アイツの距離が近すぎる   作:ぽむQ

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#11 アナタは女神の共犯者

 せつ菜さんの話を聞いていくと、同好会の存在が極めて不安定な状態にあること(他の生徒会にバレた時点でアウトなぐらいやばい)が明らかとなった。

 

「まさか無許可でやってたとはな……」

 

「すみません……」

 

「学校側に知らせないのは流石にやばいって」

 

「もちろんこのままにするつもりは無かったんです。落ち着いてから承認をと思って……いや、言い訳です。ごめんなさい」

 

 自分(たち)の行いの危うさを自覚したからか、だんだんとせつ菜さんの声が小さくなっていく。

 そしてその様を目の前で見ている俺もまた、どうにもモヤモヤした感情を拭いきれない。もちろん反省してもらいたい部分はあれど、彼女らの行いを否定したいわけではないからだ。

 

「もう謝らなくていいよ……と言いたいところだが、お咎めなしってわけにはいかないかな」

 

「そうですよね……」

 

「だからさ、一緒に考えよう。これまでの事含め。同好会が胸張って活動できるようになる方法を、さ」

 

 そう。俺が同好会について知りたかったのは、違反している部活動を潰すためではない。むしろ逆、守るためだ。なにせ、せっかくライブができる段階まで頑張っているチームなのだから、こんな承認があーだこーだなんて話で頓挫させちゃいけない。そう思ったのだ。

 

「それと、もう一つだけ聞きたいことがあるんだ。予算について」

 

「聞きたい事……?」

 

「承認されてないって事は、今の同好会には予算おりてないはずなんだけど……その辺はどうやりくりしてるんだ?」

 

「私のお年玉で、なんとか」

 

「まさかのポケットマネーかい……なんとかなるのか?それ」

 

「今年は奮発したらしく、10万円ほどいただけましたので」

 

「俺の200倍貰ってやがる……」

 

 金額はともかく、自分の手持ちを使ってでもアイドルをやりたい、という事はわかった。またひとつ、優木せつ菜と中川菜々さんの真っ直ぐさを垣間見た気がした。

 

 

 

 

ひと通りの質問タイムが終わり、いよいよ今後の同好会をどうするか、の話し合いに突入した。

 

「承認……ですか?」

 

「ああ。次の生徒会会議で、俺からスクールアイドル同好会の承認を進言する」

 

 俺が行おうとしていることは極めてシンプル、正々堂々承認してもらうことだ。

 いくら誤魔化し続けてもいつか必ず限界がくる。それに今の同好会はせつ菜さん、というか中川さんのワガママによって形を保っていると言っていい状態だ。何か一つでもツッコまれたら速攻瓦解してしまうのは明白。

 それに、ごまかしはその期間が長くなればなるほどバレた時のペナルティは重くなるのが世の常。最悪活動停止、廃部になる可能性だってある。

 最後に、正式な同好会じゃないと宣伝もままならないだろう。存在がバレたら終わりの部活動がSNSなどできるわけもなく、ましてや外部のイベントに学校の名前を使って参加など危なっかしくてできまい。

 これらの課題を解決し、かつなんの後ろめたさもなくスクールアイドル活動を行うためには、やはり正式な部活動であることを生徒会に認知させ、承認をもらうことが最優先だ。だが……。

 

「しかし……うまくいくでしょうか。高城くんも知ってのとおり、最近の同好会乱発の動きもありますし」

 

「ああ、そこなんだよ……薫子先輩め」

 

 読んで字の如く、生徒会には「同好会をつくりたい!」という申請が山のように来ているのだ(学期の初めは特に)。すべてを承認していたら部室がまったく足らないから、設立できる同好会は非常に少なくなっている………訳ではない。

