鏖殺☆ステゴロエルフちゃん♡   作:Tホシ

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なんか長くなって中途半端に終わってしまった・・・
ユルシテ


第三話

『ファミリア』

「神の眷族」とも呼ばれ、下界に降りてきた神々が己の神血を使い人間の体(主に背中)に神の恩恵(ファルナ)を刻んだ者たちを集めて結成した集団、組織である。ファミリアの主人である神を主神と仰ぎ、ファミリアは主に主神の名で呼ばれる。一口にファミリアと言っても様々な種類があり、主神の意向でファミリアの主旨が変わる。例えば、デメテル・ファミリアのような商業系ファミリア、ヘファイストス・ファミリアのような製作系ファミリア、オラリオの西部に位置するラキア王国のような一柱の神を主神とする国家系ファミリアまで存在する。そんな中、オラリオで最も多いのがダンジョンに潜りそこから回収される資源を収入源とする探索系ファミリアである。ファミリアはギルドから等級付けされており、その評価はIからSまであるが、その等級が高くなるごとにギルドから徴収される税金の額があがる仕組みになっている。探索系ファミリアは等級がDを超えると、ギルドから遠征などの強制任務が発令される。

ちなみに、私が所属している『ヘスティア・ファミリア』は探索系ファミリアに分類されているが、最近結成された新参ファミリアである為、構成員は団長のベル・クラネルと副団長(暫定)の私しかいないファミリアである。主神であるヘスティアがバイトの合間に団員勧誘を行なっているようだが結果は芳しくないようだ。

 

 

ギルドでエイナと別れてから私たちはホームに帰るため、メインストリートを並んで歩いていた。

 

「なぁ、ベル?臨時収入も入ったことだし、なんかおかずになるもん買ってかね?ヘスティアはどうせ碌な飯なんて用意してる訳ねぇし」

「それはいいと思うけど、いいの?そのお金はアレミアさんのだし、申し訳ないっていうか・・・」

「気にすんじゃねぇよ。私たちは家族なんだろ?なら、別に遠慮する必要はないだろ?おっ!あの屋台のやつめっちゃ美味そうじゃね⁉︎」

 

メインストリートを歩きながら晩飯のおかずになりそうな食べ物を次々と買っていき、待ち切れない分はベルに押し付ける。こんだけ買えば仮に、ヘスティアが何も用意してなくても腹を満たすことが出来るだろう。

さらに進んだ先でメインストリートから逸れ、おかずが冷める前にホームに着くため裏路地を右に左に曲がりながら進む。そして裏路地から出た私たちの前に『ほぼ新築同然の教会』、私たちのホームが見えてきた。教会の扉を開けて中にいるであろう我らが主神様に声を掛ける。

 

「神様ー!ただいま帰りましたー‼︎」

「おーう、今帰ったぞぉ、ヘスティア」

「おっかえりー!ベル君!アレミア君!」

 

私たちのホームは外観こそ教会の形をしているが内装は少し大きめの一軒家といったものとなっている。少し前の話、ベルがヘスティア・ファミリア入団後、それに続く形で私もヘスティア・ファミリアに入団した。ベルとヘスティアに連れられてホームに向かったが、私はヘスティア・ファミリアのホームだと言うその建物を見て絶句した。それはパッと見教会だと分かるが、明らかに何年も適切な管理がされていないと分かるほどのオンボロ具合だった。ベルも初見でびっくりしたらしいが慣れてしまったらしい。中も案の定ボロボロでベルたちは教会の地下室の隠し部屋で生活してるようだ。ダメだ、コイツら・・・早くなんとかしないと・・・!と思った私はオラリオに来る前に貯めた金をノームの宝石にしたものを前金にゴブニュ・ファミリアに依頼し、ローンを組んでボロ教会を改築してもらった。その時のヘスティアの顔といったら、本気で神でも見るかのような瞳をしていた。曲がりなりにも神がそんなんでいいのか?とその時は思った。

 

「今日は随分と帰ってくるのが早かったね。なんかあったのかい?」

「じ、実はダンジョンでミノタウロスと遭遇して死にかけてしまって・・・」

「そんで、ギルドで担当アドバイザー様のありがた〜いお説教を聞いてたって訳よ」

「うぇぇぇえ⁉︎大丈夫なのかい⁉︎君たちに死なれたらボクはかなりショックだよ⁉︎アレミア君は・・・まぁ、殺しても死にそうにないから大丈夫か!」

「どういう意味だ駄女神コラ」

「いでででっ⁉︎頬を引っ張るんじゃにゃーい⁉︎」

 

私に頬を引っ張られているこの少女の名は『ヘスティア』。このファミリアの主神である。身長はベルより低く、艶のある長い黒髪を銀の小さな鐘がついたリボンで結い上げている。そして私と同じくらいの大きさの胸が少女のような外見とのギャップを生み出している。しかし、神とは言うがこの駄女神はベルが入団するまでは友神のホームで厄介になっていたが、あまりの自堕落ぶりにその友神からホームを追い出され、この元オンボロ教会に放り込まれ、強制的に屋台のバイトをやらされているらしい。この駄女神はベルに出会わなかったらマジで野垂れ死にしてたんじゃないだろうか。

