アイツの距離が近すぎる   作:ぽむQ

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ハーメルン読者の皆様 
 はじめまして。この度ラブライブ!及び虹ヶ咲の二次創作を書かせていただきましたぽむQと申します。 
 Eテレでの再放送を機に虹ヶ咲及び歩夢ちゃん熱が再燃し、本作を書くに至りました。
 文章力、構成力ともに至らぬ点は多々ありますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。どうぞよろしくお願い致します。


Pre Season【#1〜#3】
#1 オレと彼女の悠かな距離


———いつからだろう。『歩夢(あゆむ)』が『上原(うえはら)』になったのは。

 

 そんなもん彼女が上原家に産まれた瞬間(とき)からに決まっているだろう。なんて、無論そういう意味で言ったわけではない。

 俺が彼女の——奇しくも3月1日(同じ日)にこの世に生を受け、物心ついたときから家が隣同士(どうし)で、幼稚園のときは発表会(おゆうぎかい)王子様(ヒーロー)眠り姫(ヒロイン)を演じ、小学生のときは休む度にノートを届けてやり、中学生のときは同級生(クラスメイト)に夫婦扱いを受けて気まずくなり、高校二年生になった今でも一向に距離が縮まらない、俺の初恋の相手かつ現在進行形で10年程片想いし続けている上原家の長女をなんと呼称しているか、という話だ。

 

 彼女に好意を抱いたのは幼稚園のころ、初めて同じクラスになった時の自己紹介だ。その光景は今でも鮮明に覚えている。

 

「うえはら あゆむ です!すきなものは かわいいふく と うさぎです!このおようふくも、うさぎみたいですきです!すきなことはー、えーっと、うさぎのまねです! あゆぴょんだぴょん♡」

 

 完全に一目惚れだった。これまで特撮ヒーローとゲームと(始めたばっかりの)剣道が全てだった俺の世界(テリトリー)に入り込んできた「あゆぴょん」。はじめて心ときめいた「おんなのこ」。はじめて感じた「かわいい」。そんな彼女に、完全に心を奪われてしまったのだ。

 

 それからはもうずっと一緒だった。家が隣同士のため元々親たちの交流が盛んだったのもあるが、それを差し引いても「なかよし」と呼ぶにふさわしい関係だったと思う。

 一緒に過ごすうちに、彼女の内面を知ることができたのも大きい。誰に対しても優しく穏やかだが、怒る時は本気で怒る。俺が子供ゆえの無邪気さ故たまに間違ったことをするたびに、すごい剣幕で叱咤されたものだ。そんな人としての美しさにも、無意識のうちに惹かれていたのかもしれない。

 ちなみに余談だが、1度だけ、一緒にお風呂に入った(さすがに水着着用だが)こともある。今思うとすげえ事してんな昔の俺。

 

 小学生になっても俺たちの関係は変わらなかった。両家族総出でバーベキューしたり、夏休みの宿題を一緒にやったり、2人で江戸川まで花火を見に行ったり。なかなか積極的だな昔の俺。……この頃まではまだ歩夢と呼んでいたと思う。「付き合う」とか「彼女」とか、そんな発想にすら至っていなかったから。

 

 中学生になったくらいだろうか。彼女が「異性(おんな)」であることを意識したのは。きっかけは多分中一のとき。クラスの女子に「歩夢と付き合ってるの?」と聞かれた時だ。

 どうやら俺と彼女の関係は、側からみれば彼氏彼女、夫婦にしか見えないのだそうだ。自分と世間との乖離に驚いた記憶がある。そこからだんだんと、その下の名前(ファーストネーム)を呼ぶことが無性に気恥ずかしくなった。

 この頃になると上原はクラスの高嶺の花(マドンナ)的立ち位置を手に入れるに至り、「高城(たかぎ)ぃ…お前上原さんと幼馴染とか羨ましすぎるだろ許さねえわ腎臓売れ」なんて羨望を込めた言いがかりをつけられることもあった。

