迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4) 作:37級建築士
ベル様が異変に巻き込まれた、そして自ら異変に飛び込んで、その結果不可思議な力を手に入れた
聞かされた話は未だに眉唾で、だけど実際に見せられたあの力を前に何も否定文は出てこない。認めるしかない
別に嘘だと否定したい訳じゃない。ただ、事件というのを期に私の知る大事な人は、少しだけ遠くに感じるようになってしまった
支えている自覚はある。指揮を執るようになってから私は少しは変われたんだって思った。だけど
……リリは、ベル様の役に立つのかどうか
そんな疑問を浮かべて、そしてマイナスな自分は否定の答えを浮かべてしまう。卑屈に、今のままでは足を引っ張るだけではと
……リリはベル様の役に立ちたい。足手まといになりたくない、だから
……だから、リリは
〇
~オラリオ~
地上に戻ったベル達一向、ギルドについてからはすぐ新種のモンスターの討伐記録。倒したブルーベスパからのドロップアイテム等も含めて提出し、結果それらは高く価値を認められ賛辞と共に報酬を頂いた。
通常で換金するよりも、ずっと色よくつけられたのがこのモンスターの生態調査及び討伐にギルドは褒章を掲げていたからだ。そして、見事成果を得たベル達はかなり羽振りの良い体でギルドを後に、そしてその足で寄ったのはいつものあの場所。そう、豊穣の女主人である
潤った財源でいつもは頼まない少し良い目の酒を開けて、いつもは頼まないお高めな料理に舌鼓を鳴らす。
宴は騒々しく、周囲の空気も織り交ぜて酒気帯びた笑顔と喧騒が絶えない愉快な空間が出来上がる。普段は酒をたしなまないベルですら、頬を全て真っ赤に染めるぐらいにはジョッキを仰いでいた
一方でヴェルフも気を良くし名も知れぬ臨席と絡んだり、とかく今日は酒の美味い日だ。それもこれも、報酬を得られたのはペルソナのお陰
はっきり言うなら、二人は少し浮かれ気味なのだ
事件を終えて、ふと我に帰り気づいてしまった。掛け声ひとつで呼び出せる格好良い半身、つまり二人は健全な男の子である
お伽噺の英雄のように、派手で爽快な特殊能力を実際に使えるようになって、心が踊らないわけがない
× × ×
「……ん、ぷは」
「おう、良い飲みップリ」
「いやぁ、あはは」
ジョッキを煽りアルコールの火を体の中にくべる。ベルもヴェルフも気分よく四杯目の酒に手を伸ばした
酒の場で飲みに慣れていくのを実感していく。度胸がさらに身に付いていくのをベルは感じた
「お二人とも良い飲みっぷりですね。でも、そんなに飲んで食べて懐は大丈夫ですか」
「……シルさん」
喧騒の耐えない店内、その透明感ある声はベルの意識をピンポイントに刺激し、そして振り向かせることに成功する。
自覚があるのか、シルはいじらしい笑みを浮かべてベルの顔に朱色を塗りたくった
「空ジョッキをお下げします」
「……ぁ、はい」
いたずらに成功して満足したシルはてきぱきと食器を山と抱えて片し、そしてすぐにもどってその手には注文用紙とペンが
「羽振りがいいみたいですね。あ、今日はこのほほ肉煮込みがおすすめですよ。原価も売値も高いから売れなくて困ってたんです。三人前でいいですか? あ、三人前でいいですよね……ね!」
「……シルさん、それ押し売りです」
「ダメですか? 頼んでくれたら惚れ直しちゃいますよ」
「……一人八千ヴァリスですよね?」
「頼んでくれたらサービスしますのに。焼きベーコンに小玉ねぎのグリル、トッピングも注文用紙に書いてあげます」
「いや、トッピングもちゃんと料金書かれてますよね……それ、勝手に頼んでない料理買わせに来てますよね!」
「あちゃぁ、ダメですか」
あざとく舌を出して笑う。困るベルに対して横のヴェルフは酒の肴にでもしているのか飲んでは笑ってそして飲んでいる。
リリはリリで不機嫌そうに、ちびちびジョッキを口にしながらもベルをにらんでいた。
「……し、シルさん」
「ごめんなさい、少しからかいすぎました……でも、本当にこれあまり売れなく困っているんですよね。ミア母さんが腕によりをかけて作ったのに。トホホです」
「それは…………うん」
少し考える。懐の金の心強さは問題なく。少し考えてから
