プリンセスコネクト!Re:転生カリバーさん、悪夢に泣く(仮) 作:ジュンチェ
…ずっとトンボだと思っていたわい。確かにバッタにバッタをかけてトンボになるのはおかしい…のか?
いやあ、昨晩の仮面ライダー特番面白かったですね。あれ見て元気でてきました。エグゼイドのインフレとかアクションの秘話とか昭和の撮影事情などの裏話などが聞けて濃密な2時間でした。最後の林先生へのショッカー襲来の件はめざましTV(だったっけ)のファイズ紹介回を思い出すなぁ。…何年前だそれぇ(白眼)
「…どうして私が!」
悪態をつきながら黒猫のような獣人族の少女がランドソル城から出てくるなり、試験会場の城門前まで向かう。そう彼女はキャル…本来の物語でヒロインのひとりを担う少女であるが、その立ち位置はこの場で語るにはあまりに複雑である。とりあえず、彼女は『陛下』より試験会場に面白い気配があるから見てこいと小間使いなり使い魔にでも足りるような役割を言いつけられた。いくら敬愛するお方の命令とはいえ不服だったが、顔に表す前に氷のような視線を向けられそそくさにやってきた次第。
本当に最近、あのお方はどうしたと言うのだろう?
王宮騎士団とは別に新しい臣下を囲うわ、突拍子もない副団長の企画もふたつ返事で了承するわ、……あとキャルへの扱いも見るからに雑になった…いや、興味が薄くなったと言うべきか。
(どれもこれも、『アイツ』が来てから…!相談役だがなんだが知らないけど…! ああ、もうイライラする!)
苛立ちを覚えつつも、反抗すれば最期…キツイお仕置きが待っているのであろうことは想像に容易いので渋々ながら王宮騎士団から距離を取りつつ、彫刻の像の物陰から様子を窺う…。陛下の一番の臣下と自覚するキャルであれど、やはり諸事情により団員たちとは絡みたくはないのだ。
「アイツね…?」
さてさて…お目当ての相手。
仮面ライダーカリバーを見つけ、ほくそ笑むキャル。こんなちょろい任務なんてさっさと片付けて…
(あれ…なんか、こっちガン見してる…?)
★ ★ ★ ★ ★ ★
あれは、誰だ…?(デン)
DA★RE★DA?(デン) DA ★ RE ★ DA ?(デン)
A★RE★WA…
(キャルちゃん? キャルちゃん!? キャルちゃああん!?!?)※心の叫び
いっや、凄いクオリティ。本人かと思ったわ。そっかー、ここはプリコネ限定のコスプレ会場ですかヤバいですね★。いや、待って…ヤバいのは僕だ。何そんな場所に堂々とカリバーコスとかサ●ゲの本社にFG●のクソださTシャツ着てカチコミ入れるくらいにヤバい行為なのでは?
というか、僕の前後に一体、何があったんだ…
とりあえず、ファンタジー色が強いだけあって意外と馴染むカリバーのコスプレだがこのままではスタッフにご迷惑をおかけしてしまう。本当にハリウッド実写化クラスのクオリティに驚くばかりで名残惜しいが、ここは撤退すべきだろう。
「すみません、間違えました。」
「いいや、間違えてはいないぞ? ここが、ギルド・王宮騎士団の試験会場だ。飛び入り参加のようだが、大歓迎だ! さあ、早く構えろ!」
あ、あのコスプレは…宴おばさんじゃん。名前忘れた…すまない。
というか、散々BBAとか言われてたけどやっぱり美人だ。プリコネの平均年齢が低いだけで特別に彼女が年長というわけじゃなかったはず。まあ、それ以前に…18以下は犯罪だからな。それにしても本物と言っても遜色ないな彼女。結構、有名どころのレイヤーさんか? しかも、担当の声優さんと非常に似た声まで…
…声まで?
