アイツの距離が近すぎる   作:ぽむQ

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投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
更新頻度を戻せるよう頑張ります。


#EX6 オレと中川さんのセカンドチェイス+にゃん(後編)

 脱走した生徒会公認マスコット猫「はんぺん」を追ってきた中川さんと俺。奴の身体能力から見てかなりの長丁場になるかと思われたが、幸いにも偶然通りかかった「エマ・ヴェルデ先輩」が保護してくれていたため、あとは彼女からはんぺんを譲ってもらえば完了、というところまで来たのだが……。

 

「さあはんぺん大人しくこっちに来……うひゃあ!?」

 

「高城くん何やって……きゃっ!?」

 

 エマ先輩の手から離れた途端、例の白い悪魔は生徒会二人をすり抜け、猛スピードで飛び出していったのだ。

 

「おい、ちょ待てよはんぺん!!……逃げちまった」

 

「やっぱり一筋縄ではいかないみたいですね」

 

「かもな」

 

 どうやら本番はこれから、またいつかのような大捜査線が始まると思うと気が滅入る。しかし放っておくわけにもいかない、とにかく追うしかないだろう。その前に……

 

「「ごめんなさいエマ先輩」」

 

「ううん、ぜんぜん大丈夫。……猫ちゃん、無事だといいね」

 

「必ず捕まえますよ。……とにかく、すみませんでした。では」

 

 完全にとばっちりで巻き込んでしまった先輩に2人して頭を下げたのち、逃げた敵を追うために奴の消えた道を急……

 

「あ、そうだ二人とも!」

 

‥‥急ごうとした矢先にエマ先輩に呼び止められる。

 

「鬼ごっこは体力勝負だよっ、よかったら食べて!」

 

 そう言って彼女が差し出してくれたのは……虹ヶ咲の購買で大人気となっている「100円メロンパン」だった。

 

「「ありがとうございますっ!!」」

 

「よし、その意気だっ!がんばって!」

 

「「はい!!」

 

 先輩から朗らかなエールと2つの携帯食(メロンパン)を受け取り、俺たちはあの俊足の貴公子——はんぺんの走り去った方角へ急いだ。

 

 

 

 

「はぁ……はあっ……結局、捕まえられませんでした、ねっ…-」

 

「ああ…けど追い込んではいるっ、から……-はーー……あと、一息、かなっ……!!」

 

 場面は変わって、ここは生徒会室。先程あれだけ勇んで捕獲に向かったものの、無策で挑んだゆえ捕まえられるわけもなく、休憩と作戦会議も兼ねて戻ってきていたのだ。

 

「ふぅ……。しかし、どうしましょう?今のままでは、また拒絶されて逃げて追っての繰り返しになるのは目に見えてます」

 

 中川さんは柔らかなソファに身を預けてエネルギーを蓄えつつ、はんぺん捕獲の策を練っている。先程の追跡では捕まえられなかったものの、奴の体力を削り、はんぺんが熟睡するまで粘った。今もきっと木陰ですやすや惰眠を貪ってることだろう。

 寝てるんならそのまま捕まえりゃあいい、とも考えたがそれはあまりにリスキーだ。寝起きの動物が何をしでかすかなんて検討もつかない。また逃げられる可能性だって、下手すりゃ俺はいいとして中川さんや周りの誰かにケガをさせてしまうことも考えられるからだ。

 俺からも何か突破口となりうる案を出さねばならないが、今ある装備だけでなんとかなるとも思えない。

 

「そうだなー…やっぱり餌で釣るしかねえと思うけどっ……よっ」

 

「……何をしているんですか?」

 

「宝探し」

 

「はあ…?」

 

「いや、先代の知恵が残ってねえかなー、なんて」

 

 そこで俺は前会長——はんぺんの事を一番猫可愛がりし、卒業の際には「はんぺんと暮らせないなら死ぬぅぅぅぅぅっ!!」とまで言ってのけた末に3日間生徒会室に立て篭もり不退去罪で補導される様を全国ネットの夕方ニュースで流されて、妹の栞子(しおりこ)ちゃんに「私が一番死にたかったです」とまで言わしめた『三船薫子』——が残していった置き土産(という名のガラクタ)の山を調べることにしたのだ。何かはんぺんに繋がるものが残されていれば、それを応用して捕まえる方ができるかもという算段だ。

 

「お」

 

 そんな宝探しをしばらく続けていると、謎のパーティーグッズや書類の山に埋もれた『それ』が目に留まった。その異様なフォルムに興味を押されられず、俺は恐る恐る手に取って広げてみる。

 

「なんじゃこりゃ」

 

「着ぐるみ……ですかね」

 

 発掘されたのはクリーニング屋のビニールに包まれた着ぐるみらしきもの。白と黒で構成されたその「もふもふ」は猫の毛並みを忠実に再現しており、フード部分にはぴょこんと可愛らしい猫耳、背中(というよりヒップライン)には尻尾まで付いている。リアルで見たのは初めてだが、いわゆる「動物系着ぐるみパジャマ」というやつだろうか。なぜこんなものが残されていたのかは全くの不明だが……。

 

「本人に聞いてみるか」

 

「いきなりご迷惑では?」

 

