迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4) 作:37級建築士
Day01~プロローグ
猛暑が続く日々、最近のオラリオはとかく夏日寄りだ。
晴天が肌に突き刺さる日が続いたと思いきや、連日土砂降りの雨が長く続いたりもする。去年はこうじゃなかった、異常気象か、何処かの神の陰謀だと騒ぎ立てる人もちらほら
何かが起こるかもしれない、そんな漠然とした不安を抱くのは無理もない。絵巻や小説に記された超常がそのまま跋扈するこの世の中、そんなオラリオだ。
事件の一つや二つ、また自分の身近で起こるのではと、意識が過剰と言われてしまえば仕舞い無いけど、でもそう感じてしまうのだ。
何かが起こる、そう考えて身構えて
「おや、迷い人のようですな」
「……はぁ」
身構えていた、だって仕方ないのだ
僕は今老人、のような人?と面している。
目が覚めれば僕が見るのは見慣れた天上のはず。けどここは自分の部屋でもなければ、というか壁も床もない。眠っていたはずなのに、なのに
……ここ、どこ?
何かが起こるかも、それも僕とその回りを巻き込むようなことが起こりうる。そう肌で感じてしまうのだ。
けど、取り敢えずはこの状況から。先のことも大事だけど、まずは今僕がいる場所に視点を置いてみよう。
風の穏やかな夜、雲の流れが月明かりを霞ませる。きっと、外でキャンプでもするなら絶好の天候なのだろう。
うん、急にキャンプの話をするのは何故か、それはほら、ご老人がいるのは焚火の前、後ろにはテントみたいなのも見えるし、完全にレジャー中に鉢合わせと言う感じだ。
奇妙な外見、よく見ると傍にいる物静かな女性はとてもきれいな人だし、ここがオラリオ外の平原であっても、どうしてかそこまで怪しいとは思えない。何かが起こる前兆かもだけど、不思議と目の前の二人には敵意も不信感も出てこない。
「……あなた」
「!」
「ご相伴、いかがかしら」
焚火の横で、よく見ると何やら真っ黒な塊をトングで掴んでいる。どことなく感じる獣脂の焦げる匂い、きっと何かで肉を包んで焼いているのだろう。
お腹がすく、夕飯が少し控えめだったから、余計に
……あれ、でもこれって
忘れてはいけない。僕はさっきまでずっとホームにいたのだ。夢遊病じゃあるまいし、まず立ち歩いて、ましてや都市の外に出るはずがない。
「……」
誘拐、事件的な用語がいくつも頭の中で湧いては消えてと、そんな不具合を来したような僕の戸惑いに
「迷い人よ、安心しなさい。ここは、まだ夢の中ですぞ」
「夢、ここが」
意識がさえる。目の前の老人の何気ないトーンの言葉で、今ようやく気が落ち着いた気がする。
焚火の前、僕は用意された席に腰掛ける。金髪のお姉さんが僕の前に折り畳みのコンパクトな机を置く。焼きたてのローストビーフにパン、カップにそそがれたのは野菜とスパイスのスープ
暖かい、どれも夢とは思えない
「……ここは、いったい」
「ベルベットルーム」
「?」
「あなたにとってここは必要な場所、それがベルベットルームよ。それ以上も以下もない」
「必要、僕がですか」
「どういうことかわからないでしょうが、いずれ理解成されます故。迷い人……いえ、ベル・クラネル」
名を呼ばれた、まだ名乗っていない。
「失礼ながら、あなたのことは先に調べさせてもらっています」
「……ッ」
「ご安心を、殿方の恥部をくすぐるようなことは致しません。安心なさい」
そう言い、ギャップのあるいたずらめいた笑みを見せてくる。
「……貴方たちは」
謎が謎を更に生む。ベルベットルームという、この広い平原の中で焚火が作る唯一の明るい空間
相対するのは謎の老人と女性
「ほほほ、ご安心なさい……夢をもうじき覚めます。ですから、ここでは軽い自己紹介で済ましましょう。私の名はイゴール、そこの麗人はマーガレット、我らは貴方の味方です、ベル・クラネル」
× × ×
「!?」
目が覚めた。冷や水を浴びせられたように、僕は布団から飛び起きた。
窓から差し込む朝日、少し寝汗で不愉快なのはきっと連日の猛暑のせい
けれど、いまはそれより
「……あれ、本当に」
夢か現か、全車ならきっとこんなにも記憶は鮮明ではない。満たされた胃袋の感覚も、まだ鼻に残る焚火の焦げ臭さも
全部、実感のあるものだ
「……なんだったんだろう」
「ベル、おーいベルッ」
「!」
ヴェルフの呼び声、僕は思考に靄がかかったままベッドから飛び出す。
今日も変わらず、ダンジョンに潜り探索を繰り返す。いろんな騒動も終わって、今はもう普段通りの日常
だけど、もし何かが起こるのだとしたら、あの時のイゴールさんが言っていたみたいに
「……ッ」
……貴方の進む先に、占いは塔と月を、これはまた奇遇な話です。
……異界に勝るとも劣らないこの世界で、あなたは奇々怪々な出来事を目することでしょう。
……しかし、同時に覚醒の時も近い。ここに来た以上彼とあなたも同じ、己だけでなく周囲にすら覚醒をもたらす存在、言うなれば愚者の灯となりましょう。
「覚醒、灯……でも、愚者って」
さすがに良くは思えない。意味深なことを言ってくれる割に、結局何をその占いが暗示していたのか
「ベル、寝坊か! 早く飯食わねえと置いてくぞ!!」
「…………はいッ!!!」
次回に続く
眼鏡をかけるべきか、銃を撃つべきか、それともコスプレをさせるべきか、書きたいことが山ほど出てくるペルソナ設定、ダンまちに合わせたオリジナル展開を提供していきます。