迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4) 作:37級建築士
※Day04の話ですが一部訂正しました。ペルソナは現実でも使用可能に変更しましたので、留意して頂いた上でお読みくだされば幸いです。
Day19~気力回復シルご飯
現在、オラリオでは不確かな行方不明事件が起きている。冒険者や街の住人、人種年齢性別も関係なく謎の失踪を遂げているのだ。そして、そうした一連の事件の中にエイナ・チュールも含まれていた、はずだった。
エイナ・チュールの知名度はここ冒険者ひしめくオラリオではそれなりに高い。彼女の容貌、人柄、魅力的な異性であるということもあってか、世間は彼女の失踪に強く関心を持っていた。だが、結果は数日で無事その保護はなされたという、なんとも人騒がせな結末であった。
もちろん、この情報は統制されたモノである。意図してヒーローの名は明かされず、ただギルドの捜査で発見されて今は治療院で安静にしていると、公的にはそう答え続けている。
なぜなら、ギルドは此度の件慎重に動いているからだ。
今回の怪事件、必ず何者かがからんでいると踏んでいる故に、だがその根拠は?そう、ギルドは秘密裏に知りこれを伏せていた。姿を消して二週間後、変死体となって見つかった失踪者たちの情報を
人が消える噂、裏で何かが企んでいる以上下手には動けない。街のパニックを避けるためにも、今は水面下で動くべき、だがそんな最中に現れた吉報がベル達の活躍である。ゼノスの件とよろしく、またも彼らが事態の解決に関わったのだ。
故に、神ウラヌスは動き出す。フェルズを使わし、彼ら異世界を知る戦士たちを突き動かすべく、盤上の駒をしかるべき位置へと
神も動き出す。対して、彼もまた
〇
夕方、昼から夜に変わる逢魔が時の手前、町並みは雑とした喧騒に満ち溢れている。特に、準備に駆られる飲食店などはそれが顕著だ
ダンジョンから帰路についた帰り道、僕が夕餉を興じようと選んだ店、その店前で呼び込みをするウェイトレスと目が合う。
視線が並ぶだけで心を奪うような可憐さ、純白の白い花びらが咲くように笑顔が開いた。
「ベルさん……こんにちわ、眼鏡似合ってますね」
「えっと、これはまあ事情が……あはは、ありがとうございます」
褒め言葉でこめかみが痒くなる。シルさんはこちらに近づくや、興味深しげにジロジロと顔を覗いてくる
「……視力、悪いってお話は聞いてなかったですよね」
「あぁ、これはその……まあおしゃれみたいなものです」
「へえ、ベルさんが珍しい……ぁ、失礼しました、テヘ」
あざとい振る舞い、しかし可愛いのは確かだ
眼鏡、指摘された通り僕は今も眼鏡を付けている。シルバーフレームのアンダーリム、それもクマ君がどこぞで用意したか作ったか知らないけど、異世界関連の特別な眼鏡だ。
異世界で戦うには必須のアイテム、最近はダンジョンよりも異世界へ行く方が頻度の多いここ最近、つける習慣が身についてしまって気づけば眼鏡をこっちにいるときにもつけている。
このメガネ、不思議と外れないし体になじむし、なんなら裸眼よりも周囲が良く見える気がする。普通の目がよりよくなるなんてどんな眼鏡だって話だけど、そんな話があるのだから仕方ない
「ベルさん、眼鏡も似合いますね。知的で、いつもよりかっこよく見えちゃいます……あ、リュー!ちょっとおいでよ!」
と、店から顔をのぞかせたリューさんにシルさんは呼びかけた。
「……」
普段から眼鏡じゃない人が眼鏡になれば、確かに興味をもたせることかもしれない。アイズさんやティオナさんも僕を見て興味深そうに見て来た。
そんな例になぞらえて、リューさんも僕に近づき、無言でジロジロと見てきて
「……クラネルさん」
……ひょい
「?」
「少し、失礼を」
……ガシ
「――――ッ」
眼鏡を額にあげたと思えば、そこから両の手で僕の顔をホールド、リューさんのすべすべな手の感触が妙に悩ましい、いや今は
「目が急に悪くなったのですね、病の予兆であれば大変だ……今、裸眼の視界では何が見えますか?」
強引な詰問、見えている物を応えるとすれば、クールビューティーエルフの綺麗なお顔があるとしか言えない。
うん、目や鼻、唇、普段から見ていたはずなのに呼応も距離が近いと、ほんと一歩踏み込めばそれはキスの
「――――ッ!?!?!」
湯気が昇る、一人脳内で答えを出すや自滅した。
