あの後、ヒーロー達に説教を受けた出久。
最終的に解放されたのは、夕方になった頃だった。
「はあ……思ったより長くなっちゃった……」
帰路につきながらため息を吐く。
歩きながら出久は、首にかけている水晶を持ち上げて空にかざす。
「あの光……ダイゴさん達が力を貸してくれたのかな?」
出久は水晶を見ながらあの時の光の力を思い出す。
(あの光が僕を包んだ時、”無個性”の僕では考えられない身体能力が発揮できた……それにあの光線も)
「でも、多分あの光…まだまだ先があるんだろうなあ……」
なんとなくだが、あの光の力を全然引き出せていないのはわかっていた出久。これからは普段のトレーニングの他に、あの光の事についても研究もしなくてはいけない。やることはたくさんある。
「よーし、もっと頑張るぞー!」
出久は空にかざした水晶を見ながら叫んだ。
決意を新たに、『光』に認められた少年はさらに夢へ向かうためのスピードを早めた。
♢♢♢
世間ではヘドロ事件と呼ばれたあの出来事からずいぶん経ち、現在は雄英入試当日。
出久は試験会場でもある雄英高校にきていた。
「大きい……」
校舎の大きさに圧倒される出久。
だが、すぐに首を横に降って気合いをいれる。
(トレーニングも、あの『光』の研究もできる限りした……あとは、自分が本番でそれを発揮するだけ!)
「スゥー…ハァ……よし!」
深呼吸をした出久は、気合いを入れて雄英高校の敷地を一歩踏み出した。
場所は変わって校舎中。どこの高校にでもある学科試験を終えた出久は、実技試験の説明が行われる会場に向かっていた。
大学の講義を行うような大きな講堂のような会場で、それぞれの席に受験票が振られており出久はその中から自分の席を見つけるとそこに座る。説明の前に軽く最後の復習をしようかとリュックから実技入試の作戦ノートを取り出したあたりで、自分の左側にドカッと座る音。爆豪だった。
「やぁっかっちゃん」
「……おう」
出久の言葉にぶっきらぼうに返事した爆豪は、それ以外は何も言わずに目を瞑り瞑想するかのように静かになった。
あのヘドロヴィランの事件以来、爆豪は緑谷に突っかかることはなくなり、何かよく考えるように寡黙に過ごすことが多くなった。それ以上のことは出久はよく知らないが、今までつるんでいた出久を馬鹿にするもの達ともつるむことは無くなっていたことから何か心変わりがあったのだろうとぐらいにしか出久は考えていなかったが。
『今日は俺のライヴにようこそーー! エヴェイバディセイヘイ!』
午後の実技試験の説明を行うのは雄英高校の教師でありプロヒーローの一人、プレゼント・マイク。
人気ラジオDJでもある彼のノリノリな掛け合いだが、誰も反応を示さない。と言うか突然過ぎて示せない上にノリにもついて行けなかった。
『こいつぁ、シヴィー! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!? YEAHHHHH!!』
この言葉にも受験生は反応を示さなかったが、プレゼント・マイクは凹む言葉説明を開始した。
そこからプレゼント・マイクの言葉に応じてどんどんスクリーンに資料画像が展開されては消えていくのを繰り返した。
『実技試験の内容は10分間の模擬市街地演習だ!装備品の持ち込みは自由!!ただし、他の受験生を攻撃するなどの妨害するのはNGだぜ!』
1から3ポイントが割り振られた仮想ヴィランロボットを撃破していき、合計点数を競うと言う内容だった。更に0ポイントのお邪魔ギミックが出現するらしい。出久は今回の試験のために準備をしていた作戦の中から最適そうな作戦を頭の中でピックしていく。その間に例の非常口が質問をしていたのは言うまでもないだろう。
『かの英雄、ナポレオン=ボナパルドは言った!『真の英雄とは、自身の不幸を乗り越えて行く者』と!!
