転生者がトレーナーとしててえてえを拝みたい話 作:Siranui
4/30 追記
琥珀石様、荒魂マサカド様、幻燈河貴様、 緒方様、広畝様、晴読雨読様、リア10爆発46様、誤字脱字報告ありがとうございました。
本当に細かい所までよく読んで頂けてるのだと思い嬉しく思います。
さて、翌日の放課後に時間は進み授業を終えた多くのウマ娘達がトレーニングに励む時間である。 トレーナーが付いているウマ娘達は各担当のトレーナー室へ、そうでないまだ選抜レースに出走していない、又はトレーナーが付いていないウマ娘達は指導教官の指示で練習を始める。
今日の事は昨日の内に体操着で練習場へ集合と伝えてあるので、俺も筆記用具やノートPC、測定器具を入れた鞄を手に集合予定の20分前には前準備として練習場に到着し芝の状態や穴等の問題点が無いか一周ターフを歩き点検しておく。
もちろん専属の整備員の方々が手間暇かけて手入れしてくれているトレセン学園のコースに問題等ありはしないのだが、人間である以上うっかりや見落としなど完璧にないとは断言できない。 実際に走るあの娘達が怪我をしない様に最終的には自分の目で確認する事は出来る限り行うべき事だ。
指差しして問題無し! ヨシッ!!
例のポーズが頭の中に浮かんでくるのを振り払い準備を進める。 タキオンは実験の内だ と言っていたが流石に放課後の人の目が多数あるここでは早々無茶はしないだろう……多分、きっとソウシンジテル……
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「お疲れ様です、マスター」
マスターは止せ(渋いおっちゃん風)は何時かブルボンが選手として卒業し、俺がトレーナーじゃなくなる時に言ってみたい語録ではある。 まあまだ年単位で先になる話ではあるのだが……
「お疲れ様、じゃあとりあえず準備運動とストレッチから始めようか」
練習場に一番早く来るのはブルボンだ、体操着に着替えは済んでいるのでライスが来る迄手伝いをし軽くストレッチをし始める。 ライスとブルボンは身長差があるので背筋を伸ばしたりするのは俺が手伝わないと出来ない為、ブルボンの手を取り背中に乗せ彼女の背を伸ばす。
お返しにとブルボンも俺を背に乗せ背筋を伸ばす……ポキポキといい音を背骨が鳴らすのはデスクワークが多いからだろうか、声を出すとじじくさいと思われるだろうから我慢する。 肉体年齢的にはまだ若い筈だ……多分。
「疲労を検知、お疲れでしたらマッサージを致しましょうか?」
「ありがとう、でも俺は平気だよ。 それよりも今日はカフェと並走する予定だから念入りに足のストレッチをしておいてね。 練習とはいえ天皇賞春を想定して3,200mだから……まあ、いつも通り怪我だけはしない様に」
「オーダーを受領、いつも通り怪我及びそれに類似する症状を起こさない様無理せず練習を行う、変調を感じたら即座に報告する。 を遂行します」
「お兄さま~、ブルボンさん、お待たせしました」
軽くストレッチを続けているとライスが合流してくる。 そうしたら後はライスとブルボンがお互いにストレッチを手伝いつつ準備運動、体が温まったら練習を開始する と言うのが何時ものパターンだ。
とりあえず並走前に足を慣らす様にコースに沿て軽く走っていく二人を見送る。タキオンもカフェもそろそろ来る頃だと思うのだが……
「ふっふっふっ……昨日は早めに就寝したから調子は万全、後は成果を見せるのみ、気合が入るものだね」
「……何時もより騒がしいです……」
不敵な笑みを浮かべ、隣にいるカフェが少しだけうるさいと言いたげな様子でタキオン達が現れた。 何時もだと記録用紙や測定器具を持ってくるのだが今日は何故か手ぶらだ。
「やあ、タキオンにカフェ。 今日はよろしくね」
「任せたまえよ、少なくともブルボン君に食いつくヒントは与えて見せるさ」
「……お願いします、長距離は私の得意距離……ペース配分から相手が仕掛けてくるであろう、プレッシャー等も……知っていれば備えられますから」
「んじゃ、とりあえず準備運動から始めて……そういえばタキオンは手ぶらで良いのかい? 実験の成果だとか記録は……」
「ん~? 何の為に君が居るんだい? 記録は取っているのだろうからそこに私とカフェが加わるだけじゃないか。 2人も4人もそう大差ないだろう??」
お前は一体何を言っているんだ(某画像)確かに一度に4人全員が走る訳では無い(ライスとタキオンは中距離、ブルボンとカフェは長距離)のだから実質2人分の記録を2セット取るだけなのでそこまで負担ではない。
だが何故そう言った結論に至ってしまうのかが分からない。 タキオンと俺では視点が違うと思うのだが……まあ抗議したところで暖簾に腕押し、もう決定している事だと考えたタキオンは早々考えを改めないし、信用して記録を取らせているんだと思う事にしよう(勝ったと思うなよ……)
「オッケー、記録はまあ何時もの様式で良いのかな」
「君の書式は見やすいからそれで良いよ、私はデータのコピーさえ貰えれば良いからあとでデータ化して送ってくれたまえ」
紙じゃない方が燃やされたりしないだろうしね とは何に警戒して言った事なのだろうか。 カフェの方を見てみると我関せずの方針で準備体操をし始めていた。
まあ詳しく話さないと言う事はあまり気にしない方が良いだろう……どちらにしろやる事は変わらないのだし、問い質したところで時間の無駄だ。 練習を早速始めよう。
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「さて、ライスシャワー君。 ブルボン君に勝つ為には如何すれば良いと思う?」
「えーっと……??」
