とりあえず聖杯戦争についての説明を受けるべく教会へと向かうこととした士郎一行であるが、ここでおばちゃんから待ったがかかった。
「こんな時間に子供らだけで出かけたらあかんやろ、補導されんで。
女子もおるんやから日焼けの兄ちゃんだけやと説得力ないし私が保護者いうことで行ってあげるわ。
それにその教会のおる監督とかいう奴。
未成年の子らを唆して
子供同士の喧嘩ならまだしも、大人もまじるんやったら話は別や」
とおばちゃんが鼻息を荒くして決意を固めていたので、他のメンツは満場一致でおばちゃんの説得を諦めてしまったのだ。
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「なるほど。
それでそちらのご婦人までもがこうしてやって来たわけだ」
渋い声で答えたのは、聖杯戦争の監督を務める教会から派遣されてきた神父だ。
「そうやで!あんた神父なんかしてるクセに子供らをこんな時間まで戦わせるとは何事や!」
「ふむ。貴方の言うことはご尤もだ。
しかし誤解しないでいただきたい、これは長い歴史のある、由緒ある神聖なる儀式なのです。
ご子息らも固い決意のうえで参加されております」
「せやかてあんた・・・」
これは伝統文化、神聖な儀式、何代も続いている由緒正しき・・・ねっからの日本人であるおばちゃんにとってそれ系の言葉はちょっとズルい感じで許せてしまう気がするのだ。
そんなおばちゃんにさらなる追撃が加速する。
「それに」
「・・・なんです?」
「助けを求めてきた場合、きちんと私たち教会が全力を持って保護いたします。
もちろん戦争が終わるまでは、他のマスターやサーヴァントに襲われないようにしておりますのでご安心を。
もちろん、戦うときは一般人を巻き込まず、そして周りに人がいないように考慮して戦うことを前提として全マスターに周知徹底させております。
時間帯に関しては、申し訳ないが期間限定ということでご理解願いたい」
「・・・・・・人によって捉え方は違うやろうけど、
一応、人目につかへんようにとかちゃんと周りに迷惑かからんように考えられてるんもわかりました。
・・・ところでマスターとサーヴァントって何なんです?」
「マスターとはサーヴァントを呼び出し従える者。
サーヴァントとは契約と呼びかけに応じて参上せし者、彼らはマスターの手先となって戦います」
「なるほど、組長とその雇われ用心棒みたいなもんか」
はたして、神父とおばちゃんの脳内が思い浮かべる光景にはどれだけの違いが生まれているのか・・・似ているようでなんか全く違うものになっていることは確かだった。
しかし神父は、そのことを指摘すれば泥沼にはまり、たぶん今夜は寝れなくなるしなんか面倒くさいことになりそうだったのでスルーした。
神父からの説明を受け終わり、渋々ながら納得したおばちゃんは、最後に士郎へと意思を確認する。
「士郎ちゃん、あんたどないすんの?この抗争」
「おばちゃん・・・俺は、こんな馬鹿げたことをする奴らを止めたい。
それに、俺を信じてくれた
あと、・・・と、遠坂にかっこ悪いところ見せたくないし・・・」
「ん?最後なんて?」
「いや、なんでもない!とにかく、俺は参加する」
「わかった、けど約束やで?
無理はしないこと。
何かあったら私にちゃんということ。
そこのパツキンちゃんを、きちんと守ってあげること。
できる?」
「ああ、任せてくれ!
優勝したらおばちゃんにも聖杯見せてあげるよ」
「ほんまに?楽しみやわぁ、ああいう優勝カップ手に持つん夢やってん!」
「じゃあしばらく家に飾っておこうよ!」
「それええな!そうしよか!」
神父も、遠坂も、日焼け男も、パツキンも、ツッコんだら駄目だという堅い意思でなんとかその場を乗り切った。
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「こんばんは、お兄ちゃん」
教会からの帰り道、士郎達の行く手に一人のロリが現れた。
「ふむ、君のような妹を持った覚えはないのだが・・・」
「違う貴方じゃない。なんか似てるけどそんな日焼けしてない」
「え?じゃあ俺?」
「衛宮くん・・・貴方そういう性癖だったんだ・・・」
「士郎ちゃん、あかんでさすがに・・・」
「凛もそこのおばちゃんもちょっと黙ってて。
お兄ちゃん、聖杯戦争に参加するんだってね?
