プリンセスコネクト!Re:転生カリバーさん、悪夢に泣く(仮) 作:ジュンチェ
「この力、離すものか…!」
完全に想定外だった…!
超常たる怪人の力に依存してしまう一般人というのはライダーシリーズにおいて時たまにあるのは頭にあったし、彼女の言動からも察していたのに…迂闊だった。アナザーライダーが原作でその描写がされたことが無かったから倒せばカタがつくと思っていたが、燃える業火の中でも彼女は欲望の本から手を離さない。このままでは…!
「よせ! その本は危険だ…! はやく離すんだ!!」
「嫌だ! やっと手に入れた力だ! 誰にも見下されない、憧れと肩を並べられる力なんだ!」
「ちがう! それは間違った強さだ! 君には本当の…正しい強さとは何かわかっているはずだろ!」
そうだ、君の強さはそんな醜く歪な欲望なんかじゃない。君は正しい強さを知っている…!人と剣の在り方、その憧れをジュンに求めたはず…だから、そんな力は…
「ならアンタは正しいのかカリバー!?」
――え?
「同じ本の力を使うアンタと何が違う? 本が無ければ何も出来ないくたばり損ないが何をほざく!」
……
……………
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「僕は…」
カリバーの動きが止まった。
動揺、まだ決着がつかない戦いの場面でそれは致命的である。
『ァァァ!!!』
「! バカ弟子!!」
トモからアナザーオーズの怨念が飛び出し襲いかかる。クリスティーナが声をあげ、ようやく我にかえったカリバーだが迎撃は間に合わずクローにより引き裂かれ鮮血が舞う…そして、最後の足掻きを果たしたと言わんばかりにより怨念は霞となり消滅…ライドブックは大人しくなり、汚れた本となり力なくへたれこむトモの手の中におさまった。全ての力を使い果たしたのか、炎は消えて彼女はうつろな目をして意識を失っている…
そんな彼女の横からヌゥと手を伸ばして穢れた本を回収したのはユウキ。『ふむ…』と興味深そうに眺めたあと、視線を地面に呻くカリバーへ…。
「…全く、どういうつもりだ。コイツに何が出来ると言うんだ?」
つまらなげに吐き捨てると不死鳥の炎を纏いその場を後にした…。
それから間もなく、ジュンたち騎士団が慌て駆けつけてきたが…その時には全てが終わったあとだったのは言うまでもない。
★ ★ ★ ★ ★ ★
それから数日……
トモ並びにアナザー鎧武だった団員の処分が下された。
トモは謹慎処分…といっても、事実上の療養みたいなもので大事にしたくないというサレンディナ救護院と母体であるプリンセスナイト側の意向もあって、かなり軽めの処分で済んだ。衰弱は著しいが、精神もスズメの治療も相まって少しずつ回復に向かっている…。メインヒロインではなくとも、プリンセスのひとりである彼女。この事件が悪い影響を残さなければいいのだが…それが気がかりだ。
そして、例の団員…。救護院の出資者など外部・内部の人間に手を出してしまった以上は精神状態に異常をきたしたという状態を鑑みても軽い処分で済ませるのが厳しく、事件捜査への協力の後に正式にギルド退団処分をさせられるそうだ。事件後、話してみる機会があったが怪人の時とは一転して人がよさそうな青年だった……やはり、あの狂気は穢れた本の作用なのか。
後味悪さは酷いものだが…取り敢えず、もうサレンディナ救護院は安全だろう。
「…報告は以上です。」
「ありがとうございます。取り敢えず、一段落ですね…。子どもたちに被害がないのは幸いでした…。」
ところで僕は今、救護院にてサレンに事の一部始終を報告している。わけあって、変身したままだがこのほうが子供たちにはウケが良い。なにはともあれ、解決…全部が全部片付いたわけじゃないがもう救護院が荒らされることは早々ないはず…それでも、彼女の顔は浮かないが…。
「あのうまく言えないのですが……」
…ん? なんだろう?
「わたしも暴走した時…声が聞こえた気がしたんです。『自分で夢を壊すな。』って…誰かがずっと叫んでたような…。だから、救護院を壊さずに済んだのかもって。それに、あの力自体はどこか懐かしいような気もして……」
アナザーファイズになっていた時のことか。別に何の縁もゆかりもないファイズの力が懐かしいとは妙だが…考えてすぐに何か思い浮かぶことも今はない。
「…ごめんなさい、変なこと言って。」
「いや、構わないさ。もし他にも気になったことがあったら遠慮なく王宮騎士団を頼ってくれ。あなたに力になりたい人は沢山いる。僕もそのひとりだ。」
「お心遣い、重ね重ね感謝します。……やっぱり、あたしって不器用だな…溢れた弱い人を救うつもりが、結局誰かを切り捨てていた。ままならないわ…本当に。」
溜息をつく彼女…やはり、心が消耗している。
本来の主人公、ユウキだったらきっと寄り添える言葉をかけられたんだろう。でも、僕は彼にはなれなかった…。だから、せめて…
「人はひとりで届く手の大きさなんてたかが知れてます。だから、手をつないで夢見た明日に手を伸ばす…それは恥ずべきことなんかじゃない。」
こんな言葉くらいが精一杯。もっと素直に周りを頼れたら環境は好転していくはず……。後々には美食殿も結成されるだろうし、そうすれば……あのファルシオン騎士クンが美食殿結成するのかわからないけど…
そして、僕は救護院を後にした……時刻は夕暮れ。はやくランドソル城に戻るかと思っていたところ意外な顔が。
「…師匠。」
「見ないと思ったら…全く、上司の仕事をとるとは偉くなったんじゃないか…えぇ?」
我等が副団長・クリスティーナ師匠。とったんじゃなくて団長から頼まれたんだぞ…『クリスちゃんだとまた余計な誤解と火種が生まれかねない』って。
「ま、概ね団長あたりが手をまわしていたというところか。」
あ、分かってるんだ…。わかってるなら改めてもらって……無理だな(諦め)
「ついてこい、話がある。」
…?
