プリンセスコネクト!Re:転生カリバーさん、悪夢に泣く(仮)   作:ジュンチェ

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明日を夢みて

 

 

『…え?』

 

 どうして…? 自分の顔にかかる赤い液体に呆然とするアナザー響鬼。振り下ろした刃は変身を解いたカリバーの左肩を大きく深く抉る。傷口からは止め処なくドス黒い血が流れ地面でボタボタと滴っていた。

 

 超常たる力の誘惑がもたらす意味不明な高揚が冷めて、憧れの人間を傷つけてしまった混乱と恐怖が胸の中を満たしていく…。どうしよう、どうしてこんなことに? 

 

『あ、ああ……』

 

 狼狽えているうちに変身は解けて、彼女の手にフルボトルが握られていた…。

 

 それに気がつくとキョウカは『ひぃっ!?』と投げ捨てる。やっと気がついた…そして、遅すぎた。これは理想の自分に近づくための魔法のアイテムなんかじゃない、強大な力を持つ凶器だ。自分はこれで他ならない彼を感情が昂るまま切り裂いたのだ。

 

 …つまり、人殺し。

 

「違う…ちがう、そんなつもりじゃ…!」

 

 パニックのあまり逃げだそうとするキョウカ…しかし、彼女を強引に掴んだのは他ならない血塗れのカリバー。もう大人を振り払う力になどない少女の瞳にあまりにも大きくドス黒くて赤い過ちの痕が焼きついてしまうだろう…いや、ちゃんと向き合わせなくてはならない。

 

「目を逸らすんじゃない。これが君が酔っていた力がもたらした結末だ。人の命を守る力は簡単に人の命を奪えるんだぞ。君はそれをほんの少しでも理解していたか?」

 

「…ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

「謝るな!僕の質問にちゃんと答えろ!!」

 

 

「おい、よせカリバー!!」

 

 トモが無理矢理に引き離すまでカリバーは容赦が無かった。彼の血で濡れたキョウカは泣きじゃくり完全に喪失状態だが、まだ止まろうとしない。…されど、刀傷をまともに生身で受けて立っていられるわけもなくすぐに『う…』と気の抜けた呻きで身体は崩れ落ちていく。

 

「カリバー…!? しっかりしろ!」

 

「いけない、すぐに治療を…!」

 

 ギリギリで何とかトモに支えられ、すぐにコッコロが手当をすべく駆け寄る。傷はかなり深く流れる血は滝のようで処置をしなくては間もなくショック死してしまうだろう。無論、彼女たちは不死などという事情は知る由もないので仕方ないのだが、かなり焦っていた。

 

 そんな2人を『退け。』押しのけたのはファルシオン…変身を解いたユウキ。彼は自身の付けていたドライバーをカリバーに巻きつけるとエターナルフェニックスのライドブックを開いて起動してみせる。

 

「――その身体、もう少し大事に使え青二才。」

 

 すると、不思議なことが起こった…。

 

 カリバーの傷が時を巻き戻すようにみるみる塞がり、血色も僅かながら回復していったのだ。意識は失ったものの、荒くなっていた息も穏やかになって一先ず安心だろう。残る問題は…

 

「…違う …違う そんなつもりじゃ…」

 

「さて、こちらはどうしたものかな。」

 

 譫言を虚ろに呟き続けるキョウカにジュンは頭を抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前マジでふざけとんのかー!?!?」

 

「…うっ!?」

 

 致命的なダメージを受けたことにより、セーフポイントの拠点に意識が強制転送された僕を待ち受けていたのはヒルマからのお説教だった。その金切り声は傷に響く、やめてくれ。

 

「オメーは子供にナイフが危ないことを教えるときにテメェの指を切り落として傷口見せんのかああん? もっと他にもやり方あったでしょ! アンタを『直す』こっちの身にもなりなさいよ!」

 

「…僕にはあれしか思いつかなかったんだ。でなければ、彼女は確実に命を落としていた。」

 

 本物のヒーローならうまくやれてたかもしれない。だが、僕はたまたま運良く力を拾った一介の転生者…本物じゃないんだ。でも、キョウカちゃんを深く傷つけたのは事実だし、言い訳は出来ない。

 

「…まあ、美食殿のメンバーじゃないからまだマシだけど。気をつけないとアンタの楽しい楽しい転生者ライフは簡単にオジャンになるから肝に命じておきなさい。」

 

「…ああ。」

 

 今回のような強行手段は自分でやっておいてだが、褒められたものじゃないのは理解している。もっと良い解決策があったんじゃないかとも思う……でも、僕はこれが限界だった。力を求める衝動を暴力で傷つける恐怖で枷をつける。僕は不死の転生者だから彼女が命を奪えはしないことは見越してその結果、暴走を止められはしたが……

 

「……まだやるべきことがある。」

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 アナザー響鬼の騒動から一夜明けた。

 

 幸い、被害は道端に焦げ目が出来たくらいで大したことない様子でランドソルも一見すると平和な日常を送れているように見えた。…それは、あくまでもランドソルを全体的に見ればの話。当事者からすればそうはいかない。

 

 特に、危うく人を殺しかけてしまったまだ幼い少女ともなれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

「キョウカちゃん、大丈夫〜?」

 

「喋ったことは謝るから出てきなよー!」

 

 ミミとミソギが外から呼ぶ声がする。されど、呼びかけられたキョウカは自室で布団にひっくるまり震えて出てこようとはしない。

 まだ幼い彼女に人を殺めかけた罪はあまりに重すぎた。アナザーライダー化による思考汚染も無くなったためその十字架は恐怖と罪悪感で未熟な精神を押し潰そうとしてくる…ああ、自分はなんであんなことをしてしまったのか。

 

(もうやだ…… 消えちゃいたい…)

 

 

 

「あっ、カリバーさん…!」

 

「聞いてください、キョウカちゃんが出てこなくて…」

 

 

 ――!!

