アイツの距離が近すぎる   作:ぽむQ

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お待たせしました。そして更新が遅れてしまい申し訳ありません。
 今週からまた週1ペースで投稿していきますので、引き続きよろしくお願い致します。


#7 キュートな中須を泣かすオレ

『スクールアイドル』。

 その名が指し示す通り「学校」で「アイドル活動」を行う個人または集団(グループ)の総称だ。

 その多くはスクールアイドル最大のイベント『ラブライブ!』(俺はよく知らないが所謂アイドル甲子園的なものだろうか)を目指して頑張っているらしく、ここ虹ヶ咲にもその志を持ちし面々、『スクールアイドル同好会』が存在するらしい。

 

 なぜ俺が「らしい」なんて曖昧な表現をしたか。答えは簡単、その同好会の存在自体を知らされていなかったからだ。本来部活及び同好会の発足には生徒会執行部による会議にて厳選なる審査がなされ、それを通過したのちに生徒会長の承認が行われ、はじめて受理されるのだ。

 つまり、その会議に参加している俺が感知していないということは、スクールアイドル同好会なるものは()()()()()()()()()()()()のだ。

 ここから考えられる可能性は二つ。ひとつは生徒会の誰かが職権濫用をはたらき、うまいこと手続きを踏んだか。そしてもう一つは———。

 

「ねーもういいでしょはる助ぇー……かすみんのキュートで可憐な足がしびれちゃいますよぉ〜……」

 

「ならさっさと白状しろ」

 

「かすみん悪いことしてないもん……」

 

「じゃあ永遠にしびれてろ」

 

「鬼ぃ〜……」

 

 今さっき俺に「かすみんを三万円で買って!」などとぬかしたこの女、自称スクールアイドル同好会を名乗りかつ俺の従妹で、現在進行形で正座させている女——「中須かすみ」がでまかせを言っているかの二択だ。

 

 

 

 

 流石に肉体的にも精神的にも痺れを切らしたのか、かす子——俺が幼少期から中須かすみに使う呼称である——は先程の奇行に至った理由、スクールアイドル同好会の存在について語りはじめた。

 

 かす子曰く、同好会の申請はリーダーの「優木 せつ菜」さんがしてくれたようで、申請許可証やその他諸々の書類は全て彼女が持っているそうだ。

 

「あと……はいこれ」

 

 そして承認の証と言わんばかりにかす子が取り出した「それ」を手に取ってみる。

 

「鍵は渡されてんのか……」

 

 偽物ではない。間違いなく生徒会長が直接付与する部室棟の鍵だ。どういう段取りを踏んだか知らんが、同好会側にしてみれば承認は行われたという解釈だろう。それに部室まで持ってる以上は、俺も信じるほかない。

 ただ中川さん——生徒会長がいつもの流れを汲まずに承認したという可能性が腑に落ちない。効率化と言えば聞こえはいいが、あの会長がそんな悪い意味でのワンマンぶりを発揮するとは思えなかったからだ。まあそれは後で本人に確かめるとして……。

 

「もう少し詳しく聞かせてもらおうか。かす子」

 

「その呼び方やめてっ!……『かすみん』って散々アピールしてるんだからそれでお願い。ねっ、はる助 」

 

「わかったよ、かすかす」

 

「余計酷くなってるーっ!!だめっ、かすかすだけはダメっ!!」

 

 彼女(かすかす)の話を聞くことが先か。

 

 

 

 

 

「なるほど。つまりこういうことか?来週のライブに使うステージをもっと豪華にしたいと」

 

「そう!可愛いかすみんの初ライブ、もうやりすぎってぐらいキュンキュンさせなきゃって思って!」

 

 どうやら同好会の活動は俺の思った以上に進んでおり、有観客のライブまで控えているのだそうだ。そのステージの装飾のクオリティを上げたいものの、生徒会からの予算では限界があるのだと。

 

「それで?同好会の予算アップの相談をリーダーの……優木せつ菜、さん?にやってもらいたいと」

 

「その通りっ!ひとりだけ内緒でやるのはかすみんルールに反するからねっ。しっかり全員パワーアップしないとっ!………まぁ一番可愛くなるのはかすみんだけどねっ…

 

 ナンバーワンになりたいが、自分だけ後付け強化を貰うのは気に入らないらしい。こういう妙な部分で律儀なのが真にこいつのカワイイところだと思うのだが、それを教えると絶対調子に乗るから言ってやらん。……しまった、また横道に逸れちまった、話を進めねえと…。

 

「でもせつ菜さんのクラスがわかんねえからしらみつぶしに2年のクラスを回っていたと」

 

「そうなの…。せつ菜先輩、プライベート全っ然明かさないからもう大変で大変で…」

 

 何科かも何組かも不明な部長とはなんぞや。そんなチームが報連相をできる気が全くしないが、ライブを行えるだけの活動をしてきたということは、彼女たちなりの信頼関係があるということだろう。

 だが、それにしてもだ。この「優木せつ菜」という人物の謎が多すぎる。というかそもそも素性を隠す理由もわからない。

 何より解せないのは中川会長がこの同好会——リーダーの素性が全く不明の部活動——を承認したということだ。正直なところ、優木せつ菜云々のくだりがなければまだ「審査基準が緩和された」と納得できそうなものであったが、ここまで詳細が不明だと話は変わってくる。俺の知っている中川会長ならまず認めないはずなのだ。

 生徒会として(一人の人間としての好奇心もあるが)、一体何が起こっているのか突き詰める必要がある……かす子の件が終わってから。

 

