寂しいなのは、怖がるユーノ、面倒くさがるフェイト 作:ゴールド@モーさん好き
コッコッコッと足音が響く廊下、ゆっくりと軽く、だけど纏う雰囲気は重い足取りはとある一室の前で止まる。その部屋にはネームカードが飾られている。
【高町 なのは】
少年は握りこぶしを作り、扉にぶつけようとするも止まり、かと思えば震えていた。
その部屋の前で立ちすくむ少年の名はユーノ・スクライア、目の前の部屋で床に伏す少女──高町なのはに魔法を〝授けてしまった〟者だ。
「…………ッ!」
少年は今日も踵を返す、有り得ないと理解するもしもに怯えて。
♢
「え? ユーノ?」
「う、うん……最近、ユーノくんとお話出来てないからどうなのかなって……」
その言葉にフェイトは不思議に思った、いや……二人の関係を知っている人が聞けば誰だって不思議に思うだろう。
何よりフェイトは〝ユーノが病室に向かう所〟をこの目で見ているのだ。
「この間ユーノここに向かってたけど、なのはには会わなかったの?」
「うん、ココ最近本当にユーノくんとは話しどころか顔も合わせられてないの……」
そういう彼女は珍しく目に見えて落ち込んでいた。出来るのなら合わせてあげたい、けど……
「なのはは、ユーノに会いたいの?」
「……うん多分そうなんだと思う」
「多分?」
「自分でもよく分かってないの、ユーノくんに会えないのは無限書庫が忙しいって事で割と前からそうだったから慣れてるの。だけとどお話もで出来ないのはこまで無かったから……多分、寂しいのかな? ごめんねフェイトちゃんは時間作って来てくれてるのに寂しいなんて言って」
そう言って笑顔を浮かべる彼女は、どうしようもなく弱ってるのだと確信してしまった。
「待っててねなのは」
「え?」
「私が今度、ユーノをここに呼んでくるから」
「え?! いいよいいよそんな事、ユーノくんだって忙しいだろうし……」
「確かにこの前お仕事貰ったとは言ってたけど、少しお話する位の時間は流石にあると思うの。なんでユーノがここに来てないのかもき気になるし」
「フェイトちゃん……」
「なのは気づいてる? 私達の中で何時一番なのはを想ってるの、多分ユーノなんだよ? そんなユーノがこんな時に来ないなんて有り得ない。会って話してみる」
「…………ありがとう、フェイトちゃん」
そう言った彼女はようやく、明るい顔になった。
♢
(それにしてもあのユーノがお見舞いに来ないなんて……正直私よりもお見舞い行ってると思ってたのに、実際は一度も来てなかった。なんでだろう)
そう考えながら無限書庫に向かっていたら、丁度ユーノが無限書庫から出てきていた。
「あ、ユーノ」
「ん? あぁフェイトか、どうしたの? 無限書庫に資料の要請?」
そう言って出会い頭に仕事の話をし始めるユーノ、私も人の事言えないのかもしれないけど〝仕事人間すぎる〟。
「うーうん、今日はユーノに用事っていうか聞きたい事があって来たの」
「僕に? ソレはプライベートって事だよね、多分。そらまた珍しい」
「うん、あのさ〝なのは〟から聞いたんだけど事件が終わって以降会いに行ってないらしいね?」
「ッ! う、うん……ちょっと無限書庫の方で緊急の仕事が舞い込んじゃってね、面会の出来る時間に中々行けないんだ」
「?」
今、なのはの名前聞いた瞬間…………少し……
「そっか……なのは、その事で寂しがってたから出来たら今度行ってあげて」
「うん、そうしてみるよ」
「そんでさもう一つ聞きたいんだけど」
「うん、今度は何かな?」
「こないだ入院棟の方に行ったのに、なんでなのはとは会わなかったの?」
「?!」
「あの日、面会が許可されてたのはなのはだけだった……だから私はてっきりユーノもなのはに会いに行ったと思ってた、けどなのはは会ってないって言ってた」
「そ、ソレは……」
ユーノはあからさまに動揺し、俯き後ずさる。
