迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4) 作:37級建築士
今回の投稿にて、閑話休題の1.5章は終わりです。二章はまた期間を置いてから執筆していきます。
異世界で見たこと、あの学園のことをエイナさんが思い出したのは目覚めてから二週間ぐらい。はじめは記憶もあいまいで思い出せないエイナさんも時間が来れば自然と思い出してきたのだ。
でも、肝心な消える直前、どうしてあの世界に落ちてしまったか、それはわからないとの一言。ミィシャさんが傍にいた時に一瞬で消えたらしく、だから本当に神隠し、鬼隠しなどと称される古い民間伝承のような事件として扱われてしまう。
でも、ただ一点。証言とも取れないような情報、だけどその情報は僕たち異世界を知る者にとっては値千金
あの日、エイナさんは鏡を見ていた。
〇
快晴と豪雨が不規則に入れ替わる日々、けど今日という日は珍しく風も吹いて気温も穏やかだ。夏らしさはぬぐえないけど、幾分かは過ごしやすい。
日の当たる場所はさすがに熱いけど、日を避ける天蓋のある歩道を行けばさほど苦でもない。車いすには日よけの傘も入れてあるからいざとなればさせばいい。
まだ入院中のエイナさんを外出させるにはちょうどいい天気なのは良好だ。街を歩けば人通りも多すぎず、車いすを介助するのも苦にならない。少し休日の遊びのごとく寄り道をして物を買ったり出店で氷菓子を食べたり。
久しく食べる外の甘みは、エイナさんを綺麗な笑顔に変える。
「ん……はぁ」
「……どうかしました」
「ううん、ちょっと体を伸ばしただけ。椅子に座りっぱなしだと、腰が疲れちゃうね。ねえ、ちょっとぐらい」
「駄目ですよ。お医者さんからはあまり歩かせないよう言われてるんですから」
「うぅ、ケチ……ベル君のイジワル、薄情者」
「あはは……ダメったらダメです。」
たわいのない会話を挟みながら、僕らは街を歩く。
車輪を転がし、目指す場所へ。今日は何も目的泣く街を歩いているわけではない。行くべき場所は、最初から決めている。
かねてから決めていたこと、エイナさんが目を覚まして以来、通院して顔を合わすたびに僕はエイナさんの話を聞き続けて、今日この予定を組んだのだ。
でも、この予定は楽しむものではない。だって、今から行くのは
「…………おっ……とと」
「きゃ……びっくりした。ベル君、安全運転でね」
「は、はい……すみません」
石畳の道、二本の足で踏み歩く分には問題なかったが。車いすとなると少し危うい。
通行人が道を譲ってくれたり、時折向けられる視線が興味深そうなものだったりと、普段歩く時とはやはり変わってくる。
「すみません、慣れてなくて……でも、気を付けて」
「ふふ、くすす」
「?」
戸惑う僕に、エイナさんがちょいちょいっと指で誘う。無言で、何をしたいのかわからず少しかがんで隣に並ぶ
すると、ふわりとした感触が前髪を払う。優しく髪を撫でて、指を立てて漉いてくれた。周囲の視線が妙に生暖かくなってきて、少し恥ずかしい。
照れくさくて、止めてくださいと離れるのは簡単だけど、病人を相手にしているからなのか妙に跳ねのけられない。柔和に笑みを見せるエイナさんを、僕はただ拝むだけしかできない。
「冗談、ちゃんと感謝してるから……だから、気にしすぎないでね」
「……はい」
「うん、よろしい……さ、もう一度運転お願いできるかな?」
「…………はい!」
威勢の良い返事、エイナさんのためならと心は少し昂ってしまう。
頼られたい、認められて褒められたい。そんな気にさせるエイナさんは本当に姉のようだ。
異世界で疲弊し病室で過ごし続けたこの日々、調子を取り戻したエイナさんと僕の関係はずっとこんな感じだ。その顔色には暗い影もなく、むしろ何か重いものが降りているような感じすらある。それがシャドウを倒したおかげか、確かなことはわからない。
けど、今はそれでいい。またいつもの関係に戻って、このいつも通りの日々を実感で切ればそれでいい。僕のオラリオ生活の当初から、エイナさんはずっと寄り添ってくれた。いっぱい指導されて、時には怒られて褒められて、胸が暖かくなって落ち着いてしまう。
「……はぁ。やっぱり、もったいないよね」
「?」
ふと、つぶやいた言葉。振り向き、僕を見ながらエイナさんは続けて
「うん、もうすぐ退院だから……ベル君に相手してもらえる時間、すごく楽しかったから」
「……そうですか。楽しかったですか」