「で……せつ菜さんを探す途中で偶然にも生徒会所属の従兄(オレ)に出くわしたもんだから、色仕掛け(ハニートラップ)で交渉の手間もなく楽々軍資金ゲット……って計画か?」

 

 同好会への疑念を一旦頭の隅に置き、かす子の3万円発言の意図を俺なりに推理して犯人(かすかす)にぶつける。自分で言ってて頭が痛くなりそうだ。まさか、高一にもなってこんなギャグ漫画みたいな作戦をマジでやる人間がいるわけ———。

 

 

「合格っ!!」

 

「何にだよ」

 

当たっちまったよオイ。

 

「さっすがはる助、理解が早い!」

 

「これほど悲しいラーニングは初めてだ」

 

 思わず体の力が抜けるのを感じる。かすみんを買って発言の真相がこんなオチだったとは、こりゃあ、なんとも………。

 

「理解ついでにさ、かわいいかわいいかすみんにぃ〜………お小遣いちょうだいっ♡」

 

「あー…ツッコミどころが数えきれんぐらいあるけどまずひとつ言わせてくれアホかお前は!!

 

「ぎゃあああああああああっ!!!!」

 

 この期に及んで露骨なまでにあざといボイスでおねだりをかます中須かすみにお灸を据えるべく、頬を餅の如く引っ張った。

 

「にゃにひゅんのひゃはるひゅへげぇ!!」

 

「普通科一年中須かすみさん校内での賭博及び売春行為は言うまでもなく校則違反なので然るべき処置を要するに少しは反省しろやカスガキぃ!!!

 

「ひゅいまひぇんへひしゃたひゅけてひゃるひゅひぇえええええーっ!!!」

 

何を言ってるのかわからない中須ボイスが教室の隅々にまで反響し、その絶叫は廊下まで轟いたとか轟かなかったとか。

 

 

 

 

「うわああああああーん侑せんぱぁーーーーーい!!はる助がいじめるよぉーーーーっ!!」

 

「おー、よしよし……かすみちゃん、もう大丈夫だよ〜っ」

 

「あ〜ん♡侑せんぱい………すきぃ………♡…」

 

「ふふっ、私も大好きだよ」

 

「なに出会って3分で仲良くなってんだこいつら……」

 

 かす子は俺の折檻が終了するとすぐ目の前の高咲に盛大に甘えはじめ、それをイケメンツインテール聖母が優しく抱き止める。初対面同士とは思えない距離感。コミュ強同士が絡むと自然とこうなるのだろうか、いやならねえよ。こいつらがぶっ飛んでるだけだ。

 

「はる助ったら酷いんですよぉ〜!かわいいかわいいかすみんのお誘いを断ったうえに、キュートなかすみんフェイスをつねりやがったんです!」

 

「ほんと、後輩に対してアレはないよねー!」

 

「そうですよねーっ!だからはる助はモテないんですよ!もうっ」

 

「あ〜ん怒ってるかすみちゃんも可愛い〜っ!!さ、あんなセクハラヘタレ侍ほっといてあっち行こうね〜♡」

 

「おい誰が抜刀斎だ叩っ斬るぞ」

 

 高咲が俺の髪型——かす子よりも若干長い後ろ髪を下の方で縛る、幼少期からの憧れである「実写版 緋○剣心」をイメージしたいつものスタイル——を交えてこちらをディスってきたのでとりあえず突っ込んだものの、正直なところ事実もだいぶ含まれているのが悲しい。

 つい先ほども上原の胸に触れ……いや、掴み………白状する、揉んだよ。それに、その事実を謝罪するどころか無駄な照れ隠しで事態を悪化させビンタまでくらってしまっている。もうばっちりセクハラかました挙句大事な場面でヘタレじゃねえか。泣きたい。

 つーか、我ながらなんだよドスケベラビットって。いや上原を的確に表現するのにはこれ以上なくピッタリな気がするのだが……。

 

「まったく、かすみさんは甘え上手なんだから……それと、すみません高城先輩。ご迷惑おかけしてしまって」

 

 己のセクハラヘタレぶりを再確認するつもりが横道に逸れまくっている俺を、隣に佇むリボン系大女優(オードリー)、「桜坂 しずく」の透き通る声が現実に引き戻す。

 

「あー、気にすんな桜坂後輩。かす子が絡むときはいっつもこんな感じだから」

 

「あれ?しず子、はる助と知り合いだっけ?」

 

「うん。先輩が剣道部にいた頃、殺陣(たて)を教えてもらってたの」

 

「たて……?ディフェンス??」

 

「その盾じゃねえ。あれだ、剣の構えとか映える動きを教えたってこと」

 

 桜坂とは昔、中等部にいた頃に面識があった。先程彼女が説明していたように、演劇部で時代劇などを行う際に剣道部がその所作を教えるという関係性。

 その中でも彼女の表現力は群を抜いていたこと、俺も当時は剣道一筋だった(上原を忘れたいという不純極まりない動機だが)事から互いに印象強く覚えていたのだ。面と向かって話すのはほぼ2年ぶりだろうか、話すついでに一つ、聞いておこう。

 

「ところで桜坂後輩」

 

「……?なんでしょうか」

 

「いや、さっきから気になっているのだが……」

 

「すやぁ…」

 

 俺の視界の先、机に突っ伏して深すぎる眠りに落ちている彼女。かす子とのバカ騒ぎ、ゆうかすのやかましい絡みに微動だにせず、すやすやと寝息を立てている先輩——。

 

「なんで爆睡してんの?」

 

———『近江(このえ)彼方(かなた)』先輩について。

 

つづく

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。来週は番外編の後半を投稿する予定です、お楽しみに。
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