迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4)   作:37級建築士

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これにて一章は終わり、お疲れ様!


Day18~幕引き

 

 エイナシャドウを倒し、ギルド本部だった場所は跡形もなく崩壊した。

 

 崩壊を見届け、僕たちは戦いを終えた終息感を胸に帰路へと着く。教会の地下まで、シャドウとの遭遇もなく、無事たどり着く。少し疑問に思った

 

 

 

……シャドウが少ない、というか弱い

 

 

 

 歩けばそこらにドロッとした影の塊が蠢いている道のり、でも今はいても数体、それに目があえばシャドウの方から逃げ出していく始末

 エイナさんを抱きかかえた今戦闘が避けられるのはありがたいに越したことはない。でも、やっぱりこの世界は未だに不確かだ

 

 

……不確か、といえば

 

 

「く~まくま~♪」

 

「……」

 

 結局、クマ君のこともよくわからないまま。

 

 ヴェルフから聞かされた。クマ君から渡された短剣、弱ったシャドウの核だとか、なんでもその核を使ってシャドウと対面してペルソナを会得したとか、さらっと話してくれたけど、けど

 

 

……ん、なんでそんなことができるかって、それはクマも知らないクマ

 

 

……それ本当に言ってるの?

 

 

……こ、怖いクマ! えっと、疑う気持ち話わかるクマけど、クマには記憶がないから、なんとも言えません。およよ

 

 

「……記憶」

 

「ん、先生どったの?」

 

「うん、クマ君が不思議だなって」

 

「はにゃ?」

 

 人畜無害な見た目、能天気な振る舞いと言動と思考、疑わしいと思えば何もかもが黒だ

 

 この世界のことは、まだ測りかねてる今唯一の情報源はクマ君だから、頼りにしたいと思う反面どうしても懐疑心は得てしまうのかもしれない

 

 

「……」

 

「おい、どうしたベル」

 

「……ごめん、疲れてるのかも」

 

 考える、疲労がたまった頭ではこれ以上悩んでも答えは出ないかもだ。

 

 わからない、わからないままでは気味が悪いけど、でも今それを解決するにはクマ君を問い詰めたりしないといけない。今まで積み上げた、信頼も全て捨て去って

 

 

 

……できない、よね

 

 

 

 あの戦い、地下の墓所で共に戦うと言ってくれたクマ君の言葉。わからないことづくめな僕にも、それだけは確かな本物だと言える。そんな自信がある

 

 疑うのは簡単だ、でも僕は難しい道を、最後まで信じる道を行きたい。

 

 クマ君を信じる。ヴェルフを信じたように、クマ君も、これから先もっとみんなを信じたい。

 

 世界の異変、きっとこんなことは一度では終わりじゃない。覚悟を決めるべきだ、異変を解決するために、真実を追い続ける覚悟を

 

 

 

 

 

   ×   ×   ×

 

 

 

 

 

「おわぁああ!?」

 

「――――ッ!?」

 

 

 異世界から現実を繋ぐ鏡の道、ぐちゃぐちゃにかき回されて振り回されて、上も下もわからなくなったと思えば急に重力が体を叩きつけた。

 

 教会の地下の部屋、鏡から弾かれるように飛び出た僕はベッドの上、抱きかかえたエイナさんには怪我がなくて安心する。でも、ヴェルフはゴミ箱に頭から突っ込んでいた。

 

 

「……俺、なんかしたか」

 

「えっと……ポジション的な問題かな」

 

 魔術師の絆に覚醒した相棒は、どこかの似た誰かと少し似た運のめぐりあわせにあるのか、今後もゴミ箱激突、ナンパ失敗だのと未来が容易に想像できる

 

 がんばれよ、花む……じゃない、ヴェルフ

 

 

 

 

 

 

 

 

 教会の外、ベル達を待ち構えていたのは彼を慕うホームのヒロインズ、そしてギルドの職員と数人の冒険者。

 

