プリンセスコネクト!Re:転生カリバーさん、悪夢に泣く(仮) 作:ジュンチェ
最新話どぞどぞ…
「王宮騎士団に入りたい…?」
やめろ、やめろ、怪我人にキツい冗談だぞキョウカちゃん。
ミソギちゃんにミミちゃんも何かあんまり乗り気じゃなさそうだし、団長もなんとか言ってくださいよ〜ぉ。こっちにはもう手がかかるヒトリリリカル(27歳)がいるんだかr…
ドスッ(何処からともなく飛んできた大剣が地面に刺さる音)
「 」
「――バカ弟子〜 今、私の悪口を言わなかったか〜〜??」
いいえ、滅相もございません。 ……ええい、地獄耳め。
団長、可哀想だがこの娘たちには取り敢えず帰ってもらおう。師匠が来たら面倒くさい。団長もなんとかして欲しい…
「私もさっきから窘めているのだが、どうも聞き届けてくれなくてね。なんでも、カリバー…君の戦う姿に感銘を受けたとかどうとか。」
えぇ…(困惑) これは押し付けられる流れじゃないか。…しかし、団長とて暇じゃない…この城門の番人として役務が終わった後は鬼畜の山積みのデスクワークが待っている。彼女も子供の相手はまんざらでもない様子だが、後々の皺寄せを考えたら子守を優先させるのは負担が大きい。一方で僕は首が折れてること以外はただの暇人…
「頼む、頼まれてくれないか? 安全な商店街辺りを散策するくらいで満足するだろう。」
「…」
ううむ、出来ればユウキやペコリーヌたちの安否もなんとか確認したかったんだが…
「カリバーさん、お願いします! わたしたち、カリバーさんのように強くなってランドソルを守りたいんです!」
うおっ!? やけに食いつくなキョウカちゃん…
「キョウカちゃん、やめようよ…カリバーさんだってケガしてるみたいだよ?」
「そうだよ、また今度にしようよ?」
ミミちゃんとミソギちゃんは乗り気じゃないみたいだな。う〜ん、参ったなぁ。追い返すのは別に難しくはないが、この勢いのキョウカちゃんを大人の目が離れてしまうのは如何なものか…。どうやら、僕にも責任がある上に上司からの願いがある手前、あしらうわけにはいかないか…うん。
「…分かった。ならば、パトロールに付き合ってもらおう。団長、トモちゃんを借りるぞ。」
「! やったぁ! ありがとうございます、カリバーさん!!」
「えっ!?私も…!? だ、団長!?」
あとトモちゃんも同行してもらおう。僕だけだと、幼子3人は骨が折れるからな……もう折れてるけど。ほら、団長も頷いてOKサインを出した。気まずいだろうけど、マツリちゃんは別件で居ないからしっかり付き合ってもらうぞ…?
…あー、何か滅茶苦茶、渋い顔してるよトモちゃん。
★ ★ ★ ★ ★
「それじゃ、見回りいってきます。」
「うん、頼んだよカリバー、トモちゃん。それと、小さい団員候補さんたち。」
ジュンに見送られ、カリバーたちは城門を後にする…。
それから、一呼吸するとジュンは彼等に悟られないように兜を外す。アイマスクでまだ素顔は隠れたままだが、これで良い。彼はまだ自分の『甲冑の下』なんて知る由もないのだから。
「さて…私の目からも直接、見極めさせてもらうぞカリバー…。」
彼が来て早、数ヶ月。色々あったが、騎士団を束ねる長として彼の本質を見極めるべき時は必要だった。共にランドソルの平和のために剣をとる者か、はたまた厄災をもたらす存在か…もしくは『道化』に過ぎないのか。
このタイミングはまさに頃合いだろう。
★ ★ ★ ★ ★
「キャル、これをカリバーに渡しなさい。」
「へ、陛下? そ、それは……」
キャルは困惑していた…。玉座の間に呼び出されて何事かとすっ飛んできたら陛下から『新しいおつかい』。それは、彼女が手に持つふたつのライドブックをカリバーに渡すことらしいが…1冊はメタルビルドから殺される寸前で持ち帰ることが出来た『パンドラビットビルド』に後は知らない『一本角の騎士』が描かれたライドブック。後者はともかく、散々な目にあってやっとの思いで献上したのにものの数日もしないうちに手放すなんて…忠誠心は無論、揺るぎはしないが思うところがないかと言えば別の話だ。
「…へ、陛下。お、お言葉ですが…その本はもう必要が無くなったのでしょうか…。」
「そうね…。私が持っていてももうさして役に立たなくなったのよ。そのほうが有効活用が出来る。アレにももっともっと働いてもらわないと……」
…なんで。
陛下には自分がいる。どうして、あんな何処の馬の骨と知れない輩に目をかけるの? 自分のほうがずっと側にいた。自分のほうがあなたに尽くしてきた。期待なら自分が応えられる……それなのに…
「…(…どうして?)」
「―――キャル。」
「!」
しまった!心が離れていた間にキャルの目の前に陛下が立つ。そびえる巨塔のような威圧感…見下す視線は『お仕置き』の前ぶれ。神にも等しい主の声を僅かでも蔑ろにした従者に罰を下すのだ…。謝罪も許しを乞うても無意味、それは文字通りに身に刻まれている。
ヌッと伸ばされた冷たい手に絶望と恐怖でキャルは萎縮し……
「お願い、わかって頂戴。」
「へ?」
否、その手は予想と反してポンと優しくキャルの頭に置かれる。まるで、幼子をあやす母親の掌のように。
