☆歩夢ちゃんお誕生日おめでとう!☆
☆歩夢ちゃんお誕生日おめでとう!!☆
☆歩夢ちゃんお誕生日おめでとう!!!☆
みなさんご存知、俺の初恋相手かつ片想い中の優しくて可愛くて柔らかくていい匂いがする女の子だ。
そんな魅力的な彼女と恋愛関係になることが俺こと
なぜなら、俺には上原の彼氏として振る舞う自信もなければ、その役目を担えるほどできた人間でもないから。
なによりも中3の夏、
……しかし。いつか、いつかは俺自身の言葉で謝り、伝えなければならない。前置きが長くなってしまったが、これは俺が高校一年生を終えようとしていた頃———3月1日、つまり俺と上原の誕生日に起きた「ある事件」、そして俺がある種の覚悟を決めたときのお話である。
♪
3月。冬から春への移り変わりの季節。とはいえ朝は冷え込むし、暖房や上着は欠かせないこの頃。そんな「暖かいもの」に需要がたっぷり残っている時期に、大変なアクシデントが発生してしまったのだ。
「お風呂の故障」である。
正確には俺、上原、高咲の住んでいるマンション全域のインフラが麻痺しており、ガスが止まっちまったのである。お湯が出ないんじゃあシャワーも浴びれん。無理矢理冷水で流す事もできなくはないが、3月といえどまだ寒いこの頃にはちと酷だ。
……じゃあマンションの住人は風呂なし生活をしろと?いや、そこらへんはちゃんと措置が取られている。
それこそ、俺が今握っているチケット、銭湯の回数券だ。この辺りのマンションはこういった事態に陥った場合の救済はきっちり行ってくれるのだ。例えば断水すれば給湯車やペットボトルの水が支給されたり、今回のケースでは「銭湯の利用券」を配るなど。
家以外の風呂に入ることなんてそうそうない。若干の緊張を覚えつつ、俺は近所のスーパー銭湯「
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銭湯に着くと、中途半端な時間だからか他のお客さんの気配がない。少し寂しい気もするが、まあ、ひとりでゆったり入るというのもありだろう。
ロビーにて受付を済ませて奥へ進み、いよいよ【男】【女】の分岐点に差しかかったところで、
「いやー、誕生日に銭湯ってのもオツなもんだねっ」
「災い転じて、って感じかな……あ、悠くん」
「おー、ハルも来てたんだ。ハピバ」
見知った二人、上原アンド高咲にかち合った。
「……よお、サンキュ。上原も、その…おめでとう」
「ありがと…」
正直なところ、かなり緊張している。当然だ、ここは銭湯。この後、壁一枚隔てただけの空間で、その……裸、なのだ。意識しない方が無理というもの。
「ハル、いくら誕生日でも覗いたらぶっ飛ばすからね」
「やるわけねえだろ普通に捕まるわ」
高咲にその考えはつつ抜けだったようで、しっかりと鍵を刺された。心配せずとも覗きなんてバカな行動は起こさない……多分。
「大丈夫だよ侑ちゃん。悠くんは覗くよりも、堂々と見たいって言うタイプだから」
「言わんっての」
そんなハートフル(?)な掛け合いを経て、各々の欲情……浴室まで足を運んだ。
♪
「あー……いい湯だ」
広い浴場にお一人。風呂は気持ちいいものの、この静かさに慣れるには時間がかかりそう。
「うおーっ!貸切じゃーん!!」
壁一枚隔てた先から高咲の声が聞こえる。他にお客さんがいないからだろうか、よく響く。
だが盗み聞きは良くない。両手で耳を塞ぎつつ、彼女らの会話がひと段落するのを待った。
だけど……
「歩夢ってさー」
「な、何…?」
「またおっぱい大きくなった?」
高咲から繰り出されたまさかの爆弾発言サーブが、俺の手を容赦なく貫き、「上原のおっぱいが育った」と言う事実を鼓膜と脳に届ける。
