迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4)   作:37級建築士

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本編始まります。


Day02~始動

 

 

 早朝から染みつくような猛暑が辛い、徒歩でダンジョンに向かうだけで辟易としてしまう。

 

 バトルクロスは全身を覆う装いだから、それはもうぴっちりと肌で摩擦して熱いったらない服装だ。耐え切れず、今は取り外せる鎧は紐で束ねて背中に背負っている。

 

「ヴェルフ」

 

「言うな、俺だって熱いんだ」

 

「……だね」

 

 鍛冶師を務めるヴェルフとはいえ熱いものは熱い。最近は良く火の傍にいるのがきついと愚痴をこぼしている。

 

 本当に、今年の夏は暑い。誰もがそう辟易と愚痴をこぼす。

 

「……」

 

「おい、ダンジョンに行くんだろ……もう少しの我慢だ、ここの通りを抜ければ」

 

「……だね」

 

 通りの横、涼し気な店内で快適に過ごす住人に目が留まった。

 

 誘惑の手を振り切って歩みを進める。

 

「稼ぐぞ、そしたら今日の夜は一杯やるぜ」

 

「一杯、そうだね」

 

 想像した。キンキンに冷えた淡々なあれを、香辛料と塩見の利いた料理の後に流し込む。

 

 喉奥が締まる感覚、すると歩幅が急に早く

 

「おい、仕方ねえな……じゃあ今日も頑張るか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 気候が変わっても、夢見がおかしかったとしても、僕らの日々は変わらない。

 

 街は猛暑のお陰で魔石需要は大、空調装置の燃料である魔石、食材や飲料品を冷やす冷蔵庫、あと大規模レジャー施設をディアンケヒトファミリアが作ったとか、屋内のプール施設で連日若い男女がにぎわっていると聞く。

 

 そんなわけで、なんにでも使える魔石の供給はギルドからも積極的に通知が来ているわけで

 

 だから今日も僕たちは、戦って戦って、お金を稼ぐのだ。

 

 

 

『グゥォオオ――――――ッ!!!?!??!!??』

 

 

 

「やっちまえ、手前ら行け!! 馬鹿こっち来んな、俺にヘイトを押し付けんじゃねえ!!!??」

 

「……あはは」

 

 モンスターの怒号はもちろん、それ以上に冒険者たちの、同業者の勇ましい掛け声、と言うには少し荒っぽくて、周りに対しての不満不平が4割ぐらい混じっている。

 

 ここはリヴィラ手前の入り口、言わずもがなゴライアスが出る嘆きの壁のある場所だ。

 

 そう、僕らは今ゴライアス討伐を半ば強引に手伝わされている。モルドさんを筆頭に大勢の冒険者が畳みかけている中、僕とヴェルフもその一同に参加している。

 

 

「クソ、こんな時にあいつらもいれば」

 

「……ッ」

 

 いない仲間、リリも命さんも春姫さんも、今はそれぞれの用事で不在

 

 何とか二人、大勢に流されながら懸命に戦闘を続ける。

 

 まあしかし

 

 

「!!」

 

「おお、いいぞ!!さすがリトル・ルーキー……じゃねえ、ラビットフット!!」

 

「やっちまえ、俺たちに楽をさせてくれ!!」

 

 相手にしているのはゴライアスだ。もう何度も、その強さは見てきた。僕も、この討伐戦には慣れている

 

 そしてヴェルフも同じ、だからもう少し

 

 帰りは遅くなるけど、お店が締まる前には片を付ける

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

「結局、長引いちゃったね」

 

「あぁ、さっすがに疲れた……稼ぎの割に合わねえ」

 

「うん、そうだね」

 

 

 長く続いた討伐戦、くたくたになった体を押して地上へと行進。次第に喋るのも疲れて、それでも上へと足を進める。

 

 中層を過ぎ、上層にいたる。五層を超えれば、そこはもうほとんど安全な場所。

 

「あと、少しだね」

 

 時刻は零時手前、かなり遅くなった。神様たちも心配していることだろう。

 

「飯、どうすっか。とりあえず豊穣なら開いてんだろ、飯と酒が残ってたらいいんだけどな」

 

「そうだね、すっかり遅くなっちゃった……はぁ、地上は熱いよね、夜も」

 

 気温が一定なダンジョンの方が、もしかしなくても涼し気だ。

 

「熱い……か、なんか暑気払いになるもんがあればいいんだけどな」

 

「はは、じゃあ怪談でもしたらいいかもね」

 

 少し前、命さんがそう言う遊びを教えてくれた

 

 極東では100人で怖い話をする遊びがあるとか、あれなんか違うかな

 

「怖い話……そんなもんで涼しくなったら世話ねえぞ。それよか、お前そう言う話苦手じゃないのか」

 

「?」

 