「皆、僕これ頼もうかと思って……いいかな」
「まあいいんじゃねえか、そろそろつまみが足りないと思ってたところだ。あ、頼むなら葡萄酒をくれ……真っ黒に煮込んだ肉料理なら真っ赤な酒を用意しねえとな」
「……お好きに」
対極的な反応、しかし二人とも肯定の意を示した。
「……じゃあ、三人前で」
「ベルさん……もう、素敵です」
顔を赤く、わざとらしくも愛らしくシルは喜んで見せた。小悪魔とわかってはいても、その魅了には逆らえずベルは面食らってしまう
「なんだか無理やり頼ませたみたいですみません。でも本当に嬉しいです。ミア母さんのとっておき、とっても美味しいのは保証します」
「それは、なんとも楽しみです」
「三人前も頼んでくれて、本当にうれしいからサービスましちゃいます。ベルさんだけ、今日一日セクハラしても許しちゃいますから……あ、料理できるまでお尻触りますか?」
「さ、触りません!」
「ふふ、本当に触ってもいいのに……あ、洗いもの貯まってたの忘れてた! すみません、この続きはまたあとでッ」
なんとも都合の良い忘れていたを屈指してその場を後にする。脱兎のごとく離れた理由に、おそらくリリのくっと睨む容貌が関わっていることは間違いない
「……アハハ」
「…………フン」
「多分冗談で、その、えっと」
言葉の後ろがどんどんすぼんでいく。自身の無い声、ベルは項垂れて結局謝った。リリはぶっきらぼうな面のまま、横のヴェルフは楽しそうに笑ってばかり
「尻を触りたいならお好きにどうぞ。あ、席を外してあげましょうかベル様?」
「……ごめんなさい」
「ふん、すぐ伸びる鼻の下は信用できません」
…………リリのお尻ではダメだというのですか……ボソボソ
「?」
「おい酒がなくなったぞ、すんませんエールおかわり!」
のんきに酔うヴェルフの声が場の空気にそぐわない。リリの気を損ねているようで少しだけベルはヴェルフを恨んだ
お茶らけた酒の場の空気が少し落ち着いた。そのせいかベルもリリも酔いの気が冷めていく。未だエールを煽って赤いままのヴェルフに対し二人は同時にお冷を口にした
「……少し、浮かれすぎですね」
「うん、ちょっと自重する」
気を良くして羽目を外しすぎた。その思いはベルも同感であった。
気分的にはこのままお開きになるかもだが、今更料理をキャンセルできるわけもなくそのまま坐する。
「く……かぁぁ、酒が旨い。お前らどうした?もう飲まないのか?
「ヴェルフ様も羽目を外しすぎです。まったく、お二人と来たら」
「?」
「く、んっく……ぷはぁ、お二人とも浮かれすぎですよ。ペルソナの力を得てから調子に乗っていますよね
言いよどみ、コップの水を一気に飲みしたと思えばリリは説教モードになって一喝。ベルとヴェルフも目配せをして
「まあ、そうだな」
「否定はできないね」
素直に反省
「反省してください。いくら化け物のごとく強い力を……」
力を、その次の言葉に少し言いよどむ
「?」
「……強い力だからこそ、もうすこし自重してください」
「おいおい、自重って……使うなってことか?」
「ヴェルフ様、リリは調子に乗らないようにと言っているのです。それはまあ、冒険で役に立つ以上存分に振るっても構いませんが」
「が、なんだよ?」
「……」
「なんだか煮え切らねえな。リリ助、お前気にし過ぎじゃねえか……魔剣はすぐに使え使えって言うくせによ」
「魔剣とは違います。というか、リリは別に使うなとは言ってません……ただ、浮かれないよう気を引き締めてと」
「いや、そうは言うが具体的にどうしろってんだ?冒険の時と地上の時とはそりゃ使い分けるさ。ここでは浮かれていても、ダンジョンでもあっちでも俺たちは浮かれたりしねえよ」
「……それは、わからないじゃないですか。浮かれるか浮かれないかは、でも万一を想えば」
「万一でばっか考えすぎなんだって。そもそも確証が無いのなら文句言うなよな」
「……ッ」
淀みだす空気、平坦な会話の中に織り交ぜられた切っ先の危うさ、会話が止まったと同時にベルは気づく
「……えっと、まあここではあまり口にし内容がいいよね。いちおう、フェルズさんからも口外しないようにって」
同調する形で会話に終わりをつけんとした。だが、それがさらに
「んだよ、ベルまでリリ助のやっかみに乗るのかよ」
