迷宮異聞録~マヨナカダンジョン(ダンまち×PERSONA4) 作:37級建築士
ダンジョン描写はさすがにゲームみたいに細かく書いてたらグダグダになりそうなので要所要所だけにしています。
目を覚ました時、窓から覗く空は朱色に染まっていた。死んだように一日の大半を寝て過ごしてしまったのだ。それほどに、あの世界での無理がたたってしまった
起こしに来た春姫さんは何も言わず僕を談話室に連れていき、そこにはヴェルフを始めリリも命さんも皆がいた
「……神様」
「おはよう、じゃなくておそようだね……お腹減ったろ、ご飯にしようか」
「……はい」
「話をしようじゃないか。今何が起きているか、置いてけぼりはなしだぜ」
「……ッ」
言葉が出なかった。恥ずかしくて、うつむいて黙って頭を下げた。
がむしゃらに突っ走って、ボロボロで帰って来た僕に神さまは怒るでもなく呆れるでもなく、ただ笑顔でいつものようにそこで手を広げていてくれた。
「……ベル様、お食事は」
「えっと、じゃあ……軽めの」
……ぐぐぅ
「……ふふ」
笑いが伝播する。気恥ずかしさがどこかおかしくて、僕もつられて失笑してしまう。
堂々と行こう。これからまた無茶をするのだから、その無茶を後押ししてくれるのだから、遠慮したら意味がなくなる。
「……がっつりで、お肉を山ほどお願いします」
選択は間違っていない。背中を押してくれるから、ならもう一度前を進もう。出来ることを尽くして、僕はこの事件を解決したい。
× × ×
事件から二日目、現実では今もなお街は行方不明の話で持ち切りだ。
それも仕方のない事、美人アドバイザーとしてその名を知らない者はいない、エイナさんが姿を消したのだから。ギルドだけでなく、ファミリアまでも事件の解決に走り続けている。だけど、どんなに人を問いただし不審な者を捕まえても意味は無い
事件の真相は摩訶不思議、全てはここではないもう一つの世界、異世界にあるからこそ
「……マヨナカ・ダンジョン、シャドウ、ペルソナ……うぅ、なんとも頭が痛くなるね。ベル君、君はどうしてそういう物事に関わっちゃうのかなぁ」
すでに愛しい少年は事件解決のために飛び出した後、ホームで帰りを待つヘスティアはベルから聞いた説明の数々に未だ悩まされ続けている。
「そう思うなら、ヘスティア様がお止めになればよろしいんじゃないですか」
「それ、あの目を見て出来ると思うかい?」
「……」
「だろ、今のあの子は何を言っても止まらないよ」
「ですが、ヘスティア様、なら命とリリ殿も」
「危険なんだろ、そのシャドウって言う敵が……君達には悪いけど、僕はベル君の言葉を信じるよ」
「……ですが」
待つ者の憂い。普通であれば無理を通してでもついて行くと言いたかった。だが、ここに残る物はその言葉を飲み込むことにした。
ベルの決意は暗弱なものではない。どうしてか、あの日よりも前と比べて、その眼と声も一回り違った成長を感じた。悟りを得たような、人として一段階皮がむけたような、そんな変わり様を受け取れてしまう。
「……信じるしかないよ。いいじゃないか、戦いに赴く男の帰りを待つ、そういうのって女の特権じゃないかい?」
「それは、まあとも言えますが……って、ヘスティア様?」
「ちょっと出かける、知神に会ってくるだけさ。待つ女にしかできないことを、今からしてくるとするよ」
〇
異世界に、マヨナカダンジョンに戻って来た。当然目的はリベンジ、エイナさんを救うために、僕たちはまたあの学園に挑む。気力体力ともに万全、十分な装備を用意して再度突入……することはしない
ここはダンジョンと変わらない。未知の危険地帯に足を運ぶのは僕たち冒険者の常だ。僕たちはまず外壁から敷地内の敵の様子を探った。幸い、イナバギを使えば中の様子は容易に確認できた。
そうなれば後は簡単だった。敵の見張り、女王様姿のエイナさんモドキに見つからないように、裏口から校舎内へ侵入経路を見つければいい。倉庫と思しい建物を見つけ、外壁から屋根の上へと、巡回する敵を避けながら校舎へ近づき、そして今
「……ここは」
「うん、ギルドの中だよね」
内部に入ればそこはいつもと変わらないギルド本部、ではない。話に聞く学校と言う施設ではいくつもの教室があって、同じ制服を着た生徒が勉学に励むとか、話に聞く特徴と一致空ている感じからそう受け取れる。
数字が書かれた部屋ではまたエイナさんモドキが大変悩ましい姿で授業のようなことをしている。生徒はみな仮面をしていて、どうしてか拘束されたまま机に座っている。長く続く廊下、身をかがめそんな教室をいくつも通り過ぎていく。聞こえてくる罵詈雑言で頭がやられそうだ。
「クマ君、前にあのエイナさんはシャドウだって言ってたよね。なら、ここはいったい……僕たちの知るギルドはなんでこんな」
「う~ん、ここは前までは普通の場所だったクマ。でも、ここを迷宮にしたのはそのエイナって人のシャドウクマ……認知の歪み、確かそんなんだったクマね」
「認知、歪み?」
初めて聞く知識。クマ君は続けて語った。
異世界は現実と繋がっていて、鏡合わせのような場所。そんな異世界では時折強力なシャドウが生まれて、そしてそんなシャドウは自分の縄張りをつくる。シャドウにとって思いれ深い場所を根城に、その形を歪めて迷宮に変える。シャドウが作り出した迷宮は宿主の心を反映する。ここが学校で、あんな女王様になってるのも、全部本心かららしい、本心?
