迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4)   作:37級建築士

5 / 24
こちら、最新話となってますが四話を修正、そして分割した内容になります

内容も訂正、大筋には影響はありません。


Day05~愚者と星 

 

 

 

 

 場所は変わって、そこは教会の地下、かつては僕と神さまの生活スペースにしていた場所だ。

 

 狭くて薄暗くて、けれど居心地のいい場所、でも今は

 

 

「……狭い」

 

「クマのハイカラな家具センスですクマ。この貴族のような贅沢センス、先生にならわかってもらえるクマ」

 

「ごめん、それは荷が重いかな」

 

 どこで拾ってきたのかタンスや机、バスタブや本棚、あとは……本当によくわからないガラクタとか色々

 

 所々に転がっている部品のようなものを踏まないように、中央のソファと暖炉がある場所までたどり着いて今に至る。

 

「まま、お茶は無いけどくつろいで欲しいクマ、先生にはこの命、救ってもらったクマね。クマは恩義に報いる、それはもう立派なクマクマ」

 

「うん、そうだね……もう、家の所有権はどうでもいいや。とりあえず、入れてくれてありがとう……クマ君でいいのかな」

 

「そうクマ、クマはクマクマ」

 

 言いにくくないのだろうか、とか思ってはいけない

 

「そっか……で、そろそろいいかな」

 

「何をですかな、先生?」

 

「それは、まあ色々あるけど……この世界は何」

 

「異世界クマ、シャドウたちが住む世界クマ」

 

「じゃあ君は、シャドウ?」

 

 試しに聞いてみる。さすがに外のあれらと同じとは思わないけど

 

「う~ん」

 

 妙に言葉に詰まっている。そんな困る質問だったのだろうか

 

 悩んで悩んで、時に転がって逆立ちして、それで絞り出した答えは

 

「それはちっと、難しい質問クマね……わからんです」

 

 語尾にクマもない、本当に知らないみたいだ。知らない?そんなことあるのだろうか?

 

 

「クマも、あんまりよくわかってないクマ……昔の記憶、どっか行っちゃったクマ」

 

「……そう」

 

 少し、悪いことを聞いたかもしれない。

 

 記憶が無い。無害な見た目と振る舞いから嘘とはまず思えなかった。深掘りするべきとも思えたけど、せっかく得た信頼を損ねたくないと考えたし、何より申し訳ない。

 

 クマ君、彼は冒険者である僕を先生と仰ぐ。ちょっと恥ずかしいけど、どうしてもとクマ君はその呼び方を譲らなかった。そんなクマ君は、妙に毒気がない成果あまり悪いように思いたくないと感じてしまう

 

 知らない世界、実際異世界に来て頼りになるのは彼だけ。ここから出るためには、きっと彼の協力が

 

 

……でも、それは

 

 

 ここから出る手段があったとしても、そう簡単に出る手段である保証もない。もしかしたらまたあのシャドウとかいう敵と戦って切り抜けなければいられない、そんな困難が出てくる可能性だって十分にある。

 

 あの力を使った反動か、今は正直不調だ。床について目を閉じればすぐに疲労で睡魔に食い殺されるだろう。

 

「……あの、この世界から出る手段を聞きたいんだけど」

 

 この世界に来た場所、ここからまたダンジョンのある所まで行くのはさすがに骨が折れる。どうにかならないものか、そう思っての質問だった

 

「帰る方法ねえ……まあ、あるにはあるクマ」

 

「……そうだよね、そんな簡単に」

 

「先生だからあるって言ってるクマ」

 

「……うん、だよね」

 

 今、確かにあるって言った。嘘、そんな都合のいいことがあるの?

 

 面食らい、簿kがたじろいでいる合間に、いそいそとクマ君は何やら用意をしだす。その短い手を振ってみれば、あら不思議

 

 

 

……ドドンッ

 

 

 

「……今、何したの」

 

「何したのって、テレビ出したクマ」

 

「……テレビって何?」

 

 呼び出したモノ、それは変な箱状のモノが三つ重なっていて、奇妙なのはその箱の正面が変な光を放っていて、白と黒が乱雑に光るさまは怪しくて、それに見ていると目が痛む。部屋が薄暗い成果余計にだ

 

「ささ、これで外に出られるクマね」

 

「……どうやって?」

 

「飛び込めばいいクマ」

 

「どれに?」

 

 三つのテレビなるもの、お世辞にも人が通るには手狭としか言いようがない。なんだろう、これで体が三分割されないか心配だ。

 

 

「……」

 

 

 改めて思う。不思議な異世界、オラリオと瓜二つで、さらにはクマ君という奇妙な存在

 

 噂のボーナスステージはおそらく違うけど、マヨナカダンジョンという点では確かに正解かもしれない。けど、噂の正体は危険な罠、今までもこの世界に来た人がいるならきっとひどい目に合っているか、それとも僕のように不思議な力を手に入れたか

 

「……ッ」

 

 

 悩ましい。疲れもあってか、ついフラットきてしまった

 

 

「先生、大丈夫ですかクマ」

 

 