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「その鎧を解け。」
「え…」
誰もいない城壁、燃えるような夕焼けに照らされるこの場所に連れてこられふたりきり。愛の告白ならもってこいの雰囲気だが生憎そんな生温いイベントじゃないらしい。彼女に笑みは無く眼は鋭い。
「隠しているつもりだろうが、バレているぞ。」
……ああ、やっぱりそのことか。
僕は観念して、本をドライバーから抜いた…そして、露わになる肉体は簡単に言えば服を着たミイラだ。完全に水分が抜けた肌はカピカピで肉と一緒に縮みきって骨にくっついているような有様。目玉は腐りかけのように黄色いし、寝っ転がれば変死体のようにしか見えない。
「やはりか。蘇生か、もしくはその妙な剣やら本の反動か?」
「…」
ご察しのとおり、蘇生の反動だ。
正確にら蘇生後、間もなくカリバーの力で更に肉体を酷使したから限界を迎えた。変身していなければかなり息苦しいし、こんな姿を他人に見られるわけにもいかないのでずっとライダーシステムを使っていたわけだが…そんなにおかしかったか?
「事務仕事や食事の時まで鎧を着るトンチキなんぞ、団長以外はこのランドソルにはいるまい。」
まあ、それもそうか…(納得)
「治るのか…?」
「暫くすれば、いずれ…。」
治るはず……要はこの姿はヒルマ曰く、蘇生の反動からくるある種のエネルギー不足のようで、ライドブックから肉体にエネルギーが補填されれば回復するらしい。ただ数日はこのまま…まあ仕方ない。死体にならなかっただけマシと思おう。
「只の人間ではないと薄々思ってはいたが…不死の呪いを受けているのかお前。死んでも魂を強引に肉体にくくりつけて動かす…大抵は死霊使いに隷属されているものかと思ってはいたが、明確に意思があるのは珍しい。……ならばこそ、お前の素性をより詳しく知る必要があるな。」
「…」
そうなるよな。しかし、困った…転生者云々は伝えるにしても面倒だしあまりに突拍子もない。
かと言って入団直前に覇瞳皇帝の前で堂々とホラを吹いた手前だけに迂闊なことは尚言えないし、嘘に嘘を重ねるのはいずれ整合性がとれなくなってしまうだろう。…どうする?
「……と、詮索したいところだが生憎、陛下から余計な勘繰りはするなとキツくお達しがきていてな。これくらいにしておこう。」
…へ?
「あとあの小娘に言われたことはあまり気にするな。アレの本心ではあるまい。今日はもうゆっくり休め。」
許された…いや、見逃された?
この場合、徹底的な追求が来ると思ったが彼女なりに思うところがあるのか?いや、陛下のお達しって…
「――(お前のことは気に入っている。くれぐれも裏切ってくれるなよ?)」
―ッ!?
耳打ちされた…! こんなカッコイイ耳打ちされた不覚にもドキドキしちゃうじゃないか…って戸惑っているうちに何処か行ったな。本当に自由だなあの人……
……『気に入ってる』か。有望な新人という意味合いかはたまた面白い玩具ということなのかはわからない。ただ…
「僕はそんな大したもんじゃない…」
トモが言いかえされた通りだ、僕は『正しい存在』じゃない…プリコネの物語の住人としても、カリバーとしても。取り敢えずはカリバーとして形は保っていても本質的には僕もアナザーライダーと大差がないのかもしれない。決して僕はプリンセスと共に立つナイトでもなく、聖剣を握る文豪でもない…居なくたって物語は成立する。
「僕はきっと、剣豪にもナイトにもなれないのか……。」
『―――別に知っている可能性に準ずる必要はないですよ。』
…? あれ、今キョウカちゃんの声が聞こえたような?
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「…それで、彼は『味方』かい?」
「さあな。」
カリバーと別れたクリスティーナは待ち構えていたジュンと合流していた。
クリスティーナはあいも変わらずだが、ジュンは只ならぬ剣幕である。
「陛下の采配といい、やはり彼には何かある。多分、『相談役』も一枚噛んでいるんじゃないか…」
「『ハミル』のことか。だが奴からその名前は出てこない…避けているか、知らずに操られているのか。取り敢えず、暫く様子見だ。もし必要なら私が斬り捨てるさ。」
斬る…確かに今のカリバーならクリスティーナに全く歯がたたないだろう。ジュンもそのことは疑ってはいない。
だが
「しかし、どうせなら…」
「?」
「ただ斬り捨てるより、殺し甲斐があるくらいに育てみてから…というのも悪くないなァ?」
「…」
相変わらずだなあ、クリスちゃんは… ジュンは苦々しげに苦笑する。
次回、ペコリーヌ合流イベント。