迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4) 作:37級建築士
『なんだよ、また戻ってきたのか』
悪態をつくクソガキ。だが、紛れもなく昔の俺がそこにいる。
ラキアの故郷、実家の屋敷の倉庫部屋。仕置きで閉じ込められていたのは今も懐かしい。
……閉じたまま、こいつはずっとここに
改めて、自分のシャドウと対面した。だが、最初に比べどうしてか気負いもない。何かをするでもなく、ずっと蹲って
小さな、短剣を握りしめて、小さく背を丸めている。
「……おい、シャドウ」
『…………』
「なんだよ、話があるんだしよぉ……ちょっとぐらい聞く耳もてよ。態度を直せって、いつも言われてただろ」
『なんだよ、貴族の躾けを今さらぶり返すのか。』
「ちがう、お袋や使用人たちじゃねえ……フォボスだ」
『……ッ』
「おい、どうした……なんだ以外か?」
不意に告げたフォボスの話。シャドウは訝し気な眼でヴェルフを睨む。
そんな視線に目もくれず、ヴェルフはその場でどしんと腰掛けて、静かにまた言葉を紡いだ
「俺、お前のこと……俺じゃねえって言ったよな」
今にしてみれば、あの時に自分は何とガキだったか。ヴェルフの中でまた一つ黒歴史が増えてしまった。
……ああそうだ、俺は恥ずかしいガキだ。あの時から、何も変わっていない。変わるわけがねえ
「俺はガキだ。年を重ねても、ガキの頃ってのは消えねえ。ずっと付きまとうもんだ。クロッゾの過去も、フォボスのことも、全部含めてな」
『知った口を、そうやってお前は』
「終わったことにして、もう気にすることも無く平然としている……あぁ、そうだな。俺は、見ているつもりで見ていなかったんだ。自分の本音を」
言葉を先読みして、被せるようにヴェルフは続けた。
不思議だ。シャドウのことが、今なら手に取るようにわかる。ヴェルフは感じているのだった。自分がこの少年と如何に同じか。偽物だと適当を言っていたが、これがどうして適当と言えるか
何も誇張はしていない。あの時の自分は、こんなクソガキで、感じたことは感じたままに言っている。嬉しい事も、そして嫌だったことも
……そうだ、俺は悔いている。フォボスのことを、でも当たり前だ。俺は、俺にとってあいつは
全部が全部、クロッゾの家が嫌いだとは言わない。すでに解決したことであるから、これ以上父たちに言うことはない。だが、あの生きづらかった幼少期、自分はどうしてもあいつにすがって生きていて、そして勝手ながらこう思っていた。
「フォボスは、俺の親だ」
『!』
驚いた顔でシャドウはこっちを見る。続けて
「俺は、フォボスのことを忘れない。あの時の不甲斐なさ、至らなさ、弱さ……全部、全部引っさらえて飲み干して、そんで初めて俺は俺でいられる。弱さに目を背けることはしねえ」
内なる自分と向き合い、今ここでようやくヴェルフは心理にたどり着いた。
シャドウは、安らかな顔でヴェルフに手を差し伸べる。語るに及ばず、ヴェルフはシャドウの、否
己自身に対して、手を差し伸べた。
……こいつは、俺だ。俺もこいつも、同じ痛みを有した共柄だ
今なら、言える。
「俺はお前で、お前は俺だ……」
× × ×
「……くッ」
ペルソナを前面で盾にする。エイナ・シャドウの放つ氷の槍の雨、イナバギを展開し錫杖の連撃で攻撃をしのぐ。
攻め手の魔剣は既に砕けた。残る手は、効くとはいえ致命打にはならない祝福属性のスキルだけ。
……だめだ、これ以上は
体力も削れてきた。気力も少ない。ペルソナを維持するだけで精いっぱいなぐらいだ
今ある手数は、イナバギとフウキ、そしてジャックフロスト。三つ目に関しては、エイナシャドウの属性から見てそもそも論外だ。拘束力のある氷の攻撃に対しての回避、致命打を与える物理
「……足りない、手数が、あと一手」
『■■■■■■■■――――――ッ!!?!?!?!?』
「!?」
怪物の雄たけび、耳を貫くその叫びで体がすくむ。動きの切れも悪く、体の反射が上手く効かない。
……身が竦んでいる、これじゃあ、回避が
フウキにペルソナを変える。そしてすぐ迫る氷槍の爆撃
降り注ぐすべてを躱さんとするが、次第に刃は体をかすめて、ついに
「……ッ!!」
蛇行するように、水平に飛び交い向かってくる槍、ここにきて隠していた攻撃方法とは、意表を突かれ反応に遅れた。
上の攻撃にばかり注目していて、だからペルソナを頭上に置いている今、これでは防御が間に合わない
……やられ
切っ先が喉元を突く、風穴を開けて彼岸の華を咲き散らす。
だが、その瞬間
[アギラオ]
世界は、紅き光を満たしつつ時を進めた。
止まった時を進めた勇士は、焔を纏い鉄を鳴らす。ガコン、ガキン、大槌と炎で剣を鍛え、紅き光を…高く撃ち放つ
「……ヴェルフ、まさかッ」
「あぁ、そのまさかだッ!!」
[マハラギオン]
燃える。降り注ぐ槍がすべて燃えて消えた。吹雪で白みがかかった世界が赤く照らされ、世界はまたもアマテラスの光で暖かく開かれたのだ。
炎と鉄、現れませり彼のペルソナは魔術師の絆、その名を
「……ここからは、俺の出番だ!! そうだろう、ヴァルカンッ!!?」
次回に続く
今回はここまで、ペルソナの詳細な情報は次回からになります。