転生者がトレーナーとしててえてえを拝みたい話   作:Siranui

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 てえてえは拝めましたか?(前回投稿から半年も経っているという事態はまことに申し訳ありませんでした)


 3/5追記
幻燈河貴様、weekend様、暇人mk2様 誤字脱字報告ありがとうございました。



生徒会でてえてえを拝みたい

 さて、朝練習が終わった俺は片づけを済ませ人気のない廊下をのんびりと歩いていく。

この時間帯は皆授業中であるから普通の生徒は出歩いて居ない。

 

 普通の……と付けるのは例外が複数存在するからだ、例えて言うならばアグネスタキオン。

大体の人やウマ娘にはこの名前を言えばまあタキオン(さん)だしな……と諦めた顔になる。

 それくらい自由奔放であるし、気が向かなければ授業に出ないという事もザラだ。

 

 尤も授業なんて出ないでも試験はほぼ満点を取るし、やっている事も回り回って誰かの役に立つ事があるから何とも言いきれないらしい。

 

 ただ他人(他ウマ娘?)と違う行動を平然とやる事から、変人(変ウマ娘)として有名になりすぎてどうも色眼鏡を通されてしまうというか……

 素直に彼女の行動を評価出来ないという所があるらしい。

 

 と、そんな事を考えていると例外の一人がコツコツと一定のリズムを刻んで目の前を歩いている。

この学園の生徒会長であるシンボリルドルフだ。

 

 彼女の場合は授業をサボって出ないという事では無く、生徒会の仕事や理事長から依頼されている仕事等、学園に携わる事を行う為に許可を得て授業を休んでいるのだ。

 

 

「おはようルドルフ、また仕事か?」

 

「おはよう、まあ近々入学式や新入生の案内、それに伴う事務作業や業者の手配、打ち合わせと……毎年の事ではあるがこの時期は少々忙しくてね。

ネコの手も借りたい……とまではいかないが少し慌ただしいよ」

 

「ふむ……よし、事務作業くらいなら手伝えるだろ。 やろうか」

 

 

 ルドルフは上手く隠している様だが俺には分かる。 これ寝不足だろ……少なくとも疲れてはいる、体の軸は揺らいでないが表情が少し暗い。

 

 あと耳と尻尾に元気がない様に見える、ほんの少しの違いだから担当トレーナーでも見抜くのは難しいだろう。 俺でなくちゃ見逃しちゃうね(確信)

 

 事務作業と言っても色々あるだろうが、式典開催には必ず予算を組んで経費計上するだろうし、監査用に資料を纏めたり、資材も使うだろうからそれを納入する業者からの見積もりも見直さなきゃいけないだろう……うん、軽く見積もっただけでも作業量が多いな。

 

 これを何人でやっているのかは分からないが、最後には責任者であるルドルフが全部見て裁可を下さなきゃいけないんだから大変だろう。

 確かにルドルフは優秀だからそのくらい出来るのかもしれないが、疲れないという事は無いだろう。

 

 

「むっ……だが貴方にもやるべき事はあるだろう。 それにこれは私の仕事であるのだから手を煩わせる訳には……」

 

「手を煩わせる訳には という事はさ、俺が良ければルドルフ的に問題は無いという事だよな」

 

「それは……そうとも言えるが」

 

「なら問題は無いな、そもそも俺から手伝うと言い出しているんだからな」

 

「だが負担になるだろう」

 

 

 全く、未だ学生の癖に周囲に気を使って、自分ひとりで頑張らないといけないなんて思いこませるとはなあ……それが出来ないのは自分の能力不足だと、努力が足りないんだと、周囲の期待に何としても応えなきゃいけないなんて思わせてしまった時点で周囲の大人がもっと気を使ってやるべきだったんじゃないかな。

 

 

「生意気言うなよ子供の癖に、こういう時は素直に大人に頼っておくもんだ」

 

 

 ポンポンッ と軽く頭を撫でながらルドルフに言い聞かせる様に伝える。

子供の癖に という台詞があまりにも意外だったのか少し呆けた様な表情で俺と頭を撫でている手に目線を交互に向けている。

 

 と、そこまで観察して担当でも無いのにあまりにも無礼過ぎたな と思い軽く撫でていた手を下げる。

 

 

「あ~……すまん、だがもう何度も手伝っているんだからいい加減慣れてくれ。 俺は出来ない事ややりたくない事はやるとは言わないんだ。 だから手伝うって言う時は頼ってくれれば良い……もし迷惑ならばそう言ってくれ」

 