説明を受けた出久は他の受験生と共に試験会場に移動していた。
動きやすい運動着に着替えて柔軟をしている出久、首にはいつものペンダントをつけている。他の受験生はベルトをつけた男子や自分の個性にあった道具を持っている生徒が思いのほか沢山いるようだ、出久のように運動着に着替えただけの方が少ないようにも見える。個性が戦闘向きではない場合やサポートアイテムなどの道具がない場合身体能力に障害が出る人は戦える手段が限られてくるため、サポートアイテムなどを申請すれば使うことができる。武器などを持っているヒーローもいるのでなんら違和感ない。
出久は柔軟を終えたあと、一人スタート地点ギリギリに立って開始の合図であるプレゼント・マイクの言葉を待っているのだ。
実戦に合図なんてのはない。それはダイゴの世界の夢を見て、GUTSの隊員達の姿を見てわかっている。あの世界での戦いや事件は突発的なものがほとんどで、むしろあからさまな合図や予兆がある方が珍しい。それはヒーローも同じなはずで、突然合図があってもいいように出久はいつでも走り出せる体勢を維持する。
出久以外の受験生が気が緩んだ状態でいると、プレゼント・マイクの声が近くのスピーカーから響き渡った。
『ハイ、スタート!!』
出久はその声を聞いた瞬間に走り出し、すぐに近くに現れた「 1P」と書かれたロボットの頭部を右手でストレートを放ち、破壊する。
そのまま次の標的を探しに走り回った。
『HEYHEYHEY!どうした!どうした!? 実戦じゃカウントダウンなんざねぇぞ! 走れやHURRY UP! 賽は投げらてんゾYEAH!』
その出久の姿を他の受験生たちはポカンと見ていたが、すぐにまた聞こえた放送で一気に走り出した。
出久は走り続けながらロボットたちを頭部や、関節部分を中心に殴る、蹴るをして破壊していく。戦い方は、あの夢で見た光の巨人の動きを知っているのでそれを自分流にアレンジしたもので、もともとあの『光』をあのヘドロの時に手に入れる前から考えていたものだ。拳や蹴り技を主体にした近接戦闘…出久はこれまで山のように分析したヒーローたちの動きや、技を参考に少しづつ、少しづつ組み立ていった。そして、今のその行動は結果として現在現れている。
「いける……!」
出久は自分の拳を見ながらそう呟き、また走り出す。
しばらくロボットを破壊しながら会場を駆け回っていると、ベルトをつけた金髪の男子がお腹を押さえた状態でロボに囲まれていた。
「お、お腹が……」
そう言って蹲ってしまった男子に周りを囲んでいたロボは好機とばかりに攻撃をしようとする。
出久の今いる場所からだと離れていて間に合わない……普通なら。
「ダイゴさん、お借りします!!」
そう出久は叫ぶと頭の中で鞘から剣を抜くようなイメージをしながらペンダントの水晶を掴んだ。
するとヘドロヴィランの時と同じような金色の光が溢れて掴んでいる右手に集約していく。出久はこの受験日までの間に、『光』をある程度操作できるようになっていた。自身が戦うことや人を助けることを強く意識した状態で先ほどのように鞘から剣を抜くようなイメージをすることでヘドロヴィランの時ほどではないが一時的に『光』を操作でき、その力を使うことができる。
そしてそのままペンダントから右手を離して、左手を拳に変えた状態で甲を下にして引き絞り、その左手に光が収束された右手をかざす。
「ハンドスラッシュ!」
技名を叫びながら、左手にかざした右手を男子を囲うロボに向けると、その右手から手裏剣状の光線が発射されてそのロボを破壊した。
そのまま光線を連射することで他のロボも破壊すると出久はその男子に駆け寄り、肩を貸す。
「大丈夫…?」
「ああ……個性の副作用みたいなものだよ」
出久は男子をスタート位置に移動させて、座らせる。
それからすぐにロボを探しに行こうとすると男子から話しかけられた。
「ねえ…どうして君は僕を助けたんだい?」
その質問に出久はなんでもないように答える。
「?ヒーローは助け合いでしょ。それに、体調が悪い人を放っておけるほど僕は非情じゃないしね!」