「楽しかったね。入院なんてするものじゃないけど、君がかいがいしくお世話してくれのはなんだか役得だなって。ふふ、いつもは私がお世話する側なのに……ほんと、いっぱい君に甘えちゃったなぁ」
「エイナさんが、僕に甘え……そんな、僕はただ」
「うん、いっぱい甘やかしてくれた。ご飯だって食べさせてくれたし、でも着替えは手伝ってくれなかったね」
「あ、当たり前です……ぼく、その……あ~んだってすごく恥ずかしかったのに」
思い出す。そう言えばエイナさんは確かに甘えてきたというか、少し我がままだった。
ご飯を食べるときにも、食べられないから食べさせてっと、普段は絶対見せないそぶりてぶりで僕を乱してきたのだ。
……猫なで声、あざとい台詞、でもかわいいのは否定できない
「……おにいちゃん、って呼んでもいい?」
「い……エイナさんッ」
終始こんな感じだ。退屈な入院生活を乗り切るために、僕をからかうという新しい趣味に目覚めたというのか
本当に、エイナさんには敵わない。
〇
バベルで封をされたオラリオの中心点、誰もが知るダンジョンへの入り口の手前、地上とダンジョンを分ける境界にその慰霊碑は存在する。
ダンジョンで命を落とした冒険者、その名前が延々と受け継がれていくのだ。
そう、今日の予定とはお墓参りなのだ。
~ダンジョン入り口・大広間~
献花の花束は何時もそこに置かれている。定期的に訪れる色んな人のモノで、慰霊碑は常に花弁が落ちている。僕は、ここに来る道中で用意した袋から花を取り出す。エイナさんも、今は車いすから降りて僕と二人慰霊碑の前にひざまずき花を置いて祈りをささげる。
時折通り過ぎる同業者の足音、それだけが響く。墓地のように、ここは静かだ。それはきっと、周りの人が気を使ってくれる気風が立っているから
死者へ祈りをささげる時間、それは誰にも邪魔はされない。僕とエイナさんは二人、この静謐な対話の時間に集中する。
「……久しぶりだね、マリス」
一言、その言葉を。
僕は知っていた。依然、エイナさんがどうして冒険者に冒険をさせたがらないのか気になって、それを同僚のミィシャさんから伺ったことがある。深くは知ることが出来なかったけど、でもエイナさんにとって今のやり方には確かな傷が、過去の出来事から生じた影が心にかかっていたから。だから、あの世界でも変容はあのように
多少、うがった要素こそあったがそれでもエイナさんが僕たち冒険者を想ってしてくれていたことには変わりない。
そして、そう背負い続けたことで痛みになっていたことも
今は、エイナさん自身も理解している。
「……うん、ごめんベル君……ちょっと、いいかな」
「はい、肩ですね」
中腰の態勢、車いすを要する手前今のエイナさんはどうにも体力がない。肩を貸して背負うように立たせて、そして車いすに座らせる。
エイナの重さ、少しだけまだ軽い。
「あの、もう戻りましょうか……少し、疲れてるみたいですし」
「うん、そうだね……車椅子、座ってるだけでも結構疲れるみたい」
ベル君も今度座ってみる?と冗談めいて口にする。
慰霊碑で祈りを捧げたばっかりで、センチメンタルになった手前少し強がっているように見えてしまう。
マリスという人の思い出、その感傷で涙腺が緩んでいるのだ
「……心配?」
「ぁ……それは、もちろん」
心を見透かしているようにエイナさんは聞いてきた。
「うんうん、ありがとうだね……ねえ、少しいいかな」
「……はい」
手招き、今度は正面から。
僕は片膝をつき、エイナさんの前でかがむ。視線が低く見上げるようにエイナさんを見る。でも、まだ手招きする手の動きは違う。そうじゃない、もっとこっちだよと
僕は意を決して頭を前に、そうすると僕の額にふわりとした感触が包み込むように触れて来た。
カーディガンの薄い布地、それと病院服のこれまた薄めの布地。意識してしまうぐらいに、その装いは柔らかさと暖かさを直に伝えて来るものだ
「……え、エイナさん」
「大丈夫、今は人も通っていないし……ほら、お礼のなでなでぐらい受け取ってよね」
こういう時じゃないと、君にお姉さんとして振舞えないんだからと、またも揺さぶるセリフで精神もかき乱してくる。
鎮魂の間で僕はいったい何をしているのだろうか、なんとも妙な気分だ。
「……マリス、見ているかしら」
「!」
「ごめんねベル君、ちょっと自慢したいの……思えば、こうして向き合うのもずっと避けてたから。だから、いっぱい報告しないとね。私は今、元気にアドバイザーをしています。」
「……」
静かに、エイナさんは何かを語りだす。でもそれは一人語りじゃなくて、確かな対話の言葉だ
