プリンセスコネクト!Re:転生カリバーさん、悪夢に泣く(仮) 作:ジュンチェ
今年もよろしくお願いします。
――――12時になりました。お昼のニュースです。
昨日、XX県γ市で首の無い男性の死体が発見された事件で、現場に残された免許証から同市在住の『■■■■■』さんと身元が判明しました。周囲に目撃者はなく、警察は殺人事件として捜査を…
★ ★ ★ ★
……暗い …暗い …暗い
………僕はどうなったんだ?
頭がくらくらする。死んでなんかいられない… 守らなくては…
…守らなく……て…
「――ちょ…」
…誰かの声が? キャルちゃ…
「――なさいよ… 起きなさいってば!!――リンタロー!」
ベシッ!!
「あいた…!? …っ は?あれ?」
痛い。叩かれた衝撃で微睡みから一気に覚醒する。目の前には見慣れた猫耳が仁王立ちして立っている……ああ、キャルちゃんか。…え、大丈夫なのか?メタルビルドは?ルシファーは?
「なに寝ぼけてんの? 朝練で居眠りするくらいなら、ベッドでしっかり寝なさいよ。それと朝ごはん出来てるからはやく来なさい。」
「…? …??? え?」
「…本当にあんた大丈夫? どっか、頭うった?」
状況が呑み込めない。キャルちゃんは僕を『リンタロー』と呼ぶし、どういうわけか森の中で、しかも半裸で座禅を組んで膝の上には水の聖剣が青く清らかに輝いている…。
そうだ、僕は僕はルシファーに首を折られ……
「……折れて…ない…?」
慌て触った首は骨折どころか逞しい筋肉が柱のように支えていた…。昔の少年誌に流行った主人公並みのマッシブさだ…鍛錬の積み重ねと豊かな栄養があってこそ育つそれは一度なら男子の憧れになるだろう。素晴らしい…。
「顔洗ってきたら? それで駄目なら病院よ。」
病院か……。ランドソルの病院は当たりハズレが激しいので勘弁願おう。取り敢えず、近くの小川で顔を洗おうか。取り敢えず、流れの静かな河辺で……
「………お前は誰だ…?」
なんということでしょう、水たまりを覗きこんだら見慣れてきた不健康な銀髪顔ではなく超健康体の黒髪爽やかなイケメンがいるではないですか。…いや、どういうことなの?もしかして、また転生したのか?――そんな馬鹿な。
とにかく顔を洗って、剣を担ぐとギルドハウスに向かおうと…
「服…!」
「はい?」
「服着なさいよ!! そんな裸で歩きまわってるところユウキが真似したらどうすんのよ!?」
あー、何か身体が自然に動いていた。女子の園にこの紳士の肉体美は些か不釣り合いか……でも、騎士クンがこの格好を流石に真似しないだろ。一応、アイツ転生者らしいし、赤ちゃんだった頃の騎士クンだったらともかく…
「―――おーなーかーすーいーたー…」
なんということでしょう。(2回目)
ギルドハウスの食卓にはユウキが…ちゃんと原作赤ちゃんがそこにいたのです……。いや、待ち給えよ。君、ファルシオンは?虚無は?転生者の人格は何処に行ったの??
「…〜? リンタローどうしたの??」
「あ、いや…」
これ演技とかじゃねえ、マジだこれ。というか、僕の呼び方がカリバーからリンタローになっているのはどういこと?台所にはペコリーヌとコッコロちゃんが楽しく談笑しながら朝飯の用意に取り掛かってるし、いつの間に美食殿結成したの…?もう色々とわけが解んないんだが……
「キャルちゃん、リンタローさんの様子がおかしいのですがどうかしたんです?」
「さあ? さっきからずっとこんな調子なのよ。身体鍛え過ぎて筋肉に頭まで侵食されておかしくなったんじゃない?」
「た、鍛錬を馬鹿にしないで頂きたい…! …?」
あ、あれ…僕こんなキャラだったっけ?何かしっくりとしない…
僕は… 僕は…? リンタロー…『仮面ライダーブレイズの転生者』で… 鍛錬の最中にペコリーヌに出逢って、それからコッコロちゃんがはぐれた騎士クンをさがしていて……
(……こんなことあったか?)
なんでだろう…覚えがない思い出が浮かんでくるけど、違和感はむしろ薄れてくる。まるで自分が再構築されているような感覚…『仮面ライダーカ■b■』のほうが夢でこっちが現実のような気さえしてきた…。
――好きな方を選べばいい。
痛くて苦しい戦いより、暖かくて優しい日常を…。
ペコリーヌが料理を持ってくる。香ばしい匂いが鼻孔を擽り食欲を刺激し、胃袋がグゥ~と文句を垂らす。
「何事もまず食事から! ご飯にしましょう☆」
テーブルに並べられる朝食。ペコリーヌの分だけは山盛りで、キャルちゃんはそれに呆れ散らかし、コッコロは食べ方がおぼつかない騎士クンの世話をやいていて…
ああ、そうだ。僕は転生したと分かった時からこの輪の中に入ることを夢見ていたんだ…。今はここが、僕の帰る場所…
「――――いただきま…」
【とっとと、起きろ。この寝坊助。】
★ ★ ★ ★ ★
「! ……うぐっ!?」
覚醒。首に酷い激痛…あと何故か動かない。あ、これギプスで固定されてるのか…誰か治療してくれたのか?ベッドの上に仕切りのカーテンに見知らぬ天井に消毒液特有のツンとした臭い…ああ、病院かここ。
…ん?…壁とかそこら中に血痕とおぼしきものが?
