転生者がトレーナーとしててえてえを拝みたい話 作:Siranui
トレセン学園の朝は早い。 授業前所か朝食前に朝練習をして汗を流し、着替えて食堂で朝食を取り学園へ向かい授業を受けるのが日常と化しているので、大体6時くらいには誰かしらが起きて今日の活動を開始していたりするからだ。
そういう俺も朝は早い、前世では5時30起きして現場に向かうとか、そもそも事務所から帰れないとか……止めようか、この話は現代の闇でしか無い。 まあそんな感じであったのでアラームをかけ忘れなければ目が覚める様になっているし、かけ忘れても30分後には自動的に目が覚める習慣がついている。
体を起こしカーテンを開けてから天気の確認と情報整理の為にテレビをつけておく。 ニュースキャスターの言う事には今日も晴れの予報らしい。 外したら某パンチパーマの人のせいにしておこう。
「おはようございます、マスター」
「おはようございます、お兄さま」
「おはよーブルボン、ライス。 んじゃ今日も始めますか」
さて朝練だがとりあえずは準備体操から始める。 例の朝礼時に流れる日本人なら子供の事に一度は聞いた事のあるBGMで行うラジオ体操だ。 ラジオ体操第一ー! の後に何度も聞いた事のある軽快な音楽が流れ始める。
ラジオ体操だって舐めて行っては困る。 ちゃんと体をほぐしてから運動も仕事もした方が事故やケガの可能性は格段に減るのだし、眠気を飛ばすにもこの体操は全身の血液循環を促進するのだから良いのだ。
その事を説明し、理解しているから……と言うよりも、性分が真面目な娘達だ。 俺が体操している前でちゃんとラジオ体操をしている。
手足の先まで意識してきっちり行っているようで、遠心力に任せてブラブラと面倒くさそうに体操をしているフリをしていた者達とは動きが大違いだ。
体操が終わるとブルボンとライスには並走をして貰う。 とりあえず朝の練習は体をほぐして目覚めさせる為に強度の強い練習は避ける……筋トレとか、坂路の往復とかは放課後に行おうという事だ。 朝いきなり動こうとしても頭も体もまだ寝ぼけ眼だろうから怪我もしやすいしね。
……と言うのが建前、朝日に照らされて練習する姿を拝むことによって今日も一日が始まるな……と実感する事が出来るので、怪我がしにくく周囲を見渡せてじっと走る姿を見ていても全く問題ない練習を選んでいるのである。 まあ基本あの娘達って走るのが好きだから、練習とかでも走る事を好むしね。
朝の涼しい風を受けながらターフを駆けるのは気持ちの良い事だし、真剣な眼差しと風を受けて翻る髪とかも綺麗だしね……ありがたやありがたや。
「少しペースが速いですか?」
「う、ううん。 大丈夫だよ……歩幅が違うけど、ライスちゃんと付いて行くよ」
身長が違うのだから足の長さも違うので、歩幅はブルボンの方が長い。 その分ライスは歩数で距離を稼がないといけないので必然的に体の負荷が増えるはずだがライスは息を切らさずにブルボンと並走している。 姿勢や息遣いも問題なさそうだしやっぱりライスって体力あるなあ……
気遣いながらもペースを乱さず一定の速度でターフを駆け、チラチラと隣のライスを気にするブルボンと、それに気づいている為一生懸命にブルボンの側面にくっ付いて行くライス……うん、青春だな(確信)
「「おはよーございまーす」」
「おはよーございます。 来たという事は今日もやりに来たのか……」
「ええ、そうなんで何時ものお願いしますね」
体操服姿のウマ娘二人組が俺に挨拶をして来る。 偶に朝練が早く終わった時等に来るのだが今日もそうなのだろう。 肩幅に足を開き、腰に手を回して何時もの様に俺の前に整列する……宜しい、気合入れていくぞ!
