迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4) 作:37級建築士
「先生!先生!!」
「ちょ、クマ君」
再開して早々に抱き着き、愛情表現がなかなかにはっきりしている。着ぐるみらしい触り心地の良さ、けどこの暖かさと吹き出る涙はいったいどこから
「寂しかったクマ~!クマは、先生と出会えてうれしいから、今日は徹夜でパーリーをするむにゃにゃ」
「……ごめん、今は寝ている暇じゃないんだ」
提灯を割る。目を覚ましたクマはそれでもどこかうつろだ。すぐにでも船漕ぎをしそうだ。
「……おい、なあそいつは」
「あぁ、ごめん」
すっかりヴェルフを放置してしまった。クマ君に引っ張られてこっちの世界に入れたのはいいものの、ヴェルフまだ戸惑っていて不安げな様子だ。
説明を、見ないと理解してもらえないことは省いて説明したから、まずはどこから補足を
……ポロッ
「は、はぁあああッ??!?!?」
「あぁ、そうなるよね。ごめん、剣はしまって」
眠さで倒れたクマ君の頭が取れた。空洞を見た驚きはとても愉快なものだけど、そろそろ本題に移らないと。
依然、問題はそのまま。話を進めるためにも、僕はヴェルフをなだめて、そしてクマ君を起こすのだった。
〇
場所は変わって、そこは霧の深い街。シャドウの存在に気をかけながら、僕たち三人は教会の外に出た。相も変わらず、空は全く不穏で夜も昼もない模様だ。
「うぅ、まだ頭がくらくらするクマ」
「ごめん、ハリセンがあって……つい」
「クマクマ、もしぱあになったら責任取ってほしいクマ」
「やり方はわからないけど、善処はするかな……うん、じゃあ、さっそくだけど」
本題に入る。エイナさんが失踪したこと、そしてその消え方が異様だったことを。そのことからこの世界にいるかもしれないこと
すべてはまだ推測の域、けどどうしてか胸騒ぎが止まらない。こういった胸中のことは悲しいことにあたってしまいやすいものだ。
「こっちの世界に来る方法知っているなら、僕みたいに急にこっちの世界に来た人の居場所も、どうにか……ならないかな」
我ながら、言っていて無謀な問いかけだ。顔も知らない相手の居場所を聞こうとしているのだから
「……ごめん、手がかりだけでもいいんだ。些細なことでも」
「クマ、そうクマか」
少し、言いよどんでいる。僕の様子を伺いながら、クマ君は
「……人、入ってきたクマ。クマは、匂いに敏感だから」
「!」
拳を強く握る。けど、まだ決まっていない。霧のなか、どこかで身を隠しているかもしれない
「匂い、感じるクマ……でも、場所が」
「……ッ」
どこか怯えながら指を指す。霧で霞むけど、記憶の映像からどこを指しているかは理解できる。その先にある物と言えば
……ギルド本部
「行こう」
場所がわかっているなら早い。シャドウに警戒しながら、エイナさんを迎えに行けば
「……ベル、なあ」
「うん、必ず助ける……だから、ヴェルフも……ヴェルフ」
振り返り、僕はヴェルフの顔を見た。どこか気が足りない。まるで、じわじわと真綿が首に絡みついているような
「ヴェルフ、大丈夫なの」
「……あぁ、なんとかな」
「クマ君、ヴェルフを「気にするなッ」……ヴェルフ」
声を荒げて、けどすぐに嫌気がさしたのか頭を抱えた。調子が悪い、気が少しやられているという感じか。どこか息苦しそうにすら見える。
「……クマ君、もしかして」
「クマ、この世界はあまり良くないクマ。向こうの世界の住人は、本来来るべきじゃないクマ」
「なら、やっぱり」
「……荷物にはならねえ、安心しろ」
頬をバチンと、喝を入れヴェルフは調子を取り戻さんとする。
「剣は握れる、最悪魔剣だけ預けて下がってもいい。だから、今は気にするな」
「……」