「わかんねってか、まあ確かに、創作のオカルト話よりも、現実のモンスターとか、あとは人間、そっちの方が何倍も怖い。特にこの街じゃな」

 

「……まあそうだね、本当にオカルトな話なんて、この街ではないのかな」

 

「そうだろ、オカルトなんてないね」

 

「でも、一つぐらいはあっても」

 

 噂、作り話、その手の話はよく聞く。暑い日が続くと、人は自然にそう言う話を求めるのかもしれない

 

 怖いもの見たさ、好奇心、ちょっとぐらい怖い体験と言うのもしてみたいような、見て見たいような

 

「噂、試してみたいのか?」

 

「……ヴェルフ?」

 

 気が付けば、そこはダンジョンの入り口の門へと続く螺旋階段。

 

 時間のせいか誰もいない、そんな中ヴェルフが

 

「なら、ちょっと遊んでみるか?」

 

「え、なに」

 

 手を引かれ、地上に出て、そして足が止まる。

 

「まさか、何か」

 

「おいおい、もしかして怖気づいていんのか?」

 

 煽るように、どこか楽しげな様子で語り掛ける。

 

 ヴェルフの顔、今だけは弟をからかって遊ぶ兄のように見える。

 

「興味あんだろ、なら試してみようか……そういや、前に面白い話を聞いたな」

 

「……どんな話、怖いの?」

 

「いや、というよりは夢のある話だな……ませっかくだ、好奇心こそ冒険の第一条件、ベル、知っているか?」

 

 時計の長針が分を刻む、あと少し、その先に

 

「深夜零時、ダンジョンに足を踏み入れると、そこは見たことの無い夢のような場所。お宝取り放題、魔石も鉱石も、とにかく金目のものがざっくざく……いわば、ダンジョンのボーナスステージがあるらしい」

 

「ぼ、ボーナスステージ?」

 

「ていう噂だ……あと数分、試してみるか?」

 

「……うん、おもしろいかも」

 

 奇妙な話、怖い話とはまた違うけど、これはこれで興味を誘う。

 

 うまい話には裏があるというけど、まずは確認してみないと始まらない。

 

 

「ヴェルフがいいなら、ちょっと興味があるかな」

 

「よし来た、こんな時間にダンジョンにいるのも珍しいしな。せっかくだ、ちょっと遊んでいくか」

 

 門を出て、地上の広場を目にする。

 

 誰もいない、ちらほらと人はいるけど、だれも見向きはしていない

 

 振り返り、外と中をつなぐ境界を見据えながら、僕たちは時計を見る。

 

「秒読みだな、同時に足を踏み入れるぞ」

 

「うん、なんだかドキドキするね」

 

「そうか、かもな……ま、外れなら外れでいいさ。そしたらこの噂は誇張して弄って、飲みの場で言いふらしてやる」

 

「ははは、なんだか悪いね」

 

「たまにはいいだろ、悪戯も時には必要……っと、あと10秒」

 

 手に持った懐中時計、その秒針の音がやけに響く。

 

 

……7、6

 

 

 心臓の鼓動と混じって、体の中で音が大きく

 

 

「行くか、せえのっ」

 

 

……4、3

 

 

「嘘か本当か、正体見たり、マヨナカダンジョン!!」

 

「え、まだ……てあっ」

 

 

 

……1、0

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

―――ドクンッ

 

 

―――ドクンッ

 

 

「……はっ」

 

 意識が飛んだ。前後が無くて、それにどこか静かに過ぎる

 

 さっきまで、魔石の照明で中は照らされていたのに、今はすごく暗い。門が閉じられたのか

 

……あれ、ヴェルフは

 

 僕より1秒か2秒早く足を踏み出した。そのヴェルフは

 

「……ヴェ、ヴェルフ?」

 

 いない、門の外に隠れたのか

 

 いたずらに思えた。ヴェルフが僕をからかって、すぐ外に隠れたのだと

 

 けれど、ここは

 

 

「……ッ」

 

 バベルの一階、奥にはダンジョンへ続く階段

 

 外に出る出口は大きな門なのに、そこは何もない

 

 壁しかない、歪んで、波打つ波紋が気持ち悪い。壁も床も天井も、不気味な模様で彩られ、薄暗い光は煙のような霧で余計に霞む

 

 

「どこだろう、ここ」

 

 

……覚醒………近……

 

 

「?」

 

 

 

……双眸……開き

 

 

「……誰」

 

 

 声がする。霧の奥、ダンジョンへと続く螺旋階段の方から

 

 

「行くしか、ないのかな」

 

 

 ここがどこか、最後にヴェルフが言った言葉が頭の中で反芻する

 

 マヨナカダンジョン、本当にそうなら、ここが冒険者にとっての夢の場所なら

 

 

「……ッ」

 

 立ち止まっても始まらない、前に進むしかない

 

 

 

 

 

 

 




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