「声出していくぞー!」
「「おーっ!!!」」
「絶対の王者はー?」
「「キングッ!!」」
「誰よりも速く! 誰よりも強く! 気高いのはー?」
「「キングッ!!!」」
「皆が憧れる一流のウマ娘はー?」
「「キングヘイローッ!!!」」
「声は腹から出していくぞー!!」
「「「キングッ! キングッ!! キングヘイロー!!!」」」
ふうっ……決まったな。 爽やかなやり切った という顔をしているウマ娘二人にお疲れ様~ と声を掛け合う。 応援の人数が少ないのなら少ない人数で声の出し方を覚えて声援を届けるしかない。
俺の声がよくターフの上で走っている時でも、練習してる時にでも良く聞こえるので如何すればいいか教えて欲しい と声を掛けてきたのが目の前のウマ娘達だ。
キングヘイローの後輩らしく模擬レースの時等で応援に行くのだが、どうしてもスペシャルウィークやグラスワンダー等の方が人気であるし、人数で声が届かない事が多いので……と相談された次第だ。
ならばとりあえず声の出し方を練習しようか とこうして一緒に声を出す事をしているのだ。 最初は氏名に何処所属でおはようございます!! とかやろうとしたんだが、某スカウト団体か、自衛隊じゃないんだからなあ……と前世を思い出しそうになるので却下し、声援の内容とかを聞いていたらもうそのまま応援する練習しながら声出せば良いんじゃないかな と安直に考えたのだ。
思いついたが何とやら、その日から今日まで彼女達が朝に来たら一緒に練習しよう と決め、こうして朝来た時だけ声出しの練習を行っている。 結果はご覧の通りである。
もう双方ともこれって練習だっけ? とノリノリで声出しを行っている。 朝練をしているウマ娘達が振り向いたり、登校してきた他のトレーナーがなんだなんだ と振り返ったらそこまで声が届いているという事が分かりやすくて良い。 最初に比べて二人とも声出しの基礎が備わってきた様で呼吸法も学んできたのだろう。 大声を出しつつリズムよくキングヘイローの名を出す事が辛くなくなっている様だ。
まあその日の昼には誰かから聞き出したキングヘイローがトレーナー室に押しかけて来て、二人の後輩共々説教をされるのだが……尻尾は機嫌よさげに振っているし、説教の内容も嬉しいけど恥ずかしいから止めなさいだの、時間と場所を弁えろ とかだ。
つまり時と場所さえば弁えれば合意と見て宜しいですね??(反省も後悔もしない) 一度もうやらない様にする と宣言した時は耳をしょげさせ、尻尾も地に落ちるくらい垂れて自分が止めてと言ったんだからそれに従ってくれるのが正しいんだけどそうするともう応援してくれないの みたいな表情でどうにもならなかったので冗談だという事にして事なきを得た。
キングの表情を曇らせかかった罪でキングと後輩、ブルボンにライスを誘ってカフェテリアでスイーツ奢りの刑を自身に科したのは記憶に刻み込んである。 いや、だって本気で嫌がってるのかな……と思ったんだもんあの時は。
『マスターの一番は私です』 と袖をつかんで若干掛かり気味な表情で伝えてきたブルボンに「当たり前だ、俺の一番の相バ(相棒のウマ娘)は君だ」と伝えると今度はフリーズし、再起動したと思ったら猛烈な勢いで走り去っていった。
……閃いた! あのスタートダッシュは出遅れの対策になるに違いない!!
ライスにスタートダッシュのコツを教えゲートから走り出す練習をしてみると中々良い感じに仕上がったのでは無いだろうか? 放課後の練習で復習するから感覚を忘れない様に伝えてこの日の朝練習を終わりにする。 戻ってきたブルボンにもそう伝え、授業には遅れないようにな と声を掛け解散する。
さて……夕方の練習メニューでも考えるか、と片づけをしているとまだターフを走っているウマ娘が……って、あれスズカじゃないか。 まーたあいつは走るのに夢中になって時間忘れてるな??
「コラースズカー!! もう戻らないと着替えとか間に合わないぞー!! 汗だくのジャージで授業受けるつもりかー!!!」
びっくりした様に尻尾をピンと立ち上げ、持って居たスマホで時間を確認し慌てて声を掛けた俺に頭を下げて寮の方へ走って行く。 スペちゃんが並走で居てあげれば、丁度良い時間にはお腹が空くだろうからスズカに声かけしてご飯を食べに寮に戻るんだろうけどなあ……今日はスズカ一人で走っていたからこうなっちゃったんだろう。
と言うか周りで練習してた娘達は声掛けてあげなかったのかな……え、やだ……もしかしてスズカさんボッチ……?? あかん、スペスズは良いけど行きすぎては依存症からの曇り展開ジャナイデスカヤダー!!
俺は健全な青春でてえてえを拝みたいんだ! 病んじゃったら健康じゃないから困るんだよなあ……よっしゃ! お昼ご飯とかボッチになってないか気にする様にしよう、そうしよう。 もしかしたら逃げのブルボンと気が合うかも知れないしな……
その内ウマ娘視点も書きたいと思いつつまた次回