転生者がトレーナーとしててえてえを拝みたい話 作:Siranui
前作のアヤベさん視点での最後までです。
5/8追記
石幻果様、minotauros様、garaasaa様、幻燈河貴様
誤字脱字報告ありがとうございます。
評価・感想頂きましてありがとうございます、励みになります。
「ミスターシービー」
やっほ と片手をあげ挨拶してくれる生徒、ミスターシービー。 自由を愛する追い込みが得意なウマ娘だ。
昨日連絡した時にはまあ気が向いたらね という返事であったが、どうやら来てくれた様だ。
「シービー、どうしたんだい? 散歩にしてはここはコースから外れていると思うが」
「ん~? いや、そこの彼を探してたんだけど」
「ほぉ……一体何故?」
「君の(脚質・追い込みについて)ことが知りたいって」
「なっ」「っ!?」「遊ぶのも大概にしなよシービー」
ワザと言葉を抜いて説明をするシービーに間髪入れずにツッコミを入れる。 ケラケラと笑いながら面白くないな~ なんて言っているが勘弁してくれ。 さっきからパリパリが可視化されつつあるし静電気の様に肌の表面がザワザワする。
ブルボンも表面上は変わっていない様に見えるが、シービーの言葉やルドルフに合わせて困惑したり驚いたりしている。
ルドルフと話していた時は2歩程離れていた距離が、いつの間にか座っているベンチ真横にまで移動してきている。
恐らくルドルフの雷が怖いのかも知れない。 気を張っている時には気付かないが、シービーが横から声を掛けてきた為気が抜けてしまい気が付いてしまったのか。
手を握ってあげると多少落ち着いたのか、こちらを確認し、繋いだ手を確認し、前を見る。 どこか勝ち誇った様な感じがするのは気のせいだろうか。
「新人のことで聞きたい事があるんだってさ。 彼が担当している娘が逃げ・先行だから追い込みのことで助言が貰いたいんだって」
「ああ……それならそうとちゃんと言ってくれると嬉しいのだがね」
「あっははっ、だってルドルフが変な勘違いするからじゃん。 そりゃからかいたくもなるよ」
ワイワイと二人でじゃれついてるのを静かに観察しておく。 相変わらず仲が良いなあ……
「マスター、その新人とはこの前の方ですか?」
「ん、そうだけど何か気になるのかい?」
「はい、噂ですがマスターもチームを結成しなければならなくなると聞きました。 その為にまだメイクデビューを果たしていない娘の手助けをしたりしているのですか?」
「それを期待してないと言えば嘘になるけど、本命は違うかな」
「……本命とは?」
首を傾げるブルボンに笑顔を向けながら自分の考えを伝える。
「一人でも多く、君達の夢が叶えられる手伝いをしたいだけだよ」
切磋琢磨しお互いがお互いを尊重し、努力友情そして本気のレースが見たい てえてえが拝みたい との理由にメッキを貼って見栄えの良い様に成形するとこうなる。
「チームを結成することだってそうだ。 一人でも多く担当を持てるトレーナーがチームを結成して複数のウマ娘を見て欲しいってね、やっぱり人手が足りないらしくて理事長から依頼されたんだ。
シニア期のブルボンとライスが優先だって一度断ったんだけど……」
「だけど?」
その時を思い出す、ウマ娘のことを第一に考えている理事長だが、あの年で学園の理事長を務められるにはそれ相応の能力があるのだ。
「ライスの担当を引き継ぎたい って言われた時大変だったなあ~どこかのトレーナーがライバルであるウマ娘も担当したいとか突然言ってきたものだから、メディア対応や広報担当への根回し、説明も大変だったな~……
まあ、直接的にそう言われた訳じゃないけどね。 こちらも迷惑をかけたり、手助けして貰ってるんだから譲れないお願いは聞いて貰えないかってさ」
「それは……すみません、私の我儘で……」
「最終的に決めたのは俺なんだから気にするな。 何時までも変わらない人なんていない、むしろブルボンがライスを連れてきてくれたからこそ俺も成長出来たと思ってるんだ」
だからそんな顔するな、ブルボンはいつも通り真面目で少し抜けてても頑張り屋な愛バでいてくれ。
「ごほんごほん……で、私達を忘れてくれるのは困るな」
「いやいや、ルドルフとシービーが楽しそうだったから邪魔しないようにとね」
「まあ構わないよ、こちらもいいことが聞けたことだしね」
おや、いつの間にかじゃれ合いは終わっていたみたいだ。 シービーは苦笑しながら、ルドルフは腕組をしてこちらを見ている。
時間も時間だし、シービーをあまり長時間留まらせるのも悪いので早速トレーナー室へ向かおうか。
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「う~ん……なんだろ、窮屈そうに見えるかな」
