プリンセスコネクト!Re:転生カリバーさん、悪夢に泣く(仮) 作:ジュンチェ
「ぐえっ」
同じ頃、ランドソル…コカトリス亭は騒ぎの真っ只中だった。厳つい男たちが宙を舞い、ドン!と音をたてて壁やテーブルに叩きつけられると辺りから悲鳴があがる。次々と客は店から逃げ出し、マスターはカウンターにてやれやれと溜め息をつく。
「やれやれ、もう少し穏便に解決出来ないのか副団長殿?」
「フン。通報を感謝するぞ。」
流れてくる愚痴程度なんて気にしない、それが我らの副団長・クリスティーナである。
なあに、心配はいらない。犯罪者の確保で食堂が滅茶苦茶になるくらいなら王宮騎士団で保証が出るし、あとは団長であるジュンの頭痛の種がひとつ増えるだけ。うむ、実に無問題だ。
「あーくそ、なんでだよ!ここのオーナーは『そのスジ』の人間じゃなかったのかよ!?」
「話が違うじゃねえか!」
「…」
喚くゴロツキたちにマスターはまた溜め息。人相はお世辞にも良いとは言えないがが自分はれっきとした『一般人(カタギ)』 である。 店を散らかした上に、本当に失礼極まりない連中だが、取り調べと制裁は副団長に任せるべきだろう。
隅っこで逃げようとしていた酒臭い若い男に掴みかかったクリスティーナは壁に叩きつけ尋問を開始する。
「お前が『密猟者ギルド』に不認可クエストを斡旋していたギルド管理協会の人間だな。全く、白昼堂々と酒を飲んでなんぞいるから口を滑らせるのだ。」
「は、離せ…!」
この間抜けな男は欲に目が眩み犯罪の片棒を担いだ哀れな輩。ギルド管理協会で法を平然と踏みにじる犯罪者たちに認可されなかった…或いは正式な手順を則らなかったクエストを紹介し、報酬を獲ていた。
上司であるカリンの目を盗んだ背信は順調に軌道に乗りつつあった。だが、思わず入った『ボーナス』に舞い上がってコカトリス亭でご贔屓さんと昼間から飲んで仕事をバックれたのが運の尽き。おまけによりにもよって、クリスティーナの耳に入ってしまったのは不幸と言うしかあるまい。自業自得だが。
「あの緑のクソメガネが悪いんだ!アイツ、いつもいつも俺の足許見やがって…!」
「…こんなヤツが紛れこむとは協会も人手不足は深刻と見る。己の罪を他人に責任転嫁とは……」
別にギルド管理協会と仲が良いわけではないが、同じ公職である立場で不始末を起こす身内に手を焼くのはカリンに同情してしまう。真面目が行き過ぎてワーカーホリック気味に働く彼女がなんともいたたまれない。
取り敢えず、引っ張って取り調べはこれから…
「へ、へへへへ……」
「? なにがおかしい?」
突然、ニヤニヤしだす男。
なにがおかしい?
「副団長サンよぉ、俺に構ってる暇あるのかよォ?」
「どういう意味だ?」
「師匠ならちゃんと弟子が粗相しないよう診ておかないと…うっかり、悪い奴に騙されちまうかもな?」
★ ★ ★ ★ ★ ★
「情報によると、ここらへんらしいのですが…」
ペコリーヌ、ちゃんと情報あってる?
カリバーはクエスト用紙に記載された地図とにらめっこしながら歩く彼女の案内に不安を覚えつつあった。おっかなびっくりで進んできた道だが、景色は広葉樹が生い茂る雑木林といった具合で飛竜が生息するにしては些かスケールが小さい。出てきたとしても、せいぜい猪か其処ら…多少なりとも魔物はいるかもしれないが。
本当にロックドレイクが『群れ』でこんな場所に?
「コッコロ、どう思う?」
「はい、ロックドレイクの生息域にしては環境が不適過ぎます。偶然にしては……」
ユウキも違和感を感じ、かなり警戒をしている様子。キャルも周囲を見回し、何かないかと観察するがロックドレイクどころか動物の痕跡すらあまり見られない。
…そして、ルイスはある考えに至る。
「『からかわれた』…のかもな。支給品から色々とおかしなこと続きだ。クエストを紹介したあの管理協会のアンチャンに一杯くわされたとしたら?」
からかい? いやまさか…と思う一行だが振り返ればおかしなトラブルばかりのクエスト道中。クエストを紹介してくれたあの優しく生真面目そうな受付ボーイが自分たちをハメたとでも? …なら、どうしてそんなことを?
嫌な空気になっていく中、それを止めようとしたのはペコリーヌ。
「やめましょう、ルイスくん! 人を疑うのは良くないですよ! 確かな証拠は無いんですから!」
「いや、だけどなぁ…」
確かに。…しかし、偶然では片付けにくい状況。
そんな中、ユウキはカリバーを見ながらボソリと一言。
「からかわれた………程度で済めば良いがな。」
「?」
どういことだ?
