カミサマにお願いして人類を裏切った勇者に事の次第を問いただしにいったらTSしてるし何も憶えてないどころか時間が巻き戻ってるんだが?   作:覇王ドゥーチェ

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ギシンとの再会

「ダメダメだねぇ」

 

 ギシンと再会したら、開口一番にダメだしされた件について。

 

「そりゃねぇ、未来を知ってるってアドバンテージ、活かしたいのは分かるよぉ? でもさぁ、『ユウシャ』が女になってるのを見ても前回と全く一緒の行動取るぅ? ありえなくなぁい?」

 

 なんか口調がうざいギャルみてぇだな、と思ったらギシンがでかいギャルに見えてきた。こいつギガントとか呼ばれてそう、というのがこいつへの第一印象だった事を考えると──ん? 今度は雌型巨人に見えてきたな……。というか、前回と全く一緒と言われても、魔法を封じられた魔法使いが、魔神相手にどう動けって言うんだ。

 

「そこじゃなくてさぁ……クラスアップを目指さないのはボクが教えなかったが故の無知なんだろうけど、せめて『ユウシャ』がなんでクラスアップできたのか、とか少しは考えて行動して欲しかったなぁ」

 

 そりゃ昇格(クラスアップ)できりゃそれに越した事はねぇけど、『勇者』と『聖女』が光属性の神様に特別好かれてただけの話じゃなかったか? ……いや、その話も男の勇上がそう言ってただけだったか。そりゃどうにか昇格(クラスアップ)できないか確かめるべきだな。

 

「ああ、もう……少し頭を回せば分かる事を、君は四年間もぉ……」

 

 四年間? 俺とギシンの間になんか齟齬があるな、と思ったが……ひょっとしてひょっとすると、俺が時魔法を使った事をご存じでない? 加速魔法クイックの効果って、年単位の時間を加速させるのかよ。こわ。闇魔法と役割かぶってなかったわ。すまんな、時属性の神様。

 

「時魔法? それって……あ、そういう、事かぁ」

 

 何か知っているのか雷電。知っている事はキリキリ話して貰おうか。前回お前に良いように喋らされた恨みを忘れるほどの時間は経っちゃいないぞ。

 俺が今聞きたい事は……俺の知っている勇上はどこへ行ったのか、俺の知らない勇上がいたあの状況はどういう事なのか、俺の属性が増えていたのは何故か、加速魔法クイック使用後の状況をギシンからはどう見えていたのか、魔神に攻撃が通用しなかったのは何故か、魔神を相手に魔法が発動できなかったのは何故か、っていうかさっきからギシンの姿が七変化していて気が散るんだがこれ何? それから──

 

「ああ、もう、多いよぉ……別に答えてあげてもいいけどさぁ?」

 

 なんだよ。やっぱり対価を要求する類の悪神かお前。なら対価には勇上の魂を差し出すぜ。もちろん俺を裏切った方な。

 

「ここ、あんまり長居できないんだよねぇ」

 

 それを先に言えや! と俺は食い気味に叫んだ。ギシンの言葉が終わる前に足場にしていた感触がなくなり、俺の体が落下を始めたからだ。意識を強く保つ。一瞬でも気を抜けば、俺の意識は海水に垂らした一滴の真水のようにこの夜空の中に溶けていくだろう。それは宇宙に身一つで投げ出されるようなもの。ギシンがいた方向を見やれば、なんとギシンもこちらと一緒に落下していた。前回はどうだったかあやふやだが、一人で落ちてたような気もする。

 

「うーん、このまま話すのはちょっと難儀だよねぇ……まぁ、とりあえず自分の体と意識に集中してるうちは溶けないから安心していいよぉ?」

 

「その言いぶりだとここ気を抜いたら体まで溶けんのかよ!?」

 

 叫んでから気付いたが、明らかに違う。体がある。まるで意識していなかったが、どうやら先程までは意識だけ存在していたようだ。恐ろしい事に、全く違和感がなかった。今も体の隅々まで意識しないと、夜空と体の境界線がぶれる。

 

「まぁ、そういう空間だからねぇ。君の疑問に答えたいのはやまやまだけど、諸般の事情により巻きでいかせて貰うねぇ?」

 

 落ち続けてもうどれだけ経ったか分からない。ギシンの言葉に耳を傾ける余裕すら失われつつある。なんでもいいからさっさとしてくれ!