「おい、どうした? 来ないなら、こちらからいくぞ!」
「!」
一瞬で間合いを詰められ、ゴオッ!!と振りおろされた大剣を慌て月闇で受け止める。全身に重力をかけられた如き衝撃が襲いかかり、ノックバックで後ろへ後ずさってしまう。
どういう理屈か耐えられたが、今の攻撃は撮影技術や編集ではなく間違いなく『本物』。そして、月闇も受けてみせたが、傷ひとつない…玩具だったら木っ端微塵になっていてもおかしくないのに。
(…まさか? いや、そんなまさか?)
もし、自分の見ているのがよく出来た二次創作の再現ではないとしたら?
もし、自分や彼女たちがしているのはコスプレではないとしたら?
ならば……自分がしたのはただの寝過ごしなんてものじゃない。導かれるのはライトノベルや二次創作の人気ジャンルの金字塔でもある例のアレだ。
「…(…異世界転生ッ だと!?)」
★ ★ ★ ★ ★ ★
「…なーんだ、見かけ倒しかしら。あんな小突かれたくらいであの始末とか。」
キャルはやれやれと溜息をつく…。最初こそ物々しい雰囲気に全身の毛が逆立ったがとんだ無駄な心配だったようだ。全く余計な時間をとらせてくれて…ま、どうせあと数秒もしないうちにクリスティーナにボコボコにされてオシマイと背を向けようと…
「あら…?まだやる気?」
しかし、カリバーは構える…切っ先を後ろに居合のように姿勢を低くしクリスティーナと対峙する。戦闘続行、大いに結構。
「やるしかないか…!」
カリバーは地を蹴り、斬りかかる!対し、クリスティーナは半歩下がり、一撃目を大剣で弾く。続いて二撃は防御しパワーで『フンッ』と押し返す。されど、負けじと突きを繰り出すがひらりとかわされる…。
ここでのキャルの評価は…
「うわぁ、最初の踏み込みからして筋は悪くないけど緊張でアガるタイプかしらねアレ? 純粋な剣技は素人クラス…やっぱり、敵じゃないわね。」
下の中。底辺でないだけまだマシか。そんなこんなしている内に、柱に叩きつけられるカリバー…対し、若干ながら冷めの兆しが見えてきたクリスティーナは折角の昂りがこんな鎮火をすることなど許容し硬く、切っ先を向けて挑発する。
「おやおや、そんなショボい剣技では私には届かないぞ? ほれ、その意味ありげにひっ下げているアイテムでも使っても良いんだぞ?」
「…!」
クリスティーナが示すのはカリバーの腰のホルダー…吊るされているライドブックのことだろう。カリバー自身も今になって気がついた…とりあえず、一冊手に取る。彼が無我夢中で選んだのは…
(! …よりにもよってか。)
【 ジャアクケルベロス!! 】
トライケルベロス・ワンダーライドブック…セイバーの物語において、カリバーはトライケルベロスの力を扱うエスパーダを舞台から(一時的とはいえ)退場させた経緯があるだけに、これが初期装備に入っているのは何の因果か。
残念ながら、感傷に浸っている暇はないので問答無用で月闇から迸る雷光をぶっ放す!
【 習得一閃! 】
「どうだ…!」
「…」
生身の人間なら感電死は免れない稲妻の番犬による牙。
しかし、それは不可思議なまでに素早く身を反らしたクリスティーナをすり抜け……
――キャルちゃんにまっすぐ飛んでいった。
「は?」
油断していた彼女は避けるなんて思考に至ることなく、『きゃるっ!?!?』と短めの悲鳴のあとに出来上がった黒焦げの黒猫。カリバーとクリスティーナも『あ…』という顔をしていたが、他の団員たちが気絶したキャルちゃんをそそくさに回収していく。
やべぇ…とカリバーは仮面の下で冷や汗をかいているとフォローを入れるクリスティーナ。
「不運な事故だ。気にするな。」
それは、あんまりじゃないか?