「あ、あつい……これは、やはり病の」
「……リュー」
「シル、今は大事な……なんですか、その手は」
シルは二人の横で、顔の高さに両手を並べて、一本指を立てて真ん中に寄せた、大体10センチあるかないかの間隔で
「えっとね……この距離が、リューとベルさんの唇の距離、かな?」
「……………………ハッ!?」
ガバっと、僕とリューさんの間の距離が開いた。さっきまでの仏頂面から変わって、今はなんとも真っ赤に染めた頬が愛らしい羞恥顔のことか、フルフルと震えてなのに視線はこっちを見ていて
「……は」
「は……なんですか?」
「はは、破廉恥!!」
炸裂、肩に置いた手が勢いよく掌底、ゼロ距離から放つ一撃で僕の体は遠くへと跳ねた。
宙を舞い、空を見上げながらふと見えた月明かり、すっかり日が落ちて空は一瞬で夜に染まる、どんな状況でも月は変わらず綺麗だ。
地に落ちた。ふと見えた二人、あわわと困ったリューさんの隣、シルさんの笑顔もまた綺麗で、いや綺麗過ぎてどこかおっかない。なんだろう、背後に何か見える、死ではじまる神的な何かが、いやそんなはず
× × ×
「……事件、妙な噂ですか?」
「はい、何かおかしなことを耳にしたら……ぜひお聞かせください」
「それはもちろん、協力であれば喜んで」
店の中、腰を落ち着けてようやく話ができている。打ち身がまだ痛むけど、今は平穏に会話を弾ませている所だ。
そして、流れでついオラリオの異変について少し説明をした。もちろん、異世界云々は省いている。特別な力に目覚めたなんて初見じゃまず信じられないだろう。今度は頭を打ったのかと心配されて首を引っこ抜かれかねない。
たぶん、そうじゃなくても顔が胸元にいったりとか、そんなラッキーハプニングが起きる気がする。気がする。
「……なにか、厄介なことに巻き込まれているのですね」
「は、はい……けど、今は特に困っているわけでは、少し注意を払っているといった感じで」
「……悪に対し、平時においてもぬかりなく情報を探る。ふふ、良い心がけです」
「リュー、なんだかうれしそうだね」
「ええ、クラネルさんにも正義の心が着々と育まれているのです。これは喜ばしい、私も気が良くなってつい頭を撫でて差し上げたいぐらいだ」
「あ、ありがとうございます……でも、撫でるのはその、恥ずかしいので」
「くす……冗談です。撫でるのはシルの役目ですから」
「え、私なんだ……じゃあ、遠慮せず」
「……あぁ、シルさんッ…………うぅ、どうして迷わずしたちゃうんですか?」
周囲の目が恥ずかしい。有名になっても僕はまだ年幼い子供と見られているのか、周囲の目が妙に生暖かい。でも、その一方で特定の男性冒険者からの殺意ある視線が痛くもある。ジョッキを口につけ表情を隠すように酒を煽る。今日一日ダンジョンでたまった疲労と結びつくこの味はたまらない。
普段、そんな積極的にお酒をたしなむわけじゃないけど、今日は特に酒が美味しく感じる。理由はきっと
……ペルソナの特訓、のせいだよね
ペルソナ、そう僕は今日こっちの世界でもペルソナを使用した。まさか呼び出せるとは知らず、なんとなくふとダンジョンの探索中に浸かってみれば巨大な僕のイナバギが天井に激突した。
念のためにヴェルフにも促してみれば同じくペルソナを出せて、しかも周りに他の同業者がいないことをいいことに僕とヴェルフはがむしゃらにダンジョンで暴れまわってしまった。上層というのもあるけど、普段以上にバッタバッタとモンスターを倒していくペルソナの力はまさに豪快、詠唱も無しに多様な魔法を撃ちだせるペルソナがいればもはや後衛も不要、今までの常識が覆る。それほどまでに一騎当千だ
「……ベルさん、なにかにやけてますけど」
「え、あぁ……そうですか、ハハ」
「もしかして、いやらしい事だったり」
「ち、違いますッ……でも、ちょっとやましいかも」
「?」
「あ、その……忘れてください」
やましい、というか少し調子づいてしまった。サクサクと進むあまり、僕たちはリヴィラ手前の嘆きの間でゴライアスに遭遇、普段なら撤退なり隙を見て通り抜けるなんだけど、その日は
……そういや、リヴィラから上がってきた奴ら妙に騒いでたな。何があったんだ
……なんでもよ、誰かがゴライアスを討伐したんだと。出現を確認してすぐ人が集まって、さあ討伐だって戻った時にはもういない、モノの数分で討伐されちまったみたいだな
……それまじかよ、どこの一級冒険者だ?
