プリンセスコネクト!Re:転生カリバーさん、悪夢に泣く(仮)   作:ジュンチェ

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颯爽!登場!転生セイバーさん、悪夢をゆく!(は?) その3

 

 

 

 …湿るような不気味さで、薄ら笑む招かねざる客。

 

 

 転生者ウラガの登場に空気の緊張は一気に高まる。

 

 

(なんで…こんなことに?)

 

 

 カリバーは知る由もない。本来、現れるはずの暴漢ブライは既にペコリーヌが風来坊と諸共にぶちのめしてとっくに病院おくりになっていたことなど知りようが無いし、無論滞りなく原作通りに進むと考えるのは自然なこと。しかし、代わりにやってくるのがそこらの無法者や下手な魔物より格段に危険な転生者なんてたまったものではない。 

 相手は初エンカウントした時の防護服ではなく薄汚れたベージュのコートを装い、既にビルドドライバーを腹に装着している。偶々遭遇したのではなく、明確にこちらを潰しにきているという意思の現れか…

 

 

「…ペコリーヌ、キャルちゃん。」

 

「コッコロ、下がってろ。」

 

 

 立ち上がるカリバーとユウキ… 物々しくなる風の流れに周囲の客たちも怯えざわつきはじめるが、そこにウラガへとギロリと視線を向ける店主が割ってフライパンを突きつけた。

 

 

「オイ、客じゃないなら他所へ行け。ここは飯を食う場所だ。」

 

「問題ない。―――どうせすぐ更地になる。」

 

「「! まずい!」」

 

 

 

 危険。カリバーとユウキが察した瞬間にはビルドドライバーのハンドルをまわしているウラガ。周りには丸腰で無防備な一般人がいるにも関わらず、巻き込むことを厭わぬ変身。狂気の行いに即座にこちらも突進しつつ変身で対応する。

 

 

「「「変身!!」」」

 

 

【 アンコントロールスイッチ! ブラックハザード! ヤベェーイ!! 】

 

【 ジャァァクドォラゴン!! 】

【 エターナルフェニックス!! 】

 

 

 変身シークエンスが完全に完了する前に、メタルビルドを店外へ壁をぶち抜き外へ叩き出すカリバーとファルシオン。建物に大穴を開けて店主には申し訳ないが、人命が優先だ。

 剣を構え、いざ開戦…と思った矢先に掌を向けるメタルビルド。何か言いたいことがある様子…

 

 

「まあ、少し待ち給え。今回はワタシから奪った力…ビルドとアギトの力を返してくれたら見逃してあげよう。2度目の奇跡は起こり得ないのだからね。」

 

「「…?」」

 

 

 ――何の話?

 

 全く心当たりが無いふたり…… 奴から力を奪った記憶なんて無いのだが…

 

 

 ただ穴から覗きこんでいたキャルだけは違う。

  

 

(それって……)

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 ―――良い、キャル? あの仮面ライダーの力がまだあそこに残っているはずだから、貴女に回収を任せるわ。くれぐれも誰かに…特にカリバーには絶対に見つからないようにね。

 

 

 

 

 少し時間を巻き戻す。

 

 キャルは覇瞳皇帝の言いつけの元、最初にメタルビルドと遭遇した林を訪れていた…。文字通りに草の根をわける捜索活動を行い、愛しの陛下が求める『仮面ライダーの力』を早朝からずっと続けているのだが……

 

 

「…と言われたものの、どんなものなのか皆目検討がつかないのよねぇ〜…。」

 

 

 生憎、彼女に仮面ライダーについての知識は皆無に均しく、そもそも自分が具体的に何を探せばいいのかわからない。でも何かしら持って帰らなければキツイお仕置きが待っているだろう…

 

 『はぁ…』と溜息をつきながら漁る藪の中… すると…

 

 

 

「ん…? これって…」

 

 

 何か落ちている…。拾い上げれば、ライドブックにフルボトル…それぞれ、ビルドとアギトで後者は確かメタルビルドが使っていたような。

 

 

(もしかして…)

 

 

 囚われていた際、意識は朦朧とした時にカリバーがメタルビルドに強烈な一撃を与えたのはうっすら覚えている。まさか、あの時に奴が落としたのか…?