何はともあれ、戦闘続行。カリバーの劣勢はまだ続く…さて、次の逆転の一手になりうるライドブックは…
「! …これなら!」
【 必殺リード! ジャアク昆虫大百科!! 】
【 習得一閃! 】
昆虫大百科…仮面ライダーサーベラの変身ツールとしてのイメージが強いが『煙』に関しては彼女の聖剣に由来する能力…果たして、月闇で何が起こるかは未知数だが…
「ふんっ!」
大きく一閃、すると刃をから放たれたのは真っ黒な飛蝗の濁流。無数の蟲が紅い眼を光らせ押し寄せ、咄嗟にクリスティーナも大剣を盾にするもあっという間に呑まれてしまう。
それにしても、飛蝗か。1号やゼロワン等のモチーフとして有名どころだが、元より農作物を喰い荒らす害虫であり、群を為して大挙して行く先々を荒れ地に変えて押し寄せる様は蝗害とされる。その害悪さは旧約聖書にも載るくらいだ…邪悪な蟲、仮面ライダーとしては皮肉この上ないだがうってつけだろう。
問題は…
「生きているのかあれ…」
メタルクラスタホッパーさながらの攻撃に彼女は耐えられるのだろうか…やった身でなんだという話だが。カリバーも転生前のアニメ知識などから、そう簡単にやられるような相手ではないのはわかっている。しかし、厄災の津波に大剣ひとつでは心許な…
「…面白いではないか?」
「!」
刹那、黒い潮流を斬り裂いてクリスティーナが肉迫。不敵に笑う顔を眼前に確認した時にはもう遅い。大樹を引っこ抜いてフルスイングしたような唸りをあげる大剣が紫色の甲冑を容赦なく斬り裂き、あまりの衝撃からジャアクドラゴン・ライドブックがベルトから外れ宙を舞う。
変身者も容易く限界を迎えた。所詮、闇の聖剣を扱えれど所詮はただの素人…一般人であり、なるべくしてなった結果だろう。地面に投げ出された彼は意識を失い変身解除。異世界の突然の初陣は黒星で終わる。
「さて、……とりあえず、どうする?」
地に伸びたカリバーだった男を尻目に、落ちてきたジャアクドラゴン・ライドブックをキャッチするクリスティーナはこちらへ歩み寄ってくる重厚な黒い甲冑に問う。顔も完全に隠した彼女…騎士団団長のジュンはクリスティーナの顔を見て考える。基本、道楽主義であるが今回は一切の緩みなくこちらを見据えていた……なら、きっと考えも同じはずとジュンは自らの考えを語る。
「剣技については悪いが、一般団員以下…とてもじゃないが、採用基準には満たない。でも、素性がわからない彼をこのまま返すのは…。とりあえず、採用云々は抜きにして、一度保護しておこう。どうやら、陛下も興味がお有りのようだし…」
「同感だな。試験も奴で最後だしキリがいい。」
『チュートリアル…というより、負けイベントだろありゃ。ひっでぇ。』
そんな一部始終を城壁の上から観ていた『黒い怪人』。肉食昆虫を思わせる口元だが、右手で担ぐ剣も相まってシルエットは異形らしくも戦士の覇気を感じさせる。ダルそうにしながら、よっこらせと立ち上がるは仮面ライダーセイバーの幹部怪人であるメギドの『デザスト』。つまらなげに鼻を鳴らすと、空いた手で銀色に輝くライドブックをこねくり回す…そこからは微かに声が聞こえるようだ…。
(…! …!)
『ああ、アイツはまだ良い。むしろ、泳がせたほうが本命が喰い付く可能性がある。……わかってるよ、『失敗作』は失敗作なりにうまく立ち回るさ。』
そして、デザストは軽快に城壁を去っていく。
腰にレジェンドライダーライドブックを輝かせ……