プリンセスコネクト!Re:転生カリバーさん、悪夢に泣く(仮) 作:ジュンチェ
仮面ライダールシファー…
悪魔の名を冠するだけに申し分ないスペックを持つ。
しかし、攻略の糸口が無いわけではない。
「良いか、奴の操るナノマシンと再生能力に怯むな!波状攻撃で隙を突いてベルトを破壊する!」
カリバーは知っている。ルシファーは原型であるエデンと同様ナノマシンを操る能力と上位互換のスペックを持っているが、原作では『初見殺し』の再生能力や諸々の優位性を悉く潰されてしまい、登場から物語クライマックスまでほぼワンサイドゲームで倒されたことを。
分かっているなら戦いようはある。原作と同じ対処でバックアップのサーバーを無力化するのは難しいが、こちらには聖剣とライドブックによる戦術に加えて5対1と数も多い。仮面ライダー2人にペコリーヌによる前衛とコッコロとキャルによるバフと火力の後方支援…あと駄目押しとファルシオン(ユウキ)のプリンセスナイトの力によるブーストも加えれば隙など無い。火力で圧しきり、ベルトを破壊すれば決着がつく…
…問題があるとしたら
「…カリバーさん、『なのましん』ってなんですか?」
…そもそも、ナノマシンなんて知る由もない少女たち。
まあ一応建前として、このプリコネの物語は異世界ファンタジーみたいなものなので当たり前なのだろうが、ゆっくり説明なんてしている暇なんて無い。悪いが『見ればわかる。』とはぐらかしてファルシオンと共にルシファーへ突っ込んでいくカリバー。
「さあ、来いザコども。料理してやるよ。」
ルシファーも臨戦態勢へ。遠慮は不要、ファルシオンと二手に分かれて左右から斬りつける。サウザンドジャッカーもゼロワン系のライダーでなければ、ジャックライズによるカウンターもありえないので接近もさして恐れることなど不要…寧ろ、内蔵されているであろうライダモデルのデータを起動される前に封じることを優先したい。
「どうした、そんなもんか!」
しかし、ライダー2人が一気にかかっても怯まずサウザンドジャッカーを振り回し、圧し返すルシファー…曲がりなりにもラスボスを務めたライダーは伊達ではない。ただ、前衛はもうひとりいる。
「プリンセス・ストライク!!」
「ぐっ!?」
追い打ちのペコリーヌによるプリンセス・ストライク。大型の魔物すら時に屠る気高きティアラを描く一撃は悪魔の胸部装甲を穿ち、大きく後退りさせた。今のは確実にダメージが入っただろう。
「ハハッ 調子に乗るなよ?」
ならばと、ルシファーはナノマシンの黒い潮流を頭上に集中させ骸骨を模した砲弾を複数作りあげる。バスケットボールほどの大きさの一発一発…剣で受け流せるような威力と数ではないだろう…だが、形成する最中に何処からともなく光弾が飛来して破壊。飛んできた方向に目を向けるとコッコロのバフ魔法を受け強化されたキャルの姿が…。
――――面白くない。
一方的な展開になりつつある戦いに少しずつ苛立ちを覚えはじめるルシファー。後方をどうにかすべく、次はサウザンドジャッカーのレバーに手をかけ……
「させるか!」
【 ジャアクな豆の木!! 】
「!」
それも計算の内。カリバーがライドブックを月闇に読み込ませ、豆の蔓を放つ。蛇のように這い回り素早くサウザンドジャッカーに絡みつきこれを封印…これで、厄介なジャックライズやプログライズキーを用いたハックライズも使えない。
「小賢しい真似しやがって…!」
【 パラダイス・インパクト!! 】
なら、もう残る切り札はエデンドライバーからの必殺技のみ…足元に拡がっていくドス黒いナノマシンの海が避けられぬ死を告げる。ペコリーヌたちは水ともつかぬ未知の物体に動揺するが、カリバーだけはこの瞬間を待っていた!今こそ、ヒルマに渡された『奥の手』を使う時…!