「今、王宮騎士団をこれ以上は弱らせるわけにはいかないの。そして、カリバーが強くなることはランドソルやなによりも大事なアナタを守ることにも繋がるわ。信じてくれるわね?」
「は、…は、はい…!」
夢にも思わない優しい声に困惑するあまり、思わず挙動不審に飛び出す返事。何が起きてるのかまだ脳内は整理できないどころか処理落ち寸前なのだがなんとか思考を保ちきる。崇拝するお方である陛下だが、自分が無礼を働いてもなおこんなに穏やかでいるなんてあまりにも珍しいし、撫でられたのもかなり久しい。
今日は逆に不気味で恐ろしいくらい寛大だ。キャルとして嬉しい限りだがいつコロコロと機嫌が変わるとしれないのもまた事実。
「す、すぐに届けてきます陛下!」
「気をつけていってらっしゃい。私のかわいいキャル。」
…幸せは冷めないうちに。弾むような足取りでキャルはその場を後にする。きっといつか以来の幸せな時間だったろう。――――例え、それが偽物だったとしても。
「ふぅ…」
寂しげに溜息をつく覇瞳皇帝。すると、輪郭が布のように解け中かは脱皮するように彼女は身体は『別人』へと変化する…いや、正しくは元に戻ったと言うべきか。
「こうでもしなきゃ、睨まれておしまいだものね。」
蒼い瞳に灰がかった金髪…。服装もランドソルのものとは異なる異邦のもので…纏う藍色のローブはタイムジャッカーの意匠を彷彿とさせる美しい女性。
一方、彼女から剥がれた覇瞳皇帝の形をした皮は黒く脱ぎ捨てられた下着のようにクシャクシャになりながらまだ蠢いている。これはプリコネのアニメ版の時間軸で猛威を振るった『シャドウ』という存在である。結局、明確な正体は複数シーズンを経ても語られることはなかったが、この世界においても存在自体はしてはいるようだ。
本来、まともに触れようものなら『ロスト』…すなわち、世界や人々の記憶から殆ど『無かったこと』にされるほど危険な存在だが彼女にとってはこの程度なら指先一つで使い魔や魔導具の真似事をさせることすら容易い。
「さ、陛下。キャルちゃんは行きましたよ。」
女性が呼びかけると、玉座が動き…その下には地下通路の入口が出現して中から覇瞳皇帝が現れる。カラドボルグを引きずり、その姿は国の統治者というよりは戦場帰りの兵士のようにボロボロな有様。こんな姿を万一、キャルが見ていたらパニックになっていただろう。
「ハミル…少し、甘すぎじゃないかしら。見てるこっちが悪寒したのだけれども。」
「私は陛下がうまく出来ないことをやってさしあげただけのつもりなのですが?」
「…タイムジャッカーとやらは、随分と御節介なのね。」
覇瞳皇帝は彼女を『ハミル』…そして、タイムジャッカーと呼んだ。それに対し、彼女は顔をしかめると『ネオ・タイムジャッカーなんですけど…一応。』と小さく修正を入れつつ、話を進めることにした。
「首尾はどうですか陛下?」
「ええ、新しい力の『濃縮』は進んでいるわ。…これが前の時間軸から出来ていればエリスだって倒せたでしょう。」
計画は順調に進んでいる…ふむ、喜ばしいことだ。
覇瞳皇帝とカリバー…この2人が全てを打ち砕くカギになる…そのためには、両者共に成長してもらわなくてはならないのだから。
「ところで、予定外の『転生者』が現れたようだけどそれはどうするつもりなのかしら?」
「…」
嫌な質問で返してくる。まあ、予想はしていた…
平然とハミルは予め用意していた答を口にする。
「メタルビルドはともかく、ルシファーとセイバーは想定外でした。メタルビルドとルシファーは弱体化しつつも共に逃走中、セイバーに関してはこちらに危害を与える行動をとる可能性はかなり低いかと。」
「キャルに手をあげた2人はカリバーにいずれ始末させるわ。ランドソルを土足で踏み荒らした罪をその血肉を贄として償ってもらいましょう。問題は聖剣を持つセイバー…」
「そちらは私にお任せを。アレは味方になるかもしれません。」
イレギュラーは多い。だが、メインシナリオの修正はまだ可能。元よりアドリブは多くなるのは見越している…だから、利用できるものは利用してより確実な道を探っていく。セイバーはそのための一助になるかもしれない。
「そう。なら、アナタに任せるわ。ただ……次にキャルが死にかけでもしたら…
―――わかっているでしょうね?」
「…」
圧。
フン、魔王に相応しいドス黒さだが所詮はハリボテ。『本物』の自分には敵いはしない… されど、ここで事を荒立てたところで何の利益も無いのも事実。
「肝に命じておきますよ。キャルちゃんたちは必ず守り抜きます。」
守る。おべっかでも戯言でもなく本気の想いで応えた。
そう、お互いに目指すのは『本物のハッピーエンド』なのだから。
ハミルって誰?
物語の序盤でスウォルツと話していたタイムジャッカーの女性。ネオ・タイムジャッカーと呼ばれている派閥に所属しており、覇瞳皇帝の相談役としてランドソルに潜伏している。プリンセスナイトに近い扱いを受けているが、それ故にキャルから滅茶苦茶嫌われているし王宮騎士団も何処の馬の骨と不信感を抱かれている様子。ランドソルの転生者やアナザーライダーに絡む事件に何かしら関与しているようだが…?