聞き返そうとした矢先、キャルが何かを見つけたようだった。
「ねえ、こっちは開けてるわよ!」
彼女が指差す先、確かに木々が折られて枝や草木が切りはらわれて道のようなって直線に続いている。自然なものじゃない、明らかに人為的に通りやすいように手入れされて…まだ新しい小枝の切り口の様子から見るにそんなに時間は経っていない。
それに地面には…
「足跡に…轍(わだち)?」
カリバーは膝を折って確認する…枯れ葉と土の潰れ方と凹み方からして複数人分かとおぼしきの足跡。あと2本の綺麗な線が伸びている轍は…荷車か?
何かを運んでいたらしい。指先を余裕で突っ込める轍の深さからしてそれなりに重い物であったことは察せられる。こんな道から外れた場所に何を運んできたかは皆目検討がつかないが…
「……調べてみるか。」
取り敢えず、轍と足跡を追ってみよう。そうすれば、きっと何かわかるはず……
「…」
…わかりたくなかった。
少し進んだ先…美食殿一行が見たのはあまりにも凄惨な光景だった。荷車は確かにあった。あったのだが……
「む、酷い…」
思わず口から洩れたコッコロ。荷車の荷台に乗せられた強烈な腐敗臭を放つそれは間違いなく『ロックドレイクだったもの』だった。息絶えたその骸は見るも無惨で、鱗や羽毛に爪などは乱雑に剥ぎ取られ、目があるべき場所にはぽっかりと黒い穴。つけられた傷口には蟲が集っている。
野生の生物の仕業じゃない……ペコリーヌはすぐに気がつく。
「密猟…」
金銭的価値がある部位が失われ、こんな乱雑な死骸の放置…密猟者の仕業だろう。そして、この現場に自分たちがやってきてしまった……いや、むしろ誘導されたような…
「こんなクエストさっさと放棄してさっさとランドソルに…!」
即座に踵をかえそうとするキャル…はしゃいでいたのは何処の誰だったか。しかし、何かを察したのか隣りにいたユウキの表情は険しい。
「………どうやら遅かったらしい。」
え? 一行が戸惑うより先に地面にドスッと矢が突き刺さり、そこからモクモクと煙がたちはじめる。慌て離れようとするも、次々と新しい矢が逃げ道を遮るように次々と刺さり一行を阻む。
そして、驚いた煙を吸い込んでしまい身体の痺れ意識が朦朧として……
「クソ、毒か!? 皆、 息… を……」
カリバーが最初に膝をつき、次にペコリーヌとコッコロ…キャルの順に倒れる。ルイスも変身して対処しようとしたがライドブックを取り落とし、彼もまた失神してしまう。
どうしてこんなことに……
意識を失う直前にカリバーが目にしたのはエルフ耳の金髪少女の影と…迫りくる見覚えがある騎士甲冑の集団だった。
★ ★ ★ ★ ★ ★
『おい、…… い… おい!!』
――スパンッ!!
「ぐふっ!?」
痛ッ゙!?
誰だ、頭叩いたの?キャルちゃんとかそんな次元じゃないパワーだったんだけど…ん?何か目の前に見覚えがある黒い怪人……怪人!?
「で、デザス…ッ゙!?」
『おい、少し黙ってろ。俺だ。』
【 スピリット 】
デザストがなんで…と言い終わるより先に彼は人間の姿に擬態…なんだろうか、とにかく変身してみせた。その姿は見知った顔…ユウキだった。
…え? どういうことなの……
「バラすつもりは無かったが、まあ仕方あるまい。今は緊急事態だ。
俺達以外のメンバーが王宮騎士団につかまった。」
…………は?(困惑)…はァ!?(理解)
なんで僕の職場が出てくるわけ?なんで捕まるとかそんな話が沸いてくるとか意味不明にも程があるんだが? ペコリーヌ捕縛イベントって原作(ゲーム)でも後のほうじゃ… いや、他のメンバーまで捕まるのっておかしいだろ?
「どういうことだ?」
「こっちが訊きたい。王宮騎士団ならお前何か知らないのか?」
「知るわけないだろ!」
「……チッ」
舌打ちしやがったなコイツ!?
いや、落ち着け。何があったか思い出せ…
雑木林でロックドレイクの死骸を見つけて…毒ガスを仕込まれた矢で気を失った。あの時、王宮騎士団の団員のような影とエルフ族が…確か金髪で弓を持った……
(金髪で弓を持ったエルフ…? 森の中で?)
あれ、何か覚えがあるぞ。この条件をドンピシャする奴いたよな確か…コミュニケーションに難ありの… 待った、確か『彼女』って森を守るレンジャーの役割で鉢合わせたのが密猟の現場だとしたら…
「…あー、嫌な予感。」
「?」
「動くな、『密猟者』!!」
や っ ぱ り (諦観)
なんでだろうか、僕の原作キャラとのエンカウントが割と最悪なりがちのは……
立ちはだかるエルフの少女…その名前と顔には覚えがある。
「……アオイか。」