プリンセスコネクト!Re:転生カリバーさん、悪夢に泣く(仮) 作:ジュンチェ
――別に、死ななくたっていいじゃない。
医務室のベッドで冷たく硬くなった彼にキャルは思う。
本来、自分と留守番するはずだったこの男は書き置きだけ残してホイホイとサレンディナ救護院の訪問団についていきやがった。すぐに察した、クリスティーナが手を回したのだ…恐らく、昨今問題になっているアナザーライダーとかいうバケモノ絡みだろう。
よくも自分を差し置いて…!帰ってきたらシバき倒してやると思っていた矢先、慌ただしく担ぎ込まれてきた男は事切れていた。ぶつけるはずだった鬱憤は空回りして戸惑いに代わり、我に返った時には王宮騎士団の専属である主治医が『手遅れです…』と呟いていたところである。クリスティーナも珍しく焦燥しながら食い下がってはいたものの結果は覆りはしなかった…死人では誰であろうと手の施しようがないのだから。
(コイツ、身内とかいるのかしら。東の最果てから旅してきたとは言ってたけど…ま、私が気にしてもしようがないか。せめて、安らかに眠りなさいな。……?)
別に自分がこの音にすべきことも出来ることも無い…くるりと背を向け立ち去ろうとした彼女は尻尾に何かが引っかかるような違和感を覚える。振り返ると遺体の手がベッドから垂れ下がり、指が絡んでいる。
「…っ」
うっかり触れてしまったのか…ただ気分があんまり良いものじゃない。しかし、ぶんぶん振って振り解こうとするが離れない…ああもうなんで…!?
ガシッ
「にぃッ!?」
その時、手がギュッと強く力を込め尻尾を握った。
そして、気がついた…
ギョロリと見開くおぞましい男の眼が自分を見ていたことに…
★ ★ ★ ★ ★ ★
――あ、キャルちゃんだ。(安堵)
寝たきりの僕のためにずっと看病してくれた…わけではないよな。何か真っ白になって魂抜けてるし。寝起き?蘇りの拍子に尻尾を掴んで驚かせて気絶させたってところか。いやあ、悪いことをしたな…ん?
(キャルちゃんの尻尾…)
右手のフサフサとした感覚…キャルちゃんの尻尾が僕の手の中に……
「…」
――スリスリスリスリ(頬ずりする音)
…意外とゴワゴワしてる((´・ω・`))
ちょっとまがさしたんだが、背徳感に見合ってないなうん。痴漢でシバカれてぐっすり熟睡出来なくなる前にキャルちゃんを僕の代わりにベッドに寝かしつけてと…ヨシ!
取り敢えず、急ごう…今頃は死人(蘇ったけど)を出したことに揉めに揉めてまくってる頃合いだろう。
月闇もある。身なりはこの際仕方な…
「あ… あぁ…」
む? 見覚えがあるメイドが眼の前に…ああサレンの従者のスズメだったな。
「あ、あなた…死……!? へんた…っ!?」
む、どうやら厄介なことになったようだ。スリスリする現場を見られてしまったからには仕方ない。目撃者は居ないに越したことはないけれど、僕とて紳士(?)であり曲がりなりにも騎士…ここは平和的に解決しようじゃないか。
「僕はカリバー…誰も呼ばないが本名は別にある。そして、この月闇は斬った相手を暗黒空間へと閉じ込める能力があるんだ。君の選択肢はふたつ…この場で見たことを綺麗に忘れるか、秘密を抱いて未来永劫の暗黒を彷徨うか。騎士道精神に則り君に好きに選ばせてあげよう。」
「ひ、ひぃぃ!」
な? 紳士的だろ?
★ ★ ★ ★ ★ ★
「…というわけで、事情は理解して頂けたかな?」
「(カタカタカタ…)」
そんなに怯えなくたって良いじゃないか…。(哀しみ)
平和的かつ紳士的な解決はした…。取り敢えず、蘇生に関しては生まれ持った特別なレアスキルということで誤魔化したのだが…どうにも彼女に僕は恐れの対象になってしまったらしい。いずれ敵対するだろう偽・王女以外は可能な限り仲良くやっていきたい身としては残念な限りだ。
「さて、この際だ。色々と君に聞きたいことがある。良いね?」
「は、ハイ!? な、ななんでしょう!?」
悲しい出会い方になってしまったことは目を瞑ろう。個人的に色々と気になる点を訊いておこう。まずは…
「彼…不死鳥の力を操る本の騎士についてだ。彼は何者だ?」
まずは、仮面ライダーファルシオン(=仮称・転生騎士クン)について。ヒルマを強い興味を持っていたし、プリコネの物語において凄まじいイレギュラー…あれの情報がまず欲しい。
「ゆ、ユウキさんのことですか…。ええっと、素性は私にもよくわからなくて。
元々旅人だったらしいのですが、当分はランドソルに居付きたいからギルドに所属したかったとかで管理協会から1ヶ月くらい前に紹介されてサレンお嬢様が迎えいれたんです…。人手は足りなかったし、ユウキさんが高難易度のクエストもひとりでバンバンこなしてお金も入れてくれるし、従者のコッコロちゃんも子供たちの面倒を見てくれるしで大助かりで頼りにしていたんです…。
その正体が噂の騎士だったなんて夢にも思いませんでした…。」
…? ランドソルに既にある程度の期間、滞在している?