 その場に居るほとんどがウラヌスの息のかかった者達。遠くにはフェルズも隠れるようにしれっといたりする。彼らはベルが抱きかかえるエイナを見るやすぐに動く。意識のないエイナは医療機関へ、そしてベル達にはフェルズを通じてウラヌスからねぎらいの言葉。

 

 以上、それ以下も無く簡単に事後処理は済んでしまった。あっけにとられたところもあるが、ベルとヴェルフも異世界に居続けた疲労で今にも倒れそうな状態だ。

 誰かに抱きかかえらえたベルは、思考が闇に溶け落ちていく最中、どこか遠くで焚き木の音を耳にして

 

 

 暗転、遠く遠くを進んで、気が付けば意識は覚醒時のごとく冴えわたる。

 

 

 

「!」

 

 

 

「ようこそ、ベルベットルームへ」

 

 

 

 鼻の長い小人の老人、奇怪な見た目に反して物腰の低い振る舞い、この人がいるということはここは

 

 

 

「左様、ここはベルベットルームであられます。」

 

 

 

「……ルーム?」

 

 

 

 おかしい、以前はオラリオの外で、大草原の中にポツンとあるキャンプ地だったはずが今は小さな部屋の中。ルームと聞けば納得だけど、前回と趣向が変わりすぎて少しついていけない。

 

 窓があって、奥には寝台もあって、なんだか乗り物の中のような家だ。向かい合う席が四つ、小さなテーブルもあって、でも外を見れば

 

 

 

……走ってる、外を

 

 

 

「あら、キャンピングカーをご存じなくて?」

 

「!?」 

 

 ふと、耳の敏感な部分をそっと撫でる声、色香を含んだ大人の声の主はマーガレットさんだ。というか、いつ僕の隣に座ったのか、というかそこに座られるとぼく出られないのですが

 

「そんなに、離れなくてもいいのですよ。こっち、もたれてもかまいませんからね」

 

「……ッ」

 

「?」

 

 首をかしげる、どうしてそこで疑問なのか

 

 マーガレットさん、不思議の多い麗人。でも、案外と中身は子供好きで、でも僕を子ども扱いして可愛がろうとするのは、ちょっと困る。

 

 今も、何だったら頭を撫でられている。無意識なのか、もしかして子供どころか小動物扱いなのか

 

 

「……これこれ、マーガレット」

 

「あ、いえ……もういいです。本題に入ってください」

 

 

 ここに呼ばれたからには、きっと何かがあるんだ。だから、まずはその話を聞かないと

 

 

 

「……貴方が、僕に言いましたよね」

 

 

  

 初めて異世界に行った日の夜。僕はこの人に告げられたのだ、ヴェルフのことを

 

 魔術師の絆、ヴェルフは過去と向き合い力を手にして、結果それが事件解決へと導いた。

 

 

「救うために救う。意味が分からなかったけど、今は理解できる。あの世界に行けば、否が応でも向き合わないといけない、本当の自分に」

 

 

 思えば、エイナさんがあの世界に行った経緯や犯人は不明だけど二つだけ、あの世界でギルドがシャドウの根城になったりしたこと、そしてエイナシャドウが驚異的な存在だったこと、これらの理由も今はわかる。

 

 シャドウは本人から出でるモノ、きっとエイナさんはあの世界でシャドウと会って、そして否定した。ヴェルフの様に、シャドウに飲まれてシャドウが成長して、結果あの世界のギルドは変わり果ててしまった。

 ギルドという場所、そこを起点に異変が起きたのもきっとエイナさんがアドバイザーだからだろう。それに、学校という現実にはない要素が混じっていたのは、それがエイナさんの苦しみを表すものだったからだ、僕にはそう思える

 

 

 

 私の言う通りに知ろと、高圧的に迫る女王様

 

 

 

 地下の墓地、いくつも刻まれた名前

 