強がりか、やせ我慢か、ヴェルフは笑ってそう言ってのけた。そこまで言う相手に、僕は強く言いだすことはできなかった。
けど状況は未知だ、戦力の低下は避けるべきと、僕は自分を言いくるめるように納得させた。
× × ×
道中にシャドウは現れなかった。静かな街道を進んでいくうちに、僕たちはとある場所についた。
とある、そう付け加えたのは、それがひどく、本来の形から逸脱していたからだ。ギルドのあるはずの場所へ近づくほどに、辺りの町並みはずいぶんと攻撃的になっていく。
壁に打ち付けられた鎖や手枷、異様な感覚に冷や汗をぬぐいながらも前に。
けど、進めば進むほどに霧は濃くあたりを包んでいて、どこかわからない場所へ進むのが、まるで童話であるような知らずのままな怪物の胃袋へ突き進んでいくような、そんな危機感というか忌避感を感じてしまう。
「…………ここが、匂いの場所クマ……とっても危険な、シャドウの住処クマ。霧も濃いし、本当は近づいちゃダメな場所」
「霧が濃すぎる、前が見えねえぞ」
「だね、クマ君には見えるの」
そういえば、さっきから妙に足取りが軽く道を進む姿に躊躇いはない。もしかして、鼻が利くって言っていたからそのおかげなのか、妙なところで獣らしいというか
「およ、そう言えば忘れてたクマ」
「……なに?」
「クマ、霧のなかでもすっきり見える眼鏡持ってたクマ。はいこれ」
「「?」」
どこからともなく取り出した二本の眼鏡、四角のフレームは黒と銀色、銀色をベルに黒をヴェルフに手渡す。
「……これ、なに」
「メガネはメガネクマ。それ付けたら霧でも見えるクマ」
「だったら早く渡せっつの」
本当にその通りだ。
「まぁまぁ……えっと、じゃあつけるね」
初めての眼鏡。不思議と顔の大きさにちゃんとフィットする。
眼鏡のガラス越しに僕は今一度その場所を見通す。瞬間、僕は何が起きているか理解ができなかった。霧が晴れている。依然淀んでいる空も、歪な周りの建物も、だけどそれ以上に
「なに、あれ……」
まず、見えたのは大きな門、そしてその奥に僕たちを待ち構えるように立っている建物、とてもギルド本部の原型は無い。辛うじて建築の意匠の名残があるだけで、まったくの別物だ。
「おい、これ」
眼鏡を付けたヴェルフも僕と同じく息をのんでいた。そして指さす先、門の上のアーチに書かれたコイネー、そこには
『私立・エイナ女王様にひれ伏しなさい学園、18歳未満は駄目よ』
「「…………」」
なんだろう、僕たちは何時から共通語のコイネーを読み間違えるようになったんだろうか
おかしい、まったくもっておかしい。きっと、この世界の瘴気に視神経がやられただけだ。だってあるはずがない、こんな倒錯的でハレンチ極まりない、しかもあの人の名前の付いた学校があって良いはずがない。
「なあベル、俺もしかすると瞼の開け方を間違えたかもしれん。お前も」
「うん、僕も瞬きの仕方を間違えたかもしれないから……じゃあ、もう一度」
『エイナ女王様立・マゾ豚共、奴隷という最高の快楽を与えてあげるわ学園』
「「駄目だ、余計ひどくなってる!」」
眼球が擦り切れるぐらいに、それこそ涙が止まらなくなるぐらい目を掻きむしった。でも、アーチの看板は不吉で不遜な名前しか載せない。いったい誰がこんな命知らずないたずらを
「うぅ、やっぱり危険クマ……だって、ここは」
「……でも、行くしかないよ」
「せ、先生待つクマ、ヴェル……なんとかも待つクマ!」
覚悟を決めて、僕たちは重い鉄門を押し開けた。どこか歪で、常に歪み続けている門を抜けた先、そこはだだっ広い整地された広場で、そして
……オーイエスッ!!イエス、アァォアアア!!!
……アイムカミング!!セッシボーーンッ!!
……菊門にぃいい!!なにとぞ、その尖ったヒール様を菊門にぃいいいぃいああぁあああッッ!!?!?