(なんか、見覚えが…)
「どうやら、目が覚めたようだなァ?」
あ…師匠。…と、あと師匠と同年代とおぼしき眼帯を左眼につけた女性。あの紫髪は何処かで見覚えがあるぞ……えっと、確か…
「…トワイライトキャラバンの?」
「あら、私のこと知ってるのかしら? トワイライトキャラバンの『ミツキ』。この診療所のドクターをしてるの。」
そうそう、トワイライトキャラバンのミツキ。アニメだと病に侵された騎士クンを治療したものの、美食殿と一悶着起こしてしまった女医師。あれ…確かクリス師匠と付き合いあったっけ?お互い年長組ヒロインではあるが、特別接点があった記憶が無いんだが…
…ってことはここトワイライトキャラバンの診療所か。
「それにしても、本当に息を吹き返すなんて。首折れてたのよ
…」
「まあ、コイツはそこそこ『特別』だからな。くれぐれも、他言は無用だ。」
師匠がササッと小切手にサインしてミツキに押し付ける。あ、そういう関係性…?
ふ〜ん… いや、待った。
「他の皆…痛ッ!?!?」
「落ち着け、一緒にいた連中はお前より傷は浅い。手当てを受けて回復している。」
そうか…取り敢えず安心だ。メタルビルドとルシファー相手に死人が(一応)出なかっただけ良しとしよう。ふぅ…と安堵の溜息を洩らしていると、眠たくなってきた。もう少し寝ようか…
「待て。悪いが、まだ貴様には話がある。」
―――はい?
★ ★ ★ ★ ★
数日後… ミツキ先生から手厚い治療を受け退院した僕。
まだ首のギプスは外されないが、仕方あるまい。取り敢えず、職務に復帰して事務をメインにあとはパトロールの一日を過ごしている。今もデスクで書類作成をしている最中だ。タイプライターで仕事をしながら、僕は物思いに耽る…
(僕が死んでいた間……師匠の話によれば、紅い騎士が現れた…。ソイツがメタルビルドとルシファーを倒して姿を消した…)
クリス師匠が当事者から話を聞いた限りを僕に教えてくれて、色々と死んでいた時に何があったかを知った。あの場にいた人間はトワイライトキャラバンにクリス師匠が放り込んでくれたおかげで事なきを得た……。意図的かペコリーヌらユウキをそのまま確保はしなかったのが幸いだ。ただ、ヒルマだけは何処にもおらず、例の転生者の案内人がそうそう簡単にくたばりはしないだろうが…いずれ、確認をとらなくては。
そして、例の紅い騎士は…
(おそらく、仮面ライダーセイバー……転生者だろう。)
侵略転生者をものともせず、蹴散らしたというカリバーに似た穂のを操る存在ともなればもうセイバーしかいない。加えてエンカウントする仮面ライダーは原則、転生者なのでその例に洩れないだろう。彼は王宮騎士団が駆けつけてくる前に去ってしまったらしいが、何故に味方をしてくれたのか?転生者同士の争いにおいて漁夫の利を狙ったのなら、こちらが見逃された理由が説明がつかない…。
(まさか、純粋に善意で助けた……?)
ありえる…のか?
今まであった3人の転生者と照らし合わせるとにわかに信じられないが…
「わからんなぁ…。気晴らしにパトロールでも行くか。」
ま、ぐるぐると答えにいたらない疑問を考えても仕方ないだろう。溜息をつきながら立ち上がり隣の席の同僚に挨拶する。怪我をおして出勤している上の気遣いか厄介な副団長の弟子という肩書きのせいかはさておき、特に小言すらなく送りだしてくれた。
…さて、問題はパトロールと言っても独りでウロウロは出来ない。副団長のように単独行動がそれなりに認められてはいるが、まだまだ王宮騎士団として日が浅い僕が好き放題やれば流石に他の団員からも印象はよくない。誰か一緒に行ってくれる人が……
「ねえ、見て。カリバーよ…。よく生きてるわね…」
「や、やべ。退散、退散…変に関わって副団長に絡まれたくねえ。」
「あんなのについていったら命いくつあっても足りねえぞ…」
――すっごい、避けられてる…。
駄目そうだな。仕方ない、一応は陛下に認められてる身だし単独パトロールにするか…… そう思って城門まで向かうと…
「…? 団長にトモ… あと……」
――キョウカちゃん?
ミミちゃんとミソギちゃんも一緒だ。何か話しこんでいるみたいだけど…? あ、トモがこっちに気がついたな。
「あ、カリバー…そのすまない。そのちょっと手を貸してくれないか…」
なに、どうした? お、キョウカちゃんがグイグイ前に出てきたぞ…
「カリバーさん、お願いがあるんです!私たちリトルリリカルを……
王宮騎士団に入れてください!!!」
「…」
…は?(困惑)