僕の知らない人、でもその間には確かな思い出もあった。つながりは重く、故に傷になった
あの焼却場、あそこはエイナさんの痛みだ。燃え続けて灰になって、何も色が無くなるほどに燃えてしまった痛みの記憶。背負い続けてきたそれは確かな信念となってエイナさんの今を作った。でも、それは同時に心の影を生んだ。
————いなくなるな、私の言う通りにしろ
エゴイスティックに、サディスティックな支配者になってでも、エイナさんは僕たちを失いたくない。それは、今もきっと変わらない
「……ま、せん」
「へ……もう、急に喋らないでよ。息、変なところに当たっちゃったじゃない」
「……エイナさん」
僕の頭を抱きしめる両手、口惜しくはあるけど今はその拘束から抜け出ないと。雪の降る朝に布団から出る時と同じぐらいか、それ以上の誘惑を振り切って今一度エイナさんと向き合う。その眼は、微かに潤いを帯びていた。
「僕は、いなくなりません」
「べ、ベルくん」
戸惑うエイナさん、その顔が赤く染まっていく。僕はエイナさんの手を握って、その眼をまっすぐに見て言葉を続ける
「いなくなった人たちは戻らない。だから、その人たちの分まで僕はエイナさんの傍にいます。だから、僕はいなくなりません。エイナさんを悲しませないから、だから……信じてください」
身勝手な願い、危険に身を置く以上この言葉には何の保証もない。僕はいつか大ウソつきになるかもだ
でも、最後まで貫き通せばこの言葉は本物になる。未来がわからない以上、今の僕が折れるわけにはいかない。僕はエイナさんの為に、この虚言を本気で真実にする。
僕も男だ、それぐらいの気概と覚悟ぐらい示して見せる。
「……は、はずかしい」
「駄目です、信じてくれるまでは」
離さない、そう告げるやさらにエイナさんの顔が真っ赤に、それはも今にも融解しそうなぐらいに
「わ、わかったから……ギブ、ギブアップ!! もう許して!!」
迫る僕の迫力に耐え切れず、エイナさんは真っ赤な顔で降参を告げた。
奇しくも、僕はこの時をもって入院中の見舞いのたびにどぎまぎされた数々の仕打ちに対して報復を成功させてしまったのだったが、そのことには未だ気づかない。
第一章乃続~幕間の日常劇・・・Fin
……ドクンッ
汝、新たなアルカナを紡ぐ。
……ドクンッ…………ドクンッ!!
「!?」
————力を感じる、僕とエイナさん絆に新しい光が灯された
愚者からつなぐ光は節制の絆、調和を尊び最良の答えを示してくれる聖者の秤。
道を示す正しき秤は常に僕の傍で寄り添ってくれる。僕が進む道は僕が決める。だから、エイナさんがくれたこの秤は、ずっと僕の中に
……ドクンッ
「……エイナさん、僕は「きゃ!」……へ?」
急に響いた甲高い声、車いすから飛びのいて僕に抱き着いて、その勢いで肩が顎を勝ち上げていたい。というか口の中に鉄の味を感じる。
……口の中、けがを……いや、今は
「いま、だれか近くに?」
「……?」
「あれ、でもいない……ベル君、何かしたの?」
取り乱した様子。エイナさんの質問に僕は首を横に振る。本当に何もしていないからだ
「あれ……えぇ……なんなのよもぉ」
あたりをきょろきょろと見渡す。でも、僕とエイナさん以外には誰もいない
気のせい、にしては妙に大きな驚きようだ。いったい、なにが
「……声、した。呼ばれた、のに……なんだったのよ、もう」
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第二章・安楽のドリームランヅ
……前回のあとがきにて、エイナのペルソナ出すよ!!
……みたいに言っていましたが、あれは嘘だ。
……ヤロウオブクラッシャーッ!!!!
以上、エイナとの絆パートでした。ごめんなさい
今回はアルカナまで、エイナさんには節制のアルカナを与えました。節制と言えば僕は川上貞世がP5で一番好きで、年上ヒロインで先生ポジなのもあって相性良いと判断。べっきぃみたくメイド奉仕するエイナさんも幕間で書くべきか……
あまり関係ない事ばっかり喋ってもあれ何でそろそろあとがき、今回で1.5章は終わり、次回より第二章に移行します。
エイナのペルソナ、本当はこの話で登場させたかったんですが、物語の都合もう少し暖めておくことにします。次の投稿は何時になるかわかりませんが、次回をお楽しみに。エイナだけに限らず、他のキャラクターもいっぱい活躍させたいなぁ。
感想・評価等頂ければ幸いです。モチベ上がって執筆、二次創作活動が捗ります。