転生者がトレーナーとしててえてえを拝みたい話   作:Siranui

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 オリ主によりウマ娘の所属チームや歴史・出走記録等が改変されておりますのでご注意ください。


05/04追記

柿谷真様、誤字脱字報告ありがとうございました。


プロローグ

 突然だけど自分が転生者だって気が付いたのはこの世に生を受けて既に十数年ほどの歳月が過ぎた頃だった。 それはふと気づいたというか、そういえば昨日の晩飯は焼魚だったな みたいな感覚で前世の記憶がよみがえったのだ。

 

 それを普通にそういう物かと受け止めたのは楽観的な性格が幸いしたのか、それとも元の人格自体がそうだったのか……まあ今となっては分からない事ではあるが特に周囲からは疑われず、自分自身にも変調は無かった。

 

 前世の記憶を継承し、子供である自分が思い描いたことはただ一つ、トレーナーとなっててえてえを傍で拝みたい という事であった。

 

 何でだよ とか転生してまず第一に思い浮かぶ事がそれかよ とか言いたい事が多数ある事は良く分かる。 だがよく考えて欲しい、ゲーム内ですらあれだけてえてえ画像やストーリーがあったのだ。

 

 それを間近で見れるとしたら君はどう思うかね? 少なくとも俺はいいや限界だ見るね!! となる。 もちろん眺めるだけです……プロですから。

 

 間に挟まる? それはやってはいけない。 あくまで近くで眺めるのが至高なので例えるならパンに挟むものは食材なら美味しいサンドイッチになり得るがそこにプラスチックの玩具を挟んでしまったら食い物ですらなくなってしまう。

 

 野花はそこで生きているからこそ尊いのであり、綺麗だからと手折って採集してしまったらそれはすぐに枯れさせてしまう。 それじゃあいけないと前世からの付き合いである魂が叫んでいる。

 

 

 まあ自分の事なんてこれくらいで良いか。 兎も角自分は転生者でありこの世界がウマ娘 プリティーダービーだという事も理解できた。 そら前世に居た馬の様な耳と尻尾が生えた娘達がアイドルの様に人気の世界ってそれくらいしか思い浮かばなかったし……

 

 子供である自分が突如として俺、将来ウマ娘のトレーナーになりたい! と言った所で周囲の大人や両親もああ、そうやって自分も夢を見ていた時があったなあ……みたいな表情になり、努力するなら応援するよ と手を貸してくれる上に理解を示してくれた事は幸いであった。

 

 少なくとも馬鹿言ってないで現実見て勉強しろ と息子である俺を束縛する事なく自由にのびのびと勉強と進路を決めさせてくれた事にはとても感謝している。

 

 

 前世の記憶がある事と、勉強と努力の仕方が分かっている2周目の俺はそれはもう知識を詰め込みに詰め込んだ。 これも全てはウマ娘のトレーナーとなる為にである。

 

 やっぱり若いって良いよね、スポンジみたいにガンガン知識を覚えられるし、書類を見るが如く覚えた知識を引き出せる。

 

 そうなると覚えられるのが楽しくて更に勉強するし本も読んで知識を貪欲に求めていく上に、体が若く成長期なので動かす事に全く重みを感じない。

 

 仕事だ作業だと疲れて重い体を引きずっていた前世に比べ何と体の軽いことか……もう何も怖くない! いや、流石にウマ娘には敵わないけど……

 

 

 勉強し、サブトレーナーとしてトレセン学園に就職出来た時は両親や周囲の人も我が事の様に喜んでくれた。 地元に居るウマ娘の子も何人かが中央で腕を磨いたら呼んでよね と声をかけてくれた事は素直に嬉しかった。 リップサービスかもしれないがそれだけ期待してくれていると思えたからだ。

 

 トレセン学園では何年かはサブトレーナーとして修練を積みそれから試験に合格すると担当やチームを持てるトレーナーになる資格を得られる。 先ずはサブトレーナーとして経験を積みそこで適正を見極められ幾人かにトレーナーとして適正であると推薦される必要がある。

 