「……」
いたるところに、とても見るに堪えない不健全な光景が一面と広がっている。
なんだろう、すごく帰りたくなってきた。シャドウと同じ仮面をつけたほぼ裸の男達がこれまたボンテージ姿の女性に不健全なことをされている。いったい何が不健全かと聞かれればどうにも答えようがない。モヤモヤしていて、霧とはちがう何かで肝心な部分が見えなくなっているのだ。
聞くに堪えない断末魔が響く、男達を虐げるその女性たちは皆同じ姿で、しかもその姿は
……エイナさんと、同じ顔
目元を隠す、仮面舞踏会に使うようなアイマスクを付けているけど、その髪も発する声も、僕は見間違えようがなかった。
「クマ君、ほんとうにここで」
「うん、きっといるクマ……そのエイナってお嬢さんは知らないけど、たぶんシャドウに掴まっているクマ」
「シャドウって、僕が戦った」
「違うクマ、クマの予想なら」
『―――――ッ!!!』
「!」
突然、どこからか鳴り響くサイレン音、その上僕らを取り巻くようにシャドウたちが現れる。警棒をかぶり、刑務官にも見えなくもない人型のシャドウ。すぐにでもペルソナを、ナイフを構えいつでも彼の名を叫べるように構えを取る。でも、そこに
「ベル君、怖がらないでいいわ」
「え、エイナさん」
シャドウの背後から、ギルドの制服を着たエイナさんが現れた。でも、どこかおかしい、何かが普通ではない。
……本当に、エイナさん?
「……あなたは」
「しゃ、シャドウクマ、やばクマ!!」
「おい、うるせえぞ……ベル、どうする」
「き、君たちは知らないかもしれないけど、ここはヤバいクマ、一時退却クマ!」
「!……クマ君」
短い脚で飛び跳ねながら門の外へ、しかし
『……なに』
……バチンッ!!
『勝手に逃げようとしてんだぁああ!!』
「ひでぶッ!?」
「クマ君」
逃げようとしたクマ君がこっちにまで弾かれた。出口を塞ぐように、僕らの前にいたはずの彼女がそこにいた。エイナさんが、いや
「エイナさん、じゃあない……あなたは」
「……はは、ははは、ハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!!?!?!?」
「「!!」」
姿を変える。高笑いをあげ、溢れる淀みが本当の姿を現す。
周りにいる調教師と同じ、やたら肌の露出の多い、本当に大事な部分以外しか隠していないボンテージ姿。大きな蜘蛛の背中に乗った女王が僕たちの前に顕現した。
「おい、なんだよあの変態……」
「や、やめてください!それ以上エイナさんの姿でハレンチなことを」
『ベルくん、ヴェルフさん……らぁあッ!!』
「「!!」」
強烈な鞭撃、大地を砕く一撃を辛うじて躱す。本気で、傷つけるつもりで攻撃をしてきた。あの、エイナさんが、衝撃でいなされる体のダメージよりも、その事実が心にクる。
……どうして、こんな
『アハハハ!! 気持ちいい、苛めるの最高!!言いなりになる奴隷こそ私の望み!!さぁ、下僕になりなさいッ……そうしたら愛を、快楽を、私が与えてアゲルッ!!!』
「……ッ」
シャドウも増えだす。警棒のようなものをもってエイナさんを乗せた大蜘蛛も近寄ってくる。退路はない、やるしかないのだ
「……来い、ペルソ」
『嵐世ッ!!?』
「!」
暴風が吹き荒れる。ヴェルフの叫び、おそらく魔剣を使ったのか
砂塵をまき散らし、視界を塞ぐほどの突風が依然吹き荒れる。
「ありがとう、ヴェルフ」
クマ君の手を掴み、僕とヴェルフは駆けだす。目指す先は壁、鉄線を張られた石の壁、でもこの高さなら
「跳べ、イナバギ!」
呼び出すと同時に地を蹴り跳躍。通常では跳べない遥か高い位置へ一気に跳び上がる。錫杖を握ったままクマ君とヴェルフを小脇に抱え、僕たちは学園の外へ
「……ッ」
とっさの判断で、僕はその場を引く選択を選んでしまった。でも、これで終わるわけにはいかない。必ず、エイナさんは
「……」
思い返す。初めて、というか金輪際見ることの無いだろうエイナさんの痴態、変態と言う形容を得るためだけに装ったあの姿。胸の形も腰の括れも、凶悪なまでにグラマラスなエイナさんの黄金比のボディ、それが焼き付いて離れない。
「先生、顔が赤いクマ……風邪クマ?」
「……なんでも、ない」
鼻の奥に感じる血の味をこらえ、僕らは元いた場所へ撤退する。あんなのは良くない、これ以上ハレンチな姿を見て、元の関係に戻れなくなる前に、ことを達成させないと
……あれはよくない、考えちゃいけない、落ち着け、落ち着け僕の煩悩!!
今回はここまで、ペルソナ4だからね、ふざけたシャドウ出してもいいよね。なお今作は健全なので大事なところは隠れています。と言うことにしておいてください