 

 あれらの要素は決して無茶苦茶なものじゃない。理由があって、あんなものが生まれてしまったんだ。結果歪められただけど、あれらの元になった根本は

 

 

 

「……エイナさんが前に言っていました」

 

 

 厳しく物を言うのも、冒険をするなって冒険を否定するようなアドバイスを送るのも、エイナさんがアドバイザーとしてしてきた言動や行動の数々。それら全て僕たちを想ってのこと、そしてそう思うに至る過去もある。遺恨が残る、未だ消えきらない過去も

 

 

「エイナさんから聞いたことがあります。むかし、自分の担当冒険者を失くしたことがあるって」

 

 冒険者の死亡は、悲しいけどよくある顛末だ。職業上慣れないといけないことでもあるらしく、実際皆多くの死と向き合っている。背負い過ぎないのが一番だろうけど、それでも自分は諦めたくないと、だからエイナさんは全力で背負うのだ。

 

 あの世界で、シャドウはエイナさんの本当の面を見せていた。プライベートの時間を使ってでも、相手が嫌がっても徹底的に授業をするのは、そんな彼女の想いから。だから、あの世界での偽エイナさんも、言動や行動の多くに指導を、教え導くに類する言動を有していた。

 

 縛って、拘束して調教して、だけどそれも全て冒険者を死なせたくないというエイナさんの願いの為だあのシャドウは徹底してそこは貫いていた。嫌われても、周から何を言われても、たとえ自分が女王様になったとしても

 

 

 

「……あなたさまは立派に事を成し遂げました。救われた彼女も、きっとあなた様に」

 

「でも、本当はそんな必要なんてない……あんな世界に行かなくても、エイナさんは」

 

 

 そうだ。あの世界に行かなければ、見たくない自分と直接向き合うことも無かった。

 

 自分と向き合う手段は一つじゃない。ただ一言、身近な誰かが声をかけて、想いを打ち明けるきっかけさえあれば

 

 

 

「……理解しましたよ。あの世界は、とても危険なものだと」

 

 

「異世界のことですな。確かに、本来は人が無暗に足を踏み入れるべきではない場所、放り込まれでもしない限り……」

 

 

「……ッ」

 

 

「ベル・クラネル様。あなた様の世界には異変が起きています。良くないものも、ここオラリオへとますます迫っているのです。これは良くないことだ、故に心もとないかもしれませんが占いを」

 

 

 そう言うや、イゴールはおもむろにまたタロットを取り出す。

 

 テーブルに置かれたタロット、愚者と魔術師を示すカード、あと一枚知らないカードもある

 

 

「女教皇、ですがこれが意味を示すのはまた先のこと……今は、ただ絆を紡ぐことです。紡いだ絆の長さが、あなたの力となり導となります故に」

 

「……何も、わからないということですか」

 

「左様、あくまでここはベルベットルーム。覚醒を促し、ときに導きの真似事も致しますが……貴方様の道行きは貴方様こそ知るもの……ですから」

 

 

 もう一枚のタロット、裏返したそれには星の絵が乗っている

 

 星、それは既に得た絆。クマ君と紡いだ絆

 

 

「彼の時代、人々は星を頼りに道を見てきました。あなた様の選んだことは間違いではありませぬ故、星の導きを信じていなさい。」

 

 

「……」

 

 

 クマ君との絆、今できることがない今焦っても意味は無い。絆を紡ぐ、つまりは用意の期間なのだろう。次に事件が起きるまでに、よりペルソナを使いこなせるように

 

 

……待つしか、ない

 

 

「今宵はお帰りを、今は体を労り、そして英気を養うことです。ペルソナの合体、閲覧などのご利用は何時でもお受けしています。」

 

「え……あ、はい」

 

 急に事務的な説明が入った。今更っと言ってくれたけど、閲覧?合体?