【 ジャアク氷獣戦記!! 】
「チェック・メイトだ!」
月闇に翳したのは大きめの白いライドブック…凍てつく獅子を描かれたそれは『タテガミ氷獣戦記』。絶対零度の冷気を操ることを可能にするこの本は月闇に凍り付く禍々しい吐息を与え、一振りすればナノマシンの黒い海がルシファーすらも巻き込みカチコチに凍ってしまう。
これが、カリバーの狙い…相手が物理的に透過してしまうのなら、固めるから凍らせてしまえば良い。RPGゲームではまあまあお約束な攻略法であるが、ナノマシンの塊であるルシファーにも有効なようだ。
…あとは
「ぐああぁ……おのれぇ…」
「トドメだ!」
【 習得三閃!! 】
粉砕あるのみ。斬!斬!斬ッ!と凍てつき悶える悪魔を斬り刻み、決着。
氷の破片が宙を舞い、鎧に亀裂が走ったルシファーは地に伏した。……戦いはこちらの一方的な勝利で終わった。
「やった! 勝った!勝った!ざまあみろっての!」
「主様、カリバー様も流石でございます。」
喜ぶキャルとコッコロ……だが残念なことに、もうひとり残っている。
ファルシオンとペコリーヌが既に切っ先を突きつけているが…
「さあ、次はお前だ。」
「大人しく武装を解いてください。」
…メタルビルド。ルシファーという味方がいなくなったことで完全に孤立した侵略者。戦いに参加せず、助太刀の『す』の字の素振りすら見せず傍観していたこの男は仮にも自分を助けに来た助っ人に対して随分と冷たい。元から期待していなかったのか、或いは呆気なさ過ぎて呆れているのか……
何にせよ、多対一…この戦力で負けるはずもないし、いずれ騒ぎを聞きつけた王宮騎士団も来るだろう。勝機が失われる道理など………
「――転生者同士の戦いにおいて………」
「「…?」」
突然、脈絡なく口を開くメタルビルド。
その声は恐れも怒りもなく淡々と……口を開く。
「原作知識を基に建てる戦術は時に逆手に取られてしまう。初心者がやりがちなミスでよくある死因だ。」
なにを…何を言っているのだ?確かにふたりは背中に悍ましく冷たい震えが走るのを感じた。恐らくメタルビルドはこちら側の何かしらの見落としを指摘しているが…それが何なのかはわからない。いや、理解しようがなかった。
ことの重大さを推し量れたとしても、この場においてはカリバーとヒルマだけだっただろう。まあ、そのカリバーは…
【 JACKING BREAK!! 】
――ゴッ!!
ふたりの後ろで車に撥ねられた野良猫のように宙を舞っていたのだが…
★ ★ ★ ★ ★ ★
――何が…起こった…?
地に叩きつけられたカリバーは状況を呑み込めずにいた…。ルシファーが倒れ動かなくなったのことを確認してメタルビルドの方向をむいた時…不意に凄まじい衝撃に背後から襲われこの有様。悶えながらなんとか立ち上がろうとする最中、目の前に立っていたのは…
「残念だったなぁ? 『凍結』なんてなとっくに対策してあるんだよ。」
「…馬鹿…な…っ!?」
たった今、戦闘不能にしたはずのルシファー…。五体満足で戦いで受けたダメージの痕跡も何処にも無い。おまけに封じたはずのサウザンドジャッカーも綺麗な状態で主の掌で弄ばれているではないか。
おかしい。確かに、ダメージは入っていたのは確認していた…そして、回復を阻害する凍結も効果が出ていない。その種明かしは嘲笑されながら行われる。
「不思議かそんなに? 当たり前だろ、弱点は克服なり対策なりするもんだ。奪い合い殺し合いの転生者の戦いなら尚の事。サウザンドジャッカーだって『予備』は用意しておくし、『生身の肉体』に仕込んだ一瞬で硬化するナノマシンと外側の自在に操れるナノマシンで二重の鎧。
…そして、『あらゆる転生者どもから奪った力』!火力も抜かりはない!!」
ルシファーがサウザンドジャッカーを掲げると浮かび上がるいくつかのライダークレスト。その中には『仮面ライダーアクセル』を象徴するスピードメーターをイメージした『A』のライダモデルも存在していた。確か、アクセルは加速の戦士…何より凍結や冷気といった能力には滅法強い。成程、ルシファーは予め用意していたこの力で凍結攻撃を乗りきったのか…
(サウザンドジャッカー2本とか、そんなのアリか…?)