「ヴぇ、ヴェルフ……それはッ」
過ち、油に火をくべてしまった。ベルは渦中で後悔する。
明らかに、リリはやっかみという言葉に異を唱えんとしている。
「……ペルソナが、そんなに良いのですか」
「リリッ」
「ペルソナが、そんなに……お二人はッ!」
ガタリ、その音にベル達だけでなく周囲の視線も集めてしまった
椅子を立ち、ヴェルフを辛うじて見下ろすリリは食ってかかり続ける。
「…………お二人とも、いい加減になさってください。リリはそう言う所が言いたいのです」
「リリ……落ち着いて」
「んだよ、ちゃんと具体的に言わねえとわかんねえぞ」
「ペルソナがすごい力だとは聞きました。ですが、二人はやはり浮かれています。人間、そんなに気持ちを切り替えるのは容易じゃありません。プライベートだからこそ、控える所は控えてもらわないと」
「……その心配はいらねえって言ったろ」
「はぁ、そこに根拠はあるのですか? ペルソナ、要は魔剣と同じじゃないですか。お手軽な力の行使にあれだけ厳しく言っていたお方の言葉とは思えませんね」
「リリ!ヴェルフ!……二人とも、これ以上は喧嘩に」
止めに入る。だが、それはすでに遅く
「……リリ助、お前やっぱりわかってねえよ」
「!」
おもむろに立つヴェルフ、そして
「ペルソナは容易な力じゃない。お手軽だなんて、俺もこいつも思ったりしねえ……リリ助、お前根本からわかってねえんだ。だから、これ以上はやめとけ」
「……ッ」
「ペルソナはただの力じゃない。俺たち自身、半身みたいなもんだ……浮かれるも何もないんだよ。そんな思いが出来る程、俺もこいつも軽い道を歩んではいない」
「それは、二人が冒険者としての歩みはリリも……」
「違えよ、異世界での……マヨナカダンジョンでのことだ。リリ助、お前が知らない所の話なんだ」
「!?」
知らない、違う、そんな言葉が強調されて響いた。リリはヴェルフの言葉に返答が出来ずにいる。
知らない、その点においてリリは本当にあの世界のことを知りえない。報告こそしたが、僕とヴェルフがあの世界で何をして、何を見て、そして何が変わったか、その過程をリリは知りえない。ヴェルフの言う通り、ペルソナは容易に身に着ける概念に当てはまらないことを、リリは理解できない。
「……じゃあ……ください」
「あ?」
「リリ!」
ふつふつと湧き上がる感情、それは怒りか悔しさか、リリはヴェルフを睨みながら半泣きの目で
「じゃあ、リリも同じになればいいのですよね」
「……どうするってんだ」
「リリを連れて行ってください。お二人が向かった異世界、そこにいけばリリにも」
ペルソナが、そう言うとヴェルフの顔は余計に冷えついたものに変わる
むきになって、一切関心なく、まるで子供の駄々をこまねく姿の様に見える。だが、リリは懸命にその言葉を掲げているのだ
……もしかして、リリ
ヴェルフやベルに対する気の荒れ具合、それらすべて根幹に今のリリが答えを示しているのかもしれない
ペルソナに対する執着。そして、目の前で何度もその力のすさまじさを拝んできた。そうなれば、これも自然な思考なのか
「お前、もしかして」
「…………ッ」
ヴェルフも同じく察したように、落ち着いてリリの反応を見ている。沈黙が流れて、そして
「リリもペルソナが使えればいいのですよね。そうすれば、お二人の邪魔に、ならないのですよね」
「…………」
「もう、遠回しは止めます。リリは、お二人に」
腹をくくり、リリはその場で手を重ね、謝罪を思わせるような深さで頭を下げた
あっけにとられる二人、それは周囲の客や料理を配膳しようにも気を測れず止まっているシルも同じく
「リリは、邪魔になりたくない……お荷物は、嫌なんです。だからッ」
切実に、絞り出すような声でリリは
『リリをマヨナカダンジョンへ連れて行ってください……リリも、ペルソナが欲しいッ』
「「!?」」
次回に続く
今回はここまで、ちょっとしんみりな空気ですが物語の進行上仕方なき事
次回ぐらいでリリのタロットは開示できるかな? ダンまちのタロット診断は楽しいので結構悩んだり。レフィーヤ出すかわからないけど恋愛枠でかなり難しいんですよね。ヘスティアとレフィーヤにティオネやティオナも、恋愛候補多く感じる。恋多き乙女は可愛いからこれも仕方なき事、リセチーいいよねリセチー