迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4)   作:37級建築士

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前半胸くそです。


Day21~悪なるモノ

 昨今、オラリオで起きていた怪事件、原因不明の失踪事件が人々の耳に広く伝わりだしたころ。あるものが次のような噂をつぶやいた。

 

 知っているか。失踪していたはずの何人かがもう見つかったらしい、と

 

 

 怪事件、原因不明のその噂には多くの尾ひれがついていた。果てはイヴィルスの台頭、さらにはダンジョンの悪魔に手招かれたからなどと、得体のしれない情報に様々な憶測が混ぜられ噂はより奇妙におぞましく変貌していった。

 だが、その噂も真実という浄化の一滴が落ちるや一気に色を澄み渡るものへと変えていく。

 

 失踪という事実は消え去りはしなかったが、少なくとも失踪には明確な犯人がいて、誰かが悪事をしているだけだと、であるならじきに解決されるはずだと、要は正体不明なものへの恐れは消え去っていった。皆が恐怖心を捨てて噂を忘れ去る流れは次第に始まっていく。

 

 真実を得た噂は噂にあらず、そして消え去り行くばかり

 

 

 

 オラリオではびこるかに見えた噂、鏡の悪魔がヒトを飲み込み食らっている、そんな噂は誰もが笑い話として軽く言い流すか、そして記憶の隅に置き自然と消し去ってしまうかのいずれか 

 

 そのような結末に落ち着いたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真実が混ざる噂に人々の関心は宿らない。実態を持たないからこそ噂は噂成りえるもの、そのことを男は深く理解していた

 

 異世界の存在、シャドウがもたらす世界の変遷、いまだその真実は秘匿されなければならない。ゆえに、必要なのは噂

 

 

 噂を絶やしてはいけない、恐れを忘れさせてはいけない

 

 

 

 計画を成功させなければ、ここまで何度も、一人ずつ一人ずつやってきたのに

 

 

 

 たった、たった一回。私怨で送り込んだあの女が助かってしまうから

 

 

 

「…………理解できねえ、なんで邪魔をする」

 

 

 

 どうして、なぜ助けるなんて輩が出てきた。なぜあの世界に入って正気でいられる。理解できない、腸が煮えくり返って気がおかしくなる。

 

 理解できないことをする奴は邪魔だ。

 

 邪魔だとわかってはいる。だが、今は動けない。やり場の無い怒りが手足にたまってうざったい

 

「クソが、くそったれ…………なんで、俺の思い通りにならねえ。俺は、こんなにも必死にやってんだ……思い通りになれよ、なんで俺の自由にならないッ」

 

 

……グシャ、メキッ

 

 

「…………ーーーーァ」

 

 

 路地裏、酒瓶や木樽の破片が散る汚い小道、人気もなく掃除も行き届かないそんな場所で、口汚く叫ぶ男の声が反響している。

 

 月のない夜。町の明かりのみで照らされる薄暗い夜、男の姿は建物の陰に半ばのまれたまま、そしてその手足は影の奥に隠れた何かを徹底して痛めつけている。

 生身の何かを殴る音。最初は声も響いていたが、次第に声も薄れ殴る音だけが一定間隔で響くのみ

 

 

 

「あぁ…………面倒くせえ、新しいやり方を見つけなきゃいけねえ。クソ、考えろ……俺ならできるはずだ。俺は努力をしている、才能もある……あぁ、落ち着かなきゃなぁ。なあ、お前もそう思うだろう」

 

 

 

……ガシッ、バキッ

 

 

 男はナニカをつかみ上げた。やっと光にさらされたそれは、血まみれだがかろうじて人の姿に、それもエルフの女性のように見える。

 血の泡を口から漏らしながら、女は何度ものどをえづかせ声を出そうとしている。のどをつぶされているせいか、その声は鈍く奇妙な音にしかならない。痛みも壮絶であろうに、しかし女は繰り返す。命乞いの謝罪を

 

 

「……なんだよ、何も聞こえねえよ。俺が喉をつぶしてやったことを恨んでんのか、俺がお前みたいな亜人のメスに恨まれる? そんなことは道理に合わねえだろうがッ……俺を否定するお前に俺を恨む権利は無いんだよ。それもわからねえなら俺の意に逆らうな、俺が正しい、俺が間違えたことは一度たりともねえ…………あぁ、なのに、みんな俺を否定して、そんなのは、道理にあわねえだろうがよぉおおおッ!!!!!」

 

 

「――――ッ!?」

 

 

 女性は理解できなかった。肉体も精神も追い詰められているとはいえ、それでも男の言う道理が理解できなかった。わからない、なぜ、いったいどうして

 

 そうこう思考を混乱させていた内に、気づけば男は何かを取り出している。それは、長方形の小さな手鏡に見える。だが、鏡には何も映っておらず、見えるのは

 

 

 

「……い、や……タスケッ」

 

 

 助けて、その言葉の先はない。女性の声は二種類の音につぶされたからだ。水気のある何かをつぶすぐしゃりとした音、そして硬い質感の何かが跡形もなく砕かれすりつぶされていく音、悲鳴と二種の破砕音で奏でる三重奏。 

 女性の命乞いは男の精神を逆なでするだけであったが、その音色だけは男の表情に和やかな笑みを浮かばせるに成功した。

 

 影が消える。姿があらわになった男は何事もなくその場を立ち去る。

 男がいた場所、そこにはまるで何かに空間後と削り取られたかのような不自然な後だけが残るだけ、血痕の一滴も何も残っていない。

 

