アイツの距離が近すぎる   作:ぽむQ

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遅ればせながら、本作のお気に入り登録者様が100名を突破致しました(2021年8月22日現在)。本当にありがとうございます。
 これからもより多くの方に読んでいただけるよう、そして何より応援してくださった皆様にもっと楽しんでいただけるよう書き進めていきますので、これからも読んでもらえたらとても嬉しいです。

※本編の続き(6話)ももうすぐ完成しますのでお楽しみに。




#EX4 オレと中川さんのセカンドチェイス+にゃん(前編)【お気に入り登録者様100名突破ありがとう特別編】

『ギャップ萌え』。  

 当人からは想像もできないような意外性のある行動によって新たな一面が垣間見え、結果として印象強く残る現象である。ありがちな例えで言うと、捨て猫を助ける不良、ロリ巨乳、ツンデレ、男の娘、眼鏡を外すと美人……と言った具合だ。

 そしてそのギャップ萌えの最たるものこそが、「真面目な優等生のあざとカワイイ姿」だと俺は思う。なぜならその圧倒的なまでの破壊力をまざまざと見せつけられてしまったからだ。

 これはそんなお話。俺が高校二年生になった矢先——幸運にも引き続き生徒会庶務を務める事が決定し、『中川(なかがわ) 菜々(なな)』さんが新生徒会長を引き継いで間もない頃———、あの可愛くも恐ろしい白猫(はんぺん)と繰り広げた再戦(リターンマッチ)の記録である。

 

 

 

 

2020年、5月。

 新学期と共に全てが始まる出会いの季節が過ぎて、各々のポジションが仕上がりつつある頃。高校2年生ともなればフィクションのど定番、青春のピークとあって差し支えない時期だ。

 しかし実際のところ進級したところで何か革命じみた事例に襲われるなんてことはなく、突然美少女が転校してきたり、なんてラノベじみた出会いがあるわけでもない。俺の周りはある一点を除いて代わり映えのない平和な日常が続いていた。

 まるで暖かい布団でぐっすり眠るような、何特別でなくとも素晴らしく安心できるいつも通りの日々だ。いつも通りの道、いつも通りの学校、いつも通りの授業、そしていつも通りの——上原(おさななじみ)との微妙な距離。

 

 なんてモノローグに浸りつつ、俺は自らのクラスの扉を開け自分の席——窓際一番後ろなんて特等席は用意されるわけもなく、出席番号14番(「た」かぎ だから凄まじく微妙な位置の番号にならざるを得ない)の教卓から見て右から3番目縦列の後ろから2番目———に歩を進める。

 

「おはようございます、高城くん」

 

するとその隣、出席番号19番の席から聞き慣れた挨拶(こえ)が届く。俺はそれを受け取り、同じように言葉、朝の挨拶を返す。

 

「おはよう、会ちょ………中川さん」

 

 ついいつもの癖で役職呼びをしてしまいそうになるのをぐっと堪えるが、果たしてスムーズに呼べる日が来るのかは定かではない。

 2年生になりただひとつ変わったこと———それは彼女との距離が物理的に縮まった事だろうか。

 同じ生徒会執行部として活動し、彼女が考え俺が動くある種のコンビとも言える関係性で、かつては共に猫探しをこなしたほどの仲である元副会長にしてこの春より現生徒会長となった『中川 菜々』。

 

 そんな彼女と、ニジガクにて膨大な数を有する普通科のクラス分けというえげつないシャッフルの末に同じクラスとなり、おまけに名前がた行とな行なおかげで絶妙に隣の席になったこと。

「満場一致でクラス1の美人」とこの至近距離で過ごすことを強いられている現状が、俺の日常にくい込んできた一種の非日常(ぼうけん)と言えるだろう。

 

 

 

 