 むしろ逆。先代生徒会長の三船薫子先輩曰く「高校生活で何かを始めたいっ!なんて若人を無下には扱えんっ!!全員承認、何がなんでも承認だっ!!」とのことで、申し出が通る可能性はほぼ100%。気づけば同好会だけでも100個を軽く超え、しまいには「部室棟」なるものを増築するまでに至ったというわけだ。

 

 そんな事もあってか「虹ヶ咲ならやりたいことができる」と評判になってしまい、部活や同好会をつくりたい面々が虹ヶ咲学園に入学するケースが増えた。全員認めてあげたいところだが、カリスマ三船薫子がいなくなって以来、つまり中川さんが現会長になってからは設立に至る基準を高く設定し、テキトーな同好会は認めない方針に変わったんだ。

 

「今の基準でいくと、スクールアイドル同好会があっさり承認される……ってことはないと思う」

 

「……しかし、生徒会長である私と、庶務である高城くんのお墨付きが有ればなんとかなるのでは?」

 

「権力行使する気満々かっ!!」

 

「冗談ですよ。……そんなずるいことしたら、同好会の皆さんに顔向けできません」

 

「わかってるならいい……だが承認が厳しいのは事実。そこでだ」

 

 手がない訳ではない。ここからが本番。俺がスクールアイドル同好会を正式に認めさせるために(ついさっき)練った作戦を披露する時だ。

 

 

 

 

「監視委員?」

 

「そ。同好会がどれだけ真面目に活動しているか、どれだけの実績を積んでいるかを生徒会役員に判断してもらう」

 

 これこそが俺の考えた「監視委員」作戦だ。やはり身内以外の人間からの支持がなければ、認めてもらう事は難しいだろう。

 生徒会自身が同好会の活動を一番近くで確認し、その内容を記録することが重要だと思ったのだ。

 

「なるほど……それで、その、監視委員?は誰にお願いするつもりで?」

 

「中川生徒会長と高城庶務にお願いするのが一番手っ取り早い」

 

「あなたも権力行使する気じゃないですかっ!!」

 

「まだ途中だっての!……来週ライブやるって話をかす子から聞いたからさ、それを活用するんだ」

 

 そうして俺は、監視委員作戦の全容を説明するに至った。

 

「まずは中川さんと俺で同好会に潜りこみ、練習風景やライブの様子を動画に収める」

 

「そしてその動画を会議に持っていき、俺たち以外の全員も納得させた上で承認してもらう」

 

「その後も定期的な活動チェックってことにすりゃ、生徒会長が自然に出入りする理由ができる」

 

「あとは部室で着替えれば優木せつ菜の正体もバレない……って流れを考えたんだけど、どうかな?」

 

「………高城くん」

 

 ひとしきりの説明が終わった後、せつ菜さんに向き直る。その彼女はというと——。

 

「ありがとうございます。そして、ごめんなさい」

 

神妙な面持ちのまま、ぺこりと頭を下げた。

 

「ちょっ、せつ菜さん……!?顔上げなって」

 

彼女は俺の言葉には答えず、そのまま言葉を紡ぎ続ける。

 

「私たちが活動できるよう、策を考えてくれてありがとう。そしてそれに巻き込んでしまって、ごめんなさい」

 

「謝らなくていいし、そもそもたいした事はしてないよ……それに俺の作戦だって、生徒会権限を濫用してるのと変わらないから。共犯みたいなもんだ」

 

「それでも、ありがとうございます」

 

 顔を上げたせつ菜さんと目が合う。そのグレーの瞳から感じる視線の圧に、彼女の覚悟の強さを感じた。

 

「高城くん。この共犯、乗らせていただきます」

 

「OK。よろしく、せつ菜さん」

 

「はいっ!!」

 

「わかったから俺の鼓膜をいじめるな」

 

 そんなこんなで俺に新たな役職が追加されたため、そのプロフィールを更新して今回は終わりにしよう。

 俺の名前は高城悠。役職は生徒会庶務並びに……「スクールアイドル同好会監視委員」。

 

つづく

 

 

 

 

 

 




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