続きを出す予定は無かったのですが、書き上げました。
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「ん───」
ムクリと起きて、少し頭痛がするもののカーテンを開けて日差しを浴びながら伸びをしてみる。
高校を卒業して早2年。俺は東京の大学に進学して今は少しお高いマンションに住んでいる。
それもこれも親の光は七光りと言うべきか、両親の恩恵を受け、且つ、期待の意味も込めてのプレゼントらしい。
ただ、仕送りなどは今まで送られてきた事がないので、そこからは自分でやれという暗示なのだろう。
「おい はやく起きろよ」
未だにダラダラ寝ている奴に声を掛けるも全く反応がないので、朝食を作りにキッチンへ向かう。
今日は5月5日。
ゴールデンウィークも佳境となり、あと1日で平日が始まる。
世の社畜にとっては今日が最後の晩餐となるのだろうか。大袈裟かもしれないが…。
昨日、実家への帰省から帰ってきた所で、そこに寝ているやつが今日は出掛けたいと言うので付き合ってやることにした。
にも関わらずまだ寝ているのはどうなんだ。まぁいいけど
そういえば一昨日、家族ぐるみでららぽーとへ行った時に川崎に出会った。
妹の京華や大志も居て、少し大人の雰囲気になっていたのを覚えている。まぁ小町はやらんがな。
川崎は現在、ケーキの専門学校へ通っているらしい。将来はお店を出してみたいと強く意気込んでいた。
「おはよぅ…ございます」
「おう。おはよう」
ちょうど朝食が出来る頃に起きてきた。挨拶を返すと彼女は洗面所の方へ歩いていく。
「もうちょいで出来るからなー」
間を空けてふぁーい。というだらしない声が聞こえたのを確認すると同時にトーストが焼き上がる。
エッグベネディクト風にして卓上に並べ、アイツの好きな牛乳と叙々苑のソースをかけたサラダを用意しておく。これで満足してくれるだろう。
パタパタとスリッパの音を立ててこちらへやってくる。
「あっ、先輩。なかなかやりますねぇ」
NIKEの様な形を手で作り顎下に押し当てながら感心したように言う。
「気に入ってくれたか?」
元気に返事を返してくれると食事の挨拶をしてテレビを見ながら他愛のない会話をする。
「幸せ者だな」
「っ、何か言いました?」
おっと。思わず口に出てたみたいだった。気づかれてない。うん。気づかれてはいない。
彼女には適当に濁しておいて先に食べ終わったので、食器をキッチンへ持っていく。
テレビに夢中だな。その間に着替えておくことにしよう。
☆☆☆
先輩はずるいです。無自覚すぎます。
『幸せ者だな』ってこっちのセリフですよ。
貴方と出会えて私は変わりました。
容姿は可愛いままですが。なんて言ったら先輩にあざといと言われますが、容姿より性格が変わりました。
今まで取り繕っていた姿も先輩のおかげで綺麗さっぱり洗い流しました。
先輩や小町ちゃん、先輩のご家族は私の拠り所です。
彼らのそばに居ることが天から受けた使命なのだと。
彼らと共に過ごし、笑い合うことが天命なのだと私は先日の帰省で改めて思いました。
彼が傷ついた時、疲弊した時、辛い時。彼の頭に浮かぶ人物が私であればそれだけで充分です。そして寄り添いたい。
生涯彼とのパートナーであり続けることが出来るのならば、職業や友人などは二の次です。
彼が私に『本物』と言ってくれた時、私はとても喜びました。
「どうして泣いてるんだ?」
「へっ?」
どうやら私は朝食も喉に通らないほど熟考していたみたい。恥ずかしいです…。
「な、なんでもないですよ」
心配そうに見てくれる先輩。今はもうあの頃の腐敗した目はありませんが、とてもその…イケメンです。
「食べたら着替えて行くぞ。いろは」
「はいっ!」
この人と出会えてよかった。そして私は彼と一緒に進むことが出来た。
ほんと…幸せですよ。
☆☆☆
『貴方のやり方きらいだわ』
私は彼にこの言葉を言い放った。
ただ彼の行動に対する呆れ、そして私を頼ってくれない虚無感。あの時は色々な感情があったけれど。
彼はこの言葉をどう受け止めているんだろう。
真っ直ぐに?
いつもの罵倒の様に?