 今思えば、上原の隣にい続ける状況(こと)に自信がなかったのだ。成長するにつれてどんどん魅力を増していく、日増しに告白される回数や貰うラブレターの枚数が多くなってゆく彼女。これまで「友達」「お隣さん」「幼馴染」としてしか認識してこなかった彼女が「女性」に変わって行く様を、俺は一番近くで見せつけられていたから。

 そのひどく生々しい重圧(プレッシャー)に耐えられず、どうにかして距離を離したかったんだと思う。その後ろ向きな選択を俺は未だに後悔し続けているが。

 向こうは変わらず俺のことを名前で呼んでくれることも、それに拍車をかけたと言っていい。勝手に距離を空けた俺に歩み寄ってくれる彼女の気遣いを無下にしてしまっていることは、本当に申し訳ないと思っている。

 

 また追い討ちをかけるように 中学生(俺たち)の性知識が増えていった、正確には増やされた事も良くなかった。コウノトリ論をはじめとした性に対する「ぼやかし」が保健体育(大人になる準備)の時間によって、白日の元に晒されていったから。

 

初経。

 

精通。

 

自慰行為(マスターベーション)

 

性行為(セックス)

 人の営みに関わる現実。上原(初恋の君)にもそれが例外なく適用されるという事実が、俺の心になにかを溜め続けた。———そして「それ」が決壊したのは中3の夏、嫌になる程よく晴れたプール開きの日だった。

 

 

 

 

 

 

 うちの中学では毎年夏になると体育で水泳をすることになっており、なかでも初日(プール開き)はほぼ唯一と言っていい「遊べる日」なのだ。諸注意と授業内容の説明なんて10分で終わる。残りは全部自由時間だ。

 時間を分けるのが面倒だったのかは知らんが、中3にもなって男女合同というのは、今思うとだいぶヤバいなと思う。事実、この時間の同級生(みんな)の行動は精々4パターンだ。ひたすら遊びに没頭しはしゃぎまくる女子、そんな女子の水着をあからさまに性的な眼で見る男子、そんな男子を冷ややかな目で蔑む女子……。そして最後に、泳げないかつ寒いのでプールサイドでタオルにくるまる者。まぁ俺なんだけど。

 

「………暇すぎる」

 

 カナヅチの俺は、皆が楽しいプールを満喫している様を体育座りで眺めていたのだ。

 

(ゆー)くん?」

 

そんな俺に近づいてくる人影が一つ。影ですら激しく主張するシニヨン。なにより俺を「ゆーくん」と呼称するのは全人類でただ一人。それだけで正体はわかった。

 

「……よお、上原」

 

学校指定の水着に身を包み、その上にタオルを羽織った上原が、いつもの口調で俺に語りかけてくる。

 

「もう、また上原(その呼び方)?」

 

「……別になんだっていいだろ」

 

「歩夢でいいよって言ってるのに」

 

「恥ずかしいんだよ察しろ」

 

「泳がないの?」

 

「泳げねえんだよ」

 

「ふふっ、知ってる」

 

「じゃあ聞くな」 

 

「退屈じゃない?」

 

(さみ)いし長えし帰りてえ」

 

「そっか」

 

「………俺はいいから遊んでこいよ」

 

「かわいそうだから居てあげる」

 

「……好きにしろ」

 

「うん、好きにする」

 

 俺の言葉を華麗にかわし、上原は何を思ってか俺の隣に座る、同じ体育座り(体制)で。

 好きにしろとは言ったが、どうも意中の人の水着というのは心臓に悪い。「上原はエロい」ということはおそらくクラス中の男子で共通認識になっているだろう。だが俺は屈しない。あんな性欲猿と同じレベルになってたまるかと自分を鼓舞し続けた。

 

「……」

 

「……」

 

「……ふふっ」

 

 彼女の口角が上がるのが見て取れた。これは「あの言葉」が出てくるサインだということはとっくに知っている。だから俺はそれを警戒し、身構えるのだ。

 

「ねぇ、覚えてる?」

 

「忘れた」

 

「いや話終わっちゃうよぉ…」

 

「いま暇?のノリで回想されても(こま)んだよ」

 