 彼女達を支えるトレーナーや、トレーナーの付いていないウマ娘達の相談に乗ったり、事務作業の補佐をしたり雑務を熟しているとここまで学んできたり詰め込んできた知識と経験が混ざりあい丁度いい助言という物が分かってくるのである。

 

 

 また俺は視力が良い事に定評があった。 それはそうだろう、遠くの木陰からてえてえをのぞk……げふんげふん、見守る為には視力は最重要なファクターだ。

 

 双眼鏡等を使ってもいいのだがトレーナーの仕事をしているときなら言い訳もできるが流石にそれ以外では使用できない。 持ち歩いてても練習の為だと言い訳が出来るのは非常にありがたいが……

 

 

 そんなこんなで真面目に勤務し、あくまでも助言者としての立ち位置、第三者から意見という形でつかず離れずの絶妙な距離感で接し続けた結果、何と2年ほどでサブトレーナーからトレーナーへの昇格試験への切符を手に入れてしまったのある。

 

 複数人からの推薦が必要である筈なのだが、必要推薦人数を遥かに超えた人数から推薦されたと聞いたのでこれは驚いた。 詰まる所あれですか、もっと働けるだろうから働かせてみようという奴ですか……

 

 でもそうなるとてえてえを探す自由時間が……え、トレーナーに昇格すれば給料も上がるんですか? それに担当ウマ娘を持つことも出来るかも?? オッケー!(判子をズドンッ!!)

 

 

 と、試験を受ける事に同意し筆記試験、実技試験、面接ととんとん拍子に話は進んで見事合格。 無事サブが抜けたトレーナーとしてウマ娘を担当する事になり2年経つのだが……あれ、この娘達俺が指導しなくても強くね???

 

 

「マスター」

 

 

 今までの事を思い出している俺に一人のウマ娘が話しかけてくる。 担当しているウマ娘の一人……ミホノブルボンで、ピッタリとした競泳水着の様な勝負服を着ているウマ娘だ。 今はトレーニング中なのでジャージ姿であるが、俺的にはこっちの方が目のやり場に困らなくて良い。

 

 ほぼ無表情で淡々と抑揚のない声で話すので、感情が無いんじゃないかと言われているが、表面に出すことが苦手なだけで結構感情は豊かな方だと俺は思っている。 主に耳と尻尾に表情もちゃんと変わっていると思うし……まあ、長年付き合っていれば分かってくる事もあるって事だろうか。

 

 

「ストレッチが完了しました。 次の指示をお願いします」

 

「ああ、じゃあ坂路を往復していこうか。 いつも通りでタイムはこっちで測るから一定の速度を維持する事を念頭にやってみて」

 

「了解しました」

 

 

 淡々と返事をし坂路を走り出すブルボン……速度を維持するという事は坂道で走るとなると後半に行くにつれて脚は辛くなっていく。 だがブルボンはそれを根性と努力で得たスタミナで速度を維持したまま駆け抜けていく。

 

 タイム的にも問題は無い、むしろ良好なまま坂を駆けあがり続ける……うん、やっぱりこの娘強いよね。 前世の記憶はもううろ覚えだったから今生で学んだ事をフルに生かしたんだけど指導方針間違えて無かったみたいで良かったわ。

 

 

「お、お兄さま」

 

 

 おっと、また意識が反れていた様だったが袖を引っ張る何かに意識を取り戻された。 手元は無意識でもタイムを計り続け、バインダーに挟んである書類に記録し続けているのだが……習慣というか、慣れって怖いね。

 

 

「ライス」

 

 

 ご飯の事ではない。 袖を引いていた小柄なウマ娘はライスシャワー……俺が担当しているもう一人のウマ娘だ。

 

 それも最初から専属だった訳では無い……と言うか、サブからトレーナーに昇格して直ぐに担当を二人も持つとかは非常識でしかない。

 

 ただライスシャワーの場合は少し事情があって、菊花賞以降俺が担当する事になったのだ。

 