 授業はつつがなく進行し、もう放課後だ。授業中に消しゴムの貸し借り、教科書の見せ合い、なんてイベントは存在しない。お互い筆記用具を忘れる性質(タチ)の生徒でもないし、教科書に至っては全部タブレットで閲覧する都合上、忘れる事自体があり得ないことになっているからだ。

 

「では、行きましょうか」

 

「ああ」

 

 いつもと何ら変わらない身支度を整え、自らの業務(しごと)をこなすべく生徒会室へと足を運ぶ庶務(オレ)生徒会長(中川さん)。この時期の生徒会は特に忙しく(部活や同好会の設立申請や他校との交流会などが目白押しだからだ)、しかも俺たちは進級し新体制に入ったばかりだ。一年生(こうはい)に教えることも多く、片時も気は抜けない。

 今日も最後まで集中して頑張ろう。当たり前の責任感(プライド)を再確認しているうちに着いてしまった。中川さんが慣れた手つきでカバンから鍵を取り出し、その施錠(ロック)をガチャリ、と外す。そうして妙に立て付けのいい引き戸をカラカラと開けると———。

 

『ニャッ』

 

小さな白い猛獣が勢いよく飛び出して来た。

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

「中川さ…会長!?」

 

 黒板消しも真っ青なスピード(トラップ)を回避できるはずもなく、素っ頓狂な声をあげバランスを崩す彼女を間一髪受け止め、俺はその犯人いや犯猫である『はんぺん』———かつて野良猫として当学園に住み着き、前生徒会長『三船 薫子(みふね かおるこ)』先輩のアイデアで生徒会公認のマスコットとしての飼育が決定し、その驚異的なまでのスピードで当時一年生だった俺と中川さんを限界まで苦しめた強敵【詳しくは#EX1 庶務とクイーンの初チェイスfeat.はんぺんをご覧ください】———の行方を確認するも、奴はすでに俺たちの視界からその姿を消していた。

 

「仕事がひとつ増えたようですね………あ。ありがとうございます」

 

「どういたしまして……じゃ、ひとまず着替えるか」

 

 互いに体制を正し(といっても俺に寄りかかっていた中川さんが離れただけだが)、今年度から二年生カラーとなった青色のジャージに着替えるべく一旦別れ、生徒会のグループL○NEに「はんぺん逃亡の報」を入れるのであった。

 

 

 

 

「はんぺーん!どこだー?さっさと出てこぉーい!!」

 

「美味しいご飯もありますよぉー!早く出てきなさぁーい!!」

 

 着替えを終えた俺と会長はいつぞやの虫取り網(ジョイ○ル本田で買ったであろう700円前後のやつ)を装備し、例のターゲットを追う。やるべき仕事は山ほどあるから、一刻も早く捕まえるべくお互い神経を尖らせる。

 これまでもその自由奔放(かつスケベ)な性格ゆえにはんぺんが脱走するケースは複数回あったが、その度にプロフェッショナル——野獣の如き勘で猫の逃走を許さなかった三船前会長、家で猫を飼っておりその扱いに長けている 杉本 美穂 新副会長 の2人——の力によって未遂に終わっていたのだ。

 

 だが今回は彼女らの援護はない。先輩は卒業してしまったし、杉本さんは他校の生徒会と打ち合わせに出かけていからだ。

 どうにか頭数を増やそうにも3年生の皆様方に「猫探し」を頼むのも気が引ける。じゃあ新人(一年生)に任せて仕事しろ、庶務はともかく生徒会長が身体張ってどうすんだよ。なんてご指摘(ツッコミ)が入りそうなものだが、残念ながら一年生は春特有の仲良しイベント「校外オリエンテーション」なるものに出かけており、今日は一日中八景島シーパ○ダイスで遊びまくっているのだ。

 

 そんな事情が重なって、現在動けるのは俺と中川さんの2人だけ。かつて前代未聞の「美少女の下着で猫を釣る大作戦」なる暴挙を敢行し悪猫を仕留めたコンビが、今一度手を組みかつての宿敵(ライバル)を追っている。

