月下の雫 <英雄 カイリース・デイビット>   作:もみじん

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こんばんは!

最終話です、よろしくお願いします!


最終話 さようなら夢の世界! 幻想繋船号ノアは一時停泊致します。

AGE 2022 地球・太平洋

 

Place: ノア号・地下迷宮

 

Time:7月18日 13:12

 

ここは地下迷宮。

 

どこまでへと続いているかと思わせる広い海を航海する客船の中のほんの一つの「アトラクション」に過ぎない。

 

普段は誰も決して近づきはしない(そもそも気が付かない)物静かなアトラクションは久々に訪れた客人「達」を歓迎する。

 

サラ「一体なんなのよ! あのバケモノみたいなの!!」

 

カイリース「なんだッ! サラの知り合いじゃなかったか!?」

 

サラ「ふざけないで! どう推測したらあんなのと「知り合い」の体になるの?!!」

 

これでもまだたったの数時間の付き合いでしかない二人は、まるで仲の良いおしどり夫婦のようなやり取りを行いつつも、後方から追いかけてくるバケモノから全力疾走で逃げ回っていた。

 

カイリース「あぁ、クソ!」

 

怪物の一歩は大きい。

 

カイリースの身長は平均的に見ても高いほうである。

 

それであっても悠々と見上げるレベルの背丈を有した「それ」は着々と目の前を走る二人を欲するように追いかける。

 

スポーツである短距離走などで活躍する名の上がる選手たちは誰しも構わずに背丈が高い選手が多い。

 

考える必要もないが、おそらくはその高い背丈からくる足の長さだろう。

 

タイヤの半径が10センチメートルの車と半径100メートルの車が同じ速度で発車した場合、先にあるゴールテープを破るのはタイヤの半径が100メートルの車であるように。

 

この「世界」は単純だ。

 

より大きいものが勝つ。

 

ただし、その思考は「外観」だけとは限らない。

 

そう、「心意」の大きさではすでにカイリースはあの怪物をも軽く凌駕していた。

 

カイリース「ここだ!!」

 

ここまで来たら一切の躊躇はしない。

 

カイリースは走りながらも「軸」を壁の側面へと設置。

 

カイリース「歪め!!」

 

その一声を合図とし、先ほど設置した壁の「軸」は起動する――――。

 

サラ「え?」

 

「軸」は半径3メートル、幅は廊下目一杯、空間をハムスターの回し車のように回転させる。

 

その遠心力につられてカイリースとサラは上に段々と上昇――――。

 

怪物もその回転に飲み込まれる。

 

互いに軸を中心に視点が一瞬交差する。

 

そして怪物も上へと昇る遠心力に引きずり込まれるタイミングで、、、

 

カイリース「解除!!」

 

一声を上げる。

 

結果、下へと落ちる遠心力にかかっていたカイリース達は床に衝突。

 

怪物はというと計られたものなのか、上へ向かう遠心力との境目、ゴルフのスイングでボールが前方に飛ぶのと同じように地下迷宮の遥か奥へと吹き飛ばされてゆく。

 

サラ「嘘!? 助かったの?」

 

カイリース「まだ油断できない、またすぐに追ってくるぞ。

 さっきと同じ手が通じるとは思えない。」

 

サラ「わかってはいたけど、流石ね――――。」

 

カイリース「今のうちに距離を離そう。」

 

サラ「出口はわかるの?」

 

カイリース「出口? ノエルがまだだもっと奥に行くんだよ。」

 

サラ「えぇ!? あの子もいないの!?」

 

カイリース「あぁ、出口ではぐれた。

 どこに居るかはわからないが少なくともこの空間にはいるはずだ。」

 

サラはなぜか迷ったような顔をしている。

 

そして一呼吸おいて、、

 

サラ「悪いけど、それは危険だわ。」

 

すると予想外の言葉が飛び出てくる。

 

しかし改めて考えるとそれは当たり前なのかもしれない。

 

彼女たちの付き合いはそれこそほんの数時間。

 

もはや知り合いと呼べる仲なのかも定かではない。

 

そんなものの為に命などかけられるかと言わんばかりにサラは問い詰める。

 

サラ「あなたこそ、あの子とあって数時間でしょ? 一体何のために?」

 