 彼女はミホノブルボンの走りを見て自分もああなりたい と一念発起し頑張ってレースに出れる様にと色々と走り回ったらしい。 選抜レースにすら出る自信が無いにも関わらず、なりふり構わず頑張ったらしい。

 

 何とか他のトレーナーが親切心と言うか、彼女の熱意に押されてレースへの出走手続きや仮の所属としてチームに入れて貰ったりしてレースに出ていたのだが、そのトレーナーも自分の担当しているウマ娘の指導が忙しくなってしまい、サポートが出来なくなってしまった様なのだ。

 

 ライスシャワー自身も無理を言って今までサポートして貰っていたという自覚があったので、そのトレーナーには丁寧にお礼を伝えて円満に別れたそうなんだが……それで困ったのは彼女であった。

 

 トレーナーが居ない状態でも日は過ぎてしまうし、チームを解約したからと言って全部最初から という訳にはならない。

 また何処かのチームに拾って貰うか、準備期間無しに自主トレーニングしただけのウマ娘をクラッシック、シニア級を即座に指導し走らせられるトレーナーが居るか と言うと相当物好きでもなければ引き受けないだろう。

 

 ……まあ、それを引き受けたのは俺なんですけどね。 ブルボンが珍しく相談があると話を聞いてみるとライスシャワーの事だったのだ。 ライバルとして、友達として放っておけなかったらしく、自分に担当して貰えないか というお願いだったのだ。

 

 共に走れなくなるのは私の望みではありません……と耳を折りたたんでうつむき気味に話すブルボンに、俺の覚悟は決まったのだ。 曇らせるのは正義じゃねえよなあ??? 自分の睡眠時間くらいくれてやる……てえてえの為ならばそれも本望だ!

 

 ただ俺の覚悟はそれで出来たとして、ブルボンはそれでいいのか とだけは確認しなければならなかった。 あまり器用な方ではないから、ブルボンもライスも全力で指導するとしてG1レースは数が限られている。

 

 ただでさえ三冠を達成したブルボンは注目を集めているのに、ライバルであるライスシャワーをパワーアップさせる様な事をしても良いのか と。

 その問いを投げかけた時、ブルボンは微かに笑った様な表情で口元に手を当てていた。

 

 

「心配しなくても、マスター……あなたのウマ娘は必ず勝ちます。 だから私の心配はしなくて良いです。 今まで通り、私を導いて下さい」

 

 

 ほ~れてまうやろ~! いや、指導者として信頼してくれてるって事なんだろうけどさ。 勘違いするなよ小僧……良いな?

 

 担当ウマ娘の意思確認ヨシッ!! という事でライスシャワーへの勧誘と理事長やたづなさんへの書類提出に説明等諸々を完了させてここに至る。

 

 なお宣言通りブルボンは今の所ライスシャワーに負けてはいない。 そりゃまあ……クラシックの有マ記念で普通に走って勝っちゃったからなブルボン。

 

 ライスシャワーは流石に出走の準備も出来ていなかったし、担当になってからまだ日が浅かったから本格的にはシニアから頑張ろう という事でトレーニングと調整してたんだけどね……

 

 この娘も俺居なくても十分強くない??(本日二度目の疑問) 最終直線で加速して差していく姿はとても綺麗だと思っている。 小柄だからこそバ群の隙間隙間を狙って抜け出していく走り方が出来るのも強みであろう。

 

 小柄だがスタミナは相当あるようで長距離が得意に見える。 出場していたレースも短距離・マイルより中距離~長距離の方が成績が良いと見て取れる。 菊花賞以降だがブルボンがGⅠ、ライスを調整と脚質の確認の為にGⅡを中心として出走させていたのだが適正距離ならばほぼほぼ一着でゴールしていた。

 

 これならレースの手配と事務処理、日々のトレーニングも怪我をしない様に声かけ程度でも十分じゃないかな……まあ、前のトレーナーさんも彼女の適正を生かす事を重点に置いていたようだし、ライスの走り方を見てアドバイスをしていた様だ。

 

 

「準備運動が終わったよ。 今日はどうすれば良いかな?」

 