「そして、お前の力もこの中に並ぶ!」
「…!」
最早、唖然とするしかないカリバー…そんな彼に非情な切っ先が鎧の亀裂に捩じ込まれる。腹に大穴を開けたサウザンドジャッカー…そのレバーが注射針のピストンのように引っ張られていくと激しい痛みと全身から一気に血を抜かれるような感覚に襲われる。本来なら、ゼロワン系列のライダー同士でしか起きないはずの現象をカリバーを襲っていた!
【 ジャックライズ!! 】
「ぐ…おおおぉォ!?!?」
「これが俺の転生特典能力(チート)だ。…終わりだ!」
数秒後、充分にエネルギーを吸い上げるとルシファーはカリバーを蹴り飛ばしてサウザンドジャッカーを引き抜き、トリガーを押してレバーを再装填。闇の力を蓄えた愛武器に不敵な笑みを浮かべると勢いよく振り抜く!
【 JACKING BREAK!! 】
「ハハハハッ!!!」
放たれるは模造された暗黒の邪竜。飢えた大蛇のように這い回り、一瞬でカリバーとファルシオンやペコリーヌたちをもろとも弾きとばして大爆発を起こす。
「「ぐあああああァァァ!?」」
「「「キャアァアァァァ!?!?」」」
響き渡る悲鳴。仮面ライダーたちは耐えきれず変身解除し、ペコリーヌとコッコロは意識を失い、辛うじてキャルだけが地面に這いつくばり悶えている。戦いは簡単にひっくり返された…もうこの場に抗う余力がある者は居ない。
卑劣な悪魔は折れた勇者たちの頭上でまた嘲笑う。死を前にする獲物を待つコンドルやハイエナのように…。ただ彼等は悠長に待ってくれたりはしない。
「そら、出しやがれ!」
「ぶっ!?」
虫の息のカリバーを更に容赦なく蹴り飛ばすルシファー。すると、ライドブックがその拍子に懐から零れ落ち…そのうちのファイズ人類史を拾いあげる。
「ファイズか…?――確か、ドクターのビルドとアギトは無えなあ。そっちはどうだドクター?」
「こちらも空振りだ。私の奪われた力は無い。」
メタルビルドはユウキの懐を物色するもお目当ての物は見つからず…。それもそのはず、ライドブックとフルボトルはキャルが持っているのだから。無論、彼女本人以外が知る由もないが…
「さて、ど〜こだ奪った力はよぉ?」
「うぐ!?」
ルシファーは既にぼろ雑巾のカリバーの首根っこを掴み上げる…。変身解除された生身の肉体に仮面ライダーの握力は過負荷なんて生易しいものじゃない。首の筋繊維が千切れ血管が破けそうな圧力に加えて脳にまわる酸素が一気に極貧状態へ陥り、辛うじて保つ意識と思考もチカチカと揺れるように明滅する…。
死の瀬戸際、悪魔の質問。唯一、まだ動けるキャルはその恐ろしい光景をただ震えて見ていることしか出来ない…恐怖が頭も四肢も支配している始末。口は言葉にならない感情をガタガタと垂れ流すのみ…
それでも、とカリバーは最期の力を振り絞った。
「王宮騎士団に行くんだ、キャルちゃん!! 団長たちなら…!!」
「質問に答えろよザコ。」
――ゴキッ
言葉は最後まで綴られない。
あまりにも呆気なく…
彼の首は、簡単へし折られた。
「…あっ いっけね。」
命が奪われた目を覆いたくなる現実に
ルシファーの気抜けするような言葉が…キャルの耳にこびり付く。
カリバーさん、また死ぬ。