当たり前のことだった。

 

昔誰かが言った。

 

自身の命はどんな状況であれ天秤には賭けられないものだと。

 

しかしカイリースの価値観はそれを不要とした――――。

 

カイリース「他人だからこそ、賭ける価値があるだろうに。。」

 

サラ「え?」

 

カイリース「他人こそ無限大の可能性だ、そこには定められた偏見は存在しない。

 他人以外は俺の中ですでに仕切りで分けられているんだ。

 悪党、変人、優しい奴、強い奴。。」

 

彼は人が変わったようにべらべらと語りだす。

 

カイリース「俺は自身の窮屈な心を広げるために他人を選別する選定者なんだ、

 だからもしノエルが俺があってきた今までで一番賢い存在であるなら、、と思ったらその可能性を信じてそれに賭けるしかないだろう。」

 

サラ「――――、あっそ。

 もうわかったから、、それじゃあ行きましょう。」

 

カイリース「えぇ? あれ? 引かれると思ったんだがな。」

 

サラ「あなたの素性も、性格も、すべて把握してるにきまってるじゃない。

 ただ、、唐突にキャラに入ったから「今なの??」と思っただけよ。

 なにボーとしているのよ、さっさと行くわよ。」

 

 

怪物を遠く彼方へと吹き飛ばしてから数分が立った。

 

追われていない安心感なのか二人の足取りは少し緩くなっていた。

 

カイリース「やっぱり手がかりもなしに探すのはまずいな、時間が無い。」

 

そんなことをつぶやいていると、サラが得意げに首を突っ込んでくる。

 

サラ「ペンダント渡したでしょ? 今見てみなさい。」

 

カイリースは首をかしげながらも渋々ペンダントをポケットから取り出す。

 

するとサラの居場所を告げていた点滅は、隣にいるサラではなくまた別の場所を示していた。

 

カイリース「?!どういうことだ? サラの場所を示していたと思ったんだが筋違いだったか?」

 

サラ「そのまさかよ、それ、そんなのじゃないわよ。

 ここの船に乗る前にクソ野郎から盗んできたのよ、やっぱり使えるわねそれ。」

 

カイリース「? クソ野郎って?」

 

サラ「まぁ、それはどうでもいいでしょう、それは。

 とにかく、それは人の目的を記しているのよ、今あの子を探そうとしているからあの子の場所が記されている。」

 

カイリース「すごいな、魔法みたいだ。」

 

サラ「心意なんて魔法みたいなものよ。」

 

カイリース「これも心意なのか?!」

 

サラ「えぇ、私はそう聞いてるけど、どういう経緯で作られたかは知らないわ。」

 

カイリース「そうなのか、まだまだ浅いな――――。」

 

カイリースが関心していると激し目な物音が聞こえてくる。

 

カイリース「もう来たか、サラ、ペンダントをもってノエルを見つけて外に出るんだ。」

 

サラ「あなたはどうするの?」

 

カイリース「時間稼ぎってところかな。」

 

サラ「そう、それじゃあ信じるわ。 幸運を――――。」

 

カイリース「ずいぶん軽いな――――。

 まぁ、いいか。」

 

物音は段々と近づいてくる。

 

カイリース「よし、来い!」

 

カイリースが構えると突然胸ポケットにしまったはずの勾玉が輝きだす。

 

カイリース「なんだ!? こんな時に!!!」

 

怪物「――――――――――――――――――――――――。

 サン、、、シ、、、ュノジ、、ンギ、、、。」

 

 

カイリース「!?!」

 

怪物は喋ったのか「三食の主食」と言っている。

 

カイリース「なんだ?! 三食の主食って!!」

 

怪物「ジン、、ギ、ジンギ、ジンギ、ジジジジ、、、ンンン、ギギギギギギギ・・・」

 

カイリース「?」

 

怪物は何かを悟ったのかおびえるような声を上げ、去っていく。

 

カイリース「なんだったんだ、いまのは――――。」

 

 

 

カイリースと別れたサラはペンダントを元に地下迷宮を走っている。

 

サラ「もう全く、本当に面倒。

 一体どこまで奥に行ってるのよ、あの子。。」

 