「レース経験が不足している事による掛かりかな? いや、集団に慣れていない様な印象もある」
前の練習時に保存していた録画記録をトレーナー室のモニターで見ているのだが……同じ追い込み脚質としてどう見えるか 又はどう思うかを参考として聞こうとしたのだが、何故かそこにルドルフもいる。
後方脚質の娘はシービーだけじゃない、私だって色々な娘の走りを覚えているんだよ。 と普段の借りを返すのに役に立てるから付いていく との事だった。
ブルボンは脚質的にも、まだシニア期の現役である事もあるので先に寮へと戻らせた。 明日もまた朝練習があるのだから早めに休んだ方が良いだろうと考えたからだ。
「でもパワー、速度は十分そうだよね。 ターフはちゃんと踏みしめているし外枠で飛び出しは良好、スタートがよすぎたから少し下がろうともしていたしね」
「うむ、まだまだ踏み込みが甘いが十分活躍できそうだ。 同期の娘達と比べてもスピードや踏み込みの力は十分だと思う。 が、何故か途中から全てが崩れてしまったね」
「掛かったと思うんだがどうも……脚質関係なく前に出ることしか考えてない動き方だった。 レース展開も何も考えられない動き っていうのかな。 ルドルフやシービーはどう思う?」
「貴方の指摘は教官がつく前、まだ初等部の娘とかなら考えられるが……」
「……指導された事を忘れるくらい、何か強烈なものがあったってこと?」
それは精神的なことだろうか? そうなってしまうともう本人にしか解決できないこととなる。 ルドルフもシービーでも掛かる事はあるかもしれないが直ぐに立て直せる。 そうしないとレース展開を読み間違えて勝つことが非常に難しくなるからだ。
だがあの映像を見ると何が何でも前に出なければ、ブルボンに追いつかなければならない……そう感じた。 それは理性で前に出る動きで無く、足を無理矢理動かしているようにしか見えなかった。
1,600mにしておいてよかった、これが2,000mだったらと思うとゾッとする。 恐らくスタミナ切れと無理に動かしていた足がもつれて、躓いたかもしれない。
「……これ以上考えたところで答えは出ないだろう。 備考欄にその部分を指摘して自覚して貰うしかない。 貴方が力になりたいのは分かるが……そこまで踏み込むのはまだ時期尚早じゃないかな」
「そうそう、それも心配だけど先ずは走法とかフォームからじゃないかな。 走り終わった後に話した時は問題無かったんでしょ? ならそれは自覚を促すか……まあそれこそ専門家の人に依頼するしかないでしょ」
「……そうだな。 じゃあ切り替えて走っている時のフォームから……」
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カタカタとパソコンにデータを打ち込み、先程まで話しあっていた事を纏めていく。 シービーやルドルフが手伝ってくれたことで十分纏められたと思う。
お礼を伝えると今度何か奢ってね というシービーと、借りている貸しからみれば造作もない事だよ。 と謙遜するルドルフ。 それでも手を貸してくれたことには変わりないだろうと後日カフェテラスでお茶をすることにした。
纏めたデータは少なくとも教官が指導している、基礎力だけを走行法も脚質も考慮されていない練習よりはマシだろう。
ノートPCからデスクトップPCにデータを移動させ、纏めたデータを元にまた練習メニューを作り直しそれをまたノートPCへ移動する。 助言を求められたウマ娘達用に纏めたデータは印刷し、紙ファイルに纏めて渡せるようにした状態で鍵付きの書庫へと収める。
データで渡すより、紙ファイル等に纏めて渡した方が何処でも確認できるし自分で考えた事をメモし、それを誰かに相談する際に役に立つだろう。
「……人は独りでは立てない、それはどんな人であったとしても必ず誰かを支えて誰かに支えられている。 俺がブルボンを支えると同時にブルボンが俺を支えてくれる様に」
アドマイヤベガ、あの娘は誰か頼れる娘がいるのだろうか? シービーもルドルフも十分だと評価されているが……
再度録画を見直してみる、重心が左側へ傾いているのが見て取れる……癖なのか、それとも何かしら理由があるのかは分からない。 ちゃんと見てみないと、俺はエスパーでは無いのだから。
こういう時、あのトレーナーなら勢いで足を触りに行けるのだろうが……流石にそれは倫理的に出来ない。
「話さなければならない、それも今すぐにでも……あの姿勢で走り続けては負担がかかりすぎる」
それが彼女にどう聞こえるか、そんな簡単な事も思いつけずに
お休みが終わってしまったので次回は遅れるかと思います。
次回も引き続きアヤベさんとチーム結成についてになるかと思います