それとも……それとも。
彼に聞くことなどできない。ましてや会うことなど。
彼は奉仕部から私たちから離れて行った。
一色さんの件から彼は完全に奉仕部を離れ、戸塚くんや川崎さんと交流を深めるようになったらしい。
勿論、その後にあった他校とのクリスマスイベントに彼は顔を出すことなく、私ともう1人の部員である由比ヶ浜さんと2人でなんとか成功を収めた。
私はもう一色さんの件以降、彼を見ていない。
当時、マンモス校であった総武高校で特定の人を探し出すなんてかなりの苦労を必要とする。
ましてや私のような人間には困難だ。
由比ヶ浜さんに色んなツテで聞いてもらったけど、分からなかった。
結局、卒業式の呼名でクラスが分かった。けど、その後なにも行動に移せなかった。
彼に会って何を話せばいいのか分からなかった。
いつも通りに罵倒すればいいのか。
それとも物腰低く話しかければ喜んでくれるのか。
そんなことを考えていたらいつのまにか今日を迎えていた。
スマホを優しくタップすると日付と今日の天気と気温が表示される。
ゴールデンウィークも佳境。1日から昨日まで千葉で、由比ヶ浜さんや葉山くんのグループで遊んでいた。
とても楽しかった。けど、当たり前だが彼の姿はない。
彼の進学先など聞けるようなものなら聞いている。
今年私は大学3年生だ。もう私の事など彼の頭の中にはないだろう。
進学先の大学では由比ヶ浜さんの様な親友と呼べる人は出来ずに2年経った。
サークルに入ってみるもやはり馬の合う様な人いない。
上辺だけの関係。このような人達とは卒業してもまた遊ぼう。という関係にはならない。
「気分転換に外にでも出てみようかしら」
誰もいない部屋で1人呟く。なんて虚しいことだろう。
何で私は彼を罵倒することしか出来なかったのだろう。
ただ、由比ヶ浜さんの様に明るく声を掛ければ。
一色さんの様にあざとく可愛らしく話しかければ。
いや私が素直に寄り添えばよかった話だ。
そんな事は分かりきっている。分かっているものの彼にキツく当たってしまっていた。
「はぁ」
思わず溜息が吐いてしまうも無理もない。
だが、全て自分のやった事。
彼の事を分かっていた筈なのに、実際は分かっていなかった。
今だったらこの気持ちを素直に伝えられる。が、それは彼が目の前にいないから言える事で、もしいたら私は伝える事が出来ないだろう。
玄関へ姉さんに貰った靴を履き扉を開けて外へ出る。
「これから私はどうしたら…」
私の実家は政界において地位が割と高い。
その為、古典的ではあるが優秀な男児との政略結婚がある可能性は絶対ないと言えない。
好きでもない人と結婚なんて考えただけで身の毛がよだつ。
これからの人生は、せめて私の手で良い方向へ変えることができますように。
☆☆☆
寝室のベットにはヒッキーから貰ったぬいぐるみがある。
それはもう失くしてはいけないもの。両手にある水を溢さないように優しく扱う。
私は優美子と姫菜と千葉にある大学に進学した。
いつも3人でいる事はないけど、バイトが終わると暇な時にループしてそれぞれの家に行ってお泊まりをしている。
更には、さがみんも一緒にいる事が多い。まぁ同じサークルだった事により総武ギャルズに入った感じ。
休日は月に一回、私かもしくはゆきのんがお互いの家に遊びに行く。
ゆきのんは私達のグループと打ち解けてくれたみたいで、隼人くん達とも話すようになった。
けどゆきのんは、多分まだヒッキーの事が引っかかっているんだろう。
大勢でいる時は本当に楽しそうにしているけど、私と2人きりでいる時はちょっと気まずい…。
「会いたいなぁ」
「誰に?」
私の本音は優美子に届いていた。姫菜もスマホの画面から私の顔は視線を向ける。
「へっ?まぁ彼氏?」
私は大学で初めての恋人を作った。
私は好きな人が良い人だから付き合った。けど理由はこれだけじゃない。
本当はヒッキーの気持ちをキッパリと諦めるつもりだった…と思う。
でもその人の事は本当に好き。もう付き合って1年と半年が過ぎる。
性格が凄く良くて私は家事がダメダメだったけど彼と一緒に時間を過ごすに連れ、1人で出来るようになった。
だったらなんでヒッキーの顔が出てくるんだろう。
私が1人でいる時。大学で授業を受けている時。彼との行為が終わった時。
ヒッキーならこうしてくれる。ヒッキーならそう言ってくれる。ヒッキーなら………優しくしてくれる。
「顔赤いよ?」
「もしかしてBL好きになった?」
優美子は私の顔を覗き込んで心配してくれるけど、姫菜はどうしてその解釈になるのか分からないよ…。
「お酒飲み過ぎちゃったかも」
酔い覚ましてくると言って部屋のベランダへ行く。
時刻は日付が変わる前くらいかな。明日はゴールデンウィーク。彼と遊びに行くことになっている。
また夜は彼に愛されるのだろう。
ただなんとなく今その光景を俯瞰して見るとすごく気持ち悪くなった。
これがお酒による影響なのか彼に対する気持ちの変化なのかそれとも違う何かなのか。
今の私では判断できない。
でもそれでも私を愛してくれる人がいる。それだけでどんなにも幸せなのだろう。
これでいい。これが彼の言う『本物』なんだ。
本質は理解できない。けど今の私なら少しだけ勘違いしても良いと思った。
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次回確定の書き方をしてしまった…。終わりたいのに終われない。
次回もお楽しみに…。