ言うと、くるりと踵を返して立ち去ろうとする。

 

「……たかが一介の護衛一人に喧嘩を売るとは、将軍とは随分と暇な仕事のようだな?」

 

 いきなりの襲撃に加え、気が済んだら勝手に帰るという余りにも身勝手な態度。いい加減に我慢の限界だったソウは、皮肉を言いながら憎々しげにエスデスを睨み付けるが、当の本人はどこ吹く風。振り返り、ニヤリと笑って切り返す。

 

「フッ、私も部下も優秀なんでな。文官の護衛をからかう(・・・・)位の暇は持ち合わせているのさ。では、失礼しよう」

 

 言い終えると、今度こそ振り返らずにエスデスは歩き去って行った。

 

「…失礼しました、ブドー大将軍」

 

 エスデスが去った後、ブドーに対して頭を下げて謝罪するソウ。エスデスがいきなり仕掛けてきたとは言え、ブドーの言う通りココは宮殿。無闇矢鱈と戦って良い場所ではなく、ましてやソウはチョウリの護衛とは言え一般人。本来ならば宮殿内に入る事さえ許されないのである。最悪の場合、このまま処刑される可能性さえあった。

 

 だが、ブドーはギロリとソウを睨み付けこそしたが、決して手を出しはしない。

 

「仕掛けたのは、エスデス将軍の方だろう…今回は特に何も言わんでおくが、次は問答無用で叩きのめす。覚えておけ」

 

 それだけ言うと、ちらりとソウの肩を見やる。

 

「肩はどうだ?」

 

「ええ、まあ…一晩寝れば治ります」

 

「そうか。エスデス将軍も言っていたが、お前は筋が良い。精進する事だ」

 

 

 ブドーはそれだけ言うと、ソウに背を向け練兵場へと戻っていった。

 

 自分も『聖母の微笑』で肩を治して修行しようと思っていたソウだが、ブドーにああ言った手前、参加するのは不味いだろうと思い直し、チョウリの屋敷に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……その、なんだ…ただいま」

『お帰りなさい…』

 

 ソウが屋敷に戻ると、死んだ魚の様な目をしたエアとファルが出迎えた。あの賑やかだった2人がほんの2時間ばかりでこんな有り様になるとは、一体あの2人(スピアとルナ)はどれ位睨み合っていたのか。少し気になったソウが聞いてみた所、以下のような返事が帰ってきた。

 

『二人共現在進行形で睨み合ってます』

 

 まさか2時間ぶっ通しでメンチの切り合いを繰り広げるとは思っていなかったソウ。盛大に顔を引き攣らせながら、お土産のケーキをエアに手渡す。

 

「えっと…コレ、土産だ。使用人の皆と、分け合え」

『……ありがとうございます……』

 

 ケーキの入った箱を受け取った二人は恭しく一礼すると、しずしずと調理場へと消えて行く。二人の余りにも弱々しい背中を見たソウは、腹をくくって未だ睨み合いを続けていると言うスピアとルナの元に向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ソウが必死にスピアとルナを宥めていた時、エアは、屋敷の郵便受けに一通の手紙が入っているのを見付けた。

 

「…あれ、お手紙…?」

 

 ソウが帰ってくる少し前に確認した時は何も入っていなかった筈だが、いつの間に届けられたのか。エアは首を傾げながらも手紙を取り出して宛名を確かめる。

 

「…ソウ様宛だ。送り主は……安寧道?」

 

 




はい、と言う訳で第3話でした。

今回はハーレムメンバーのエア、ルナ、ファルの初登場回と、エスデス様とのド突き合い回でした。

原作では鬼畜糞変態親父達に買われて悲惨な最後を遂げてしまった3人。今作では、『村が盗賊に襲撃され拉致された』と言う設定になっています。

ちなみに、前話でソウ君が1番最初に救出したのがルナちゃんです。

そして初登場、みんな恐れるエスデス将軍。

三獣士から『黒尽くめの護衛(ソウ君)に撃退された』と言う報告を聞いて、意気揚々とちょっかいを掛けに来ました。

なので、エスデス様はソウ君の『サイドバッシャー』を知っています。余計な事をされたく無いのでオネスト大臣には教えていませんが。

ブドー大将軍とはチョウリさん経由で軽く顔合わせを済ませています。



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