「……いや、こちらこそ申し訳ない。 他人への頼り方が下手だとはよく言われるのだが……どうしてもそう生きてきてしまったから、どうしてもね……改めて手伝って貰って良いかな?」

 

「任せてくれ、書類仕事は得意なんだ」

 

 

 ふっ と少し微笑みながらルドルフが手を差し出す。

美人さんってのは何をやっても絵になるもんだよなあ……そんな事を考えているとルドルフの手を無意識に取っていた。

 

 これがカリスマの成せる技か……ん? この体験は何かに活かせられるかもしれない。 無意識に何かをさせてしまうという事を、意識的にさせる事が出来れば……相手のペースを乱す事も可能と言う事だ。 後でライスに教えてみよう。

 

 

 

 

 さて、ルドルフと共にやってきた生徒会室だがエアグルーヴとナリタブライアンも既に作業を始めている様であった。

 ただブライアンの方はあまり気乗りしていないのか、それとも考えながら作業をしているのか偶に頭をガシガシと掻いたりしている。

 

 扉の開く音に気が付き双方とも顔を向けてくるが、浮かべる表情は対照的であった。

ブライアンの方は俺を見ると少しだけ目元が緩んだように見えるのは、大体俺とルドルフが一緒に来る時は仕事の手伝いをする事が多いので、作業人員が増えた事で仕事量が減ると期待している事は明確である。

 

 反対にエアグルーヴの方は複雑そうな表情だ、仕事を手伝ってくれるのはありがたい様だがそう何度も何度も部外者……担当トレーナーでもない者に作業させるのはどうなのだろうか とまだ思っている様だ。

 

 先ほどのルドルフとのやり取りでも分かる様に、エアグルーヴも生真面目な性格をしているので誰かに手伝って貰うと言う事が上手ではない。

 後輩を指導する事や他人の世話を焼く事には慣れている様だが、焼かれるのには慣れていない様だ。

 

 一度だけ待たせたな! と渋い声でふざけてみたのだが、エアグルーヴに冷たい視線という弾丸を十分に頂いて精神が爆散してしまったので二度とやらない事にした……ジークッ!

 

 お疲れ様 と声をかけ、ルドルフから処理できる書類を受け取り応接用のソファーに座って目を通し始める……持ってきたノートPCを起動させ単価表等を参考に見積書を精査していくのだが、胸ポケットに入れておいた消えるボールペンで質問事項や適正であろう値段等を書き込んでいく……

 

 これはルドルフに説明して直接業者に連絡した方が早いかも知れないな、後で資料を見せながら業者相手に打ち合わせとかしても良いか聞いてみようかな……

 

 そう言えばブルボンやライスももう三年目、シニア世代となればそろそろあの曲を練習し始めないといけないだろう……そう、うまぴょい伝説である。

 年に一回の大舞台で歌われる曲であるし、ブルボン達であればセンターだって勝ち取れると俺は信じている。

 

 としたらライブの練習もそろそろしておいて損は無いだろう……あの大舞台で歌詞もダンスも分かりません じゃ流石に恥ずかしすぎる。

 だとすれば野外ステージか、音楽室辺りの使用許可を取って何人かに手伝って貰い一曲の流れを教える事もスケジュールに入れておこう。

 

 カリカリと書類にメモを書き込みながら今後の事も考え作業をしていると、ルドルフとエアグルーヴが書類を手に話し合っている。

 

 

「会長、この件についてですが……」

 

「ああ、それは……」

 

 

 もう双方とも美人さんだから絵になるし、これで生徒会募集ポスターを作るか事務系の道具ポスターとか作ればいい宣伝になるな……写真を撮るとしたら正面からで来たれ生徒会役員! とか? でも窓を背にしているんだから少し俯瞰気味でルドルフを中心にブライアンとエアグルーヴでも……これはこれでかっこいい。

 

 

「分かりました、ではその様に手配します」

 

「うん、それで宜しく頼む。 あとアレをお願いできるかな」

 

「用意します」

 

 

 あ、話が終わったみたいでエアグルーヴがルドルフから離れて給湯室の方へと向かった。

脳内でポスターの構図を考えていたが、手元はちゃんと仕事をしているのだから問題は無いだろう。

 

 

「ルドルフ、この見積もりについてなんだが……」

 

「少し待ってくれ……うん、やはり分かりやすく書いてくれるから理解し易くて助かるよ。 指摘自体も問題は無いからこれで作成の依頼を出してみるよ」

 

「相手側に説明が必要だったら言ってくれ、直接電話するから任せて良いよ……ああ、そう言えば野外ステージか音楽室の使用届ってこれで良いんだっけ?」

 

「そうだよ、必要事項を記入したら私か生徒会室前のポストに入れてくれれば処理する。 日付によっては抽選になるかもしれないが……まあ、善処するよ」

 

 

「分かった、とりあえず後で提出しておくよ。 とりあえず次の書類を纏めにかかるね」

 

「宜しく頼むよ」

 

 

 さて、次の書類は……とパソコンへ意識を向けようとした所でエアグルーヴが給湯室から戻りお盆に置いた湯呑をルドルフとブライアンに渡し……ん? 何故俺の前にも来たんだ??