待てよ、ペコリーヌの一件がまだ1ヶ月経ってないぞ? そうなるとゲーム原作にせよアニメにせよ時間軸にズレがあるし、その頃はまだ僕も転生していない…。もしかして、この世界線は思った以上に原作とかけ離れているのか?…まあ、僕やアナザーライダーなんてものが跋扈している時点で今更だが。
取り敢えず、救護院の活動を助けていたのなら善良な転生者なのか?その割にはサレンがアナザーライダー化していたり、彼女らにあまり余裕があるようには見えなかった。
「ああ、どうしよう。ユウキさんがいなければ救護院が立ち行かなくなるのも時間の問題…私がもっとしっかりしていれば…!」
ん? …待て。
「救護院には融資が出ているはず。そんなに厳しいのか?」
「…そ、そうなんですが。ギルド活動をはじめてから間もなく融資の大半が突然、打ち切られてしまったんですよ…。理由を訊いても、何処も一身上の都合で出来なくなったってばかりで教えてくれないんですよ!」
成程、それが疲弊の理由か。
融資が壊滅したとなれば資金繰りは最早、生命線を絶たれたも同然。原作でも火の車だった運営に更にサレンは身を削る事態になったのだろう。
(…だが、何故だ? 融資が絶たれる理由は?)
疲弊の理由はわかっても、融資打ち切りの原因は謎。考えられるのはプリンセスナイトからの圧力…輝かしいキャリアを積んできた彼女を何らかの形をで利用しようとしていた権力者などがいても不思議じゃない。救護院設立はそんな人物たちの期待を裏切ることになりうる…故に行われた報復という可能性。
ただ、あくまで推論だ…。ましてや、そんな卑劣な行いを覇瞳皇帝やそもそも、王宮騎士団の幹部らが許しはしまい。可能性は低い。
なら?
そういえば、師匠が言っていたな…
――アナザーオーズだったか…今回の件、大体の『黒幕』が誰かは検討がついている。恐らくは我々の身内だ。だが、白昼の下に堂々と素顔を吊るし上げるのは少々不都合が生じるのでな…というわけで協力しろよ、我が弟子。
そして、言われるがままキャルちゃんに留守番を押し付けてこっそり一般団員に紛れて同行したわけだ。彼女の言葉の意味合いから察するにアナザーオーズの正体に勘付き、それが王宮騎士団の誰かだと割り出したので内密に処理したかったのだろう。結局、誰なのかは一応、教えてはくれたんだが…
アナザーオーズは団員ばかり狙う理由は教えてくれなかったなあ…。それにしても、何故に護りが手薄になったランドソル城ではなく救護院を?師匠はどうして襲われると察知できた?
(――スッキリしないな。どうにも僕には見えないところが多過ぎる。)
「やっぱり、プリンセスナイトの助力を受けるべきなんでしょうか。でも今更、どんな顔すれば良いのやら…こんなこと貴方に言っても仕方ないですけど。トホホ…」
スズメはひとりで悩みの渦をグルグルしている…そういえば、サレンは政府であるプリンセスナイトの干渉を嫌っていたとか。救護院の運営なんてプロパガンダにはもってこいだし、そっちが本腰になってしまったとしたら彼女の優しい理想とはかけ離れるだろう。されど、このままでは現実のために理想は折れる…アナザーファイズの件から本当に災難続きで可哀想に…
……待てよ?
(おかしくないか? 何故、救護院まわりばかりでトラブルが起こる?)
あまりに不自然だ。2体続けて現れたアナザーライダーは悉く救護院へ致命的な被害を出している。王宮騎士団もまあボチボチ出ているが屋台骨が揺らぐほどじゃない…
もしかして、王宮騎士団への攻撃はあくまで撹乱で本当の狙いは…
「まずい!」
「え? 何がです?」
急がなくては……サレンが危ない。
★転生カリバーさん(紳士)
スリスリの変態。おまわりさんこいつです。
コイツおまわりさんだったわ。(呆れ)
★キャルちゃん
( ˘ω˘)スヤァ…