「べ、別に変わってないよっ!」
「えー、ホントーっ?怪しい〜」
「侑ちゃんってば……あっちには悠くんだっているんだよ?聞こえちゃうよ」
「平気だって!なんならハルのことだし喜んでるかも」
はっ倒すぞ高咲。……しかし、この状況はまずい。幼馴染をそんな目で見てはいけないことは勿論わかっているのだが、その、身体は正直だから思わず反応してしまう。情けない。
「よーしっ、私が直々に確かめてやるっ!!」
「え、ちょっと、侑ちゃん———」
二人の筒抜け会話をスルーしつつ、俺は精神統一を完了させた。身体も鎮まったし、ゆっくり上ろう、とした瞬間——。
「あぁああんっ!だめぇぇっ!!」
ふっと気を抜いた無防備な一瞬を、アイツの喘ぎ声に貫かれた。先程までの流れで完全に鎮まっていた俺の身体が息を吹きかえすのがわかる。
具合の悪いことに、俺はあの日の事件の影響で当時中3の上原の裸を見てしまっているので、脳内イメージの解像度がめちゃくちゃ高くなっている。
大好きな幼馴染が、人並み以上に美しく色白でむっちりした裸体をもみしだかれ、可愛らしい声で喘いでいる。その破壊力は、俺を健全な状態で上がらせることを不可能にするほどに強烈であった。
「おーい。兄ちゃん、そろそろ上がんねえとのぼせるぞ?」
しばらく悶々としていると、店長のおっちゃんが様子を見に来てくれた。
「……すんません。
言い終わる前に俺は限界を迎え意識を手放した。頭の中には「さっき」の声が繰り返し、繰り返し響いていた。こんな最低な事を思っているから告白できねえんだよと自虐しつつも、どうしても意識せずにはいられない。
アイツの喘ぎが、エロすぎる……。
♪
「……うひゃあっ!?」
どれだけの時間が経っただろうか、首筋に走った冷たい感触によって俺は意識を取り戻した。
「悠くん……」あっ、起きた!」
「…ん、上原……?」
彼女の反応を見るに、俺は長いことのぼせて気絶したしまったらしい。寝込む俺を心配してくれたのか…?そうだとしたらありがたい。
「ごめんね、うるさくしちゃって」
「公共の場で喘ぐな……」
「ごめん……」
「別に、謝ることじゃねえよ……あれ、高咲は?」
「裏でめっちゃ怒られてる」
「そうか」
どうやら女湯で痴漢行為を働いたツインテールはこってりしぼられているようだな。
「とにかくみんな無事みたいだし、さ、まずは一本」
そう言って上原が差し出してくれたのは、先程俺を起こすのに使ったコーヒー牛乳の瓶だ。上原の手元には、同時に買ったであろうフルーツ牛乳が見える。
「……ありがとう、かなり助かる」
「それじゃあ、改めて」
「ああ、改めて」
「「お誕生日おめでとう、乾杯」」
上原からコーヒー牛乳を受け取り、各々のビンを軽く合わせる。キン、と言う乾杯特有の接触音が響き、その気持ちよさに当てられつつ、俺たち二人は風呂上がりの一杯を楽しんだ。
コーヒー牛乳を飲みながら、ひとつ、決めたことがある。
それは、「いつか必ず上原に全てを話す」ということだ。今回のこともそうだが、俺は「上原を女として見ている」事を(当たり前だが)秘密にしている。もちろん、「あの日」のことも。
それのせい(と言うよりかは俺が弱いからなのだが)で過剰に意識してしまい、こういうことになる。
それじゃダメなんだ。それでは上原の隣にいる事は許されない。俺がアイツと恋人になるには、告白するには、嫌われる覚悟で何もかも打ち明けるという禊を果たさなければならないのだ。
何年かかるかはわからないが、必ずやってみせる。
こうして俺とアイツの16歳の誕生日は、ひとつの決意表明とふたつの風呂上がり牛乳によって幕を閉じたのだった。
おしまい