プリンセスコネクト!Re:転生カリバーさん、悪夢に泣く(仮) 作:ジュンチェ
……引き受けるんじゃなかった。
子供っていうのはパワーの強い上にやんちゃな大型犬みたいなもので、無遠慮に大人を引きずりまわす。僕も(原作知識だと)おとなしめだったキョウカちゃんとタカをくくっていたが、舐めてたよ本当に。無尽蔵の体力、底なし遠慮なしの好奇心、単純なランドソルの商店街の散策であろうともほれ大冒険に早変わり。
「カリバー…大丈夫?」
…大丈夫に見えるかいトモちゃん?
お年寄りの道案内や御婦人の荷物持ちならまだ良いとして、マジでゴロツキの群れとか闇のドMが働いてそうなお店に突撃したりとかはやめてもらえないかなあキョウカちゃん!? いやあ、子供の世話って大変。全国のトーチャンカーチャンお疲れさまです。僕は干からびてもう駄目だ。
「もうちょいしたら、休ませてほしい。」
「わかった。キョウカちゃんたち、ちょっと良い?」
トモちゃんがいってくれた…ありがたい。この隙にベンチに座り一息。あ〜、首のが痛い。……ん?
「…」
何か物影からアイマスクみてえな眼帯でこっちの様子を窺ってる妙な軽装の女騎士がいますね……どうみても団長じゃないか。え、あんた門番の仕事はどうしたんだ?それに尾行するにしたってあまりに雑…あ、そうか、僕に素顔はバレてないと思ってるのか。残念ながら、原作知識があるから無意味なんだなこれが。
概ね、僕の観察というところだろう。王宮騎士団に入って月日は少し経ちはしたが、ある意味の特別待遇かつ怪しいこの上ない僕は組織の一員として良好な関係にあるとは言いづらい。恐らくは今回の動きで信頼に足るから判断するつもりか…。
「カリバーさん、大丈夫ですか?」
「…ミミちゃん?」
おや、心配させてしまったか。ミミがこちらを覗きこんできてる…
「ごめんなさい、怪我をしてるのに。」
「平気さ。これくらいどうということはない。(首骨折)」
「やっぱり、止めたほうがよかったかな。元々は他のギルドをリトルリリカルの活動の参考にしようって話だったのに、キョウカちゃんが『カリバーさんのいる王宮騎士団を参考にしよう!』って聞かなくて…」
んん? 王宮騎士団に云々かんぬんはリトルリリカル3人の総意じゃなくてキョウカちゃんが無理くり推してきたのか?いくら僕が助けたことがあるとはいえ、そんなに影響される?…まあ、幼子なんてそんなものか。
「やっぱり、止めよう。カリバーさんにも迷惑がかかるし…」
おやおや、落ち込んでるな。そんなに気に病むことじゃないぞ……頭をナデナデしてあげよう。
「わ!? か、カリバーさん!?」
「お、嫌だったか?」
「い、いえ…。えへへ…」
顔を赤くして照れている…カワイイじゃないか。僕はロリコンじゃないけどこういうの転生者冥利に尽きるって…… うわっ、キョウカちゃんがすんごい剣幕でこっちを睨んでる!? 違うって、ロリコンとかへんたいふしんしゃとかそういうのじゃないぞ! 断じて…!
「あっ ご、ごめんなさい! カリバーさんは休んでてください!」
「…お、おう。」
ミミちゃんも察して、ビビって逃げてしまったな…。残念。
(…ま、何はともあれ何事も無さそうだ。子供の相手のほうが怪人や転生者より百倍マシだし。斬ったはったナシでこのまま終われば……)
「た、助けてくれぇえええ!!!」
…やべ、フラグ建てちゃった(白眼)
★ ★ ★ ★ ★
「ひ、ヒイィィィ!?!?」
(あれは、確か…アニメで出てきた…)
商店街の人混みを猪のように掻き分けて爆走する巨漢…悲鳴の主は彼だろう。カリバーは見覚えがあった…確か、ブライと呼ばれるならず者で彼のコカトリス亭で働いた横暴をペコリーヌが(鉄拳制裁で)諌めたことがキッカケになって美食殿結成に至るという意外に大事な役回りのキャラクターだ。
ただ、かなり怯えた様子で何かから逃げている様子で…
「クスクス… 何処へ行くんですか〜? まだ治療は終わってませんよ〜?」
理由はすぐにわかった。
彼を追っているのは死神のような鎌を持つ鬼の少女。
「…確か君は、トワイライトキャラバンのエリコ?」
「おや? あぁ…あなたは…カリバー…」
トワイライトキャラバンのパワー担当の用心棒だ。そして、絵に描いたようなヤンデレ。普段は怪しい笑みを浮かべている彼女だが、顔を見るなり険しい表情を浮かべた…カリバーとしては初対面になるはずなのだが。
「本当に動いてるんですね……『不死』とは聞いていましたが…」
「不死…?」
「あ!? ああ!! なんでもないぞ!?」
しれっと、何を言い出すのか!恐らくはクリスティーナが喋ったのか。
慌てるカリバーに不信な視線を向けるトモ… 見るからに怪しい相手に普段は耳にしない更に怪しい単語が出てくれば仕方ない。
「カリバー、知り合いなのか?」
「あー、えっと。あれだ、世話になった病院のナースさん……」
「ヤブ医者だ!!俺はコイツらに治療と称して人体実験されそうになったんだよ!!」
なんとか取り繕うとするカリバーだったが虚しく、ブライのせいで余計に話は拗れていく…。さあ、これはどうしたものか…
「――…ということは『悪い人』なんですね?」
え?