点滅が示す場所へと近づこうとしているのだが一行に近づかない。

 

すると突然、、

 

サラ「え?! ちょっと待ちなさいよ! どこに行くの!!!」

 

ノエルを示している点滅はだんだんとその勢いをなくし、薄くなっていく。

 

そしてペンダントの点滅は亡くなった。

 

 

 

怪物を追い返してからまた数分立った。

 

その後、怪物の気配は一切感じ取れなくなってしまい、地下迷宮にふさわしい不気味さが今になって漂ってくる。

 

ここが船の中であることも忘れてしまう。

 

カイリース「深いな、一体どこまで続いているんだ、この地下迷宮は。

 船の敷地外にはとっくに出ているし、早くサラと合流しないとな。

 ペンダントを渡したのは間違いだったか?」

 

そうペンダントをサラへ渡したことを悔やんでいると、歩いている廊下の奥に明かりを見つける。

 

カイリース「なんだ? あの光は、、出口とは真逆に進んでいると思ったんだが。」

 

方向感覚が優れているのか、それは間違いではなかった。

 

出口以外での明かり、そこで少なくとも対象が人工物であることを認識する。

 

息を呑む。

 

カイリース「・・・」

 

明かりを発するものからざっと4~5メートル程度。

 

それが何かを理解するには十分な距離である。

 

カイリース「これは?」

 

それが何かわからない、いいや正確には見たことはある、それに知った名前で言っても間違っていないだろう。

 

ただそれが知った名前であるのかがわからない。

 

カイリース「羽?」

 

明かりを発する正体は「羽」ただし誰しもが想像する「羽」ではないことは明らかだった。

 

カイリース「なんだ、あの歪な形は――――。」

 

その「羽」はモノ珍しい蝶がもつもののように鮮やかであり、そして巨大だ。

 

一人の人間のサイズにも匹敵しうる。

 

カイリース「なんだよ、人に付いてたってのかよ、この羽は。」

 

そう言いながら「羽」に少し近づく。

 

カイリース「!?」

 

胸ポケットにある勾玉が「羽」に共鳴するように突然と輝きだす。

 

そして磁石同士が反発するように身体が後方へ吹き飛ばされる。

 

カイリース「なんだ?! 急に!!」

 

すると「羽」と勾玉は互いに輝きを失う。

 

カイリース「なんだったんだ、今の。。」

 

 

 

この一見大したことのないように思える出来事。

 

起こった理由は「外部との接触」

 

これは単に「船の外側」というわけではない。

 

規模は大きく、この世界の「外側」と「内側」の衝突。

 

これがもたらすものとは、、、

 

世界の「バグ」である。

 

その影響範囲は計り知れず、すべてをも巻き込んでいく。

 

しかしこの船だけは「例外」であった。

 

ただし、この船を覆っていたものが誤作動を起こしたためか、地下迷宮は一時的な崩壊を迎えようとしていた。

 

 

 

カイリース「! 入り口付近に設置していた『軸』がずれ始めているな!

 急いで戻らないと。。」

 

カイリースはすでに設置していた『軸』を起動し、入口付近まで移動する。

 

すると目の前を横切る廊下から足音が聞こえる。

 

サラ「カイリース!」

 

カイリース「サラか! ノエルはどうした!?」

 

サラ「この船にはもういないわ! 途中ペンダントの反応が途絶えたの。」

 

カイリース「途中・・・、もしかしたらさっきので何かが起こったのか。。。」

 

サラ「早く上に戻るわよ! ここはもう居てはいけない気がするわ。」

 

カイリース「あぁ、」

 

機関室へと続く暗闇の廊下を駆け足で進んでいく。

 

サラ「あの怪物はここまでは来れないわよね。」

 

カイリース「そうだな、というかもう地下にはいないだろうな。」

 

サラ「それって、どういうこと?」

 

カイリース「そのままの意味だ、この勾玉・・・。

 実は怪物に効き目があったらしくてな、どこかに逃げていったよ。」

 

サラ「なにその『殺虫剤が効きました』みたいな言い方、、、

 そんな軽そうな奴ではなかった気がするのだけれど。」

 