 

 

「ほらっ、貴様の分だ」

 

「ああ……ありがとう?」

 

「何を腑抜けた声を出している……たわけが、貴様も作業をしているのなら茶の一つでも出さなければ我々が労いの一つも出来ないのかと思われる。 会長の好意でもある、受け取っておけ」

 

 

 呆けている俺に湯呑を渡し、煎餅を一袋机の上に置いてエアグルーヴも元の副会長席へと戻っていく。 手に持つ湯呑からはほわほわと蒸気が上がる緑色の液体……緑茶だ。

 爺臭いと言われるかもしれないが温かいお茶は好きであるし、煎餅は醤油煎餅の様でこちらも自分好みだ。

 

 あれ、施し受けちゃってるんだけど良いのかコレ。 手伝っているという大義名分はあるしエアグルーヴの言う通りルドルフからの労いだから受け取り拒否は彼女の心遣いを踏みにじる事になるからアウト。

 イコール受け取って味わっても構わない。 QED証明完了、煎餅とお茶を頂いて気合を入れ直して作業を開始しよう。

 

 ……ナリタブライアンさん、バリバリ煎餅齧るの似合いますね(豪快に音を鳴らす所もグッドですぞ)

 エアグルーヴやルドルフは手で割り、口に含める大きさにしてなるべく音を鳴らさない様な食べ方をしている。

 

 食べ方にも個性って出るものだな……ちなみに俺はブライアンと同じ食べ方だが、ノートPCに煎餅のカスが落ちたりすると掃除で非常に手間がかかるからティッシュを下に広げてバリバリやる。

 カスは落ちるが全部ティッシュの上、それを食い終わった後で片づければ汚さないって事だ。

 

 

 

 

 さて、それから数件の書類を処理すると昼時の予鈴が鳴る音がする。 時計を確認してみると両針とも頂点を差している時刻だ。

 一息入れながら腕を後ろに伸ばすとポキポキと骨の鳴る音が肩辺りから鳴り響く。 口元から息が漏れるのも仕方のない事であろう。

 

 

「お疲れ様、随分と頑張ってくれたみたいだね」

 

「あ~……それで、これで大体は良い線に行ったのかな」

 

「ああ、皆が一致団結し協力してくれたおかげで急場は乗り越えられたよ」

 

「よしっ、じゃあ後はお任せして例の場所へ行くよ。 昼食の時間だから早く行かないとアイツが拗ねる」

 

「重ね重ねで申し訳ないがありがとう。 あの娘も悪気は無い……はず、多分……なんだが、行動が独特すぎてね。 君には何故か気を許している様だから気にかけてくれるとありがたい」

 

 

 手早く肩掛け鞄へとノートPCを片付けるとルドルフが少しだけ困った様に手を顎に当てながら微笑んだ。

 手を掛けさせて申し訳ないと言うが、子供なんて大人を頼り振り回してなんぼのものだ

 

 

「任せてくれて良いよ、ただルドルフ……昼食を取ったら少し寝た方が良いぞ。 それじゃあね」

 

 

 急場は乗り越えたのなら一息入れて休んだって良いだろう。 忠告はしたのだからあとはルドルフ次第だ、俺の忠告を大人しく聞いてくれるのならそれで良し。 聞いてくれない場合は……まあ、うん。

 これだけ手伝ったり心配して気を使っててもまだ頼れる大人じゃない、又は赤の他人だって思われてるって事だよね……俺の精神的安寧の為にも昼寝して体調整えてくれないかな……

 

 

 さて、そんなこんな事を考えていると目的地付近へとたどり着いた。 ドアをノックしてもしも~し……ん、このネタはもう通じないか? まあ良いや、どうせ返事なんて無いのだから形式的にドアをノックしてお邪魔する。

 

 

「……お腹空いたよ……君……」

 

 

 そこには机に突っ伏し、絶不調の文字が見える状態で目線だけを向けるアグネスタキオンの姿があったのだった。

 

 

 

 




アヤベさんガチャは天井の景色を拝めそうです。

次回はアグネスタキオンの予定です。
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