参加しないのなら命だけは助けてあげようかと思っていたけど・・・」
そう呟いたロリのそばには、黒くて大きな半裸の筋肉男がヌッと現れた。
「ッ!? 衛宮くん! この子マスターよ!戦う準備を!」
「た、戦うって遠坂・・・こんな小さな子と」
「士郎、貴方は下がっていてください」
「
深夜帯、ロリの横には半裸でガングロで鼻息が荒いムキムキのマッチョマン、しかも2mは余裕で超えている。
それに対するは高校生の少年少女とパツキンの不良と日焼けしたたぶん芸能人。
おばちゃんはそっと携帯電話の
「準備はできた?
それじゃあ・・・やっちゃえバーサーカー」
筋肉男の姿がかき消えたと思った瞬間、パツキンの目の前にいた。
おばちゃんは見た、そのぶっといゴツゴツした剣のような棒を振り回す
これは間違いなく4番を張れる。
ホームランか三振のどちらか、100か0の打ち方でいい。
それでも1シーズンで50本のHRはいける・・・それくらい素晴らしいスイングだった。
是非次の外国人助っ人に欲しいと願ったおばちゃんであった。
そんな脳内ドラフト会議をよそに、筋肉男とパツキンの攻防は凄まじいものだった。
わずか数分の攻防で、地面はひび割れ木々は飛び散り突風が吹き荒れ周りのモノが吹き飛ばされる。
「セイバーのクラスっていっても所詮その程度なんだ・・・
拍子抜けね・・・これ以上は楽しめそうにないかな。
バーサーカー・・・もう殺しちゃっていいy『ウウーーーー!!ウウーーーー!!』ってなんでパトカーが!?」
突然鳴り響いたパトカーのサイレン音に思わず戦闘が止まる。
「いやごめん、なんか幼女誘拐かなって・・・」
「誰が幼女か!?
くっ!お兄ちゃん!凛!
警察を呼んで不利な状況をリセットするなんて・・・!
いいわ、今日はそちらの作戦勝ちにしてあげる!
覚えてなさい!」
筋肉男がロリを肩に乗せて飛んで逃げていく。
士郎や遠坂は、作戦とか意味分からんしおばちゃん何やってんだという気持ちをグッと飲み込んで、とりあえず逃げることを選択した。
「ええっ、逃げるん!?
お巡りさんら私らのこと見つからへんと困らはるできっと!」
「たぶん見つけたほうが色々とお巡りさん達にとっては困ると思うよ!?」
お巡りさん達が現場に到着するも人影はなく、しかし破壊された地面や吹き飛ばされた木々があることから、なんらかの局地的な災害もしくは不発弾等の爆発ではないかと判断された。
おばちゃんが使っていた携帯は幸いなことにクソ古いガラケーであったためGPS等もつんでおらず、発信者情報ももれることなく無事に終えた。
なお、お巡りさんたちはおばちゃんの読み通り、実際のところ事件でも何でもないのに夜通し現場保存をするというかわいそうなことになったのである。
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士郎と遠坂は、今夜限りは休戦する約束をし、お互いの家に帰った。
おばちゃんもさすがに疲れたのか深く追求することはなく、家に帰って即寝た。
そして2日後、遠坂はノコノコと学校にやってきた士郎に絶句していた。
学校ではお嬢様ロールで通している遠坂の顔が思わず引きつるほどの衝撃であった。
「衛宮くん、貴方サーヴァントも連れないで学校に来るなんてどういうつもりなの?
