アイツの距離が近すぎる   作:ぽむQ

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お久しぶりです。心身共に不調が続き、創作が滞ってしまい申し訳ありません。
これからは元通り週一の更新頻度に戻ると思いますので、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。今後ともよろしくお願いします。

☆栞子ちゃんお誕生日おめでとう!そしてアニメ2期登場決定おめでとう!!☆


#EX5 ワタシの適性と決意のコーディネート【2021.10/5 三船栞子生誕祭】

「校外オリエンテーション」。

 入学したての一年生たちが親睦を深められるように丸一日かけて観光に出かけるという、我が虹ヶ咲学園の恒例行事。有体な言い方をすれば「遠足」といったところでしょうか。

 そうなると当然「私服」で出かける必要が出てくるものですが、これがまた面倒というか、なかなかに気を使わなくてはいけないものなのです。

 構いすぎず、構わなすぎず。自らの適性とその場のTPOに合わせた服装を選び、その前提の上にアクセント、いわゆる「おしゃれ」をして出かける。自らをいかに客観視できているか、自分の持つファッションの適性をどれだけ発揮できるかが問われる勝負。そう、戦いは既に始まっているのです。当日の朝4時30分、日も出ていない時間から鏡の中の自分とにらめっこし続けているこのときから。

 ……なぜこんなに早起きなのか、ですか?それは、その……はっきり言いましょう。自信がないからです。

 

 同年代の皆様とのお出かけ、その類のイベントへの適性に乏しい私——三船(みふね) 栞子(しおりこ)には、ワンポイントのおしゃれ、髪飾りひとつ結ぶ決意さえ、難儀なものなのだから。

 

 

 

午前5時。

 髪飾りを結んだかと思えば外したりを繰り返し、それに合わせた服を選んでいるうちにもう30分近くが経過していました。

 7時30分の出発にはまだ余裕があったものの、このペースでは私の適性を見つけ出すことなどできそうにありません。

 

 目的地の「八○島シーパラダイス」や、「しお子は綺麗めのが似合う気がするっ!」という同じ班の中須かすみさん(クラスメイト)の意見を参考にし、『動きやすいかつシンプルで、それでいて落ち着いた清楚なフォルム』を目指すことは当初から決まっていたのですが、実際にやってみるとその絶妙なさじ加減というものが分からず大変な苦労を覚えますね。

 結局この長時間鏡を見つめ続けて得たものは「ジーンズではなくスカート」という方針が決まっただけでした。……弱気になってはいけません。ひとつ物事が決まったことは大きな前進といえる。この調子で必ず理想のコーディネートを手にしてみせましょう。

 ……とは言いつつも、そろそろ着るもの以外の身だしなみも徹底しなければなりませんね。

 

 

 

 

 お風呂に入ったことで身体のコンディションは良好なものの、肝心な着るものはまだ決まりませんでした。ふと時計をみるともう6時半も過ぎたところで、その事実が私をさらに焦らせる。

 

「どうしましょう……」

 

 洗面所でスマホを洗いながら脳内にアイデアを並べてみるも、どれが正解かを判断できる力は私には無い。これでは決まるわけがない。

 

「随分悩んでいるみたいだね」

 

「あ……姉さん」

 

 途方に暮れていると、後ろから姉さん——前生徒会長かつ私の実姉、三船薫子の声が響いた。

 

「気合い入ってるじゃん。なに、勝負でもするのかい?」

 

「違いますよ」

 

「ふっふっふー。こんなこともあろうかと、栞子専用のパワーアップアイテムを用意してあるのだよ!!」

 

「話聞いてました?」

「さあ、刮目して待ってなっ!………あれぇ……?どこしまったっけ……あれかな、クリーニング出して、それから……いやほんとどこ行ったんだ……?」

 

 うちの姉は本当に話を聞かない。昔からそうでした。常に自分のペースで、誰かに無理に合わせるところを見たことがない。

 

「ごめん、ないわ」

 

「構いませんよ、あわよくばそのまま大人しくしていてください」

 

「代わりと言っちゃあなんだが、姉さんがひと肌ぬいでやろう」

 

「結構です」

 

「ふむ、やはり服の良し悪しは人に聞くのが一番だから…」

 

「だから話聞いてました?」

 

「姉さんの可愛い後輩、栞子にとっては先輩かな。生徒会メンバーの意見を頂こうじゃないか!OG権限でっ!!」

 