急に屈託なく…それでいて冷たい聞き覚えのある声に思わず皆が振り向いた。キョウカだった…ミミとミソギの制止もそよ風のように流して爛々とした瞳が新しいおもちゃを見つけた仔犬のようにキラキラとしている。エリコを見据えている光は暗さなど一片も無いはずなのに、トモは何故か底知れない恐怖を覚えた…。
「キョウカ…ちゃん…?」
「悪い人はやっつける、正義のヒーローの役割をずっと待ってたんです! カリバーさん、見ててください!」
「!」
異様な空気に、咄嗟にエリコは跳び下がり身構えた。
同時にキョウカの掲げた愛杖から紫の火球が形成されていく……人魂とか生易しいものじゃない、一軒家くらいなら丸ごと呑み込めそうな獄炎の塊が揺らめいている。放てば最後、エリコは受け流すなり対処は出来るだろうが待つのは商店街が火事により大惨事になるのは間違いない。
「よせ、キョウカちゃん!?」
カリバーも叫ぶが勢いづいた彼女は止まらない。
「いっけええぇぇ!!!」
(まずい!)
すぐさま、仮面ライダーカリバーへと変身。炎を止めるべく闇黒剣月闇に翳したのはタテガミ氷獣戦記、唯一の氷雪系ライドブックの力で鎮火を試みる。しかし…
【 ジャアク氷獣戦記!! 】
――ズキン
「…ぐっ!?」
首に走る激痛。彼のダメージはライダーシステムを扱えるだけに回復しておらず、阻むように疼くそれは集中力を容易く削りとっていく。そんな緩慢な剣先から放たれた冷気など獅子の息吹どころか仔猫の吐息のような有様で、あっという間に押し負けてジュッと音をたてて水蒸気に変わってしまった。
「駄目だ、間に合わな…」
「!」
その時、カリバーを風のように追い抜きエリコの前に立つ人影……紛れもなくそれはジュンであり、大剣を地面に付きたて高らかに叫ぶ!
「インフェルノシールド!!」
形成されるは火球に劣らぬ光の大盾。王宮騎士団の矛をクリスティーナに喩えるならば彼女は正しく民と城、自らに続く団員を守る盾。その役割に恥じることなく大盾は火球を受け止めてはみせるが……このままでは炸裂して結局は大火事になってしまうだろう。
ならばと、ジュンはカリバーに強く呼びかけた。
「カリバー!」
「!」
――もう一度立て!
名だけの一喝だったが、カリバーを理解させ振るい立たせるには充分だった。今一度、闇黒剣月闇を握りしめて痛みに歯を食いしばりながら氷獣の冷気を刀身に練り直す…。今度こそ技として放つ。絶対零度の獅子に恥じぬ強力な一撃で獄炎を鎮めるのだ。
「うおおおおおお!!!!」
振り抜かれる刃… 直後、巨大な氷の獅子が火球を呑み込んだという。
★ ★ ★ ★ ★
…取り敢えず、目立った怪我人や被害が出なかったのは幸いというべきか。
「ぜぇ… ぜぇ…」
カリバーも変身解除し、剣を杖代わりに膝をついていた。怪我をおした肉体の酷使は想像以上にこたえるもので、激痛と血が薄められたような目眩といった酸素不足が著しい。
そんな彼の前にスタスタの歩いてくるジュン。
「平気…ではなそうだな、カリバー。」
「まあそうですね…。それより、何で…ここにいるのか訊きたいのです…が…?」
取り敢えず息切れしながらも真っ当な疑問でかえすカリバー。まあ、答は分かり切っているし、バツの悪そうな顔をする彼女を見れば別に突き回しても何一つ得は無いだろう。
それより優先すべきは子供たち…正確にはキョウカの処遇だ。既にエリコがニジリよってきており、リトルリリカルがブライと抱き合ってぶるぶるしている凄まじい絵面が展開されている。フォローを入れなくては…
「待ってくれ…。彼女たちはこちらで任せてくれないか…。事が事、親御さんとも話をしなくてはならないしな…。」
「…」
カリバーが割って入られたことで勢いが削がれたのか、仏頂面でキョウカを一瞥するエリコ。溜息をついて『勘違いしないでください』と告げるや、鎌の柄でドズンとブライの頭を一撃。熟練の漁師が魚を〆たように彼は『ぐぇ!?』呆気なくヘナヘナと地に伏した。
命に別状はないだろうが、脳震盪…暫くは動けないだろう。そして、伸びたセイウチのように重くデカい身体を引きずるようにエリコは片足を持つ。