「大丈夫だろ。向こうだって朝6時に電話してくる人だし」

 タイムリーなことに、俺は今朝6時に薫子先輩の電話で起こされたのだ。栞子さんの私服をどうにかしてくれ、という話だったかな。寝起きで何言ったかいまいち覚えてないけど。

 

「え、そちらにも来たんですか」

 

「あれ……もしかして中川さんも?」

 

「はい、たしか6時少し過ぎ……くらいでしょうか。『栞子さんのコーディネートの手助けを』……と。一応、答えられるだけのことはしましたけれど」

 

「聖人かよ」

 

 中川さんにも同様の連絡が会ったことも驚きだが、朝っぱらからTELされてもしっかり依頼に応えるその姿勢にもっと驚く。それが生徒会長の器なのだろうか?即効二度寝決めた俺との差が如実に現れた瞬間だった。まあそれはあとで反省するとしてだ。今は薫子先輩にこの着ぐるみの詳細、そしてはんぺん捕獲のヒントを貰わねば。

速やかにスマホを操作し、先輩をしめすアイコンをタップ。「呼び出し中…」の妙に緊張感の走る画面を眺めつつ、彼女と繋がる瞬間をじっと待つ。中川さんも神妙な面持ちでそれを見守っていた。

 やがてディスプレイが薫子先輩のアイコン——栞子さんの寝起きすっぴん目半開き顔写真——に切り替わり、スピーカーが接続されたとき特有のノイズが走る。そして通話相手の息遣いが聞こえたかと思えば——。

 

『…………はーいもしもし!!天丼は並の上に特上を作る!!未来の一万円札こと三船薫子だ!!ただいま電話に出ることができる!!ピーッとならなくてもラブコールを入れてくれっ!!!』

 

「店屋もんのススメってかそのアイコンやめろ電話出れんのかよ何がラブコールだリコールすっぞツッコミが追いつかないあとそのアイコンやめろ!!」

 

 あまりにハチャメチャが押し寄せてきたため思わず敬語を忘れてツッコんでしまった。

 

『やーやーやー10時間ぶりだな高城くん!なんだね、駆け落ちのお誘いか?』

 

「あいにく年上はタイプじゃないので」

 

『じゃあお姉さんの良さを教えてあげようか。乗馬は得意だぞっ?』

 

「リードしたい派なので遠慮しときます」

 

だがミス薫子はその程度では止まるはずもないようで……。早く本題を切り出さないと時間だけが過ぎてしまう。

 

「いきなり電話してすみません、どうしても聞きたいことがありまして」

 

『なんだい、栞子のお尻にほくろが4つあることかい?』

 

「実妹のプライバシーどうなってんすか……じゃなくて!生徒会長にあった着ぐるみっぽいやつのことで」

 

『ああっ!!そこにあったのか!!』

 

「やっぱり薫子さんの私物なんですね……で、これは一体何なんですか」

 

『いやー見つかってよかった!それは私が通販で買った栞子専用パワーアップアイテム、「しおにゃんパジャマ」だ!』

 

『栞子が泊まりになる時にこっそりすり替えようと思って買ったんだが使い道がなくてね』

 

「栞子さんになんて事を」

 

『家に置いとくと勘付かれて没収されるからクリーニングしてそっちにしまったんだが……そのまま置きっぱなしにしてたみたいだね、すまない』

 

「謝るところが違う気がしますけど……」

 

『せっかくだから着させたらどうだい?菜々ちゃんに』

 

「はあぁぁぁぁぁっ!?」

 

『可愛いと思うぞー!真面目ちゃんがラフなメス猫になる様、グッとくる事間違いなしだっ!!』

 

「……だそうだけど、中川さ

 

「絶対に着ません」

 

「だよな」

 

『マイナスイオンでクリーニングしたから包容力マシマシだっ!!どうだい?「にゃかがわさん」にならないか?』

 

「……」

 

「正直めっちゃ見たいけど今そういう状況じゃ痛い痛い中川さん無言で引っ張らないで怖いからごめん」

 

 俺の脇腹に的確なダメージを与えてくる中川さんを宥めつつ先輩に対応していると、脳にあるイメージがよぎる。

 

「待てよ。メス猫…マイナスイオン……包容力……それと………2つのアルプス山脈、か」

 

 手がかりがパズルのピースのように繋がっていくのを感じながら、机に置かれたメロンパンに目を通す。さっきエマ先輩にもらったものだ。

 

 ……完璧だ。俺の推測が間違ってなければ、これで道が開ける。はんぺんをおびき出し、安全に捕まえることができるはずだ。

 

「中川さん」

 

「着ませんよ」

 

「まだ何も言ってないが」

 

「なんとなく察しはつきましたので」

 

「心配しなくても着させねえよ、俺が着る」

 

「それはそれで心配ですけれど……」

 

『おー……なんか面白そうなことになってるな、もーちょい詳しく聞かせてくれるかね、高城くん。中川さん』

 

『私もOGとして協力しようじゃないか』

 

 

 こうしてハチャメチャな先輩とモフモフ装備を手に入れた俺たちははんぺんにリターンマッチを挑むことになったのだ。

 

 今回はここまでにしよう。だらだらと続けてしまってすまない、だが次で本当に最後だ。

 次回「オレと中川さんのセカンドチェイス+にゃん(完結編)〜コイツまた中川さんにエッチな格好させてる〜」を楽しみに待っていてほしい。

 

それでは、また近いうちにお会いしよう。

 

 

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