迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4) 作:37級建築士
絶句してしまう、そこはダンジョンのはずなのに、僕は地下へと続く階段を降りたはずなのに
「ここって、オラリオ?」
濃霧を掻き分けるように進んでいくと、足元は気づけば平坦に、薄暗さの中でもそこは比較的光がある。なにせ、僕が今いる場所は外だ、上を見上げれば空が見える。よどんでいて赤と黒の模様しかない空だけど
街を歩き、当てもなく彷徨っていく。
いや、訂正だ。すごく気を付けて歩かないと
「……ッ」
何かがいる。黒い靄で、よく見えない
一瞬だけ口のようなものが見えたけど、すぐ霧に消えてどこかに消えた。濃い霧の場所を避けて、取り合えず僕は歩みを進める。
出口はどこか、せめて知っている人は
ここがもし、地上と同じ場所なら、ギルド本部はどうだ、僕のホームは、豊穣の女主人は
……タタタ
「く~まくま~」
せめて誰か、知っている人は。
「クマは~冒険者くま~」
この場所から連れ出してくれる、誰かは
「……うん、やっぱり無視できない」
いるのだ、着ぐるみが躍っている。小粋なステップを踏みながら愉快に口ずさんでいる。
二頭身で、首の部分がジッパーで、つぶらな瞳は可愛いのかもしれない。
「……クマ、熊だよね」
「くまくま~」
「!」
いかにも手作りな、張りぼてで作った工作の剣を持って愉快に行進。遠ざかっていくのは見過ごせない。せっかく見つけた手がかりだ
追いかけるしかない、濃霧の中、唯一の導を頼りに僕は進む。
そして、追いかけながらふと、あの夢のことを思い返す。ベルベットルームで出会った、あの二人のことを。
× × ×
「ただいくま~」
「?」
謎の着ぐるみが戸を開けた。けどそこは
「前の、ホーム」
かつて自分と神様が暮らしていたホーム、と言う名の錆びれた教会、そこへあの着ぐるみはさも実家のテンションで入っていったのだ。
「……」
とりあえず、扉の傍まで近づき、ゆっくりと戸の隙間から
「さ、次の冒険クマぶへぇ!?」
「あ」
ぶつかった。扉から出ようとしたところで正面から
見つかった、そう動揺しなくてはいけない状況。でも、それ以上に
「あ、あたまが……ない」
「?」
着ぐるみの頭が取れている。けど中身が無い、空洞だった
おばけ、幽霊、そんな言葉がいくつも頭の中で沸き起こる。どうするべきか、逃げるべきか
「――――ッ!?」
「?」
何かを探している。ダンダンと、地面をたたくように、何かを探している。
……頭、取れたからかな
シュールに見えてきた。敵意は無いし、取り合えず親切にするべきか
「あの、すみません……急に出てきて、ぶつかって」
「……はっ、繋がったクマ。ふぅい、ご親切どーもってなぁああ!!?!!?」
「……あぁ、えっと」
ぼよんぼよんと跳ねまわり、今部屋の奥の教壇の後ろに隠れている。頭もお尻も見えているけど
「だ、誰クマ、何で異世界に人がいるクマ!」
「異世界?」
「そうクマ、ここはクマの住処、お前は不法侵入者クマ!!怪しい奴め、いったい何者クマ!!」
「……」
どこから突っ込めばいいのか。そもそもここは僕たちのホームであって、この語尾がクマの愉快な着ぐるみの家ではないはず
「えっと、ここはもともと「待つクマ、人間がいるなんて、これはマジヤバクマ!!」は?」
急に騒ぎ出す。傍に落ちていた手作りの剣を拾ってぶんぶんと、まるで何かに襲われるのを怯えているようで
「君、急に驚いて何を」
「シャドウが来るクマ、人間を狙って来るんだクマ!」
「だから、シャドウってなんですか……そもそも」
わからない、何が起こっているのか