「後始末は貴方がたに任せますよ。『子供』への説教なんて面倒なことしたくありませんから。」
「…ッ!」
――『子供』
その単語が出た瞬間、俯くキョウカの顔が歪んだような気がしたようなエリコ…まあ、幼子の癇癪など別に気にはしなかったが。
「ああ、謝罪とか別にいいです。仕事がつかえているので。それでは、ごきげんよう。」
ペコリと会釈するなり、ブライを引きずってその場を後にしていく彼女。華奢な躰にどうしてそんなパワーがあるのか……改めて、彼女とは揉め事を起こしたくないと思うカリバーだが、いずれ結成するであろう美食殿のことを考えれば悲しいが可能性は充分ありうる。その日が可能なら来ない、せめて遠いことを祈ろう…。
――さて、
「彼女は許してくれたが、僕達はそうはいかない。わかるね、キョウカちゃん?」
「…」
やるべきことはまだ残っている。
★ ★ ★ ★ ★
それから、暫くして……
すっかり日も暮れて、思わぬ外回りとなった王宮騎士団一行は城への帰路についていた…。子供たちはそれぞれ親元に送り届け、あわや大惨事の引金になりかけたキョウカちゃんはジュンからみっちり叱りを受けて親御さんにも全て事情を説明することに。今頃、彼女は2度目の説教を受けているところだろう。
年端のいかない少女を放火魔にすることを防げただけでも満足するべきだろうが、カリバーの足取りは何処となく重い。
――私は、カリバーさんのようになりたくて! こ、こんなつもりじゃ…!
――守りたかったんです!カリバーさんのように悪いやつをやっつけてランドソルの平和を…!
(キョウカちゃん…原因は僕だったのか…。)
どうやら、自分は悪い影響を与えてしまったらしい。
キョウカはカリバーにとって、最初に『仮面ライダー』として助けたヒロインであり思い入れもある。そんな彼女が自分を真似てあんなことをしてしまったのなら…やはり、凹まずにはいられない。前世でライダーキック問題(子供がライダーキックを真似して怪我をする)なんてものがあったが、今回は間違えば大きい被害が出ていたかもしれない。彼女自身の心に大きな傷を負わせていたかもしれない。
(――ままならないな、仮面ライダーの役割は…)
転生者じゃなくて、ちゃんと原作の…本物の仮面ライダーならもっとうまく導けたのだろうか?正しい憧れであれたのだろうか? ――途方もない考えが頭の中をグルグルする…。
そして、城門前に差し掛かったところ…
「――ん? あ、やっと帰ってきた!遅いじゃないの!」
「? …キャルちゃん?」
意外な出迎え。やれやれと『何処行ってたのよ』と小突かれるが、沈みかけていたカリバーにとっては仄かに嬉しい歓迎だった。少しだけ胸が軽くなる…。
「アンタねえ、こっちは昼からずっと待ってたのに…ホント、待ちくたびれちゃったわよ!陛下から渡す物があるってのに…。ああ、そうそうお客様がきてるわよ。」
――客?
ランドソルにも顔見知りが増えたが、こんな時間に誰だ?
「! …カリバー、あの子たち。」
キャルの後ろの人影に真っ先に気がついたジュン。カリバーも確認するべく視線を向ければ、ついさっきまで一緒にいて別れたはずの…
「ミソギちゃんに… ミミちゃん…?」
「「…」」
…このふたりが事態を思わぬ方向へ運んでいく。
・登場人物
☆エリコ
トワイライトキャラバンの用心棒。原作と変わらず騎士クンのストーカーのヤンデレだが、今回の時間軸の転生騎士クンも執着の対象。エンカウントはしたものの、ファルシオンに勝てず力でねじ伏せられてしまった。
☆キョウカ
リトルリリカルのメンバー……しかし、今は原作にはない異様なパワーと精神的な危うさを臭わせる。ミミとミソギも心配している様子。
☆トモ
普段の勢いがまるで無い…まだ全快ではないようだ。キョウカの不穏さを感じとるが…?
☆転生カリバーさん
ここ最近は怪我が回復する前に厄介事がやってくる…。知らないうちにトワイライトキャラバンに不死の事実をバラされた。多分、副団長の仕業。