「難しく考える必要は無いよ、彼女より早く走ればいいとかずっと前を走り続ければ良いとか……まあ、今言った事は現実的では無いかも知れないがね」
軽く流しながらの問いかけに、彼女は何を聞きたいのか分からないので考えようとしたがそんなに難しい事を聞いた訳じゃないよ と伝える。
先行策を取る私達は前を取りつつ差し、追い込みが仕掛ける前に逃げを捕まえ、そのままゴールまで差し切られずに行けば良い。 文字にすればこれだけ簡潔にまとめられるが実際にはそうはいかない。
仕掛けるまでにスタミナが残せていなければ終盤でスピードが落ちるし、残せたとしても仕掛ける場面が遅ければ逃げを捕まえられず、早すぎれば差し・追い込みから逃げきれなくなる。
ペースを自分で作る事が出来る逃げ……それもブルボン君の様な正確なリズム・時間で他人を意識せず走り抜けるタイプの逃げへの対策は、その正確なリズムに合わせてそれ以上に速く走れば良い……と考えられるのは幸せな事だ。
ブルボン君がどう走っているのかよく見ているのか とも言いたくなる。 あの娘は登り坂だろうが下り坂であろうがそのスピードが衰えないままペースをキープし続けられるから強い。 身体能力も精神力も他と一線を凌駕している、だからこそ対抗バを気にせず自分のペースで走り続ければ勝てると言われるのだ。
これを打ち崩すのは難しい、先行や差しの脚質であればバ群で囲んでしまう……という作戦を取れるかもしれないし、追い込みであれば最終直線に大外以外抜けられない様壁を作ってしまう等も可能だろう。 それが誰の瞳にどう映るか、それを持ちかけたところで同レースに出走するウマ娘達が頷くかは別問題であるのだが……
思考がずれてしまった、つまりライスシャワー君がブルボン君に勝つにはどうすれば良いのか という事だ。 同じく逃げ……いや、大逃げをしてブルボン君の前に出て抑えるか? 出来なくは無いだろうが前に出て抑え続ける相当なスタミナを有して居なければ中盤辺りで足が鈍る際に追い越されるだろう。
じゃあどうするか? 要するに彼女の世界を破壊して自分を意識させるしかないのだ。 それもペース配分を乱すくらい強烈に、鮮明にだ。
「ブルボン君の強みは常に一定の速度を維持する事、それを最初から最後まで誰にも追い抜かせることなく続けられる事だ。
彼女の走りは常に自分との戦いであってそこに誰かは存在しない、いや存在しないというよりは意識しないという事かな? じゃあそんな彼女の走りにどうすれば勝てるか と言うとその世界を破壊するしかない。
私は君を追い抜かせるぞ、君の走りに付いて行けるぞ というイメージ、意識を相手側に押し付けて冷静さを乱す事だ」
ライスシャワー君は大きな耳を私に傾ける。 うんうん、素直な生徒は教える側として気持ちの良いものだよ。
「今日カフェとブルボン君が練習とはいえ走る予定だからよく見ておくと良いよ。 今私が話した事を頭の片隅に入れてよく考えてみるんだ……そう、まあ人並な言葉で言えば君なら理解できると思うよ」
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体が温まったところで早速始めよう とコース上にゲートを移動させ模擬レースの様にゲート入りから始める。 ブルボンにとって3,200mと、距離は菊花賞より200mも伸びるのだからそれだけスパートをかける位置、走る速度も調整しなければならないだろう。 カフェが手伝ってくれるのだから実際に走ってみたらブルボンは感覚を掴む事が出来ると思う。
コースの内側で練習していた何名かが併走を申し出てきたので無理をしない事を条件に参加を許可する。 ブルボンも三冠ウマ娘の為、目標とするウマ娘が居る為それを考慮してだ。
シニア級とメイクデビューにすら至っていないウマ娘では勝負にならないだろうが何事も経験を積みたい、走りたいと言うのならば止めるのも野暮だろう。
尤もまだまだ体が出来ていない娘がほとんどである為、1,600m迄と条件を付けはしたが……(まだまだ体が慣れていない状態で3,200mも全力を出しては絶対に体調を悪くしてしまうと考えられる為と、ブルボンの速さにかかる事を考慮すると2,000mは体力の限界を超えてしまうと思われる為) 実質最後まで走るのはカフェとブルボンの二人だけだ。
全員がゲートに入った事を確認してから数拍置き扉を開放する。 スタートしました、各ウマ娘綺麗な……うん、練習しているとは言えやはりメイクデビュー前の娘達は少し出遅れ、スタートダッシュを綺麗に決めたブルボンがガンガン上がっていく。
走法が逃げの何人かが前に出ようとするも加速度が違いすぎる為前に付く事が出来ない。 ただ誰にも追いつかれないペースで走り続けるブルボンに誰も追いつけない。 それが更にカフェ以外のウマ娘達が焦り何とか追い付けないかと速度を上げスタミナを無駄に消費する。
バテ始めた娘達の間からスルりとカフェが抜け出し、1,600mを超え半分を走りきった辺りでズンッ とカフェからプレッシャーの様なものがにじみ出す。 うーん……まあ練習だからか、カフェから感じるプレッシャーが少し弱い気がする。 スタミナグリードでなくスタミナイーターの方だろうか? 手加減とか出来るのか……うん、これもまた発見だな。
少し速度が落ちるか と思ったがブルボンはそれも意に介さず走る。 カフェもそれを予感していたのか表情を変えずに足に力を入れ徐々に進出する。 さあ最後の直線だ。
ラストスパートでブルボンが粘る、カフェも速度に乗って追走……いや、差そうとするが少し足りないか?……いや違う、カフェは加速しているし速度も上がっている。 それを上回ってブルボンが加速してる……ってどうゆう事?? え、先頭の景色は譲らない奴ですか???