 

「それなら、今日の稼ぎは期待できない感じかな?」

「いや、私が牛野郎をぶちのめしたから、その分稼ぎにゃなってるはずだ」

「僕はいつもより少なめですね。神様は?」

「ふっふっふーん!二人とも、これを見たまえ!ジャッジャーン!」

「そ、それは⁉︎」

「売り上げに貢献したってことで、大量のジャガ丸くんを貰ってきたんだ!皆でパーティーと洒落込もうじゃないか!二人共、今夜は寝かさないゼ☆」

「神様すごいです!」

 

ホームのリビングでお互いの今日の成果を報告していると、ヘスティアは山盛りのオラリオ名物『ジャガ丸くん』を出してきた。ヘスティアが持ってきたジャガ丸くんと私が買ってきた屋台の食べ物を食べながら話していると、ヘスティアがしみじみといった風につぶやいた。

 

「いやー、アレミア君が入団してから稼ぎも増えて、ウチのファミリアも余裕が出てきたよね〜。相変わらずウチのファミリアに入団してくれる子はいなかったけど・・・」

「どのファミリアでも授かる『恩恵』は同じなんですけどね・・・」

「単純な理由だろ。都市外までその名が轟く有名ファミリアと、オラリオでも聞いたことない新参ファミリアじゃ、どちらがいいかなんて一目瞭然だ。あと、ヘスティアの外見が子供っぽいせいじゃね?」

「ぐっグハッ⁉︎」

「か、神様ー⁉︎」

 

私の鋭い正論攻撃がヘスティアのガラスのメンタルを貫く。 ヘスティア は めのまえ が まっくら に なってしまった!後ろに大きく反り返りヘスティアを慌てて支えるベル。このまま夫婦漫才でも始めそうな勢いだ。

 

「大丈夫ですよ神様!僕たちのファミリアは始まったばかりです!それにアレミアさんはすごく強いから、ヘスティア・ファミリアもすぐ有名になって入団希望者も沢山来るようになりますよ!」

「オイオイ、他人任せかよ団長様よぉ。まずはオメーが有名になんだよ。英雄になってハーレム作んだろ?頑張れよぉ?未来の英雄クン?」ニヤニヤ

「うぐぅ・・・⁉︎」

「ふふ、僕はこんないい子たちに会えて幸せ者だよ。さて!それじゃ未来の英雄たちのステイタスを更新しようか!」

「はいっ!」

「さぁて、どんくらい増えてっかな〜っと」

 

晩飯を食べ終えて3人で談笑した後、ヘスティアに促されヘスティアの自室に通された。このホームには私たち3人分の自室と2部屋の空き部屋兼物置きがある。改築の際に入団者が増えてもいいようにさらに部屋を増設してもらったのだ。今のところ生活必需品とヘスティアが持ってきた大量の本などで埋まってしまっている。ヘスティアには何度も何度も本の整理をしろと言っても生返事ばかりで未だに実行されていない。

 

「まずはベル君からだね。さぁさぁ、いつものように上着を脱いで寝っ転がってね」

「はい、わかりました」

 

上着を脱ぎ、ベットにうつ伏せで横になったベルにヘスティアは跨がり、ステイタスの更新の準備を始める。いや、跨がる前に準備をしとけよ。自分の眷族の上でわちゃわちゃすんな。

ヘスティアは自分の指に針を刺し、傷口から溢れた己の血をベルの背中に垂らす。ベルの背中に落ちたヘスティアの血はベルの背中の上で波紋を広げ、ベルの背中へと染み込んでいく。ヘスティアは血を垂らしたところを中心に指でゆっくりなぞっていく。

私たち冒険者の背中には神々から『ステイタス』が刻まれる。神々だけが扱うことの出来る『神聖文字(ヒエログリフ)』を神の血を媒介に刻むことで対象の潜在能力を引き上げることが出来る、天界からやってきた神だけが許された権能である(ちなみに私は神聖文字は読める)。この場面だけ見ればうちの駄女神様もちょっとは神様っぽく見えるんだがなぁ・・・。

 

「ベル君はさぁ、ダンジョンに夢を見過ぎなんだよ。あんな場所に清い出会いなんてある訳ないのにさぁ」

「そ、そんなぁ・・・」

「そうだぞ、ベル。ダンジョンなんて血生臭いとこにいく時点でそいつはヒューマンだろうがエルフだろうが皆イカレてんだよ。お前がお熱なアイズ・ヴァレンシュタインも二つ名の『剣姫』の他に冒険者から『戦姫』なんて呼ばれてるらしいぜ。やっぱ、あの女も何処かイカレてんだよ」

「はい!更新完了!そもそもロキのとこの子である時点で付き合うとか結婚するとか不可能だからね」

「え〜、でもぉ」

「そんな高嶺の花よりもっと身の回りを見てみなよ。きっと君に相応しい素敵な大人な女性がいるはずさ!」

「そう!このアレミアちゃんのような完璧美人のエルフとかな‼︎!」

「えっ?完・・・壁・・・?」

「なんだなんだその顔はぁ?私ほどの完璧美人はいねぇよなぁ?ヘスティア?ん?ん?」

「アッ、ハイ、ソウデスネ。アレミアクン」

 