「…………」
「クラネルさん、顔色が」
「……いえ、少し汗っかきで、飲みすぎですかね、アハハ」
聞こえてくる話、その話とはまさに今日僕が体験した話だ。はい、ゴライアスを討伐したのは僕たちです。
覚醒したペルソナの力、それはもうすごかったよね。あっという間にゴライアスが怯んで倒れて、そして総攻撃で、ほんと一瞬で片が付いてしまった。ペルソナおそるべしである
けど、一つだけ欠点はあった。それは、ペルソナを使う負担だ。霧の立ち込めるあの異世界と違って、ここオラリオのある現実で使うと妙に体が持っていかれるのだ。気力体力、マインドとはまた別のモノが結構減ってしまう。
マインドポーションでも戻らない。頼れるのはあの世界で見つけた食材ぐらい
……回復のアイテムが欲しい。
ペルソナを使う戦闘での回復手段は求める所だ。出きればまた野菜を集められればいいけど、もっとそれ以外にも
「――――」
料理を掬う匙を持つ手が止まる、考えごとにふけって、遠くをぼんやりと眺めるように、けれど俯いている。そんな状態の僕に、シルさんは
「…………はぁ、てぃ!」
……むぎゅぅ
「!!」
頬を包む優しい手、強制的に面を上げさせられた僕はシルさんと目線が並ぶ。笑っているけど、妙に迫力のある怖い顔だ
「ベルさん、一人考え事ばっかでつまらないです。せっかくこうして相手してるんですから、私達とお話ししてください」
「……シル、そろそろ仕事の方にも」
「まだ混む時間じゃないから、大丈夫……ミア母さんもスルーしてるから問題ないよ」
そう言い、シルさんの手は次に料理の肉を指したフォークを取り、そのまま僕の口へ
「?」
俗にいうあ~んなる行為。戸惑い慌てるのが普通かもだけど、今は状況が飲み切れずただ困惑している。そこへ促すように
「……はい、ベルさん」
「え、あぁ……はい」
拒否権は無いみたいだ。一部視線が痛いけど、意を決して僕は口を開き一口。口に含むのを確認するとシルさんはフォークを引き抜いた。肉だけが舌の上に残る。
一噛み二噛み、そして飲み干した。妙に刺激の強い味で、あまりこの店の料理にはそぐわない味。けど、この味に僕は覚えがある
「……あの、これって」
「あ、気づきました? そうです、この私がベルさんの為に味付けして作りました。お味、いかがですか?」
「……あぁ、えっと」
美味しい、とてもいい、そんな言葉を言おうとするけど、妙な体の変化で言葉が詰まる。体に溜まった拾う、消費しきった気力がわずかに回復したような、そうこの感覚は
……ダンジョンで食べた、あのトマトの時と同じ
ペルソナを使用する気力が回復している。シルさんの料理にはそんな効果があるようだ、でもどうして、一体何か理由があるのだろうか
「……ベルさん?」
「あの、また食べたいです」
「え、本当ですか」
パアァっと、表情が明るく花が開いたシルさん。でも対照的にリューさんはどこか凍り付いている様子で、僕の方を正気か疑うような目で見てくる。でも、それはさておき
……この際だし、頼ってみようかな
異世界で有用な回復手段、それがシルさんの手料理なら
「あの、いきなりですけど……お願いが」
「?」
自分は消極的で、人に対して謙遜しすぎてしまうことは自覚している。それでも、今はこの繋がりを大事にするべきだと、自分の為に心から寄り添わんとしてくれる彼女達とのつながり、いわば絆に胸を預けてみたいと、今の僕は自信をもってそう決断できる。
つながり、紡ぐ絆が力に、そして進むべき道になる。夢の中でイゴールさんが告げたあの言葉を、僕は何度も胸の奥で実感している。
紡いだ絆、既に得たはずのこの関係が、今をきっかけとして光を帯びた。無色の糸に光が灯り信頼という血液が循環していく。
「!」
————つながりを感じる。シルさんと僕の間に絆の力が芽生えた、そう感じられる。
愚者からつなぐ光は死神のアルカナ、この絆が冒険の吉凶を示す頼もしき灯とならんことを
次回に続く
今回はここまで、また新しい絆をベルは紡ぎました。役職としてはP5の武見先生ですね。シルご飯でSP回復させていきます、探索がより快適に
ただし、シルの料理は練習期間を挟むのでそんな頻繁には利用できないので悪しからず。試食という生贄役のリューの体調も考えての配慮ですので、以上理由踏まえて一週間に一回のみ利用できる設定です。
シル「ベルさんの為に励まなきゃ。だからリュー、はいあ~ん」
リュー「……ひッ」ガクガクブルブル