どうやら、シャドウとは抑圧された感情が元になっているとか、つまり似ているようでそれは別側面らしく、その人にとって見たくないもの、嫌な記憶なんかが人格に現れるらしい。
「……」
でも、仮にエイナさんに普段見せない部分が、人に語りはしない何かがあったとしても
「なんで、なんでこんな」
……私の言うことを聞け!
……勝手な願いを抱くな!
……私の前から逃げるな!!
「……ッ」
「先生、顔色が悪いクマ」
廊下を歩く中、壁側にいくつも並ぶ教室から聞こえる罵詈雑言、向こうはこっちに全然気づかないけど、その代わりとばかりに聞きたくない、見たくないものを見せつけてくる。高圧的で、嗜虐的な側面、それがエイナさんの本心だとばかりに、この迷宮は叫んでいるように
……ちがう、そんなわけがないんだ
今まで接してきた人柄からして、どうあればそんな歪みにつながるのか。つながらない、歪みの理由が欠如している。
「……エイナさん、どうして」
「先生、深く考えすぎクマ……その、頑張るクマ」
「クマ君、ごめん……気を遣わせちゃった」
中身の無い気休めの応援、でも今はそれでいい。立ち止まって悩んでいる暇はない。すすんでいかないと、答えは出ない。
「……ベル、クマ公、おしゃべりは止めだ」
「!」
先行するヴェルフが剣を抜く。曲がり角の先、そこには二体のシャドウが、これまた扇情的な服装の刑務官のようなエイナさんモドキが二体、同じ場所をずっと往復していて行く先を防いでいる。
「どうする、倒すか」
ヴェルフの提案、現状僕たちは隠密行動中だ。だから戦闘の騒ぎは起こしたくない、だけど
「クマ君、匂いは」
「ん、この先から感じるクマ」
「……そう、なら」
今僕たちは闇雲に屋内を徘徊しているわけではない。クマ君の鼻を頼りに、僕たちはエイナさん本人の匂いのある場所を目指している。たまたま貰っていたハンカチが役に立った
敵のいる通路の先には上へと続く階段がある。そしてここ以外に階段のある昇降口は無い
「……ッ」
ナイフを抜く、叫ばれて仲間を呼ばれる前にケリをつける。
「クマ公、お前は下がってろ。ベル、俺が抑えておくから先に片方を仕留めてくれ」
ヴェルフも大剣を抜く。ペルソナ能力は無いけど、シャドウの動きを止めるぐらいはやってみせると、事前にそういう打ち合わせは済ましてる。現状、戦力は僕しかいない。出来るだけ戦闘は控え、ペルソナを呼び出し行使する精神力を温存しないといけない。
「……行こうッ」
「「!?」」
敵シャドウが姿を変え、口だけの化け物と岩石の化け物に姿を変える。敵は通常の攻撃を寄せ付けない、ペルソナの力が無ければまともにダメージを与えられない。けれど、それでも僕あ地は冒険者で、多くの戦いを経て来た。ヴェルフの大剣も、魔剣の一撃でも倒せない敵、だけど怯むことなくヴェルフは剣を振るい攻撃を器用にいなす。
「ベル、頼む!」
「……シッ」
大口を切り裂き、続けて僕は刃を振るう。ヴェルフが弾いた岩石を一瞬だけ呼び出したイナバギで刺突、敵の仮面ごと貫いて敵は黒い泥となって消え失せる。
周囲を探る。どうやら気取られた様子は無く、依然隠密行動は保てている。
「よっし、この調子で行きゃあ」
「うん、問題は無いと思う」
一階の探索を終える。階段を上り、目指すは屋上
やることは変わらない。異世界で僕たちはダンジョンを攻略する。マヨナカダンジョンの果て、捉われたエイナさんのもとへたどり着く。
今回はここまで、次回大きく動きます