 

「では、マーガレット……旅人を送って差し上げなさい」

 

「了解しました。では」

 

 主の命を請け負う、そんな主従のやり取りをつい見ていると

 

 

……って、あれ

 

 

 ふと、気づく。今この車はどこかを走っている。そして一向に止まる気配もない

 

 下りれば目が覚めるとかじゃなく、そもそもどうやって帰ればいいのか、僕は今までどうやって

 

 

 

……確か、前は眠くなって気づけば

 

 

 

「……ベル・クラネル、さあ」

 

 

「え、さあ?」

 

 

 

 さあ、と言って何をしでかしたと思えば、マーガレットさんが自分の足をポンポンと叩く。まるでそう、膝枕へと誘うような

 

 どういう、こと?

 

 

 

 

「ここはベルベットルーム。今あなた様は眠った意識のままここに至りました。故に、出るには目を覚ますこと。ここで眠りに落ちれば現実の意識は逆に目を覚まします。」

 

「あの、なんだか僕そんなに眠くないんですけど」

 

「眠りが浅いのですね。ご安心を、私の足は柔らかいですわ」

 

 知らない、そんな情報を今聞かされても

 

「……えっと」

 

 見てくる、マーガレットさんがジーッと見てくる

 

 なんだったら、ちょっとそわそわしている。指先がワキワキと、撫でたくて仕方ない雰囲気でワキワキしてらっしゃる。

 

 

「…………」

 

 

 選択肢は、無いのかもしれない

 

 

……ぽふん

 

 

「あら、素直」

 

「…………ッ」

 

 

 横になって、頭を太ももに預ける。確かに、肉付きの良い足は枕にちょうどいい。不覚にも、寝心地は抜群だ。ついでに、頭を撫でる手も気持ちいいし、耳の裏を優しくかかれると息が漏れてしまう。

 

 

 

……なんだか、良い匂いがする

 

 

 

 浅い眠りが、いつのまにか熟睡に。目を覚ました頃には見慣れた天上を見ていた。

 

 すごくよく眠れた。昨日の疲れが嘘みたいに

 

 

 

「…………また、してくれないかな」

 

 

 

 少し揺らいでしまった。マーガレットへの個人的な絆が少し強まったかもしれない

 

 

 

 

 

 

第一章・霊血の命題・・・Fin

 

 

 

 

 

 

 

 

>>NEXT>>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

————誰も夢から覚めない、ちがうな。皆、夢から出ようとしないんだ

 

 

 

 新たな事件が起こる。謎の昏睡事件、首謀者も不明なこの怪事件を解き明かすため彼らは動く

 

 

 

 

————マヨナカダンジョンに行くぞ、この事件は俺達だけが解決できる

 

 

 

————出来ること、きっと私にもあるから、アドバイザーだって舐めないで!来なさい、ペルソナ!!

 

 

 

 救うべき相手は、敵か味方か

 

 

 

 

 

 

————誰も、助けてなんかくれなかったッ

 

 

 

 彼女の抱える闇、ベル・クラネルはまたしても仲間を救う旅路を歩む。

 

 英雄は手を差し伸べた。闇から引き上げることには成功した。だが、それだけでは未だ足りない。救うべきは、さらに深く下の世界。

 

 これは救われなかった者達の物語。嘆きの闇に、彼らは何を見るか

 

 

 

————誰も助けてくれなかった!誰も、わたしなんか助けない!!ワタシナンカッ!!?!?

 

 

 

……いや、見ないでくださいッこんなのは私じゃ

 

 

 

—————救わない皆が大嫌い、皆消えればいい!!そう、ずっと言いたかったッ、これが私のッ

 

 

 

……いや、やめてッ……あなたは、あなたはッ…………あなたはワタシなんかじゃ、ないッ!!!

 

 

 

 

>>next>>

 

 

 

 

第二章・安楽のドリームランヅ

 




次回、第二章をお楽しみに。感想・評価等もあればよろしくお願いします。


 
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