 

「じゃあ、せっかくだから、ボクが作ったパワーポイントから、見ていこうねぇ?」

 

 もうなんと言っているか半分ぐらい分からんが、俺をおちょくっていることだけは理解した。マジで許さんぞギシン。お前は間違いなく悪神、いや邪神の類だ。

 

「じょーだん、じょーだんだよぉ。……うーん、一言でまとめよう。これだけは集中して聞いてくれ」

 

 先程までしていた煽りとしか見えないにやけづらを急にギシンが引っ込め、真面目な顔になった。途切れそうな意識を振り絞り、ギシンの言葉に集中する。

 

「僕も行くよ」

 

 え、今なん──

 

 

 

 

 

がぼぼぼ?(て言った?)

 

 あまりの衝撃に、まるで口と鼻から水が入ってきたように感じた。やたらと塩素臭いこれはプールの水だろう。つまり、プールで溺れるくらいの衝撃だった。……いや、もっと驚いた気がする。え、あいつさっきなんて言った?

 僕も行く、って言ってなかったか? なるほど、それなら驚くのも納得だ。ギシンって自称神様なのに、意外とフットワーク軽いのな。神様ってもっと、なんかこう、ありがたみが強くて、こちらが崇め奉っても意に介さないイメージだったわ。まぁ、うちの女神様の話なんだが。

 現実逃避はここまでにしよう。現状、溺れてる。プールで。多分教育隊の水練館で。このまま溺れても救出される可能性は高いが、万が一はいつだって起こりえる。水を吸ってしまって苦しいが、今すべきなのは落ち着いて水をかき、足を蹴る事だ。焦ってもがいても、沈みはしても浮きはしない。

 胸の前で手を合わせながら足のかかとを尻に引き付け、水面目掛けて腕と足を一気に伸ばす! たった一度で水面に顔を出す事に成功し、咳き込みながらも息を吸った。シャバの空気はうめぇなぁ!

 

「神之木! 大丈夫かっ!?」

 

 暁教官が救命浮環を持ってこちらに近付いてくる。なんとか無事を伝えたかったが、俺の泳力では立ち泳ぎしながらの会話はできない。俺は素直にプールサイドへ平泳ぎで向かった。

 

 

 

 

 

「す、すみません暁教官! 足がつってしまいました!」

 

 プールサイドに掴まりながら、まず暁教官に謝った。足がつっている、というのは噓ではない。プールサイドに向かうまでの間に、つってしまった。ただそれだけの事。……俺の体、貧弱すぎんか? 四年前の俺ってこんなにもやしボーイだったっけ?

 

「……そうか。ならいい。神之木学生、プールから上がったら見学の位置」

 

「はい!」

 

 暁教官の手を借りながらプールサイドへ上がり、まずつった足を伸ばした。暁教官の手は戦士の手だった。端的に言うと、バブみではなくゴリラみを感じてしまった。魔法使いでも、肉体練成から逃げてはいけない……。その事を強く痛感した。

 俺は、弱い。辛うじて魔法だけは人並み以上だが、それ以外は軒並み目も当てられない。十傑に選ばれたのは、ただ闇属性魔法が得意だったというだけ。自覚しろ。俺は、弱い。このままでは魔神に勝つどころか、ダンジョンでも足を引っ張るだろう。強くならなければならない。心技体、全てを揃えてもまだ足りない。神を相手取るには、人間の限界など超越して当たり前なのだ。

 俺は見学者用の椅子に座りながらふと思った。

 ギシンどこ?

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