カイリース「もういいだろう、それよりノエルが消えたってことは他の乗客もその可能性がある。

 俺と君がその例外なのはいまは置いておくとして船はいったん近くの島に止めよう。

 乗客は消えるわ、船長も居なくなるわでもうこれはもう俺たちではどうしようもできない。」

 

機関室へと戻り、デッキへと向かう。

 

カイリース「これは―――――、、」

 

この船は豪華客船だ。

 

少なくともこの船に乗船した時もそうだったし、半年間この船に居てもそれは間違っていなかった。

 

しかし、

 

目に映ったのは幽霊船の様に荒れ果てたデッキであった。

 

カイリース「どういうことだ! いつの間にか違う船にいるぞ!!」

 

サラ「あぁ、今気が付いたのね。 

 なるほど。」

 

カイリース「どういうことだ?」

 

サラ「おそらくだけど、地下で起こったなにかでこの船を覆っていた違和感が消えているわ。

 それのおかげで今あなたはちゃんと現実を見れている。

 『幻想』が途切れたんだわ、きっと。」

 

カイリース「『幻想』って、敵のことか。

 こんな幻覚を見せることができるのか、そいつらは。

 乗客もいない、居た形跡もないみたいだ、まさかノエルも幻覚だったのか!?」

 

サラ「いえ、彼女にはこの景色が見えていたはずよ?

 つまり幻覚ではなくちゃんと実在していたわよ。」

 

カイリース「そうか、もうなにが現実だったのかもわからないな。」

 

そんな風に落ちこんでいると急に胸ポケットの勾玉が再び輝きだす。

 

カイリース「またか、今度はなんだ?」

 

???「カイリース! きーえー?」

 

すると勾玉から少しだけ聞きなれた声が聞こえてくる。

 

カイリース「ノエル?!」

 

ノエル「よかった! 聞こえてるのね!!」

 

カイリース「今どこにいるんだ!?」

 

ノエル「それがね、実はもう船には居ないの。

 私が今いるのは・・・」

 

カイリース「・・・」

 

ノエル「東京にあるファンタジーランドの中にいるみたいなのよね。」

 

カイリース&サラ「トウキョウ????」

 

 

夜なのかあたりは暗闇に包まれているその中でひときわ光を放つメリーゴーランド。

 

園内には大勢の人々が居るがなぜか不安げな声が絶えない。

 

中には大声で泣くものや騒ぎ立てて自身の恐怖心をかき消そうとしているものもいた。

 

落合迅「まったく、どうなってるんだよ。

 急に心意結界が張られるし、こじ開けようにも相性が悪いのか全く破れそうにないな。」

 

鹿野紅葉「あんたの心意に相性なんてあるのね。

 てっきり無属性みたいなものかと思ったけど。」

 

落合迅「お、無属性ってなんかいいね! 特別感があるっていうかさ。

 なんかこう悪の組織のナンバー2とかのタイプだよな。」

 

鹿野紅葉「ナンバー2がいいの? やっぱり変わってるわね。」

 

『更生陰謀論』、だれかがなにかの為にそれを変える。

 

東京全域は今、不可解の渦の中心にあった。

 

 

そして場面は変わりノア号。

 

すでにだれもいないはずのブリッジ内。

 

???「はぁー疲れた、疲れた。」

 

男だ。

 

かなりガタイがいい。

 

???「先に「アレ」をとられていたか。

 しかし二人ともまだ船に居るとは、とうぶん地下には入らないだろうから少し観察しておこう。」




ここまで読んでいただいてありがとうございました。

これにてこの話は完結でございます。

この船の謎自体は解決できたかなと。

いろいろと膨らませた伏線というかそういうのはまた別のお話、または続編の月下の雫で解決できたらなと思います。

久々に連載形式でやりましたけどやっぱり気持ち的にやりずらかったですね。

期日を明確につけていたわけではないですけどもやっぱりそういうのは意識してしまいます。

次回からはまた一本一本短編ぐらいの量で出していけたらなと思います。

ちなみに次回は初めて連載させていただいた「嘘の道導」のリメイク版を出す予定です。
もちろん短編で。

出してまだ数か月ですが、もうリメイクという。

某型月作品とはペースが違いますね!!!

ということで8/26からは月姫プレイします。

なので次回は一か月後!!!

それではさようなら。

また来月!
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