「うん、ちょっと頭が痛くなって……ごめんね、色々と迷惑かけて」

 

 

「いえいえ、先生はシャドウを懲らしめてくれたクマ。むしろお礼をいわせてくだせう」

 

 

「お礼?」

 

 

「そうですクマ、最近はシャドウが多くなってしかも暴れてるクマね……もう、この世界に向こうから人が来てから最近大変だクマ」

 

「……人が、来て」

 

「そうクマ、クマは匂いがわかるクマから……そう言えば、」

 

「……そう、なんだ」

 

 

 噂、やはり良くないものなのだろう。 

 

 もしかして、今オラリオではよくないことが起きているのかもしれない。だとすれば

 

 

……少し、調べた方が

 

 

 テレビと、教会の出口を比べるように視線をやる。けど、体は思考に追いつかない

 

 

 

「……先生、先生!」

 

 

「!?」

 

 

 気づけば、僕の体はクマ君が支えていた。ふらついて、まるで酔っているようだ

 

 

「先生、もう今日は出た方がいいクマ……疲れてます故、次は日を改めた方が良きです」

 

「……ッ」

 

 

 悩む。けどその意見ももっともだ。今、ここで吸う空気が妙に苦しい。ずっと水中にいて、空気を吸えていないような、そんな不安がある。

 

 外の空気が吸いたい、元の世界の正常な空気が

 

「……また、来るよ」

 

「はへ、それジーマーですクマ?」

 

「うん、気になることも多いし……出入りができるならね、今日は、家に帰る」

 

 そっと、クマ君の頭に手を置く。かぶりを振って、正気に戻さんと気をはっきりさせる。

 

 今は、心配している皆の元へ、その後この世界について調べる。そう心に決めた

 

「……じゃあね、クマ君。ありがとう、色々教えてくれて」

 

「また来てくれるクマ」

 

「もちろん……今度は、冒険者のこととか、いろいろお話もしたいしね」

 

「なぬ!」 

 

 

 目の色が変わる、うずうずと震えて本当にうれしいようだ。

 

 

「……クマ、冒険者になりたいクマ」

 

「そうなんだ、僕も……そう思ってオラリオに来たから。よく、わかるよ」

 

 手を握る。別れを惜しむ握手を交わす。

 

 握った手に感じる感情、きっと彼は呼び止めている。もしかしたら、クマ君はこの異世界で独りぼっちなのだろうか

 

「また、近いうちに……じゃあね、クマ君」

 

「先生、およよよよ~」

 

「もう、泣きすぎだよ」

 

 せっかくの良い毛並みがぐしょぐしょになる。それにしても、本当に毒気の無い性格だ。気の置けない関係がいつの間にか出来上がっている気すらある。

 

 

……ドクンッ

 

 

 

「!」

 

 

 つながりを感じる。クマ君と僕の間に絆の力が芽生えた、そう感じる。

 

 

「どうしたですクマ」

 

 

「……いや、うん」

 

 

 胸の奥、何かに叩かれるような衝撃が走った。けど、あまり気にすることもないと踏んだ。

 

 別れは告げ、異世界の出口へ身を投じる。胸に抱いたナニか、未だその価値は知る由もない

 

 

 

……なんだろう、いったい

 

 

 

 愚者からつなぐ光は星のアルカナ、希望を示し、約束された答えへと導く新たな灯となる。

 

 

 

 

 

 

  ×  ×  ×

 

 

 

 

 

「!」

 

 不意に、足の裏に地面を感じた。上も下も無い空間で意識が飛んだとお神酒や急な覚醒、よろめいて尻もちをつき、やっと意識がさえわたる。

 

 

……戻ってきた、空気も違う

 

 

 息を吸い直す。肺に溜まった淀んだ空気を吐き出し、循環。体を起こし辺りを見渡してみるとまた驚いた。

 

 気づけば、そこはホームの前だった。

 

 帰る場所を脳裏に浮かべて、僕はクマ君が取り出したそのテレビといモノに飛び込んだせいなのか。理由は憶測にすぎないけど、今はそれでいい

 

 現実の世界に戻った。今は、その事実を喜ぼう

 

 

 

 

 

「ベル様!!」

 

「!?」

 

 声がした。振り向き見ると、玄関から僕の方へ駆け走る姿を逆行の陰で見る。その姿と声はリリだ。

 

 帰ってこれた。現実に、僕のいるべき場所に

 

「リリ、ごめん……遅くなって」

 

「ベル様、ベルさまぁ!」

 

「……リリ?」

 

 泣き崩れて、そのまま膝をつく。心配させてしまった、罪悪感が胸に募る。

 

 

「ベル、お前!」

 

「ベル様!」

 

「べぇえええるくぅううううんッッ!!!!?!?!?!?」

 

 

「え、皆おぶふっ!?」

 

 ヴェルフよりも、春姫さんよりも、神様の突撃は僕のみぞおちにクリティカルで決まる。

 

 地面に転げて頭もぶつけた。痛い、かなり痛い、だけどそれが安心する。

 

「……神様、皆」

 

「無事だったんだね、よかったよぉお、ベル君は無事だったんだッ」

 

「ベル、お前ッ」

 

「……ッ」

 

 喜んでくれている、それはわかる。でも、なんだろう

 

 

 

……喜んでいるのに、なにか引っかかっている?