私言ったわよね、次にあったら敵同士だって」
「そうはいっても俺は遠坂と戦うつもりはないぞ。
それに学校みたいに人が多いところは安全だって遠坂自身も言ってたじゃないか」
「貴方にそのつもりがなくても、私にはあるの。
いいこと、さっさと帰って家に引きこもっていなさい」
「そうは言ってもなあ・・・。
それにちゃんと学校に行かないとおばちゃんがうるさいんだよ」
「・・・・・・・・・そう・・・それならまあ、仕方ないか・・・
けど、授業が終わったらすぐ帰るのよ、わかった?」
「はいはい」
遠坂もあのおばちゃんが絡んでくるとなると強くは言えず渋々妥協案を提示することとなった。
よくよく考えれば、仮に自分が衛宮くんを傷つけたり、勢い余って殺してしまった場合、あのおばちゃんは一体どういう行動をとるのか、深く考えると怖い未来になったので遠坂は考えるのをやめた。
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そして放課後、士郎は案の定遠坂の言いつけを無視して構内を探索していた。
その結果、よりにもよって遠坂から攻撃をしかけられるという喜んでいいのか悲しんでいいのかわからない状況に陥ったが、"共通の敵の出現"という戦闘を中断する事態が起こり、二人は再びの休戦協定を結ぶこととなった。
期間は学校にいるであろう、自分たち以外の第三のマスターを排除するまで。
士郎は遠坂と戦わずにすむことに喜び、遠坂は自らの腕を犠牲にしてまで自分を守ってくれた士郎にキュンとした。
二人の気持ちはお互いに良い感じになり、そして学校の生徒を犠牲にしてまで勝ちに行こうとする第三のマスターに対して激しい怒りの炎を燃やしていた。
しかし二人の行動を嘲笑うかのように、ついに生徒の中から被害者が出てしまった。
それはよりにもよって二人の共通の友人であり、弓道部の部長である美綴が、ハイライトがない目の状態で発見されたのだ。
発見された美綴は「F・・・X・・・」等と二文字のダイニングメッセージらしき言葉を発した後、涙を流して崩れ落ちたという。
現在は自宅療養中である。
「クソッ!美綴が襲われたなんて・・・!」
「ひどい…まるで有り金全部溶かしたみたいな顔させるなんてどんな酷い仕打ちをしたのよ犯人は・・・」
二人の必死の捜査もむなしく、犯人については全く情報を掴むことはできなかった。
唯一判明したことは、美綴の貯金残高も手持ち現金も0になっていたことだった。
幸い美綴は、資産はともかく、メンタル的にやられているだけで何故か魂はほとんど傷ついていない状態であったので2・3日安静にしていれば治るとのことであった。
そしてさらに、ついには学校全体に効果を及ぼす特殊結界が発動されてしまった。
次々と倒れる生徒達、士郎と遠坂は何としても死者をださないように、必死で敵対マスターを探し始めた。
しかも間が悪いことに、今日は
生徒達だけでなく、一部の保護者までもがどんどんと倒れていく。
「田中さん!田中さん!しっかりして!
どないしたん急に倒れて!」
おばちゃんは、仲のいい保護者の一人である田中さんが急に意識を失い倒れたため介抱していた。
「お、姉ちゃんええとこおった!ちょっとAEDとってきてくれる!?
田中さん倒れたんや!
ってあんたエラい格好してるなあ・・・
こりゃ失礼しました。
それでちょっとすみませんがAED取ってきてもらうか救急車呼んでもらってもええですか?」
おばちゃんは近づいてきた女性のことを女生徒と勘違いしてしまった自分を恥じた。
奇抜なファッションではあるが、よく見れば昔流行ったボディコンの格好だったのだ。
見た目は若く見えるが同世代のはず、それがおばちゃんのたたき出した答えだ。
「もしもーし?
あれ、もしかして日本語わからへん?
外国の人かな。
カンユースペークニホンゴォ?」
おばちゃんのネイティブレベルの英語をもってしても、ボディコンからの回答は無かった。
それもそのはずである、そのボディコンはただのボディコンにあらず・・・歴とした一騎のサーヴァント・・・ライダーだったのだから。
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「カンユースペークニホンゴォ?」
目の前のおばちゃんが自分に何かを告げてくる。
さっきまでの言語も若干日本語から離れていたが、今度のものは完全に日本語ではなくなっていた。
カンユー?肝油?
ボディコンはおばちゃんの言語を必死に聞き取ろうとしたが、無理だった。
というかそもそも、なんでこのおばちゃんは自分の結界の中にいるのにピンピンしているのであろうか。
死には至らないレベルとはいっても、常人であれば意識を失うレベルの結界のはずだ。
まさか
このおばちゃんから魔術は全くもって感じられない。
いくら気に入らないマスターの命令とはいえ、一般人相手に魂を吸い取るような結界を張った行為は、元英雄として許せない行為だった。
そのせいか、目の前のおばちゃんを排除しようとする気持ちが湧いてこない。
ボディコンが脳内で様々な逡巡をしている間にも、おばちゃんはしゃべり続ける。
「というかあんた目隠ししてて歩けるん?杖も持ってないみたいやけど・・・
大丈夫?案内しよか?」
ボディコンは、ここで初めて言葉を発した。
観察したところ目の前のおばちゃんはただの善性の一般人だ。
悪いことは言わないから早くここから逃げた方がいい。
それと自分の目は人を魅了してしまう、だから目隠しを取ることができないのだ。
そう、伝えたのだ。
そして自分が過去、石に変えてしまったモノ達のことを思い出して、ついつい意識がはずれてしまっていた。
おばちゃんが手を伸ばして自分の目隠しを取ろうとしていることから。
「あらー!確かに綺麗な目してるやん!