「だって…最近話せてなかったし」

 

「そうだっけか」

 

「そうだったの!もうっ」

 

そう言ってプクーッと頬を膨らませる上原が可愛い。いやどんな上原も可愛いに決まっているのだが、それはどうでもいい。

 

「で、今日はどうしたよ」

 

「え?」

 

「ねぇ覚えてる?で切り出す時は決まってなんかあんだろ」

 

「そうだったかな?」

 

「そうだったろ、ずっと」

 

「…」

 

「俺でよければ聞くぞ、どうせ暇だし」

 

「うん……ありがと」

 

 やがて上原はもじもじしつつも話し始める。きっと何か重大な事なのだろう。俺はひとつも聞き逃さないよう集中して耳を傾ける。

 

「えっと、その……あなたに判断してもらいたい、っていうか……お、男の子としての意見を聞きたい、というか……」

 

 えらい歯切れ悪いなおい。それだけ言いづらい事なのかと不安に駆られてしまうが、今は待つ他ない。

 

「その……」

 

「その…?」

 

「っ……私って、その……えっち、なのかな……?」

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁあっっっ!!??」

 

 何言ってんだ?マジで何言ってんだこいつ!?上原の言っていることは何一つ理解できない。あ、上原の匂い(フェロモン)がどうたらは理解できた。

 

「ねぇ、どう思う?」

 

「まずその質問に至るまでを聞きてえんだけど……」

 

「友達が言ってた……『歩夢はフェロモンがすごいから……男の子はみんなえっちな子が好きで、おっぱい星人で、(ケダモノ)だから気をつけなよ』って……」

 

「否定しきれないのが悔しい!!」

 

「………悠くんもそうだったりする?」

 

(ケダモノ)扱いだけは全力で否定するが!?」

 

「……えっち」

 

「うるせぇ……まぁ、魅力があるのは事実じゃねえの」

 

「ホント!?」

 たちまち瞳を輝かせる上原。いまいち状況が飲み込めないが。まあ立ち直ってくれたのならよしとしよ———

 

 

むにゅ。

 

 

「は?」

 

柔らかな感触、繊維の擦れる感覚が腕に伝わる。

 

 

その正体が——

 

「いや何してんだお前えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

上原の胸だと気づいた途端、俺は我を忘れ絶叫していた。しかし、この無自覚エロうさぎはそんなことお構いなしに密着度を強めてくる。

 

「私のどこがっ……その、…どこらへんがえっちなの!?」

 

「全部だよ!自分(テメー)性的(エロ)さを自覚しろ安産型ドスケベラビット!!」

 

「どすっ………!?な、何その言い方ーっ!!」

 

「じゃかあしい!事実を述べただけだ!!」

 

 

 周りの目を気にせず、性的な目を凝らし、蔑んだ目で見られ、プールに入らずタオルを巻いて……馬鹿みたいな喧嘩をした。

 

———もしも。この一幕で終わっていたのなら、まだ戻れたかもしれない。だが運命というのは残酷なもので、笑顔(ギャグ)で終われるほど綺麗にできていない。

 これから起こる(俺からすれば起こっただが)ことを知ってもらえれば、俺の言葉の意味も飲み込めてくるはずだ。本当はそこまで進めたかったのだが、続きはまた次回に。

 最後に、当時の俺が感じた率直な感想を表明して、今回は終わりにしよう。

 

歩夢(アイツ)の距離が近すぎる!!』

 

———あ、ごめん。最後にもう一つだけ。ここまで付き合わせておいて名乗るのを忘れていた。

 

 俺の名前は「高城(たかぎ) (はるか)」。断じて「ゆう」ではない。気高き城には悠か及ばず、と書いて高城悠だ。以後、お見知り置きを。

 

つづく

 

 




最後までお読みいただき本当にありがとうございます。第2話も一歩一歩進んでおりますので、お楽しみに。(1話もちょくちょく手直しする予定です)

(追伸)
 今後更新の度に活動報告も上げるので、お手すきの際にご一読いただければ幸いです。

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