アイツの距離が近すぎる   作:ぽむQ

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念願の赤評価をいただくことができました。凄く嬉しいです。
これからも頑張りますので、引き続き読んでいただければ幸いです。

今回も特別編…というか歩夢ちゃん成分が足りなくて衝動的に書きました。日曜には本編も進めますので、そちらもお楽しみに。


#EX2 アイツの選曲がラブすぎる(前編)

上原(うえはら) 歩夢(あゆむ)

 皆さんご存知の通り、俺の隣に住む幼馴染でかつ初恋の相手である。言うまでもないことだが、上原は可愛い。どうしようもなく可愛い。そして上原は優しい。もうはちゃめちゃに優しい。いくら付き合いが長いからといっても、思春期を迎えてなお異性(おとこ)と普通に仲良くしてくれる女の子などそうはいないだろう。

 そして上原の最大の魅力は、「女の子らしさ」がとても似合うという点につきる。本人は気づいてないみたいだが、そこがまた良いとも言える。——まぁ、それが振り切れてしまうこともあるが。

 これはそんな上原が無自覚に醸し出す「女の子らしさ」が極限を突破し、俺の理性に多大なダメージを与えた日の回想(むかしばなし)である。

 

 

 

 

 

 

「カラオケ?」

 

「うん。練習に付き合ってくれないかな…って」

 

 季節は中学3年の5月上旬。男子は年相応の厨二病(びょうき)に磨きがかかり始め、女子は自らの色気(ぶき)を段々と意識しはじめるころ。

 俺と上原の通う「虹ヶ咲学園中等部」では毎年6月に「学年対抗合唱コンクール」なるものが恒例行事となっており、5月(この時期)にもなると各クラスがこぞって練習を開始する流れが定番化していた。

 放課後の全体練は当然として、本気で勝ちにいくもの、または自分の歌唱力に自信がないものは自主練をこなすこともある。学園近くのできてまだ新しいカラオケボックスは、その練習場(フィールド)として最適だともっぱらの評判で、各自こぞってそこに通って日々合唱している(らしい)。まあ歌うのには適しているし、飽きたら好きな歌歌えばいいし、ポテト美味いし……願ったり叶ったりって気はする。

 

「……お前別にそんな下手じゃないだろ」

 

男の子(テノール)がいないと雰囲気でないから…。(ゆー)くんにも歌ってほしいの」

 

「あ、そ……。他のメンツは?」

 

「悠くんだけだけど」

 

「アルトとバス呼ばねえのかよ……」

 

 そして俺、ゆーくんこと高城(たかぎ)(はるか)はそのカラオケボックスでの練習兼遊び兼実質デートじゃね的なイベントに誘われていると言う状況だ。

 正直言って俺はこの手の学校行事に青春を燃やせるタイプじゃない。もちろん全力でやるにはやるが、どこか「学校でやることだから」って気持ちで、イベント消化のノリでこなしていることは否定できない。だからぶっちゃけプライベートの時間を削ってまで練習するのは面倒という気持ちが大きいのだが……。

 

「……人数多すぎてもアレだしな、ok.俺でよければ付き合う」

 

 自分でも驚くほどあっさり快諾してしまった。いや、当然か。上原歩夢とデュエットする機会を棒に振るなどできないのだから。

 

「ホント!?ありがと!」

 

「……そんな喜ばれると反応に困る」

 

 彼女は瞳を輝かせつつ俺の手を取り、目的地へとエスコートしてくれる。他人の目がある場所で異性の手を握り、遊びの場へ入ってゆく。そんな行為をさらりとできる上原に、俺はこんな感情を抱いていた。「コイツの距離感マジでバグってんな」……と。まぁ、嬉しいからいいか。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……まぁ、こんなもんだろ」

 

「うん……おつかれ」

 

 

 練習開始から一時間。課題曲を何度もループし、音程をキープしつつ声量を増やすコツはなんとなく掴めた。あとはこの感覚を忘れずに反復練習あるのみだ。

 そんなこんなで、練習パートはここらで切り上げ、いよいよ本題(ってほどでもないけど)のカラオケパートが幕を開けるのだった。

 

「はい、まずは悠くんから」

 

 そういって上原は俺に改めてマイクをポンと渡す。

 

「お前先でいいよ、レディーファーストだ」

 

「その文化って毒味に端を発してるらしいよ?」

 

「……じゃあ俺が先」

 

「ふふっ、ありがとっ」

 

「っ…別に。さっさと曲選んどけ」

 

 これまでの課題曲とは全く別。プライベートな持ち曲を他人に聞かせるのは若干の恥ずかしさは拭えないが、それもまたカラオケの醍醐味だろう。ついでに、自分の趣向ばかりが先走るケースは防がなければなららまい。(俺の場合持ち歌がアニソン、特ソン、なんか最近テレビでやってたやつの主題歌に偏ってるので尚更だ)、大衆向け、というかある種の定番ソングの歌詞を脳から引っ張り出しつつ、一曲目を入力するのだった。

 

 

 

 

「悲しげに咲く花に 君の面影を見た」

 

「大好きな雨なのに なぜか今日は冷たくて」

 

 俺が選んだのは「月光花」。中々歌いやすくて、それでいて程よく声を張れて気持ちがいい。十八番、というにはいささか笑止かもしれないが、何歌う?ってなったらまずコレ、ってぐらいには気に入っている。

 

「月の欠片を集めて 夢を飾り 眠る」

 

「時の砂散りばめても あの頃へ還れない」

 

 久しぶりに歌ったが、なんとか最後までこなすことができた。……上原の反応はというと、……未だに選曲に悩み、デンモクとにらめっこしていた。俺のことは全く視界に入ってなかったようで……。

 

 

 

 

「悠くん、意外と歌うまいね」

 

「じゃかあしい、意外は余計だ。……次、お前の番だけど」

 

「うん、……じゃあ、アニメ繋がりで」

 

 彼女はそう言って、何故か頬を赤らめつつ曲を入れる。一応補足しておくと、俺の歌った月光花はとあるTVアニメのオープニング曲としても有名だ(世代的にリアルタイムでは観てないけど)。その繋がりというのだから、2ndオープニング?それとも劇場版の歌?一体なんだろう……。悶々としているおれの眼前にあるスクリーンに、その曲名(こたえ)が映し出された。

 

『黒毛和牛上塩タン680円』

 

——ほんの数秒のイントロが流れ、上原は優しく、可愛い声で……歌を紡いだ。バッチリ俺の方を見つめながら……。

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁいすきぃぃぃいぃいいよぉおぉぉぉっ♡♡♡……もっと♡、もっと♡、あたしを愛してぇぇぇえええぇっ♡♡♡」

 

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁいすきぃぃぃいぃいいよぉおおおおっ♡あなたとひとつ〜♡になれる〜の〜ならぁ〜〜♡♡」

 

「こんな幸せはないわぁ〜〜〜♡♡………お味はいかが?」

 

すごかった。色々と。

 

 

 

 

 いつもより短い特に進展のない話で申し訳ないが、これ以上は俺の理性が持たないので今回はここまでにしよう。一応、なぜこの話をしたかだけ伝えておく。理由はひとつ、この物語の方向性を再確認したいということだ。

 何が言いたいのかというだな……その、この話は、

 

上原(アイツ)の距離が近すぎる!!」話なのだ。それをハッキリさせたかった、ただそれだけなのだ。

 

——てなわけで、後編でお会いしよう。

 

つづく

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。
次回もお楽しみに^ ^
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