夜の街に雨が降る。
雨に濡れるクロマトの街をコートを着込んだ長身の男が歩いていた。
雨を防ぐためか、外套から伸びた頭巾で顔まで覆っており、背中には広幅の刃を背負っている。
外套の合わせ目から覗くのは、一振りの剣。
蝙蝠の翼を重ねたような形状し、その剣の柄には、額に二本の角を生やし瞼を閉じた老人の頭が装飾されていた。
雨に濡れる右手には端末が握られ、立体映像が浮かび、その地図を確認しながら進む。
雨と空気中の不純物で映像が歪みながらも、男は歩みを止めない。
典型的な外から来たばかりの冒険者の姿であった。
旅装の男は中央の交差点で立ち止まると、周囲の人々は奇異の目を向けるもすぐに興味を失い去って行く。
雨よけの庇の下にある男の青い目は、街の様子を見入っていた。
「……このような街が本当にあるのか」
思わず吐いた独白。
雨を降らす雲の闇を斬り裂くように、四方のビルから照明が灯り、歩道は人々で溢れている。
肩を組んで贔屓にする球技のチームの応援歌を熱唱する酔っぱらいたちや、若い男女が互いの傘を連ねて楽しそうに歩いて行く。
繁華街の奥に覗く路地にある通りには、煙草の紫煙をくゆらせる街娼が立っていた。
交差点の人並みに沿って男も歩き、繁華街から路地に進む。
握られていた端末を操作し、起動させるも、虚しい発信音だけが響くだけだった。
「出ない、か」
男は再び端末の地図を確認し、それに従い路地を歩み出す。
何度か曲がり、濡れた道を進む。
そこで男は止まった。
「何か用か?」
雨に打たれながらも男は言葉を投げかけると、路地から四人の男が現れた。
背後に大槌を背負った巨漢と、簡易鎧に剣を下げた剣士。
前からは、弾帯を肩に提げた細身の男と、その隣には帯電装備で身を包んだ術士であった。
「用があるのは、その腰と背中の得物だけだ」
前方の弾帯男が腰から銃を抜きながら、そう告げる。
目は剣を値踏みしており、目算でも大業物……下手をすればそれ以上と踏んでいたのだ。
「強盗か」
双剣の男は淡々と続ける。
「祖国とは違い、平和で豊かな場所と判断したが、そうとはいかないようだな」
剣の柄に手を伸ばそうとした男の手が止まる。
指先が震え、息が乱れた。
「やっぱり、オメェ病人かなんかか」
男たちは笑みを浮かべる。
刀狩りの集団は薄く笑みを浮かべ、男の前後で包囲網を形成。
大業物を所持する彼を楽に始末できるなどという幻想は持ってはいない。
だが、病人相手ならば四人で一斉に襲えばいい。
「ガージ、エッビガ、殺せッ!!」
弾帯男が叫ぶ。
ガージと呼ばれた巨漢が大槌を、エッビガと呼ばれた剣士が剣を抜いて一気に距離を詰めた。
双剣の男がコートを撥ね上げる。
右手には蝙蝠の翼が重なったような禍々しい刀身、柄に施されていた老人の瞳は僅かに開かれていた。
左手に握られていた刃は変形し、握られる柄を底辺と置いた巨大な三角形へと変貌。
既に柄を握る両手の震えは止まっていた。
「その剣と三角形の得物は!」
術士が叫ぶ。
「魔剣《ヴェスペルト》と《