 

 その時、一番に来て欲しくない人間の来訪を知らせる声が耳に届く。どうして…ビクッと震え、恐る恐る顔を窓から覗かせると仮面ライダーに変身した姿の彼が居る。こちらに気がつくと手を振ると呼びかけてきた。

 

「キョウカちゃん、話がある!出てきてくれないか!」

 

「…」

 

 怖い…また怒られるかもしれない。いいや、今度こそ罪人として連行されるのか……仕方ないか、それだけのことをしたんだから。

 布団から這い出して、虚ろな目で出入り口に向かう。もう子供だから許されるなんて通用しない…

 

「今、いきます…」

 

 そして、ドアを開けると…まだ幼い少女のボロボロな姿に一瞬だけカリバーが言葉を詰まらせるも…すぐに気を取り直して膝を折って瞳から光を失った彼女に目線をあわせた。

 

「大丈夫、話をしにきただけだ。少し一緒に歩こう。」

 

 

 ★ ★ ★ ★ ★

 

 

 ランドソルの街内を歩くカリバーとキョウカ…その歩みは別に宛所などなく気の向くまま。

 

「キョウカちゃんは何処か痛んだりしないかい?」

 

「…」

 

 優しく気軽な雰囲気で話しかけようとするカリバーだが、キョウカの顔は暗い。無理もないのだが、彼は尚も話かけ続ける…

 

「ご両親にも酷く怒られたろう?なあに、気晴らしだと思ってくれ。君が元気そうでよかった。」

 

「………………何が…よかったんですか?」

 

 ――?

 ここで、はじめて反応を示した彼女。手が震えている…俯く顔は隠れているが、恐怖しているようだった。

 

「わたしは……傷つけたんですよ。あなたを、殺すところだった!そんなの何一ついいことのわけ…!」

 

 

 

「―――卑怯者、嘘つき、無責任。」

 

 

 え? 唐突な胸に刺さる言葉の羅列。戸惑うキョウカ…一体なにを?

 

「……そんな悪い子供は悪い大人の格好の餌食になる。そして、手遅れになった子供の末路は悲惨だ。」

 

 悪い子供……ああ、そうか。それが自分なのか。危ない力と何処かで理解しつつも力を使った卑怯者で、憧れた人のようになりたいとを嘘つき、その実は無責任に力の快楽に酔っていた…。だから、この人は私を責めて… 

 

「――でも、君は間に合った。越えたらいけない一線を越える前に。」

 

 否。手が届いた。それだけでカリバーにとって喜ぶべきことだった…責めてなどいない。例え、傷ついたとしてもヒーローの本懐は果たせたのだから。

 

「今の君はならわかるだろう?『誰かを守るチカラは誰かを傷つけるチカラ』だ。…だから、僕たちは力に責任を持たなきゃいけない。何を守り、何処へ向かうのか。

 僕は君を許す…だから、君は少し自分を許してあげるんだ。そして、過ちを糧に前へ進もう。焦らなくて良い…その時は僕達、大人も君を助ける。」

 

「カリバーさん……」

 

「さ、話はここまでだ。ご両親が待ってる。」

 

 もう諭すことは十分だろう。道の先で待っている彼女の両親の元へ向かうよう促すカリバー。キョウカは一礼し、走って……その途中で振り返ると…

 

「カリバーさん! わたし、あなたに誇れるような大人になってみせます!! 

 

 ――だから、その時まで待っていてくれますか?」

 

 投げかけられた質問。それに対し、カリバー『ああ、勿論だ。』だと返すと満面の笑顔を見せてまた走り去っていく。両親と手を繋ぎ、帰路につく背中からもう心配はないだろうと……あれ、ご両親からちょっと鋭い視線を向けられ…え?なんで?

 

「病室を抜け出したと思ったら…全く、君も隅におけないなカリバー?」

 

「だ、団長!?」

 

 い、いつの間に…!? しかもやりとりをしっかり見られていたらしい。マズイ、何やら誤解が生じているようだ。

 

「これはアレですよ、変な意味合いではなく…!」

 

「ふむ、彼女はまだ幼い。万一、君が過ちを犯した場合は…その時の心配はする必要はないぞ?」

 

 腰におさまる彼女の大剣がキラリと光る…冗談ではない!

 

「ま、待っ………あっ 駄目だ…血が足りな……」

 

「おっと。」

 

 慌てて否定しようとしたが、興奮したことが弱りきった身体へ仇となりフラフラと倒れ、寸前でジュンが受け止める。やはり、無理をしていたのだろう…そのまま気絶してしまう。

 そんな彼をジュンは腕をまわして担ぎあげるとそっと呟いた。

 

「…改めて君を歓迎するよカリバー。ようこそ、王宮騎士団へ。」

 

「う、うぅ……」

 

 その言葉は届かない…… でも、新たな仲間ともう一度歩みだした少女に祝福がありますように。心の中で祈りながら、ジュンはランドソル城への帰路についたのだった。

 

 

 

 

 

 




 次回は美食殿結成編!

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