そう答えて出久は走り出した。その姿を見ていた男子は、なんとなく彼は合格するのだろうな…と感じ、自分も頑張ろうとまずは体調を整えるのだった。
そこから男子は、他の受験生のピンチを助けることを中心に活動し、無事に”例のポイント”で合格に漕ぎ着けたのだった。
そこから数分……あと一、二分と言ったところで試験終盤、急に試験会場が大きな揺れに包まれる。
受験生達は地震かと少し動きが止まるが、すぐにその揺れの発生源が顔を出した。揺れの正体はプレゼント・マイクが講堂で説明していた時に離していた0ポイントのお邪魔ロボだった。ただ、他のロボット達とは違い、大きさが桁違いだった。数十メートルある会場のビル群と同じ大きさなので、かなりの大きさを誇る。並の大きさではないので受験生達は逃げ始める。
元々お邪魔、ポイントにもならない。勝機もないなら自分は関係ないと逃げ始めるのはある意味効率といった観点からは正しいのだろう。
だが、強大なヴィランに背を向けて逃げるのは”ヒーローを目指す者”としていいものなのかと出久は思い立ち止まる。
そして立ち止まったことで出久はあることに気がついた。
お邪魔ロボットの近くに逃げ遅れた女子がいたのだ。女子の足はお邪魔ロボが登場した時に破壊された瓦礫に挟まり、動けないでいた。
出久はお邪魔ロボに向けて走り出した。
ペンダントの水晶をもう一度握りしめて光を纏う。
今度は両手両足に光を薄く纏わせると一気に加速して女子の元に行き、瓦礫を持ち上げて動かす。そのまま女子を横抱きに持ち上げてその場から離れる。この間はや三十秒である。
出久は他の受験生達がいるところまで下がると女子をおろし、状態を確認する。
「怪我はない?」
「あ、足を先挟んだ時に捻ったぐらい……」
「そっか、よかったよ」
それから出久は足の調子を軽くチェックした後に近くにいた眼鏡をかけた男子に女子を預けて、もう一度お邪魔ロボに視線を向けた。
「眼鏡の君、僕いくからこの場は任せるよ?」
「な、君はあれと戦う気かい!?あれは何の意味もない0ポイントなんだぞ!」
「それでも、街を破壊するヴィランを放置するようなこと、ヒーローがするかな?それに物事に無意味なんてないよ」
そういって出久は止めてくる眼鏡男子の静止の声を無視してまたお邪魔ロボに向かっていった。
「ハンドスラッシュじゃ威力が足りない…それなら全力で!!」
出久は走りながらもう一度ペンダントを持って光を今自分が操作できる分引き出して、先ほどまで纏っていた光を足に集中させて一気に跳躍する。
数十メートルのお邪魔ロボの頭上まで跳躍した出久は、残っていた足の光のエネルギーを少しずつ放出する形でその場に固定すると、先ほど追加で引き出した光をまるまる使う形で技を繰り出すために、両腕を腰に引き絞りまた胸のあたりで交差、左右に大きく開いていく。
光が徐々に白に変化していき、大きな破壊エネルギーとして出久の両腕に集約し、技の発動準備が整った。
『ゼペリオン光線!!』
L字型に腕を組んで放つ白い超高熱光線、ヘドロヴィランにも放ったゼペリオン光線である。
その光線はお邪魔ロボに直撃すると、大きな轟音を立てて爆発した。そしてその瞬間に、プレゼント・マイクからの試験終了の合図が流れた。
エネルギーを足から放出するのをやめて、着地に残りのエネルギーを使い綺麗に着地した出久。
その顔には、自分が全力を尽くすことができたとスッキリした顔だった。
そしてその出久を見ている男女がひとりづつ…先ほど助けた女子と、出久をとめた眼鏡男子だった。
「かっかっこええ……」
「(彼の行動は何か意味がある……?そうか!そう言うことか!!)」
女子はその出久の見せた技にシンプルに格好いいと思い、眼鏡男子は出久の行動が、この試験の本質を捉えていることに気がついた。
そしてその後リカバリーガールからの手当てなどを受けて、本日の受験は終了した。出久の結果はいかに……
久々に時間ができたので四時間ほどで作成……クオリティ低いのは許してくだせぇ。
少し前に発熱があってコロナかと思って病院行ったら細菌系が原因だった。
まじで発熱した時は焦りましたよ。夏休みバイト以外で出掛けてなかったので…皆さんも注意しましょう