目の前でゴール板を駆け抜けるブルボンとカフェ。 その差はクビ位だろうか……思いの外ブルボンが粘った形だ。 もしカフェがスタミナイーターで無くグリードの方を発動させていたら差し切られていたかもしれない。 少しプールでのトレーニングを増やした方が良いかな。
「お疲れ様でした……思っていたより、速かったですね……」
「お疲れ様です。 それでもゴール寸前で私は追い抜かれる寸前でした。 まだまだ精進が足りません……それに貴方も少し手加減……いえ、レベルを合わせて頂いた様に思えます。 次は全力を出した上で私が勝ちます」
「……そうですね、ですが影は何時でもすぐ傍に居ます。 負けませんよ……」
にこやかにお互いを称えあって握手している……よきよき、こうしてお互いを褒め高めあう事が出来るから友人や学友と練習するのは良い事だな。 俺の心に良し、お前の練習に良し、お互いに良し!!
「二人ともお疲れ様、アイシングしながら少し休憩してゆっくりと伸ばす様にストレッチしてね。 それが終わったら部屋に戻ってミーティングをしようか」
タオルと水分補給用の水筒、足を冷やす様に氷嚢を渡しながら二人をねぎらう。 練習とはいえ長距離を走ったのだから今日走るのはこの位にして掴んだ事を纏めて明日からの練習メニュー等の調整に使う事にしよう。
さてブルボン達はこれで良しとして、次は参加してくれた娘達にも清涼飲料水とかタオルを渡しに行こう。 大阪のおばちゃん並に飲み物と塩飴ちゃん配るぞお~……息を切らしてる娘が多いからやっぱりかかってたんだな。
先輩達はやっぱり速いですね とか私もあれだけ早くなれるかな……と悩みながらも前向きな娘が多い。 力の差があり過ぎてあの様に走りたいと目指す指針になってくれているのだろう。 誰かに憧れる事は目標になり、それは自身を奮い立たせる力になる。
「じゃあ一人ずつ、俺から見た助言と適正距離等の助言を簡単に纏めたデータを渡していくぞ」
これも教官とかの仕事なのだろうが、トレセン学園の生徒数が多すぎて細かい所にまで手が回らない。 それ故にとりあえず基礎能力を一通り練習して底上げしよう。 個人個人の能力に合わせた練習で無く全体で出来る事を行う事を指導するしか出来ない。
かと言って俺も自主練習している娘達に助言をする事、相談に乗る事くらいしか出来ないんだよな……もっと仕事の効率が良ければ色々出来るんだけどな……
宅急便の人等が持っている携帯式プリンターでそれぞれにコースの各所に設置された定点カメラや速度計からのデータを纏め、編集したデータを渡していく。 前年や近年のメイクデビュー時のタイムや走り方等を基準に何が足りなさそうなのかを簡単に纏めてある。 勿論詳しいデータや走り方を見て違和感、ぎこちない部分が無いか等は後々希望すれば伝える様にしている。
1週間くらい後に渡す事にしているので、詳しいデータが必要な生徒は名前と所属クラスを教えて貰っている。 それを終えたらデビュー前の娘達とは解散だ。
タキオン達は……ああ、内側で見ていたのかライスと一緒にブルボン達のストレッチを手伝っている。 これならそのままミーティングに向かっても良さそうだな。
ああ、そう言えばデビュー前の娘達の中に追い込みで良い脚を持ってる娘が居たなあ……どっかで見た事がある気がするんだけど何処だっけ?
え~っと……うん? あれ、アドマイヤベガってあのアヤベさんですか?
次回はもう少し短くして早く出せたら良いなあ…(次回はライブ練習回予定)