「きっと何かあるんだよね。ねぇユーノ、もし何か悩みがあるのなら相談してよ。私だけじゃ頼りないかもしれないけど、他にもクロノや皆も居る……
そんなに、私達はユーノにとって頼りないかな?」
「…………その言い方は、ちょっとずるだと思うよ」
ユーノは数刻、間が空いたと思ったら顔を上げ苦しそうに言った。
「別に、何かを悩んでる訳では無いんだ。何故なら、その答えは僕自身分かりきってて、後はあと一歩……たった一歩足を進めればいいだけなんだ」
「? それってどういう──」
「ただ!」
「ッ!」
「ただ、怖いんだ」
「怖い?」
私は困惑しながらもユーノに問い返す、何故なら今目の前にいるユーノは私の知っていユーノではなく、まるで……
「うん、僕は──なのはに否定される事が怖いんだ」
まるで──悪い事をしてしまった、ただの少年のようだった。
「そんな事、なのはが言うはず」
「わかってる! わかってるさ! なのはがそんな事を言わない事ぐらい!」
ユーノは私の言葉に顔を赤く染めながらも激しく同意を示した、なのはならそんな事言わないと。それならば──
「それじゃあ、なんで」
「……なのはは、今回の事件で取り返しのつかない様な事になりかけた。もっと言うのなら、〝魔法に関わったせいで死にかけた〟!」
そこで、あのユーノがなんでここまで〝否定される事〟に対して怖がったのかが理解出来た。
このタイミングで否定されるという事は、〝絶縁〟という事になるんだ。
「ソレは、けれど……」
「うん、なのはが言うとは思わないよね。何度も言うようだけど、ソレは僕もわかってる。なのはは自分で選択してこの世界に来た、そしてその選択に対して責任を持って生きてる。ただ、彼女は死にかけたんだ」
そう、幾ら精神が強い人であろうと生死の淵をさ迷えば正常の判断は出来ないだろう。
「でもなのははユーノに会いたがってる、ソレはユーノだって同じでしょ! だからこの間なのはの病室に向かったんでしょ」
「けど、けどさ……」
「あーもう!」
「え? ふぇ、フェイト?!」
私はもう我慢しきれずにユーノの手を掴んで歩き始めた。
「今から向かえばまだ面会に間に合う、行くよ」
「え、え?! そんな、嫌だよ僕!」
「男がうじうじ言わない!」
「今日の君なんか変だよ?!」
その自覚はある、けれど──
「ソレはユーノも同じだよ、何時もの無鉄砲さはどこ行ったのさ」
「僕そんな無鉄砲かな……」
「無鉄砲だよ、ユーノも、なのはも。二人の友人である私が言うんだから、間違いないよ」
ユーノは、最初は最初は抵抗していたけど、私がバルディッシュをチラつかせたら諦めたのか大人しくなった。
「…………」
相変わらず俯いては居るけど……
「ねぇユーノ、私がなんでこんなにも強引になのはに会わせようとしてるかわかる?」
「……なのはの為?」
「それもあるけど、ユーノの為だよ」
「僕の?」
「今のユーノは正直見ていられない、無理やり頑張ろうとしてる。そんなユーノは見たくない」
「見たくないって、わがままな」
「わがままはユーノもだよ、本心ではなのはに会いたいって思ってる癖に怖いってわがままを言って……」
「いや僕のはわがままとはまた別だと思うよ」
「小さい事は気にしない、とにかくユーノはなのはに会いたいんでしょ」
「…………」
「この場合無言は肯定だよ、ユーノ。ほら、着いた」
「え? もう?!」
ユーノの目の前にはあの人同じネームカードがあった。
「…………」
「ユーノ、ユーノはわかってるんでしょ? なのはは、ユーノが考えてるような事は言わないって。それなら、もうあと一歩なんだよ」
「でも……」
ここまで来ても渋るなんて、ユーノにとっては相当な事なんだろうな。
「けど、ソレを待ってられるほど今日の私は甘くないです」
「え? ちょっま?!」
そう言って私は扉を開けてユーノを病室に放り込んだ。
「頑張れ、二人とも……私を救ってくれた二人なら、怖がる必要なんて無いんだよ」
数分した後、病室の中からは二人の泣き笑いが聞こえてきた。