 

 とにかく、これで陛下には怒られないで済むし、ついでにペコリーヌたちも始末してまえば一石二鳥なんて考えていたら…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(つまり、わたしはアイツにつけられてのを気がつかないでわざわざここに連れてきちゃったわけ!?)

 

 

 とんだ招き猫である。もしランドソル城に直行していたらどれだけの被害が出ていたことか…考えるだけでゾッとする。

 

 そんな青ざめる彼女のことに気がつかず、ペコリーヌは店の客たちを避難させにまわり、カリバーとファルシオンは少しでもメタルビルドを遠ざけるべく奮戦している…のだが…

 

 

「2度目の奇跡は無いと言ったはず…」

 

 

 メタルビルド、余裕を見せ提案した割にカリバーに圧されている。

 

 

「何にせよ、貴様の提案に乗る筋合いなど無い!」

 

 

 【 習得一閃! 】

 

 

 問答無用、一撃。

 

 迸る闇の斬撃が漆黒の鎧を削る。かなり強烈なダメージが入ったはず…地面に転がるメタルビルドに確信するも、カリバーは同時に妙な違和感を覚えてる。

 

 

(なんだ…。前に戦った時より弱くなっている? …いや、まるでやる気が無い?)

 

 

 初戦の時に比べれば、あまり攻撃らしい攻撃も無いのに加えて目ぼしい反撃すらない。そんな状態でありながら、口振りはまるで余裕を崩さない。

 妙だ…。力を取り返しにきたというのなら、もっと死物狂いで襲いかかりにきても良いものだが……

 

 

「…ユウキ、何か変だ。」

 

「構わん。コイツを捕らえて魔女のことを吐かせる。」

 

 

 違和感をファルシオンに伝えるも、無視。

 ビルドドライバーを取り上げるべく、わざとらしく転がるメタルビルドへ手を伸ばし……

 

 

「…!」

 

 

 その時、ギャン!と甲高い音を鳴らしファルシオンが自らに向けて投げられた何かを弾く。死角から投擲されたそれは物々しく弧を描いて地面に突き刺さり、正体を見たカリバーは絶句した。

 

 

(…サウザンドジャッカーだと!?)

 

 

 スピアーのような金色と黒の機械槍…まさしくそれは、『サウザンドジャッカー』。仮面ライダーゼロワンの世界において、主人公たちに立ちはだかった強敵たちが愛用していた武装である。勿論、プリコネの世界に存在する物じゃない…

 

 ……ということは

 

 

 

 

 

「―――いやあ、あんまり俺の連れを虐めないでくれないかね〜?」

 

 

 

 

 予感的中。サウザンドジャッカーを拾い上げる真っ黒なバイクスーツのサングラスをかけた男。カリバーと同い年くらいの外見だが、金髪に浅黒い肌…何よりニヤつく微笑みが醸し出す遊び人のような雰囲気が対象的だ。

 

 このタイミングで現れる新たな人物…様子を窺っていたヒルマは最悪の可能性が現実になったことを察する。

 

 

「…新しい侵略転生者? まずい……」

 

 

 恐らく、メタルビルドの仲間…能力は未知数だが、奴と同格の実力者の可能性が高い。

 

 そうか、奴はそれを待っていたのか!

 

 

 

 気がついた時にはもう遅い。男はドライバーを取り出す。

 

 

「ドクター、どうしたんすか? 救援信号が出てたからびっくりして飛んできたんすけど?」

 

 

【 エデンドライバー!! 】

 

 

【 LUCIFER 】

 

 

 血管が浮き出るようなユニットが特徴的なエデンドライバー…しかし、取り出し起動した『人間』のゼツメライズキーは楽園ではなく『悪魔』の名を呼ぶ。そして、男は白く発光するそれをエデンドライバーへ装填。

 

 

「変身。」

 

 

【 プログライズ アーク! 】

 

 