「今日は軽くランニングをしつつ、最終直線で加速を付けるタイミングの練習をしていこうか。 最初はライスの思う様にやってみてくれ。 それを見てからどのタイミングが良いとか、相手のウマ娘が走っている位置を想定してどう抜け出せばいいかとかを考えてみようか」

 

「うん、分かったよお兄さま」

 

 ブルボンにひと声掛け、ターフの上にカラーコーンを置いてそこにライス以外のウマ娘が居ると仮定する。 カラーコーンは動かないので臨場感には欠けるが、何処かにぶつかって倒さない様に最終コーナーから点々と置いてゆき、外側へ引っ張られない様にしつつ最終直線まで内側で加速し続け、ラストスパートで視野が狭くならない様にカラーコーンにA4サイズのレポート用紙に文字や絵を書いてそれが何なのかを覚えてゴールまで走り抜け最後に答え合わせをするという事だ。

 

 視野を広くし相手のウマ娘が何処を走っているかを確認しつつ全力で走る練習だ。 カラーコーンの数はランダムだし、書いてあるものも絵柄から文字・偶にウマ娘の写真等色々と用意してある。

 

 それを瞬時に見極めて理解する為に目線を動かし、記憶しながら全力で走るのは冷静さを養う事にもつながるはずだ。

 

 そんな事で俺のやっている事は担当しているウマ娘を怪我させない様にしつつ、彼女達が走りやすい様にその長所を伸ばしていく事を目指している。 勝てても無理な走り方をする様に指示していては何時か体に限界が来てしまう。 彼女達に無理なく、ライバルと切磋琢磨して欲しい……できればそれを眺めたい。

 

 

 

「よーし、今日の練習はここまで! お疲れ様~」

 

「はい、マスターもお疲れ様でした」

 

「お、お疲れ様でした……また明日もお願いします」

 

 

 夕方には今日の練習を終える事にしている。 追い込み時期でも無ければ夜間までダラダラと練習するより時間をしっかりと決めて集中して練習した方が良いと考えている。

 

 上司がダラダラと残業していて今日のノルマが終わっているのに帰れない会社員時代の経験上、とっととやる事終わらせて帰らせた方が次の日等の作業も、この時間までだから頑張って終わらせよう となる筈だ。

 

 と言うのが建前、本音は自由時間無いと友達とおしゃべりしたりコミュニケーションする時間が無いだろうが! 日々過ごした時間によって親密度(?)は上がるのだ。 確か前世ではそうだった、友情トレーニングだって最初から発生はしなかったしな!!

 

 

「マスター」

 

「お兄さま」

 

 

 今日は終わりだからあとは解散するだけなんだが、何故かブルボンとライスは双方とも俺の服を掴んで離そうとしない。 ブルボンはじっ と何かを期待するような、ライスはおずおずと上目遣いに……ああ、そう言えばそうだった。

 

 

「お疲れ様、また明日も頑張ろうな」

 

 

 ポンポン と軽く手を乗せる様に頭を撫でる。 ライスが担当ウマ娘になった時、あんまりにも背が低いし一生懸命だから可愛い後輩の様な感覚がしてしまいつい頭を撫でてしまったのだ。

 

 ついうっかりという奴だったのだが、気が付いて咄嗟に頭から手を離した所気持ちよさげに揺れていた尻尾が下がり、耳もしゅん と落ち込んでしまったのでその時は落ち着くまで撫でていたものだ。

 

 まあ、それを何処からか見ていたのか聞いたのか、ブルボンが翌日頭を差し出して来た時は?を浮かべてしまったものだが……それからというものの、こうして練習終わりに頭を撫でるという行事がいつの間にか習慣づけられていた。

 

 

 うーむ……前世でのゲームの時ってこんなに懐いている娘達だったっけなあ?? そんな疑問を抱きつつも今日の練習成果をレポートに纏め、星空を見ながら夜道をトレーナー寮へ向かって歩いて行く。

 

 明日もあの星たちの様な輝きを持つウマ娘達が存分にてえてえをしてくれますように……




 勢いで書きました。 反省も後悔もしていませんのでお付き合いいただければ幸いです。
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