展開を弄りづらい作品なので、どうしても他作品と似たシーンが出てきてしまうかも。
まぁ、狙ってやっている時もあるかも知れないので、この作品のオマージュなのではと当ててくれたら、ほんのちょっと作者は喜ぶかもしれません。…決してパクリでは無いです、決して。
それは、桜が散り切って初夏の暑さを肌で感じ始めたぐらいの日。フットボールフロンティア(FF)の予選が近づいてきて、チームメイトたちの練習も加熱してきたのをまだ覚えている。
確かその時はちょうど柔軟中で、新たな必殺技の案を考えていた時の事だった。
…"ヤツ"らが、やって来た。
そして、"ヤツ"らの勝負をやむなく受けた俺たちは、呆気なく二桁の点数差を付けられる。…点数差とは、我ながら誤魔化した描写だ。こちらは一点も取れていないと言うのに。
差が歴然にもかかわらず、鋭いシュートがゴールをまた襲う。遅れて、ホイッスルが鳴り響いた音が聞こえた。
それを聞いた一年は、涙を出し尽くしたのか赤くなった目をうつろにして、スコアボードをペラっとめくった。
この風景から、我ら"劈頭"中学のFF出場はあり得ない妄想話だということが証明された。
まだ試合終了のホイッスルが鳴った訳でも無いのに、諦めるとは何事かと言われるかも知れない。だが、俺はこれ以上続けようと思わなかったし、思えなかった。
俺以外のチームの皆、地へと倒れ伏しているから。
唯一立っていた俺は、意を決して一言"ヤツ"に伝える。しかし、あろうことか"ヤツ"はこう言った。
「倒れるまで続けた奴らは報われないな。
まさか限界を迎えてすらいないお前に、自分の限界を決めつけられてしまうとは」
怒りでどうにかなりそうだった。だが、俺は何も言い返せなかった。膨れ上がる感情を吐き出すことが出来ずに、膝を地に付けて顔を下に向ける。
やっと、終わりのホイッスルが鳴り響いた音が聞こえた。遅れて、ポタポタと水滴が地面を濡らす。
…この顔は、誰にも見せたく無い。
結局、俺もチームメイト同様に救急車に乗せられた。なので、自分の学校が潰されていく様子を、俺は見ていない。
その後の顛末はというと、"ヤツ"らの手が回っていたせいで、チームメイトのみんなはサッカー部が有名な学校へ転入できない。それにサッカーに対するトラウマが合わさり負の相乗効果となって、誰もサッカーを続けようとしなかった。
なので、当然皆は地元に残り、各々の学校生活を謳歌する事を決めたようだ。
しかし、俺だけは地元から離れて東京の学校へと編入した。"ヤツ"らの学校、帝国学園から近い学校に…。
今日、ウチのクラスに転校生が来るみたいだ。
転校生が来る、ということしかわかっていないので、俺は心の底から男が来ますようにと祈った。もし男なら、ウチのサッカー部に入ってくれるかもしれない。
それに試合できる人数になれば、ほかのみんなもやる気になってくれるかも。…まだぜんぜん人数足りないけど。
「それじゃ、道産くん。入ってきなさい」
「はい、失礼します」
ドアをガラリと開けて入って来たのは、長めの白い髪を左サイドに括り肩から胸の辺りに垂らした男だった。声と一緒にペコリと下げた頭を上げて、顔をクラスのみんなに見せる。
少し垂れ目気味の優しい目つきと、優しい笑みを持った、…言葉で言うなら、"愛らしい"が似合う男だった。
…男モノの制服着てるし、多分男だよな?
身長と体格の両方とも普通ぐらいで、スポーツやってるかの判断もちょっと難しい。…性別も。
とにかく、礼儀正しいところから少なくとも昨日会ったような不良では無さそうだ。他の部活に入っちゃうかも知れないし、早めに頼み込んでみよう。
「それじゃ、自己紹介どうぞ」
「えっと、北海道の方から来た"動産 怜悧"です」
ほんの少し困ったような笑みを浮かべて、一呼吸置いた。そして、意を決したように宣言する。
「…サッカーが好きなんで、この学校でもサッカー部に入ろうと思っています」
「マジで⁉︎」
ガタッと椅子を鳴らし、立ち上がった生徒がいた。…俺のことだけど。つい、サッカーという言葉に体が反応してしまったみたいだ。すみませんと言って、すぐ椅子に座る。
もしかしたら、俺の努力に応えてくれたじいちゃんがあいつを連れて来てくれたのかも知れない。
だから、俺は心の底でこう言った。
(ありがとう、じいちゃん。おかげで面白くなりそうだ‼︎)
道産 怜悧
漫画やアニメ作品上で最も死にやすい髪型(作者判定)、ルーズサイドテールの男主人公です。…一応ゲームの方の公式設定に、FFに女性選手の出場は認められていなかったはずなので、作者の好みを具現化するためには男の娘を作るしか無かったという裏話が…。
あと、この世界線での豪炎寺の扱いに関しては次回の後書きにでも。…作者が失踪しなければ。