ほんまほんま、めっちゃ綺麗やん!
そら確かに魅了されるわぁ。
もったいないであんた!
こんな綺麗なんもっとアピールせんと!」
「え・・・?」
目の前のおばちゃんは、
ボディコンは混乱した。
どういうことだ、レジストか、無効化か、いやこれは夢か?もしかして自分が幻覚にかかっているのか?
しかし、それらは目の前のおばちゃんの暖かい手が全てを否定する。
全部、全部が本当だった。
おばちゃんが自分の目を綺麗だと言いながら慈愛に満ちた瞳で自分を見つめていることも。
その暖かい手で自分の頬を撫でてくれていることも・・・。
「え、目 見たら石化ってすごいやん!
みんなあんたに見惚れてまうんやなあ・・・。
ていうか肌も綺麗すぎや・・・化粧水なにつこてるん?
ど、どうしたん急に!?なに泣いてるん?
え?綺麗やとか言われたことない?
あー・・・みんな照れてるんやできっと」
ボディコンは、自分の中のドロドロとした負の感情が、少しずつ、だが確実に、そして綺麗に溶けていく感覚を認めた。
ああ、ああ、この人は、このおばちゃんは・・・自分を認めてくれている。
まっすぐと見つめ、この呪われた瞳を、綺麗だと言ってくれた。
石にされる、呪われるなんて気持ちを微塵も感じさせること無く。
気づけばボディコンは、自分の生い立ちや現状を包み隠さずおばちゃんに愚痴っていた。
「なるほどなあ・・・大変やったんやなぁ、あんたも。
けどな、大切なんは今やで。
せっかくの別嬪さんやねんから泣いてたらもったいないで
そのクソワカメとかいうのも、証拠とか揃えて少年院ぶちこんだろ。
そいつの青春をババ色にしたろ!
それと桜やっけ?あれ桜ってもしかして士郎ちゃんとこに通い妻してる子?
あ、やっぱりそうなんや!大丈夫やで!なんたって士郎ちゃんやしな!
それとその子らのクソ虫だかクソ爺だかいう保護者がモンペなんかな?
それも証拠揃えて警察に届け出やな!
大丈夫やで!日本の警察は優秀やからな!」
ボディコンにとって少年院も警察もよくわからなかったが、このおばちゃんに任せておけばきっと大丈夫、そんな確信があった。
だって・・・・・・こうして自分が救われたんだから。
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桜と
とりあえず二人で間桐家から逃げ出してきたはいいが、問題は何も解決していないのだ。
悩んでいても仕方ないととりあえずの喫緊の問題である、桜の置かれた状況改善とその弊害となっている間桐家当主である爺への対応、あとは一応桜の兄にあたるワカメへの処置だった。
ワカメへの処置は、おばちゃんの言うとおり司法機関に任せれば大丈夫だろう、全てが口先だけの彼にはそれに対応する力すらない。
問題は当主である爺であった・・・。
また桜はそのせいで幼い頃から蟲に心身共に嬲られてきた。
今も思い出すだけでカタカタと震えてくる程だった。
ボディコンも、何とかこの心優しい
しかしこのおばちゃんなら、おばちゃんならきっと何とかしてくれる、そんな思いからボディコンはあまり乗り気で無い桜を引っ張ってでもおばちゃん宅に避難してきたのだ。
「桜ちゃん・・・なんでそんな死にそうな顔してるん?
え?虫に汚された?
もう士郎ちゃんにふさわしくない・・・?
桜ちゃんより遠坂さんに夢中?