 のちに、オラリオで一軒の失踪事例が報告された。下級冒険者の女性が、一切の原因不明の失踪を遂げてしまった。だが、女性はダンジョンに行っていこう目撃された情報はなく、自然とダンジョンでの死亡として書類が通過してしまった。

 

 一層へつながる広間の慰霊碑に、刻まれてしまった女性の本当の死因が見つかるのは、まだ当分先のこと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 連日、マヨナカダンジョンの探索を繰り返し僕とヴェルフはフェルズさんの依頼を完遂した。

 

 行方不明者は次々と発見が報告され、そのお陰か知らずクマくんも人が送られてきたという知らせも無し。ひとまずこれにて日々は安息を迎えた。

 

 無論、気を払うべきことはいまだ多くあるが、せっかくできたこの日々に僕は優先する時間を設けた。そう、もうエイナさんを助けてから半月近く経とうてしている。日が流れるのはあっという間だ。

 

 

 そして、今日も僕はこの場所へ足を運ぶ。

 

 

  

   ×   ×   ×

 

 

 

~ケヒトの治療院~

 

 

 

 

 夕方、一人足を運んだ先はケヒトの治療院、エイナさんが入院している病院だ。

 

 慣れた振る舞いで足を運び、いつものごとく手続きを済ましていく。ここ連日通い続けているせいか、すっかり看護師の人たちや病院患者まで僕のことを知るようになった。 

 

 例えば、今受付をしているこの看護師さんは、確かエイナさんの担当で何度も話を伺っていたりする。向こうも顔を知っているから、どこか他人行儀な感じはしない。

 

「はい、受付は以上です……ベル・クラネルさん」

 

「!」

 

 名前を呼ばれた。つい面食らって受付の看護師さんの顔を見てしまう。僕より年上で、それに看護師という見た目も相まってなんと美麗なことか、面しているだけで緊張はほぐれない。

 

 

 普段の受付の時の服装、であればこんなにどぎまぎはしなかっただろうけど、そのミニでタイトなセクシーナース服、いったいどこの主神のケヒト様的なお方の趣味なのだろうか。

 

 アミッドさん、出る所も出ていて、なんとも目のどくなお姉さんだ

 

 

 

 

「あの、視線が少々」

 

「……すみません。あと、お察しします」

 

「それはどうも……はぁ」

 

 

 苦労の多い人だ、そう思えば頭の中で手を合わせて拝んでしまいそうだ。絵物語の男神も大抵女神を振り回してばっかりだし、あながち女神と見ても相違ない。苦労の女神、ああ、おいたわしや

 

 

「……さ、これで受け付けは終わりです。どうか、気を付けて」

 

「はい」

 

 請け負った。礼を交わし、受付口を離れ僕は後ろで待つ彼女の元へと

 

 

「……ありがとうね、ベルくん」

 

「いえ、これぐらいいくらでも…………あ、立たないでください。僕が介助しますから」

 

 そう言い、僕はエイナさんの上半身を持ち上げて用意していた外用の車椅子へ移動させる。

 正面から脇の下に腕を通して抱きつくように、エイナさん抱えて行うこの行為、密着しているせいもあって恥ずかしさは拭えない。

 

 少しばかり、持ち上げた感じではやせたようにも思える。ゆっくりと慎重に椅子に座らせて、面と向かったまま顔と顔の距離が開くと

 

 視線が並ぶ。お互いに気恥ずかしくなりすぎず、そして遠すぎない距離感。目が合ったから、先にエイナさんからありがとうの言葉を使われた。

 柔らかく微笑みかけて、感謝の言の葉を送る振る舞いはどこか育ちの良いお嬢様のようなおしとやかさを感じてられてしまう。

 

 車いすに坐して、入院患者の服の上に私服のコートを羽織った姿。

 

 入院中の身の上であるのに、なんだかその心持ちが妙に安らいでいる。大変なことがあったのに、今は何かすっきりとしているような、肩の荷が降りているような印象がある。

 

 

「…………」

 

「……スコート」

 

「!」

 

「ボケッとしてないで、ほら…………今日はつきそってくれるんでしょ。エスコート、お願いするわね、ベル君」

 

「……はい」

 

 呆けた意識、ピシャリと冷や水を浴びせられたような気分になる。エイナさんの手が、気づけば僕の手をとってしっかりと握ってくれている 

 

 くすりと微笑んで、してやったりといった感じにエイナさんは微笑む。楽しそうに、何もストレスもない、そんな様子に改めて気持ちがほっとした。

 

「……じゃあ、行きましょうか」

 

「ええ、それじゃあ運転手様、お任せしますね」

 

 安全運転でと、まるでタクシー馬車の御者にするようなやり取りで、僕も応じて了解と返す。笑い混じりの返し、けど車イスの押手を持てば気もしっかりと張ってくる。

 

 安全運転、アミッドさんに見送られて玄関を出てスロープを下る。

 轍の音はカラカラと、車輪を転がし僕らは進む。日の光、風は清らかで心地よく、エイナさんの体を障る心配はない。

 

 天候は爽快なり

 




今回はここまで、投稿が遅くなり申し訳ない。

本当は前半の謎の男のくだりだけで話書き上げていたのですが、なんか読んでて楽しくないので省略し、そして内容を変えたりしてるうちに時間がかかりました。以上言い分け的なサムシングです

次回、エイナパートの続き、そして覚醒回になります。次回予告でも示しましたが、エイナ嬢がパーティーに参加します。オリジナルペルソナをお楽しみに




追伸:勢いでアミッド出したけど、アルカナどないしよ。
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