月下の雫 <英雄 カイリース・デイビット>   作:もみじん

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こんばんわ! 第5話です!

よろしくお願いします。


第5話 現在乗船はお断りさせて頂いております。

AGE 2022 地球・太平洋

 

Place: ノア号・地下迷宮

 

Time:7月18日 12:50

 

???「ギャガガガガギギギャ―――――」

 

目の前には鱗を体中に身にまとった怪物が一つ。

相対するはノア号の水兵達。

怪物が現れた瞬間、その一瞬で、この暗く薄暗いどこまでも続く地下迷宮の奥までへとびっしりと沈黙が覆いつくした。

そしてその数秒後か、はたまた数十秒後かそれは定かではないがその沈黙は次の一斉で解き放たれる。

 

カイリース「お前らァ! 逃げるんだ!!」

 

カイリースは怪物が身にまとう鱗、とは別に感じ取ったいびつな親近感と不気味さがその一声を活気だたせた。

 

水兵A&水兵B「ッ―――!!」

 

後方に立ち尽くしていた水兵たちもカイリースの怒涛の一声に未曾有の出来事が今、目の前で起きていることを感じとったのか気が付いた時には怪物に背を向け、全力疾走で駆けていく。

 

以降、残された二つの存在。

それらの目線は互いに合わないものの、はたから見て彼らは次の瞬間には双方一斉に動き出すであることまでは予測できた。

 

そしてその時は来た。

 

先に足を踏み出したのは水兵帽をかぶった青年である。

 

彼は怪物が動き出す前に仕留める気なのか、勢いよく足を踏み込むと自身の拳をおもいっきり振りかぶる。

そしてぶ厚そうな何重にもかさなった怪物の鱗めがけて拳を叩き込む。

 

その衝撃は床には蔓延るかすかな埃でさえも、宙へと浮かせる程である。

 

すれば怪物の図体でさえも、宙に浮くのか。

 

それは間違いである、怪物への腹部へとそれほどの衝撃を与えた結果は『埃が宙を舞ったかな?』といったかすかな変化としかこの場では感じられていなかった。

 

否、怪物はその衝撃には一切微動だにせず、元ある図体、鱗で受け入れた。

 

カイリース「悲しいな、コンクリートは砕けるんだが、」

 

そして次の瞬間、怪物は動く。

 

怪物は剛腕な左腕をピクリと動かす。

 

カイリースは自身が突き出している右手の拳で少し死角であったのだろう、おそらくだがピクリと動かした左腕は次の瞬間、彼を左から叩いた。

 

叩いた、という表現はすこし曖昧であるが、はたから見ればそれは『肩についている埃をふき取る』程度の死んだ勢い、またその程度の軽いアクションであった。

 

しかしその行動に対しての結果はあまりにも見合っていなかった。

 

その意外な結果はというとまずカイリースはこの場から消え去った。いや消しとんだの言い方のほうが正しいだろう。

 

とにかくカイリースはこのあたりをコンクリートで覆っている狭い廊下から消えたのだ。とてつもなく大きな衝撃とともに―――。

 

双方を横から挟むコンクリートの左側には巨大な大穴ができており、その後、何重にもかさなっている壁をも突き破っている。

 

そして突き破っていった壁の奥の奥、水兵帽の彼は勢いが減速したのか突き破れずにいたその壁に打ち付けられ、うつぶせになり床に這いつくばっていたがその左手前にドアを見つける。

 

しかし「今」はそんなドアどうでもいいことであった。

 

カイリース「・・・クソ、なんであんなのがこの世界にいるんだよ。。」

 

そのカイリースの発言は御もっともである。

 

なぜならあの怪物は『この』世界の生物ではないのだから―――。

 

それを理解しているが故、カイリースは立ち上がる。

 

その行動は決してあの怪物に仕返しをしてやろうといった魂胆でないことは次の瞬間に明白となった。

 

彼はまるで花のトンネルかのようにきれいな形で突き破られた何重にもなる壁の奥にいる「アレ」には目も向けず、今いる廊下の通路を左へと走り出す。

 

理由は単純であった。

 

力勝負では勝てないと、そう判断した。

 