どういうことなん?」
桜は、ポツポツと自身の過去を語り始めた。
毎日ひたすらに蒸し風呂ならぬ虫風呂に入れられる日々。
爺からの罵詈雑言と暴力。
桜はもう限界だった。
誰でもいい、誰でもいいから助けて欲しかった。
けれど無理なのだ、あの爺からは逃げられないし、誰も勝てない。
だからせめて大好きな先輩の家に通うことで、何とか心の平穏を保ってきた。
しかしここに来てその平穏すら、わずかな希望すら打ち砕かれた。
なんと先輩と自分の姉が良い感じなのだ。
よりにもよって、よりにもよって姉なのか。
まだどこのウマの骨ともしれない女なら我慢できた。
しかしだ、私を
あの姉にだけは盗られたくなかった。
桜は気づいてしまったのだ、大好きな
あれは自分の胸を見ている時と一緒だった。
部位こそ違うが、あれは絶対エロい目だ。
自身は胸・・・おそらく姉は太ももだろう。
桜には無理だった、急にミニスカなんか履いたら今まで築きあげてきた清楚系路線が粉々になってしまうし、そもそも私の太ももはスラッとしていない・・・ちょっとまああれだ、むっちりしてしまうのだ。
ニーソックスがあんなに食い込むとは思わなかったのだ。
ともかく、このままではいけないのだ。
桜は、そんな思いをおばちゃんにぶちまけたのだった。
「あー桜ちゃん、わかる、わかるで・・・おばちゃんも昔ひどい目にあってん。
うち昔なー、テトラポッドのとこで足滑らせて落ちてん。
そんで足折れて上がられへんくてなぁ。
しかも当時は携帯電話なんてないから助けも呼ばれへんくてな?
そこからが地獄のはじまりや・・・。
フナムシに体中まとわりつかれてな・・・助けがくる半日以上、ずっとそのままや・・・。
今思い出してもサブイボ出るわ。
あん時はガチで泣いたわ。
しかもおしっこもらすだけやなくて、お腹冷えたせいか大きい方も我慢できんかってん…。
そんでもってそんな虫まみれクソまみれ状態のうちの所に助けに来たんが当時片思いやった先輩やってんで・・・。
ハハハ・・・笑えるやろ・・・」
桜は、おばちゃんの壮絶な過去に絶句した。
もう想像するだけでごめんだった。
自分とは違って短期間の地獄であろうが、それはまさしく地獄だった。
桜は、さっきまではおばちゃんに自分の何がわかる!と憤っていたが、今はなんか軽い親近感すら出てきていた。
おばちゃんの話は更に続いた。
「あとな処女のこと皆気にしてるけど、大丈夫やで?
大抵の男は『私はじめてなんです』って言えば騙されるからな。
血出ない人もいるみたいって言っておけば完璧や。
それに大切なんは、過去より今やで!
過去にちょっとヤンキーにキュンとして初めて捧げたりしても、そんな思い出はゴミ箱に捨てて忘れたらええ。
大事なんは今現在好きな人と繋がれてるかどうかやで!
あとな、思春期の男なんてそんなもんや。
目の前におっぱいがあれば彼女が横にいても視線はそれに釘付けやし、パンツ見えそうやったら体ごと傾けてでも見に行こうとする。
大丈夫、桜ちゃんには強い強い武器があるやんか!
おばちゃんにもちょっと欲しいくらいやで?その胸」
桜は目から鱗が落ちる思いだった。
すごい、このおばちゃんはすごい。
私が欲しかったのはこういうアドバイスだったのだ。
桜のハイライトのない瞳に光が戻り始める。
「おばさま、わかりました。本当にわかりました。
ありがとうございます、私頑張ります!!
じゃ、じゃあ蟲は?
あのむかつく爺はどうしたらいいでしょうか!?」
このおばちゃんならきっと素晴らしいアドバイスをくれる、桜はまさに神に出会った気分だった。
「とりあえず、その保護者のことは市役所と警察にちゃんと届け出しよ。
なんや犯罪行為もしてるんやろ?今ある証拠揃えて提出や。
しかもそいつ何か市の名士とか言われてるんやろ?
マスコミにもリークしたろ。
マスコミが動いたら市も警察も動かざるをえんやろしな。
え?虫ってそんなやばい虫なん?
んー・・・けどたぶん大丈夫やで。
バルサ○もキ○チョールも未経験の虫なんやろ?何の耐性もないんちゃう?
え 殺虫剤ごときじゃ無理・・・?安心しい!
日本の会社が何十年何百年とただひたすらに虫を殺すためだけに考えて考えて考え抜いて作り出した至高の殺虫剤やで?
そこらへんの虫なんて
い ち こ ろ や 」