 ……この人のこういう部分、慣れていると言えども、あまり好きにはなれません。

 

 

 

姉さんは思い立ったや否や、先輩(生徒会庶務)に電話をかける。こんな早朝からご迷惑をおかけして……後で謝らなければ。

 

 

『………もしもし、高城です』

 

「おう、おはよう久しぶりしゃんとしろ高城庶務!!私だ、薫子だ!」

 

『ああ、三船先輩…………どういったご用件で?』

 

「単刀直入に言おう。うちの栞子に似合う服ってなんだと思う?」

 

『話が見えねぇ』  

 

「今日はシーパラだからな!で、どう思う?」

 

『そっすね……体温調節できるようなジャケットとかじゃねーすか』

 

「雑だな高城くん!なんだ、寝不足か?まあいいやありがと!!」

 

『いやアンタに起こさr』

 

「………よし、次は会長だ!!」

 

高城庶務の電話を雑に切り、次は中川生徒会長へと電話をかける。本当に申し訳ないです、うちの姉が……。

 

「栞子ー!菜々ちゃんいわく、『好きな色は主役に持ってくるべし』だってさ!!」

 

……まさか普通に意見が返ってくるとは思ってもいませんでした。さすがは生徒会長、ということなのでしょうか。

 

 

 

 先輩方2人のアドバイスを聞き入れ、私の着ていくものが無事に決まりました。お礼にお土産を買わなければいけませんね。

 

 そんなことを考えつつ集合場所へ赴くと、私以外の班メンバーは皆揃っていて、その中の1人、中須かすみさんは私に気付くなり、いつもの快活な声で私に近づいてきました。

 

「遅刻ギリギリだよしお子ー!」

 

「すみません………服を選ぶのに戸惑ってしまって」

 

「へぇ〜………おおっ、しお子いい感じじゃん!」

 

 かすみさんは、私の適性コーディネート——純白のtシャツとその上に重ねたブラウンのジャケット、そして一際目立つ翡翠色スカート——を誉めてくれたみたいです。

 

「……ありがとうございます。中須さん」

 

「『かすみ』でいいよっ。……それかぁ〜♡『かすみん』って呼んでくれてもいいけどっ?」

 

「じゃあ『かすみさん』で」

 

「むむっ……まあ、しお子らしい、かな?」

 

「そういうものでしょうか」

 

「そーいうものなのっ!さ、行こっ!」

 

「……!はいっ」

 

かすみさんに手を引かれながら、私はバスに乗り込みました。そして目一杯楽しませていただきました。

 ……ああ、肝心の行った感想を話していませんでしたね。水族館で見たクラゲが可愛かったことはとても印象深く記憶しています。やはり海の生き物というのはどこか神秘的というか、正しい環境ゆえの美しさを醸し出していて思わず見惚れてしまいましたね。

 

 それと、かすみさんがペンギンに張り合って「しお子!どっちの歩き方が可愛いか審査してっ!」と宣言したかと思えば急にペンギン歩きをしだし案の定盛大に足をつって医務室に運ばれていきました。

 

 あとチーズバーガーが美味しかったです。

 

 

 

 

 ……こんなこともありましたね。懐かしいです。

 今回は私(が一年生になったばかりの頃)のお話を聞いていただく形となりましたが、いかがでしたでしょうか。少しでも楽しんでいただけたのならば幸いです。ありがとうございました。

 

………え。次はいつ会えるのか、ですか?

 

 そうですね、「そう遠くない未来」とだけ伝えておきましょうか。

ふふっ、案外私の距離も近すぎたりするかもしれませんね?……なんて、これは冗談ですけれど。

 ひとまず、私の先輩方の物語がまだ途中のようですので、そちらの続きを見ていただけたらな、と思います。その道の途中で出会うこともあるでしょう。楽しみにしていますね。

 

 ここまでお付き合いいただきありがとうございます。最後に、いま話している私のプロフィールを紹介しておきましょう。何かの展開の予想に使えるかもしれませんからね。

 

 私の名前は三船 栞子(みふね しおりこ)。OG兼前生徒会長の三船薫子を姉に持つ、虹ヶ咲学園普通科一年の生徒会副会長です。そのうち、『先輩方』とも関わっていくことになるでしょうが、それはまた未来でお話しましょうか。

 

それでは、ごきげんよう。

 

 

《オレと中川さんのセカンドチェイス+にゃん(後編)》につづく

 

 

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