であればそう、自身の勝ち筋へと「アレ」を誘導するのみである。

 

カイリースは走る―――。

 

辛うじて先ほどの攻撃は致命傷にはならなかった為、その救われた命を無駄にしないと誓う。

 

しかし彼のその誓いは次の瞬間、願望へと変わる。

 

自身から見た左後ろ、要はさきほど怪物がいた場所あたりからである。

 

まるで板チョコを割るような感覚で何かが近づいてくる。

 

カイリース「あぁ、もう、、最悪だ―――。」

 

カイリースはこれから起こることを想像した―――。

 

そしてその事前準備こそ、彼の生死を分けた。

 

予想通り、というべきか壁を板チョコのように軽くたたき割ってくる何かは大きな破壊音とともに、彼の後ろ後方へと怪物は現れる。

 

怪物「ギャガガガガギギギャアァァァァァ―――――」

 

カイリース「あ―――!! もう、まったく!!」

 

驚くことはなかったものの、怪物の怒涛の気迫には毎度の如く身構えるカイリースは自身を追うように怪物はちょうど5メートル後方に現れる。

 

それは道の概念を叩き壊しながら突き進んで来る。

 

少しずつ距離が縮まる。

 

4メートル、、3メートル、、残り2メートル。

 

残り1メートル、そこでカイリースは後方を意識する。

 

しかし後方を振り向く余裕はない。

 

そうすれば再び自身の体はどこかへ消し飛んでしまうだろうと予測していたからである。

 

なのでカイリースは右手の手のひらに力を込める。

 

これは決して物理的に力んでいるわけではない。

 

怪物を背に疾走する中、その手のひらには羅針盤のような図面が浮かび上がる。

 

カイリース「ざっと、100メートル、、、ってところだな!!」

 

100メートル。

 

これはカイリースが先ほど吹き飛ばされて地面に這いつくばっていた場所、要はここからこの疾走のスタート地点までの距離に相当する。

 

そして次の瞬間一言、そうたった一言だけカイリースはつぶやく。

 

カイリース「反転―――――。」

 

そのあとは何が起こったのか、まず怪物は後方1メートルあたりから姿を消す。

 

そして後方100メートルへと距離を開け、怪物は再び出現する。

 

それだけではない、一番不可解なのは100メートル先にいる怪物を眺めるカイリースから見て右側に花のトンネルのようにきれいに突き破られた壁があるということである。

 

これは決して瞬間移動という類のものではない。

 

これは疾走を始めたスタート地点にカイリースが仕掛けた「軸」を中心に、空間を回転させた結果なのである。

 

その証拠に前方の床一面には移動式ドアのように横にだんだんと層を築き、溝が作られていた。

 

この溝こそが空間を回転させた証拠なのであった―――――。

 

怪物と距離を離したカイリースはスタート地点の左手にあったドアのドアノブへと手をかける。

 

カイリース「さて、この部屋はなんなんだ? やつが来るまでに調べるか。」

 

ドアを開ける。

 

部屋に入るとそこは古びた船室のようでサビれたベットと椅子が置かれているだけだった。

 

カイリース「外れか、ちょっとだけ出口を期待したんだがな、、ん? なにかベットの下で光ってるな。」

 

腰を屈め、ベットの下を覗く。

 

すると見えたのは薄暗い部屋をも明るく照らす「月」の形をした何かであった。

 

カイリース「これは―――――、、ん、よっと。」

 

手を伸ばし、それを手に取るとそれは勾玉のようであった。

 

カイリース「なんだよ、これ。」

 

少し、ほんの少しだけその勾玉を眺めていると部屋の外から大きな物音が聞こえてくる。

 

そしてそれはだんだんと近づいてくるようだった。

 

カイリース「あぁ、もう時間か!!」

 

再び怪物との追いかけっこだと息をのみ、勾玉を自身の胸元にあるポケットへと入れると部屋を出る。

 

そして想定通り、右手側に見えるのは向かってくる怪物。

 

そして―――――。

 

サラ「なんなのよ――――! こいつ!!」

 

カイリース「サラ!?」




読んでいただきありがとうございました。

なんか今回は書いてて楽しかったです。

次回最終回!

以上
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