ベルのステイタスの更新が終わり、側から見てもしょうもない会話をしながら皆でベルのステイタス表を覗き込む。基本アビリティは、数値0の『魔力』を除いて一通り上昇しているがその中でも『敏捷』の上がり方だけが異常だった。ベルも私と同じくミノタウロスに追いかけられたらしいが、それにしても普通では見られない上がり方だった。それにステイタスのスキル欄には何か消したような跡がある。ベルも気になったのかヘスティアに疑問を投げかける。

 

「あの、神様。このスキルのところ、何か消したような跡があるんですが・・・」

「あ、あぁ手元が狂ったのさ。いつも通り空欄だから安心していいよ」

「ですよね、ハハハ・・・」

「・・・ふぅん」

 

明らかにヘスティアは何か隠している。恐らく私とベルが気になったスキルについて本人や私に言えない何かがあるのだろう。あとでこっそりと聞いて見るとしよう。

 

「じゃ、次はアレミア君だね」

「あ、じゃあ僕はお茶を入れてリビングで待ってますね」

「うん、よろしくねベル君」

 

そう言ってベルはヘスティアの部屋から退室していった。私はベルと同じように上着を脱ぎ、ベットに体を沈める。

 

「うわぁ、相変わらず凄い身体だねぇ。君って本当にエルフなのかい?」

「100%混じりっ気なし純粋なエルフだぜ私は。他に何に見えんだよ」

「うーん、細身の高身長ドワーフ?」

「はっはっは〜、コロス」

「ヒェッ・・・」

 

ヘスティアを軽く脅しながらステイタスを更新してもらう。ベルには跨がるような形だったが私は身体がデカいため、跨がると言うより乗ると言うような体勢でのステイタス更新になる。大小様々な傷跡が残る背中をヘスティアの細い指がするすると這っていく。

 

「アレミア君にもベル君にも、色々迷惑かけるね。もし、僕が神の力(アルカナム)を使えてたら、こんな苦労掛けさせないんだけどね」

「無いものねだりしたってしょうがねぇだろ。それを承知で神々(おまえら)は下界に来たんだろ?それに、これはベルにも言ったが私たちは家族なんだろ?なら、お互い迷惑掛けたり、助け合ったりするのは当然じゃねぇか。違うか?」

「っ!・・・うん!そうだね。アレミア君の言う通りだ!これからも僕たちのことよろしく頼むぜ、アレミア君!」

「へいへい、テキトーに頑張りますよっと」

「よし!更新終わり!これが新しいステイタスだよ」

 

私のステイタスの更新を終えたヘスティアからステイタスの写しを受け取る

 

 

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『アレミア・ウアリス・ファーミスト』

 Lv.1

 力:D 599→C 611

耐久:H 140→H 144

器用:I 92→I 95

敏捷:G 213→G 219

魔力:I 0

 

《魔法》

 

《スキル》

【痛覚遮断】

・任意発動

・スキル発動中、全ての痛覚を感じなくなる。

・スキル解除後、発動中に受けた全ての『痛み』を受ける。

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「いやー、変わらずの脳筋具合でなんか安心しちゃうなぁ。それにしても、エルフなのに『魔力0』って珍しいよね」

「まぁ、こんなもんだろ。ところでヘスティア、ベルのステイタスでなんか隠してること、あんだろ?」

「ギクゥ⁉︎な、なんのことかなぁ〜?」ピュールリーラリー

「誤魔化すなよ。言ってみろって、ほらほらほら」

「うぅ、分かったよぉ。実はね・・・」

 

私のステイタスを確認後、私は先程気になったベルのステイタスを下手な口笛を吹いているヘスティアに聞いてみると、どうやらベルにレアスキルが発現したようだ。

 

憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

・早熟する

懸想(おもい)が続く限り効果持続。

・懸想の丈により効果向上。

 

「・・・おい、本当に神の力使ってねぇんだろうな?流石にこれは不正を疑われてもしょうがねぇぞ?」

「誓ってそんなことはしてないよ⁉︎チート、ダメ、ゼッタイ!」

「まぁ、これはベルには言えんわな。最悪、暇でアッパラパーな神どものおもちゃにされちまう」

「うん、神の前では子供たちの嘘は丸わかりだからね。悪いんだけど、このことはベル君には秘密にしてもらえるかい?」

「こればかりはヘスティアに全面的に賛成だ。任せとけよ」

「頼むぜ、アレミア君!さぁ、リビングでお茶にしようか!ベル君が待ってるぞう!」

 

この後、30分程お茶を飲みながらゆっくりし、お互いに就寝の体勢に入った。自室に入り、思いっきりベットに飛び込む。嫌な音を立てながらベットが軋む。寝返りをして天井を見上げながら、またベルのことで面倒事が増えたなと思いながら目を閉じ、意識を手放した。




熱中症には気をつけてくださいね。

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