 

 

 

 ここに入り一同、本当に心の底から安堵しているのだと見てわかる。けど、その表情の奥には何か煮え切らないような、未だ何かが終わっていないような

 

「ベル、良かった。本当に、噂通り消えちまったかと」

 

「……ヴェルフ」

 

「おぉ、取り合えずホームに入れ……話は、まあそれからだ」

 

「……」 

 

「おい、どうしたんだよ……黙って、なんか怪我でも」

 

「…………さっき」

 

 

 皆、一同に言葉を並べる中、何か引っかかるものがあった。その疑念、ようやく気付いた。駆け寄るヴェルフから離れ、僕が歩み寄ったのは、神さまの前

 

 

 

……胸騒ぎがする、いやな予感も

 

 

 

「……さっき、神さまは」

 

「べ、ベルくん……どうしたんだい、急に」

 

「いえ、気のせいならいいんです……でも、さっき」

 

 神さまは言っていた。僕の期間を喜ぶ言葉の中に、確かに不自然なフレーズがあった

 

 

 

「……僕は、無事だった……いったい、どういう意味ですか」

 

 

 

 恐る恐る聞いてみた。悍ましい真実へつながりそうな予感、言葉を言うや神様は顔色を悪くした

 

 

 

……『外にいた時に女の人っぽい匂いがしたクマ……多分、またどこからか人が来てるクマ』

 

 

 

 思い出した言葉、今度はヴェルフの方へ問いを投げかける。 

 

「ヴェルフ何かあったの?」

 

「……ベル様、それは」

 

 皆が一同に口を紡ぐ。喜びから転じて、その雲行きは少し薄暗い

 

 言葉を濁そうにも、皆その第一声に悩んでいる。静まり返る中、意を決してヴェルフは

 

「……お前が居なくなった後、俺は街中を探した」

 

「…………」

 

「とりあえず、ギルド本部に行って……お前の捜索願いも出したんだ。当てになるかわかんねえけど、しねえよりはましだしな。で、そん時にだ」

 

「……」

 

「ギルドが、今度は俺に問い詰めて来たんだ。お前が消えた時のこと、事細かにな。何か別に事件でもあったのかって感じでな」

 

「……事件、それってマヨナカダンジョンの噂?」

 

「や、違う。結末以外はな……ギルドはよ、捜索依頼を複数受けているらしい。お前と同じ、急に人が消えたって話……ギルドには立て続けに入ってきていた。お前も含めて、今ギルドは行方不明者の捜索をしていた」

 

「!」 

 

 行方不明、その言葉で繋がった

 

 クマ君が言っていた言葉、神隠しのようにこのオラリオから人が異世界に消えている。そう言うことだと今理解した

 

 皆が口を紡ぐ。それはつまり、僕と同時に誰か、見知らぬ他人じゃない、顔も名前も知っている誰かが行方不明になっているのではないか?

 

 

……だから、皆

 

 

 気づけば、取り囲むように皆がいた。

 

「……あの世界に、誰が」

 

「ベル、今は「駄目だ!!」

 

 

 

 そう、あの世界に人が落ちるのは駄目だ。身をもって危険を理解している僕には、いや僕だけがことの一大事さを理解している。

 

 知らなければ。この予感は、きっと当たってしまっている。

 

「……神さま」

 

「ベルくん……駄目だよ。君は、休むべきだ」

 

 止める。道を遮るように、神さまが腕を広げている

 

「……神さま」

 

「駄目だ、今の君は行かせられない……頼むから、休んでおくれ」

 

 強く、言葉を置いた。

 

 

 

……駄目だ、今動かないと

 

 

 

「……おねがいです、神さま……僕だけが、あの世界のことを「ギルド本部」

 

 

 

 

「!」

 

 

 

「ヴェルフ君、ダメだ!」

 

 

 

 

「……ギルド本部、あの人が消えたんだ。目撃者は

 

 

 

 

 

……ミィシャ・フロット

 

 

 

「……エイナ、さん!?」

 

 

 

 つながった。皆が黙した理由、それが繋がった。

 

 シャドウが住まう、あの霧深い異世界。特別な力が無ければ命は無い、そんな世界に人が消える。

 

 向かったか送られてか、引き込まれてか、それもわからない。ただ、今は一つ

 

 

「彼女が消えた。エイナ・チュールが、ミィシャ・フロットの隣で突然消えた。それが、今起きていることだ」

 

 

「……ッ」

 

「ベル君、待って!ダメだ、ベルくん!!」

 

 遠く、神さまの声が消えていく。

 

 ダメだった、耐えられなかった。振り切るように、僕は駆けだしてしまった。

 

 あの世界の脅威を知っている以上、ここで何もしない選択肢は選べない。行くしかない、またあの世界へ

 

 

……行かないと、手遅れになる前に、早く

 

 

 

「はやく、はやくッ……間に合えッ!!」

 

 




修正なのでとくに語ることない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。