 この光景にデジャヴを感じつつ、あの時の流れを思い返す。はんぺんを捕らえるヒントが隠されていると思っていたからだ。しかし思い出せたのは作戦に使わせていただいた会長の下着が高校生にしてはかなり刺激的なピンクだった事だけだった。

 

「高城くん?」

 

「え、あ…何?……ですか会長」

 

「……変なこと考えてませんよね?」

 

 どうやら会長には俺の脳内フォルダに焼きついた高貴かつ低俗な考えはお見通しのようだ。

 

「考えてません」

 

「考えてたんですね……本当に考えていないなら『何の話?』って返すでしょう」

 

「うっ……」  

 

 咄嗟に否定したのが仇となり返って墓穴を掘ってしまった。死にたい。

 

「おおかた、あの時の作戦の事でも思い出していたのでしょう」

 

「……はい」

 

「まったくもう……今回ばかりはあんな事絶対しませんからね。実力で捕まえましょう」

 

「当然そのつもりだ……ですよ。とっとと捕まえて帰ろう、……ましょう」

 

あからさまに苦手な敬語を半ば無理矢理繋げて発声しつつあたりの様子を伺っていると、『ニャー』と聴き慣れた鳴き声がら俺たちの鼓膜を震わせる。

 

「ようやく見つけたぜニャン公……」

 

「ほら、逃がさないうちに行きますよ早く!」

 

「了解っ!」

 

 その鳴き声を頼りに俺たちは前の戦い(初チェイス)とは真逆、国際交流学科の学舎のある敷地へと急いだ。

 

 

 

 

「………っあ……はぁ………はー……っ!」

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ……全然っ、大丈、夫………!!、会長…体力すごいっすね……」

 

「トレーニングの成果、ですかね」

 

「なるほどっ……!……ん?」

 

 昨年——全力疾走でバテバテになった中川さんを介抱した場面——とは逆の構図。部活(剣道)を辞めて以来めっきり運動量が減ってそれに伴いスタミナが失われ、少しのダッシュでボロボロになった俺を、中川さんは余裕そうに見つめている。トレーニングと言っていたが、何か学外でスポーツでもやっているのだろうか?……いや、今はそれを考える場合じゃない。

 

『ニャー、ニャー』

 

『はぁ〜^^かわいい〜。ふふっ、何処から来たの〜?^ ^」

 

 なぜなら俺の視界には先程から追いかけ続けた標的と——それを抱きしめ天使の笑みを浮かべるアンもたじたじってくらいのスイス系美女(リボンの色からして三年生、先輩のようだ)が映り込んでいるのだから。

 

「国際交流学科3年 エマ・ヴェルデ先輩」

 

「あ、やっぱり覚えてるのね」

 

「生徒会長たるもの、全校生徒の顔と名前を覚えるのは当然です」

 

「生徒会長のハードルが高すぎる」

 

その先輩も例に漏れず中川会長のデータベースに記録されているようだ。

 

「人の手の中にいるなら好都合です。事情を話して譲ってもらいましょう」

 

「了解……帰ったら限界までしつけたる」

 

「程々にしてあげてください……」

 

 早速、視線の先にいる交渉相手(先輩)の方向へ歩み寄る。近づくたびに何故か心が洗われるような清涼感を覚えた。なんだこれ。先ぱ…エマ先輩からマイナスイオンでも溢れているのだろうか。

 そしてそのマイナスイオンを直に……年頃の男なら目を逸らすことはまず不可能であろう凄まじい主張を誇る山脈(むね)から摂取しているセクハラ系マスコット白猫に、俺は恥ずかしながら嫉妬を覚えてしまった。

 

 そんな男の下衆い気持ちを見透かされたのか、中川さんからの刺々しい視線がチクチクと刺さった。いたい。

 

 

つづく

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

後編、そして本編も順調に執筆中……来るだけ早くお届けできるよう頑張ります。
ありがとうございました。
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