これまで起きたどの事件とも違う、もっと異質で、世界そもそもがことなっているようで
「ベルベットルームも、あの二人も、あなたも、異世界も……それに、マヨナカダンジョンって、シャドウって……いったい、何なんだ!?」
「……ッ!?」
「教えてくれ、いったいッ」
「う、後ろクマ」
「!?」
『―――――ッ!!!』
「な、ぐッ!」
とっさに、腰のナイフを抜いて僕は防御態勢を取った。
仮面をつけた球体、防ぎ切ったはずなのに体勢が崩れる。
「!?」
「いやぁ!!グロテスクは苦手クマ、食べられるのはダメクマ!!」
球体がひっくり返る。目の前に合った仮面は飾、さっきにも見た目も鼻もない、ただ大きな口がそこには張り付いている。
無駄に歯並びのいい歯が僕の腕に噛みつく。噛み切られはしないけど、平たい奥の歯に挟まれて骨がきしむ。
「!」
攻撃されている、でも妙だ
敵は恐ろしいが、そこまでの強さは感じない。実際、攻撃と言うのも単調で、こうしてあえて手を噛ませて内部からファイアボルトで破壊する、そうしようとしたのだ。だけど
「……ぐ、あぁ」
力が入らない、痛みが鋭い
「ふぁ、ファイアボルト!!」
叫ぶ、口の中で炎雷が爆ぜた。だけど怯むどころか何も反応しない。通じていない
「!」
浮き上がる、そしてそのまま噛まれた腕ごと振り払われた。
壁を破り、そのまま外へ
教会の外にもさっきと同じ口だけの球体がうじゃうじゃといる。舌なめずりをして、獲物を前に垂涎としている。
「どうして、こんなに」
弱くなっている、使えたはずの力が通用しない。ファイアボルトもナイフも、こいつらの体に通用しなかったのだ。
「何をしてるクマ!早く逃げるんだクマ!」
「……でも、君は」
「狂暴になったシャドウ相手に勝ち目なんてないクマ!!逃げるしかッ、でも囲まれとるのよね。……はぁ、誰かお助けーーッ!!」
「……ッ」
シャドウ、この不気味な敵のことなのだろう。周囲を囲むシャドウたち、退路は無い
どうする、どうすればこの状況を
「……神様」
託されたナイフを強く握る。状況は最悪でも、心だけは折れてはいけない
何があっても帰るんだ。これまでと変わらない、どんな逆境でも、前に進むことを辞めたらそこで終わりなんだ。
「君、逃げるんだ」
「クマ?」
「僕が囮になる、ここから出るためにも、君には聞きたいことがある。だから、先に行ってくれ」
「なぬーー!!」
「早く、どれだけ持つかわからないけど……足掻いてやる、死んでも生きるッ」
未知の敵がなんだ。まだ僕はここで立っている。手も足も動く、命ある限り何度でも叫んでやる。
まだ、まだ僕は
「終わらないッ、終わってたまるか!」
……ズキンッ
「!」
熱い、胸の奥が
心臓に溶けた鉛が流し込まれているような、そんな感覚すらある。
……なんだ、なにかが
「………ナ」
自分が自分だけでない気がする。ぼくと言う存在が、ベル・クラネルが一人じゃなくなろうとしている。
「……ペ……ナ」
浮かび上がる言葉、これが何を意味するかは知らない。聞き覚えが無い
でも、わかる。わかってしまう
「……覚醒、愚者」
――――ドクンッ
「!」
そうだ、理解した
己の覚悟を示し、本当の自分を知った。
僕は愚者だ、始まりのゼロ、故にここから始まる。僕の、物語が
……そう、愚者は始まり。これから歩むあなたの旅路に、その力は欠かせない
「……やってやる、来い!」
『――――――ッ!!!?!?』
向かってくる、シャドウたちが僕に向かってそのアギトを開く
……唱えろ、言葉を!
……呼び出せ、もう一人のボクを!!
「来い、ペルソナッ!!」
今回はここまで
次回、ベルのペルソナを登場します。オリジナルです、お楽しみに