 同時に彼の背後から立ち上がる巨大な骸骨の上半身のライダモデル。妖怪に例えるならがしゃ髑髏といっても良いそれは呼び出した主の頭に貪るように齧り付く。周囲は度肝を抜かれるが、あくまでこれは変身シークエンスの一貫…

 

 

【 ――The creator who charges forward believing in paradise. 】

 

 

骸骨は粒子となって仮面ライダーとして再構成される。漆黒のボディに浮かぶ骨格や血管のような白いラインに憤怒を顔に浮かべるような髑髏のマスク。

 

 カリバーは知っている……原典の物語では、楽園の創造主の選択に絶望した果てにその力を奪った傲慢なる悪意の化身。

 

【 ―OVER THE EDEN.― 】 

 

 

「…仮面ライダールシファー!?」

 

 

 仮面ライダールシファー…ダークライダーの派生、悪意に囚われた者や身を委ねた存在が至る『アークライダー』の一種。仮面ライダーゼロワンの劇場版にて主人公たちに立ちはだかったラスボスであり、同作に登場した仮面ライダーエデンの強化型でもある。

 要は強い。恐らく、下手をしたらカリバー単体じゃ手も足も出ないくらいに。

 

 

「敵か。」

 

「友達になりにきたように見えるか?」

 

 

 カリバーが制止する間もなく、すぐに臨戦態勢に入ろうとしたファルシオン…だが、ルシファーが掌から白いエネルギー波を放ち吹っ飛ばざれてしまう。幸い、受け身はとれたものの狙いは彼をメタルビルドから引き離すことが目的だったらしい。ルシファーはカバーするようにメタルビルドの元に歩み寄る。

 

 

「らしくないですなぁ、アンタが遅れをとるような連中には見えないんですが…。」

 

「不測の事態でね…力を奴等に奪われた。私の力以外は全てくれてやる。後は好きにしろ。」

 

「好きにかぁ…?」

 

 

 悪意の視線はカリバー……いや後ろにいるペコリーヌたちに向けられる。仮面の下の表情は舌舐めずりをする野獣のそれ、そんなことなど付き合いがあるメタルビルドしか知る由が無いのだが…。相手はさしたる脅威でもなさそうで分け前の大半が自分が貰って良いとなれば首を横に振る理由などない。

 

 

「良いぜ、助けてやるよドクター。さあ、お楽しみの時間だ。相手してやるよ、ザコども。」

 

 

「「…!」」

 

 

 ――来る!

 

 

 身構えるカリバーとファルシオン…その隣にペコリーヌとコッコロ…キャルも並ぶ。

 

 

「私たちも戦います!」

 

「主様、カリバー様、支援はお任せ下さい。」

 

「乗りかかった船よ!あんなの放置できるもんですか!」

 

 

 三姫結集。

 

 物語の主軸を担うメインヒロインが戦場に揃うとなれば流石に壮観であるが、残念ながらカリバーに感動している暇は無い。今は未知数の脅威を退けることが先決…と気持ちを引き締めなおそうとしている矢先、何かが頭上から飛んでくる。反射的にキャッチをするとそれは大きめな白いライドブック。どうやら、ヒルマが投げ渡したようだ。

 

 

「カリバー、ソイツにはその本が有効なはずよ!」

 

(このライドブック…そうか、これなら奴の能力を封印出来るかもしれない!)

 

 

 迫る新たな敵…。託された力は勝機への糸口になるのか。

 

 

 

 

 

 

 ……そんな一部始終を、風来坊は不自然にまで落ち着いて観察していた。

 

 

 

 

 




 

★転生者ルシ(仮面ライダールシファー)

 新たなる敵対転生者。メタルビルドこと、転生者ウラガとはそれなりの付き合いがあり多くの転生者を襲い並行世界で被害を出してきた危険人物。気怠げで何処か抜けた調子で話すが、性格は残忍で女好き。元々は普通の転生者でチームを組んでいたが、先述の性格が災いして追放…そこから本格的に悪の道へ走り紆余曲折を経て仮面ライダールシファーとなった。




 


 聖剣の考察とか書こうと思ったけど眠い…

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